「美しい森林づくり」企業・NPO等交流フォーラム “森と人が育む生物多様性”~COP10に向けて~

美しい森林づくり」企業・NPO等交流フォーラム “森と人が育む生物多様性”~COP10に向けて~全国推進会議は、我が国の森林を次世代に豊かな状態で引き継いでいく国民的な運動の環が一層広がる景気になることを目指して、「美しい森林づくり」企業・NPO等交流フォーラムを開催しました。

このフォーラムは、来年開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向け、「森と人が育む生物多様性」をテーマとして、森林・林業に期待される生物多様性保全の役割について考えることを目的として開催されました。

フォーラム

冒頭、出井伸之美しい森林づくり全国推進会議代表の挨拶、島田林野庁長官の来賓挨拶に引き続き、イントロダクションとして200名の会場参加者への旗揚げアンケートが行われ、森づくりへの関心や想いを皆で再確認しました。

次に、水源地の水の一滴塾塾頭で俳優の菅原文太氏から、『森を歩いて』と題した特別報告、続いて、村田真一氏(NHKエグゼクティブ・プロデューサー)から『『里山」その魅力と人々の関わり方(ドキュメンタリー映画「里山」の現場から』、香坂玲氏(名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授)から、『森林に期待される生物多様性保全とは(COP10に向けて)』と題した基調講演があり、最後にパネルディスカッションが行われました。

  1. 開会
  2. 代表挨拶出井伸之代表(クオンタムリープ(株)代表取締役)
  3. 来賓挨拶林野庁長官
  4. 特別報告「森を歩いて」
    菅原文太氏(水源地の水の一滴塾塾頭、俳優)
  5. 基調講演Ⅰ「『里山』その魅力と人々の関わり方(ドキュメンタリー映画「里山」の現場から)」
    村田真一氏(NHKエグゼクティブ・プロデューサー)
  6. 基調講演Ⅱ「森林に期待される生物多様性保全とは(COP10の成功に向けて)」
    香坂玲氏(名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授)
  7. パネルディスカッション
    「森と人が育む「生物多様性」の環を広げていくためのアイデアとポイント~COP10に向けて~」
    ファシリテーター
    川嶋直氏(立教大学大学院特任教授、(財)キープ協会常務理事)
    パネリスト
    加計康晴氏((株)日新林業専務取締役、SGEC認証森林保有)
    高松健比古氏((財)日本野鳥の会監事、農林家
    林野庁「森林における生物多様性保全の推進方策検討会」委員)
    谷口雅保氏(積水化学工業(株) CSR部環境経営グループ長、
    環境省「生物多様性企業活動ガイドライン検討会」委員)
    中澤健一氏(国際環境NGO FoE-Japan 森林プログラムディレクター)
    コメンテーター
    村田真一氏、香坂玲氏
  8. 閉会

「美しい森林づくり全国推進会議」出井代表挨拶

 「美しい森林づくり全国推進会議」 出井代表挨拶「美しい森林づくり全国推進会議」出井代表挨拶この運動が始まり約3年が経ち、全国推進会議の登録団体数は98となり、またフォレスト・サポーターズの登録も6500を超えており、森林づくりの環が着実に広がっていると感じています。地球も人間も生命体であります。この大きな生態系の中で自然環境が良くないと多様性が保たれないと思います。また、質の良い自然をつくっていくことも重要だと思います。

日本の最大の資産は、自然と四季だと思っています。これをさらに磨きをかけることや、人と自然との関係をよくすることが非常に重要だと思います。本フォーラムを契機として、企業・NPOの皆様により美しい森林づくりの環がさらに広がり、生活の貢献や日本そのもののバリューアップに繋がればよいのではと思います。

特別報告「森を歩いて」菅原文太氏(水源地の水の一滴塾塾頭、俳優)

特別報告 「森を歩いて」 菅原文太氏(水源地の水の一滴塾塾頭、俳優)美しい森林づくりの集まりということですが、「美しい」という言葉よりも「力強い」とした方がよいのではと思います。仕事柄旅が多く、よく電車を利用するのですが、窓の外を見ると、森林が荒れているのに気づかされます。特に、針葉樹が荒れています。そばに行けば、ほとんど人が通れないくらい密集しやせ細っています。理想的な森林というのは、短い物干し竿を横に持って歩けるくらいの間隔のものだそうですが、それとは程遠いのが日本の森林の現状です。自分のラジオ番組に何回か出演していただいている、中村哲さんという方がおり、その方は約8年ほど前からアフガニスタンで現地の人たちと協力し、井戸や水路を造っています。010_04アフガニスタンは、以前は緑の豊かな国でしたが、10年以上前から続く強度な干ばつや戦火などによって、山にはほとんど木がなく、また、農地は砂漠化し荒廃してしまいました。中村さんは僅かでも良いので緑を取り戻そうとして、水路を造っているのです。日本では、全国的に針葉樹の荒廃した姿が目につきますが、アフガニスタンに比べれば、比較にならないくらい豊かな生物多様性が残っています。

私は、よくこういったフォーラムや集まりに呼ばれ、お話しをさせていただくことがありますが、もう議論はよいのではと思います。議論よりも中村哲さんではありませんが、とにかく行動を起こすことが重要だと思います。「美しい」さらに「力強い」森林の再生を目指し、皆さんと一緒にやっていけたらと思っています。皆さんも論より行動をということでやっていってください。

基調講演Ⅰ「『里山』その魅力と人々の関わり方(ドキュメンタリー映画「里山」の現場から)」
村田真一氏(NHKエグゼクティブ・プロデューサー)

010_05ここ10年来、里山をテーマに番組を作っています。里山は、手つかずの原生の自然ではなく、そこには人の暮らしがあり、人が手を加えることにより、新しい二次的な自然が生まれてくる世界だと思っています。まさに本日のテーマである「森と人が育む生物多様性」、この世界を里山は持っていると思っています。

その大切さを皆様に伝えようと思い、これまで作品を作ってきました。里山ということを表現しようとした時に、僕らが絶対に忘れてはならないキーワードが3つあると思っています。1つ目は、人が関わることで生まれる自然であること。2つ目は、そこに無数の小さな命があり、それが密接に絡み合いながら生きていること。そして3つ目は、人が作りだした自然と人の行為と生き物たちのドラマが密接に絡み合い、1つの循環の環のようになり繋がっていることです。

この里山というものは、日本人が伝統の中で築き上げてきた素晴らしい知恵だと言っても良いのではと思っています。自然を決して征服してしまうのではなく、生き物の生きる余地を残し、そしてそこにある命と命が繋がり、人間もその命の循環の中にあるものだと少しでも感じ取っていただければありがたいと思っています。これからも、里山の世界をお伝えできたらと思っている次第です。

基調講演Ⅱ「森林に期待される生物多様性保全とは(COP10の成功に向けて)」
香坂玲氏(名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授)

生物多様性という言葉について振り返りつつ、生物多様性条約に関して、国連ではどのような議論がなされているか、そして国内の動きや今後の展開についてお話しさせていただきます。

① 生物多様性について

香坂玲氏生物多様性から私たちが得ている恵みやメリットを「生態系サービス」と呼んでいます。生態系サービスには、「物質を供給している」「気候、洪水、病気の制御をしている」などありますが、これらの強弱により生物多様性は、私たちの生活に関係しています。

生物多様性が損なわれているということを耳にすることがありますが、それは生物が絶滅することを指します。絶滅は、以前からありましたが、何故それが問題かというと、過去、生物が絶滅したスピードの何百倍ものスピードで絶滅が起こっているからです。人間が様々な形で土地を利用することにより、過去の隕石の衝突などと同じくらいの威力で他の生物たちに影響を与えているのです。ですから、生物たちは絶滅ということを通し、人間社会が今後何か対応しなければならないことを伝えているのだと思います。

② 生物多様性条約について

生物多様性条約は、「地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること」「生物資源を持続可能であるように利用すること」「遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ公平に配分すること」を目的とする国際条約で、国際協力のもと様々な取組みが行われています。

その中で、2010年には、第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が名古屋で開催されます。そこでは、2010年目標に対する各国の達成状況の評価や、ポスト2010年目標について議論が行われます。また、国際NGOの方々なども出席され、その中でどのような議論をするのか、またどのような協力体制を築けるかが、重要になると思います。

また、ポスト2010年目標の素案が公開されています。今回は、中長期や短期の目標の他に個別目標が設定され、それをなるべく達成できるような具体的な手法が載っていることが特色となっています。その中に、森林破壊の速度に対する数値目標を何とか盛り込めないかというアイデアも出ています。国内の動きとしては、昨年、生物多様性基本法が成立しました。

これを受け、農林水産省でも生物多様性戦略が策定され、その中で目指すべき5つの森林の姿が示され、実行されているところです。また、民間企業やNPOなどによる生物多様性の保全のための様々な取組も行われています。「読書会で生物多様性に関する本を紹介する」「生物多様性に関するシンポジウムに参加する」など、ちょっとしたことからも始められるので、取り組まれてはいかがでしょうか。

パネルディスカッション
「森と人が育む「生物多様性」の環を広げていくためのアイデアとポイント~COP10に向けて~」

休憩後のパネルディスカッションでは、『森と人とが育む「生物多様性」の環を拡げていくためのアイデアとポイント~COP10に向けて~』をテーマに、川嶋直氏(立教大学大学院特任教授、(財)キープ協会常任理事)をファシリテーターに、加計康晴氏((株)日新林業専務取締役、SGEC認証森林所有)、高松健比古氏((財)日本野鳥の会監事、林家、林野庁「森林における生物多様性保全の推進方策検討会」委員」、谷口雅保氏(積水化学(株)CSR推進部環境経営グループ長、環境省「生物多様性企業活動ガイドライン検討会」委員)、中澤健一氏(国際環境NGOFoE-Japan) 森林プログラムディレクター)の4名の方をパネリストに招いて意見が交わされました。

パネルディスカッション