生物多様性民間参画パートナーシップ 第1回会員会合 兼 美しい森林づくり企業・NPO等交流フォーラム

主催/「生物多様性民間参画パートナーシップ」事務局
経団連自然保護協議会、IUCN日本プロジェクトオフィス
共催/「フォレスト・サポーターズ」事務局 美しい森林づくり全国推進会議
公益社団法人国土緑化推進機構

015-1

●生物多様性民間参画パートナーシップ第1回会員会合

  1. 開会挨拶
    大久保 尚武(経団連自然保護協議会会長)
    関口 史彦(日本商工会議所産業政策第二部部長)
  2. 来賓挨拶
    渡邊綱男環境省自然環境局長
  3. 生物多様性民間参画パートナーシップに関する報告
    (1)生物多様性民間参画パートナーシップの活動報告
    石原 博 (経団連自然保護協議会企画部会長兼政策部会長)
    (2)にじゅうまるプロジェク卜
    道家 哲平 (IUCN日本委員会)
    (3)生物多様性民間参画グローバルプラットフォーム会合の報告
    古田 尚也 (IUCN日本プロジェクトオフィスシニア・プロジェクト・オフィサー)
    (4)環境省からの情報提供
    牛場 雅己 (環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性施策推進室長)
  4. 企業の取組み事例紹介
    「いきものにぎわい企業活動コンテスト受賞事例」
    進士 五十八 (いきものにぎわい企業活動コンテスト審査委員長)
    【環境大臣賞】トヨタ自動車株式会社
    【農林水産大臣賞】株式会社滋賀銀行
    【環境大臣賞国際森林年特別賞】サントリーホールディングス株式会社
    【農林水産大臣賞国際森林年特別賞】北海道漁協女性部連絡協議会

●美しい森林づくり企業・NPO等交流フォーラム

  1. 国連生物多様性の10年に活かす、国際森林年の取組み成果
    「国際森林年における官民連携による国民運動の成果」
    上田 浩史 (林野庁森林整備部計画課海外林業協力室長)
    「動き始めた、森と木を活かした生物多様性保全~企業による取組み事例から~」
    香坂 玲 (名古屋市立大学准教授)
  2. パネルディスカッション
    テーマ:「生物多様性民間参画パートナーシップの今後の活動のあり方について」
    コーディネーター: 涌井史郎 (東京大学大学院 教授、木づかい運動感謝状 審査委員長)
    パネリスト:
    西堤 徹 (経団連自然保護協議会企画部会委員)
    川廷 昌弘 (CEPAジャパン・「生物多様性と子どもの森」キャンペーン実行委員会代表)
    香坂 玲 (名古屋市立大学准教授)
    牛場 雅己 (生物多様性施策推進室長)
    梶谷 辰哉 (公益社団法人国土緑化推進機構専務理事)
  3. 閉会挨拶
    大久保 尚武(経団連自然保護協議会会長)

美しい森林づくり企業・NPO等交流フォーラム
「国連生物多様性の10年に活かす、国際森林年の取組み成果」

006

「産官学民のパートナーシップで拡げる、日本の森と木を活かす」
上田 浩史 林野庁森林整備部計画課海外林業協力室長

015-2 林野庁は今年の国際森林年にあたって、いろいろな方々との連携を深めながら持続可能な森林経営の重要性の理解を深める努力を続けてまいりました。本日は今年一年の成果を報告させていただくともに、国際森林年を契機に地球環境の保全や生物多様性の保全等、今後の国民運動の発展につながる展望についてお話させていただきます。

まず、世界の森林の状況ですが、世界の森林面積は40億ヘクタール、陸地の31%を占め16億人以上が森林で生計を立てており、3億人は森林地域で生活、森林の3割が生産の対象となっています。さらに森林は陸域の生物種の3分の2が生息する地球上で一番大きな生態系です。 この森林の減少・劣化が現在最大の問題で、地球温暖化、生物多様性の保全にも大きな影響を与えています。アフリカ、南米の森林の減少が続く一方、アジアでは中国、インド、ベトナムなどにおける新規植林により森林面積はプラスに転じています。世界全体ではプラスマイナスで毎年520万ヘクタールの森林が減少しています。

日本においては先人の努力もあり森林率は68%で先進国の中でも有数の森林率を有しています。我が国の森林は人工林を中心に毎年約8,000万立法メートル増加しています。国内の木材の需要量が年間約8,000万立法メートルですから数字の上では需要量が賄えるほど国産森林資源は充実している状況ですが、日本の木材が使われていません。原因としては木材を出そうと思っても道がない、人がいないなど様々な問題があります。林野庁では森林・林業再生プランを立て現在の木材自給率26%を10年後には50%にしたいと施策を進めています。

このような状況を踏まえ、我が国における国際森林年の活動戦略をたてました。豊かな森林を守り育てていくこと、そのために一人一人が具体的に行動することが重要です。また、全国植樹祭・育樹祭はじめ既存のいろいろな活動を使いながら効果的な取組みを展開することとしました。これらの活動の中心として有識者の皆様に集まっていただいて国内委員会を組織しました。また国際森林年子ども大使としてミュージカル「葉っぱのフレディ」の子どもたちにお願いし、日本全国に元気と勇気と感動をふりまいてもらいました。

今年3月の震災を契機に海岸林に関心が高まり様々なシンポジウムが開催されました。林野庁も海岸林の検討会において検討を進めており、今後の復旧・復興に生かしていきたいと考えています。国際森林年の国内テーマである「森を歩く」の提案に対しC.W.ニコルさんに賛同いただき、3回目の国内委員会はニコルさんのアファンの森で開催しました。国内委員会においては「森のチカラで、日本を元気に。」というメッセージとともに、震災復興を含む行動提案が採択されました。

このほかに、全国各地で「市民と森林をつなぐ国際森林年の集い」として地方団体と提携した取組みを展開しました。

  • 7月17日 岡山真庭市:ニコルさん参加で開催
  • 7月23日 宮崎県宮崎市:坂本龍一さん、椎葉村の椎葉クニ子参加で開催
  • 7月23日 滋賀県長浜市:琵琶湖の水源地域を歩く体験ツアーを開催
  • 7月17日 大阪府大阪市:ヒートアイランド現象を防ぐ木材利用
  • 7月27日 京都府京都市:信仰と森のテーマで開催
  • 9月3日 北海道紋別市:ホースライディング
  • 9月24日 三重県伊勢市:伊勢神宮の森の視察
  • 10月8日 岩手県盛岡市:木造の仮設住宅、森での交流を通じた心のケア
  • 10月15~16日 長野県信濃町:森林セラピー
  • 10月15日 三重県尾鷲市:三浦朱門さん参加で開催
  • 10月30日 大阪万博公園:都市の森
  • 11月6日 石川県津幡町:養老孟司先生参加で生物多様性についてのシンポジウムを開始
  • 11月13日 福島県郡山市:鉄腕DASHとの連携イベントを開催

以上のイベントを全国各地で行いました。

この国際森林年の集いに関するアンケートの結果ですが、約3700名の方から37%の回答をいただき、参加して満足した方は94%、国際森林年の認知率は約60%でした。調査手法は異なりますが、昨年国際森林年開始前の認知率は40%でしたので徐々に意識が高まっているように思います。また、参加者のうち森林・林業関係者以外が大半を占めていました。市民と森林をつなぐ活動の参加者が約40%、希望者を含めると約70%が関心層、との結果でした。

国際森林年の記念会議も多数開催しました。名古屋においては生物多様性をテーマに記念シンポジウムを開催しました。観光庁とも連携し記念行事を開催しました。例えば例年のおみやげコンテストに国産材を活用した特別賞を設定していただきました。二科展では、ポスター部門で森林年をテーマにした公募展を実施して頂きました。

今後の森林づくりの取組みですが、母体となるのがフォレストサポーターズです。キーになるのが4つのアクションです。1.森にふれよう。2、木をつかおう。3、森をささえよう。4、森と暮らそう。以上ですが参加者自ら宣言し行動することが重要なポイントです。国際森林年を通じてフォレストサポーターズの会員数も増えて現在約36000人になっています。著名人の方にも多くサポーターズに入っていただきました。参加を通じて活動が広がっていけばと考えています。

フォレストサポーターズは生物多様性民間参画パートナーシップとの協働宣言をはじめとして様々な団体との連携やコラボレーションを進めており、相乗効果の高い運動を展開したいと思います。フォレストサポーターズには企業、NPO等の様々な団体が効果的な連携を実現するためのプラットフォームとしての役割を期待しています。

今後の具体的な取組みとして「国際生物多様性の10年+グリーン・ウェイブ」や、「被災地に、緑と心の復興を!どんぐりプロジェクト」などが立ち上がっています。

最後に、2011年国際森林年の行動メッセージは「森のチカラで、日本を元気に」。4つの行動提案は、「人づくり」、「森づくり」、「木づかい」、「震災復興」です。今年の国際森林年の取組みで人の輪も広がりました。この輪を大事に生物多様性の10年との連携も深め、末長い国民運動として定着していければこの上ない幸せです。

 

「動き始めた、森と木を活かした生物多様性保全~企業による取組み事例から~」
名古屋市立大学准教授 香坂玲

香坂氏からは国内外の生物多様性保全の取組み事例を、ご自身の旅の写真も交えご紹介いただきました。

民間、自治体(国内)の取組み

  • 気仙沼での漁業…被災による冷蔵庫不足を踏まえ旬のものを食べて被災地に貢献
  • 能登での民泊…農家での宿泊体験、廃校の体育館を利用した昔の農機具や林業の紹介
  • 和歌山のレストラン…廃校を利用した地元産の食材レストラン経営
  • 水俣市…水を中心とした環境対策の成果
  • 科学技術… 日本の都市と農村の問題には科学技術が生物多様性に貢献するという調査結果

企業の取組み

企業が森林を考える上では国際協力が非常に重要なポイントになる。80年代、日本は熱帯雨林を破壊し経済成長をしているという外圧があり、企業の認識が高まったが、現在でもCSR活動の捉え方には日本と海外では若干のズレがあり、日本は地域への貢献、海外は国際的熱帯雨林の破壊、貧困問題が重要視されている。

企業が森林に期待する役割は、土砂崩れを防ぐ、木材生産から、最近は温暖化防止、希少な野生生物の保護への関心の高まりが見られ、ニーズが直接的な森林整備や従業員・NPOの支援から地域づくりや社員研修、木材利用、クレジット購入、CSR等へ多様化が見られる。

取組み事例

  • VW(ドイツ)…環境学習
  • ドイツ環境省…携帯電話を回収しゴリラを守る運動
  • ドイツのビール会社…熱帯雨林保全への寄付活動
  • 日本の飲料業界…サントリー、アサヒビールの環境保全活動
  • コクヨ…木材を使う取組みと製品の付加価値を上げる取組み
  • 住宅メーカー…木材調達のガイドラインの策定、森林認証を受けた木材の調達の取組み
  • その他ゼネコン、鉄鋼業界などの事例

企業の取組みについては、環境にやさしい製品を売る。原材料に使う森林をNGOを支援することで保全することはもちろんだが、国際協力、例えば途上国の女性を支援することも生物多様性とか国際的な森林を守る活動と非常に近い関係にあるということが忘れてはいけないポイントである。

また身近に実践できるとことして認証材の購入が挙げられるが、購入に至らなくても認知してもらうことも国際森林年にも愛知目標にとっても重要なテーマの一つである。

最後に、環境というと直接的な規制をすべきという議論になりがちだが、大事なことは選択の自由を確保しながら進めていくのかということ。そのためには先ほどの認証材のような経済的な手法だけでなく、自発的な取組みも推進し、あわせていくことで生物多様化、国際的な森林の保全を進めていくことが重要である。

美しい森林づくり企業・NPO等交流フォーラム
パネルディスカッション(その1)

sympo20111216_discussion

テーマ:生物多様性民間参画パートナーシップの今後の活動のあり方について
コーディネーター:東京都市大学教授 涌井史郎
パネリスト:経団連自然保護協議会企画部会委員 西堤徹
CEPAジャパン・「生物多様性と子どもの森」キャンペーン実行委員会代表 川廷昌弘
名古屋市立大学准教授 香坂玲
環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性施策推進室長 牛場雅己
公益社団法人国土緑化推進機構 専務理事 梶谷辰哉

【涌井】昨年、多くの方々の御苦労により、生物多様性民間参画パートナーシップが決議され、さあこれからという矢先、3.11が起こりました。産業革命以前或いはその後も伝統的な地縁血縁社会を暫くの間維持することが出来ましたが、やがて利益結合型社会が専らの方向に変化をきたしてしまいました。そうでありながら、ゲマインシャフツと言う言葉を有するドイツ、また日本でも地縁こそが一番大切と考える伝統を地域に息づかせてきました。3.11では改めてこれぞ地縁血縁型社会の絆の姿を日本から世界に示したのです。

さて、これまでのビジネスモデルは産業革命の後追いをする形で水平展開し、地球のティッピングポイント、すなわち限界、環境容量という現実に一切無縁に、ビジネスの成功は量的拡大にあるとばかりにひたすら量を前提とした利益の追求に勤しんできたのです。まさに坂の上の雲型のビジネスモデルです。しかし、比喩的に言えば今は坂の下の泥沼です。

このような地球環境の限界を前に、最早われわれは豊かさを追い求めるのではなく、どのように豊かさを深めていくかというアプローチをしなければならないわけです。先ほどまでに様々な事例が公表されたことは非常に嬉しく、なおかつ共感できるヒントをたくさんいただいたと思います。そこでこのパネルディスカッションでは結節点となる3つの議題について議論したいと思います。

一つは生物多様性の新しいビジネスモデルを確立するためには、どのような主体がどうやってシステムを組んで行ったらいいのか。もうひとつは、そうしたシステム、つまりレジリエンスな社会構築する方向を顕在化し、実現する為には、どの様な観点から、同の様な規制をしていったらいいのか。政府、国際的な規制なのか、あるいは自主的な規制なのか、あるいは双方入り組んだものが望ましいのか。最後に、日本を支えていらっしゃる中小企業、漁民のみなさん、零細な農業者のみなさんがどうやったらこの問題に関心を持って自主的・内発的な参画をしていただけるのかにも議論を及ぼしていきたいと思います。
先ずは森林の問題について国土緑化推進機構の梶谷様からご発言をいただきたいと思います。

【梶谷】私どもの取組みをご説明します。先ずはフォレストサポーターズです。これは国民参加の森づくりを具体化するもので(森にふれる、木をつかう、森を支える、森で暮らす)の4つのアクションを宣言した方が登録する仕組みで、一人ひとりの活動をつないで、森づくりを支える大きなチカラにし、森づくりの循環を取り戻す取組みです。現在36000件(うち1000の企業・団体)の登録があります。

今年は国際森林年と国連生物多様性の10年のキックオフを記念して生物多様性民間参画パートナーシップとの協働宣言を締結いたしました。森林における生物多様性の保全は陸生動植物の8割が森林性ですので森林の持続的な保全・利用は生物多様性の保全につながっていきます。 パートナーシップと協働で行った事例ですが、国際森林年記念シンポジウム(森と木を生かす「グリーンエコノミー」創出に向けて)を開催しました。また370団体のフォレストサポーターズから国際森林年活動宣言をしていただきました。

国際森林年メッセージとして「森のチカラで日本を元気に」を出しました。今後このメッセージに基づいた取組みを進めていきたいと思います。 震災復興の関係では木づかいによる復興支援をはじめ上田正樹さんが震災直後の宮城を訪れてその時の気持ちを歌にしてCDをリリースされました。東日本大震災復興事業応援ソングの位置付けです。このような活動を募金活動などの復興につなげていきたいと思います。エコプロダクツ2011も昨日今日と開催して、日本プロ野球機構とも連携いたしました。

今後の取組みとしてはフォレストサポーターズの運動において生物多様性10年の取組みを連携を強めて進めていきたいと思っています。具体的には、1、グリーンウェイブへの参加、2、生物多様性保全のための森づくり、3、東北海岸林の再生を中心としたどんぐりプロジェクト、4、緑の募金を通じた多様な森づくりの4つが大きな柱になります。

【涌井】ありがとうございました。今お話しのように、日本は68%が森林で量的にはおそらく日本国開闢以来の森林蓄積量であろうと思われまますが、質的には必ずしも健康な森ではないという事実があります。その事実を前にして、われわれはもうそろそろ農林水産空間イコール農林水産業空間、つまり生産物の多寡を経済的成果であると考えてきた呪縛からそろそろ解き放たれないといけないと思います。農林水産空間を単なる産業政策で議論していいのか、社会政策なり環境政策で考えていく。

例えば、海は魚が獲れる価値しかないのか、山は材木が取れる価値しかないのか、農地は食糧が採れる価値しかないのかを問いなおし、実際にはもっと多面的な価値がある空間であり、そこに居住し暮らす方々が居られてこそ我々の日常の生活が支えられているという環境価値の側面を見失ってはならないという事実と判断をどのように強く認識し、場合に依ればその負担をも引き受けていかねばならないという課題があると思います。地球の未来を考えるならば、健全な経済活動の持続性の確保の為には、社会資本財のみならず自然を資本財として位置付ける方向になることは間違いがないものと思います。このような方向を、政策や施策のみならず市民にも共感を得て頂く故tも極めて重要でしょう。

そこで川廷さんに以上の様な動向についての国際的な取組みの状況についても触れて頂きつつ、お話いただきたいと思います。

【川廷】 CEPAというのは締約国の義務である生物多様性条約第13条の「広報・教育・普及啓発」を指していて、その義務に基づいて活動しようということで始まっています。

CEPAの考える「生物多様性の10年」はどういう10年かをご説明します。最初の5年は今年の国際森林年です。10年かけて奏でるいのちの物語は森から始まっています。来年は地球サミット2012 リオ+20が開催され、ここでは新たな議論をするのではなく、これまでの約束の整理をする場と考えています。2013年には気候変動枠組み条約であるポスト京都が開始。2014年には持続可能な開発のための教育10年が最終年になり日本で国際会議が開かれます。2015年は15年間活動してきた貧困撲滅のためのミレニアム開発目標が最終年を迎えます。これが国連生物多様性の10年の前半の5年間で、毎年大きな課題が突きつけられています。また、われわれは震災からの復興もやっていかなければいけません。

これらはバラバラのように見えるのですが、実は目指す姿は一つ。自然の恵みに支えられた持続可能な地域づくり、各地域は個性豊かな自然の恵みによって営まれているということをもう一度考え直すということが共通の課題です。この思考の整理があってバックキャストを考えていければのではないかと思います。

それから愛知目標の1番「普及啓発」ですが遅くとも2020年までに生物多様性の価値、それを保全し持続可能に利用するための行動を人々が認識する。これを環境省では生物多様性の主流化と呼んでいますが、そのためのCEPAは政府、自治体、企業、NGO、そして生物多様性に配慮した商品を毎日購入する生活者としての市民など幅広い層の行動を必要としています。

ここで生物多様性民間パートナーシップの皆さんと共有していただきたいご提案をさせていただきます。

一つめはグリーンウェイブです。世界中で木を植えることで生物再生を理解する、教育するということですが、日本でいえば木のある暮らしの再認識になります。実例としてはどんぐりプロジェクトです。被災地を応援する全国の子どもたちが、被災地のどんぐりを拾って苗木に育て、被災地に送って植えることで被災地の緑の復興を応援する活動です。これには被災地と全国の子どもたちをつなぐ、木を育て心を育てる、被災地の森の遺伝子攪乱を防ぐ意味もあります。実はこの運動で最も大事な事は皆さんの応援、企業スポンサーが必要です。助成金だけでできるものではなく多くの企業の皆さんのご協力があってできることなので是非このプロジェクトをひとつのシステムとして考えていただければありがたいと思います。3年間で10万人の参加者を目指そう、それでないと東北の森を守れないと考えていますので是非ご協力いただければと思っています。

もう一つは、国連の生物多様性条約事務局による戦略として行動の変革、ライフスタイルの変換を訴えてかけています。ポイントになっているのは生物多様性に対する認識の変化を世界中でモニタリングする活動をしたいということです。つまり自然を調べるのだけでなく私たちがどう認識しているのかもちゃんと調べようということを呼びかけています。これをパートナーシップでできないでしょうか。

CEPAツールキットという国家戦略策定者のためのコミュニケーションに関するテキストがありますが、このテキストを使って日本のプラットフォーム用にツールキットの副読本を作れないかと思っています。つまり愛知目標の1番「普及啓発」のプラットフォームづくりの一環で生物多様性民間参画パートナーシップの中で「CEPAワーキンググループ」を作っていただけないかということです。その中でこのCEPAツールキットを読み解いて今後いろんな組織と連携する中でモリタリングできればいいのではないかと思っています。

【涌井】 まるで教会伝道師のような川廷さんの姿を拝見したのは今日が初めてです(笑)現実的にどう横につながっていくのか。なにかやろうとしても企業やそれぞれの公共団体の壁をなかなか超えられない。それをどうやってNGOやNPOが超えていくのかということですね。いい教会が建てられるようぜひ皆さんのご支援いただきたいと思います。ところでご支援元の西堤さん、私が先ほど話した3つの議題についていかがでしょうか。

【西堤】 1つめのティッピングポイントでバックキャスティング型の新しいビジネスモデルについてですが、これは日本の産業界にとっては一番苦手なことで今までは、「改善、改善、地道な改善」で経団連の自然保護協議会にとっては20年来やってきた支援プロジェクトがその典型だと思います。しかし生物多様性に関してはそれぞれの愛知ターゲットの20項目について具体的にやることをブレイクダウンして会員さんに対してわかりやすく、バックキャスティングのような難しい言葉ではではなく、地道に自然に答えができるような方法を考えています。

2つ目の自主自発的な取組みか規制かという問いに関しては、日本の場合、気候変動などに対して自主自発的な取組みでやってきたから割合に成果も出ているのではないかという感じがします。一般に規制型の産業は厳しい状況に置かれていることを見ても日本に向いているのは自主自発的な取組みかなと思いますが、うまい規制の方法も必要でしょう。政策のサポートはインセンティブ型が産業界としては望ましいと思います。

3つめの幅広い層への浸透ですが、お魚を増やす運動のお話もありましたが経団連会館でこのようなお話が聞けるとは隔世の感があります。やはりその中でも地道で着実な取組みが日本人に一番向いていると思います。それは特に大きい小さいは関係がなく日本人らしいやり方にうまく連携がとれるかということではないでしょうか。経団連だけでやるのではなく商工会議所さんとか海外の仲間、特に途上国の方に環境全般を含めもっと日本にご理解をいただけるように官民、NGOの皆さん力をあわせてやることがこれから本当の意味で日本が変な孤立をしないためにも重要ではないかと思います。

sympo20111216_discussion【涌井】 おっしゃる通り日本が兄貴分として一番頼りにされなければならない国々は発展途上国の皆さんだと思います。先ほどの話しを聞いて思い出したのですが「浜大漁、丘万作」という言葉があるのですね。大漁になると余った魚を肥料にして丘に入れると収穫が増えるという言葉ですが、漁師さんたちは大漁になると前祝いとして長半纏を着るのですがそこには上にカブラ、下にカツオが飛んでいる。その半纏を誇らしく着ているのです。実に日本的です。すなわち先ほど山は海の恋人で川は仲人だという感じですね。生物多様性の議論はグローバルな議論であって極めてローカルな議論であり、かつ重層する複雑な構造になっています。その構造に対して日本がモデルを提示できるチャンスではないでしょうか。そこのビジネスモデルが発見できたらいいですね。

【西堤】 そうですね。途上国の人たちにも役に立つ。新しい成長の形が浮かんでくるのではないでしょうか。

【涌井】香坂さんはローカルな議論とグローバルな議論の両方が見えるお立場ですが、どうお考えになりますか。

【香坂】 50年、70年先を見据えてバックキャスティングの問題を考えるときに必要なのは人材だと思います。涌井先生も大学で教えられているので大学の危機的状況を日々実感されていると思いますが、学生がとにかく海外に出たがらない、生物多様性以前に海外のことに関心をもってもらえない、地べたの活動をあまりしたがらないとか難しさがあります。本日御集りの企業の中にも学生を関係するNPOに送られたりされていますが、このような活動をバックキャスティング式にあるとき強制的にやってもらうとか、ある時点で体験してもらうことはすごく大切なことではないかと思います。

【涌井】 エチオピアの原種のコーヒー豆は小豆ほどの大きさしかない様です。それは生態的種間競争の中で、この大きさがここにいていいよという大きさだと思っているから豆は自己抑制的に小さくなっています。ところが栽培されると豆の大きさが倍くらいの大きさになる。硬直性つまり一定の競争関係だけにつかっていると力を発揮せず伸びない。ところが、環境を変えると大きさが突然変わる。このように生物は環境撹乱をうけると突然変わる、場合に依れば突然変異を誘発させることも起こり得る訳です。そうした環境変化に適応し得るダイナミックな取り組みを我々も意識する必要がありそうです。

【香坂】 若い人たちをどう誘発させていくかですね。今日のこの場にも10年後には若い集団がたくさんいるようになればいいと思いますね。

【涌井】 さて牛場さん。明日から金沢で生物多様性の10年に向けたキックオフイベントがありますね。

【牛場】 新しいビジネスモデルを考えていくときにグローバルとローカルの問題があります。最近、地産地消とよく言われていますが、その中で循環させていく思想であれば環境問題は表れなかったのかもしれません。現実的には日本では地産地消といっても世界との関わりをもって経済社会が動いていく。そこでどうやってベストミックスを実現するか。生物多様性の主流化をどう組み込んでいくかがチャレンジングなテーマであると思っています。

もうひとつ規制の話ですが、必ずしも規制をかけていくということではなくて自主的な取組みで規制をかけなくても済むように進んでいく方向性を目指すべきだと思います。ただ愛知目標にもあるように保護地域を設定することも必要だと思いますが、こちらも組み合わせが大事ですね。 中小企業、漁民、農業の方とかローカルかつ小さいところで、どううまく回していくかということですが、地域レベルでのパートナーシップが増えていくことが取組みを進める上では大事だと思います。

例えばゴルフ場の緑化を進めていただいている団体がありまして、先ごろゴルフ場の生物多様性保全宣言を出されました。そこのお話で、昔多摩ニュータウンの開発地域の中に府中カントリークラブがありました。開発に際し売らないということになったのですが、周りは開発されてしまった。今ではゴルフ場は多摩ニュータウンの中で貴重な里山的なものになっていて生物多様性も豊かで管理もされています。都市の周辺でのゴルフ場の役割は今改めてみてみると非常に重要なものがあるということです。このようなことも幅広く組み合わせていくと新しいパートナーシップというものができるのではないでしょうか。このような盛り上がりを期待しています。

【涌井】 やはり自主的にどうするのかという議論がすごく大事ですね。地域でどう取り組んでいくかです。各自治体がもの作りと生物多様性をどう共存させる戦略を描くのかとか、一次産業との共存をどう図るのか。例えば農林水産業は生物多様性の最も大きな敵でありながら、最も味方であるという際どい関係であります。その様な微妙な関係を意識し、地域をどのように育ててこうとするのかといった自治体の考え方は重要な気がします。つまり国際的な規制、国内の制度的な規制だけでは、先ほども申し上げたように下手をするとかなりモノカルチャーな方向に硬直化をしがちです。地域を指標する特性が失われた平均値でしか答えが出てこない可能性も非常にあります。生物多様性は非常に多様であって、しかもモザイクのようなものですから一つの尺度で括るというのはなかなか成り立ちません。 一方地域にこだわって地域の適正容量が明らかになってくると、中小零細企業、漁民、農家の方々が地域の自然特性を確認でき、持続的な生産活動が担保できるようなシステム、自分の問題としてそれを確認し、より良い「回し方(自律的循環)」ができるようになります。

さて、確か森林計画についての閣議決定がされました。これまで全国一律3つの考え方でやっていたのを地域に主体を渡し、地域でどう森林を構築していくのかという方向転換がなされたと聞いています。

それについてお話しを頂きたいのですが。

【梶谷】 3つの考え方でやっていましたが、今回の法律改正でいろんな形がつくれるようになったものと理解しています。

【涌井】 これまで日本の国土は、中央に集中する種が果実を支える構造、例えればスイカのような構造で効率性を優先した国土構造を前提に考えられて型と言って良いでしょう。しかし今後は、自立した地域の集合体、ブドウ型に変わっていくことが望ましいように思えます。つまり、それぞれの適正容量に見合ったクラスターを地域と考え、それをエコロジカルなネットワーク・やエネルギーのネットワークとかアクセスのネットワーク、情報のネットワークをスマートに効率よく繋いでいく方向に構造転換を図る未来が予見できそうな気がします。

【香坂】 私も同感で、おっしゃるようにブドウ型に変わっていくと思うのですが、心配は市町村の合併が進んで、かつて村が市に変わってしまい、村が無くなっても気づかないという恐ろしい事態が静かに進行しています。合併によっていろんな効率化が図られているのですが、村に続いていた行事の足腰が弱まって維持が困難になってきます。そこをサポートしていく仕組みが必要ではないかと思います。 もうひとつは金融業界です。かつては地元でいろんな役目を担っていた金融の支店が引き上げてしまうと地元の人が困ります。人口が減ってくる中で、そこを誰がうめていくのか、仕組みを作っていくのか、今後の地方の問題を考えていく上で課題だと思います。

【涌井】 日本が、法と税の仕組みを持つ国になったのは701年の大宝律令の制定を一つの原点と考えて良いでしょう。併せて地方つまり令国62と2つの島なのですが、その地域区分も定まりました。しかしわが国では諸外国の様に政治とか宗教で地域区分をしていません。流域や地形、それに伴う自然特性で地域を定めました。この様な地域区分は世界でも日本くらいではないかと思います。それをさらに中位のスケールで分けていくと後世の「藩」とほぼイコールになります。したがって日本はもともとエコロジカルなクラスターを行政区分とする、うまい仕組みをつくってきたのではないでしょうか。

やや飛躍的な発言ではありますが、現在進められている道州制の議論に並行して「廃県置藩」の方向も検討すべきであると考えるほどです。そうでもしないと行政サービスは行きとどかないし、地域の特性も失ってしまいます。

さて、地域でお祭りの寄付をする筆頭は信用金庫さんです。それは地域を支えないと金融機関が成り立たないという密接な相互関係がそこにある故であると思います。滋賀銀行さんの例はローカルバンキングが金融だけではなく社会のシステムを維持しているという実に見事な姿をビジネスモデルとして示されていると思います。

そうした健全な金融システムの導入は別として、最近、安易或いは金融商品の流行により、土地と無縁な投資家が出現し、土地所有の流動化や区分所有が当たり前となって、土地とコミュニティが必ずしも一体的ではない、土地や自然と社会システムが表裏一体となった関係が崩れつつある事です。
民有林でも同様な現象が多く出現しています。不在地主が非常に多く、地元の森林組合が洪水や山腹崩壊が起きないよう手当てしようとしても、現実には自分がそこに山を持っていることを忘れている森林所有者も多いと言う大きな問題があります。よって在地ということを大切に考えていくことも必要です。

また子どもの教育、自分達地元にまつわる環境教育も重要です。アメリカでは30年くらい前にFOXFIRE運動というのが起きました。地元の風俗、伝統などを学校の副読本にしてそこから地元の環境について教育するという運動です。日本でも子どものときからどうやってそのようなものを取り戻させるかが非常に大事だと思うんですが。

【川廷】 東日本大震災を受けて環境省が三陸でトレイルを計画しています。ハードでトレイルを用意するのですが、実際にはそこに人が行って地元にお金を落とすというエコツーリズムをやっていかなければならない。そこには大事なソフト、コンテンツが必要になってくる。それは東北の一つ一つの村や地域に伝承文化や暮らしがあって、その暮らしを彩った生物多様性があり、生きていくための暮らしの知恵もある。これらを教材として、コンテンツとして残していく必要があります。これから三陸のトレイル構想の中でそういった教育コンテンツをしっかり入れていくことで日本の自然共生の暮らしというものが学べるたくさんの実例をカタチにしていく必要があるのではないか。またそこに修学旅行などで直接行って学ぶ必要もあります。

東北のある町の例ですが、契約会といって「結(ゆい)」の組織が残っていました。400年前にそこに人が初めて住んでからずっと結の組織がまるまる残っていて高台にその共有地がのこっていました。まさにこれが学びなのですね。全国それぞれの地域でも同様な事例はあると思います。また既にある教材も拾い上げ、掘り起こしていって共有することも大事ではないでしょうか?またこのような運動をやっていくことも企業さんの力になるのではないでしょうか。

【西堤】 渋澤先生が「森の聞き書き甲子園」を10年間続けていらっしゃいます。そういうような自主的な教育、対象の若い高校生が記録を残す。その記録を残すことで高校生も成長しますし、彼らも農林水産業に関心を持ってくれるような、新しく自主的な動きが見られてきました。そのような動きを助けるようなインセンティブ型の政策をされると良くなってくるのではないでしょうか。

【涌井】 ベンツの本社があるドイツのシュッツトガルトの例ですが、ベンツの本社があるから町の質をあげなければならないといういわゆるブランドマーケティングをやっています。日本はもの作りの国ですが、現実には誰にどのようなものをどこでどうやって作るのかとことにかなり集積があると同時に、日本の国のありようが製品のありように重なって、ある種のブランドを構築していると思います。世界から尊敬されるような自然と共生ができていて、しかも地域地域を大事にしています。

ブランド米が39もあるモザイクのように美しく、かつてアーネストサトウとかケンペルが日本をほめちぎったような国土にしていきながら、その日本人が発想や製品や商品は信頼が足るんだと、こんな方向を作っていくことはまんざら夢ではないし虚言ではないような気がします。

【西堤】 そうですね。例えばシャープさんは亀山ブランドとか地域の名前を冠したブランドで世界に発信していこうとかされていますし、トヨタもドイツに比べ遅ればせながら工場の森づくりに取組んでいます。これから改めて地域に密着した取組みも一層重要になってくると思っています。

【涌井】 トヨタさんは侍のような会社ですから動き始めると何十人も切り捨ててしまう迫力のある会社だと思っています(笑い)。 最後になりましたが、先ほどの3つの問いかけ、一つ目は、すなわち多様なステークホルダーが参加できるプラットフォームをどう形成していくのかという課題。今日はある意味で多様なステークホルダーの方々がともに行動しようという決意表明に近い催しであるように思います。その意味で、本日お集りの皆様に心から敬意を表したいと思います。

2つめの自然資本を取り込み、ティッピングポイントを意識したモザイク型の方向、つまり自然共生型社会を獲得する為に、市場が自律的に、環境倫理から規制を定めていくのか、国際的なあるいは国が法律や制度で規制を決めていくのかについては、もう少し検討する余地がありそうです。各々のモデルを構想し、公的規制を決めなくても、その成果が定量的にも評価できるというような世界に示せるようなモデル的な取り組みや試みを重ねる必要がありそうな気がします。

最後の課題は非常に重たい課題ですが、自治体が生き残っていくために自分たちの県民・市民に対し、安心・安全な環境条件を保全・再生し暮らしやすい環境を得る。なおかつ未来に向けて自分達の生活圏である地域の特色を保持或いは発掘すること。何といっても超長期のために、我々の生活の基盤である生態系サービスを恒常的に得る為にも、生物多様性の取組みは非常に重要であると言う認識を、具体的でわかりやすく伝える幹事役を自治体の積極的に担って頂き、それに向け多様なステークホルダーを束ねる役割をも果たしつつ、こうした取組みが進展する為の縁の下の力持ちをやっていただくことが非常に大切であると改めて今日の議論を通じ痛感しました。そこで環境省のお立場から一言お願いたします。

【牛場】 環境省といたしましては、本日いただいたアイデアのすべてをもっともっと膨らませて国連生物多様性の10年国内委員会の活動としても取り組んでいきたいですし、後押しもしていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。

【涌井】 決意表明ありがとうございました。(笑)

閉会挨拶 経団連自然保護協議会会長 大久保尚武

本日は半日間でしたが非常に充実した中身の濃いお話が聞けて心から喜んでいます。ちょうど1年前にCOP10の中でこのパートナーシップがスタートし、今日第一回会合が開けたわけで感無量の想いがあります。

振り返ってみますと2年前くらいに名古屋でCOP10の開催にあたり民間参画の視点から経団連がある程度イニシアチブをとりながらやっていかなければならないというお話があったときに本当にどうしようかと思いました

当時は経団連の中でもCO2問題は割合わかりやすいのです。企業活動の中でCO2を減らしていくことは企業活動そのものと結び付けやすい、ところが生物多様性という今まで聞いたことの無い言葉を企業活動とどう結びつけていくのかということには正直言ってみんな非常に悩んだと思います。

そんな中で今日ご出席いただいたいろいろな方々にお知恵を拝借しながら今日まで進めてきました。

今日の議論の中で出た非常に重要なキーワード、ひとつは「地域」です。今日発表のあった企業さんの取組みの中でも地域に密着することの重要性を非常に感じた方も多いと思います。

その中で私の経験を申し上げます。今年の5月にスイスのIUCNの本部にお礼にいきましたが、その時に事務局長のルフェーブルさんに「今度の地震を見て日本のコミュニティ、地域の力をものすごく感じて感動しました」というお話をいただきました。なるほど海外の人はそんな風に日本を見てくれていると思ったのが一つ。

もうひとつは東南アジアを中心に支援しているプロジェクトの現場サイトに行っていますが、その中で特に日本に期待されているのが「里山里海プロジェクト」です。生活の場は単なる生活の場だけでなくて、自然環境もあり、生活の場もあり、山もあり、海もあり、そこを総合的にとらえて、どう豊かにしていくかのプロジェクトについて是非日本でひとつのモデルを作ってください。われわれが東南アジアの各山村漁村に行くと、まさにそこで生活しており、その中で自然を守ることは生活の一部である。生活を維持し生業と一体となった自然保護活動のモデルを是非日本に作ってもらいたい。ということを盛んに言われました。

これは文字通りゲマインシャフトをどう生かしていくのかという問題になると思いますがその意味で、地域、本業を支えながら生物多様性問題に取り組んでいく。まだ企業として生物多様性に関わっていくことで悩んでいる会社はたくさんありますが、この2つのキーワードは非常に参考になりました。

今日は本当にありがとうございました。

美しい森林づくり企業・NPO等交流フォーラム
生物多様性民間参画パートナーシップ 第1回会員会合

開会挨拶 経団連自然保護協議会会長 大久保 尚武

sympo20111216_0012010年5月、経団連、日本商工会議所及び経済同友会では、日本政府や NGOの協力を得て、生物多様性条約の実施に関する民間の参画を推進するために、生物多様性民間参画イニシアチブを設立し、10月のCOP10において生物多様性民間参画パートナーシップが正式に発足しましたことは皆さんご承知のとおりです。

今年3月に起きました東日本大震災は、自然の脅威を見せつけられるとともに、人と自然の共生のあり方についても改めて考えさせられる事象であったというふうに思います。現地では生態系にも大きな影響が生じました。1日も早い復興を願うとともに自然保護協議会として自然保護の観点からご支援をしたいと思っています。

本日はパートナーシップが発足してから初めての第1回の会員会合です。スタート時は429団体でしたが、現在は45団体増えて484団体になっています。目標の1,000団体目指し是非達成したいと思いますのでよろしくお願いします。

本会合により企業の生物多様性に関する参画がさらに深まり、生物多様性の主流化をはじめ目標の達成に貢献できることを願うとともに、日本にとって重要な森林の問題も視野に入れ活発な議論をしていただくことを期待しております。

 開会挨拶 日本商工会議所産業政策第二部部長 関口 史彦

002
2010年開催されたCOP10において名古屋商工会議所では、地元で組織された支援実行委員会の主要メンバーとして開催支援に取組みました。現在では愛知目標と名古屋議定書を受けて地元企業に対して生物多様性への理解促進に努めるとともに、企業の事業活動と生物多様性への影響を把握し、事業活動の改善を図るためのチェックシートの作成、あるいは具体的な取組みの事例紹介を入れた生物多様性ガイドブックの作成に取り組んでいます。日本商工会議所としても全国各地の商工会議所が様々な取り組みを行っていくよう推進していきたいと思います。

それ以外にも資源循環型経営の推進に寄与するべくリサイクル事業をはじめとして環境、エネルギーに関する技術や取組みをベースに、単なる利益の追求だけではない生物多様性の保全や環境への取組みの推進に努めていく所存です。
しかしながら、こうした取組みは企業だけでは限界があり、地域のあらゆる関係者を取り込んで初めて解決する問題であると思います。マルチステークホルダーの枠組みである本パートナーシップの役割が重要であり、日本商工会議所といたしましても、皆様とともに、生物多様性の保全及び生物資源の持続可能な利用に対する民間参画をより一層進めてまいりたいと思います。

来賓挨拶 環境省自然環境局長 渡邉 綱男

COP10におきまして生物多様性に関する新しい世界目標として愛知目標が合意され、その長期ビジョンには日本の提案も受けて、「人と自然の共生する世界」の実現が掲げられました。その個別目標の中でビジネス界を含めたあらゆる関係者が持続可能な生産と消費のための計画を実施すること等、経済社会における生物多様性の主流化といったことが重要な目標として位置付けられたところです。

昨日、今日と開催されました第一回生物多様性民間参画グローバルプラットホーム会合におきましても、各国各地域の民間参画イニシアチブによる積極的な活動が報告されました。経済界を含めた様々なセクターの間での生物多様性保全の枠組みの構築とそれに伴う活動が世界各地で活発化しています。我が国においてもCOP10を契機に発足いたしました生物多様性の民間参画パートナーシップ参加事業者数が470を超え、美しい森林づくり活動を展開されているフォレストサポーターズとのパートナーシップとの連携も大変心強く感じているところです。

東日本大震災では、自然が豊かな恵みをもたらすだけでなく、時に大変厳しい災害をもたらすということを私たちは改めて認識をいたしました。自然と対立するのではなく自然に順応する形で、森林や湿地といった生態系の働きを、より積極的に活かした国土づくりを進めることによって自然と共生する持続可能な社会を作り出していく必要があると思います。

生物多様性民間参画パートナーシップに関する報告

(1)生物多様性民間参画パートナーシップの活動報告
経団連自然保護協議会企画部会長兼政策部会長 石原 博

経団連自然保護協議会の石原氏から生物多様性民間参画パートナーシップの活動について報告がありました。特にアンケート結果の解説で「参加団体は着実に増えているが大企業が多く、中堅中小企業の参加が望まれる。」「経営方針、経営理念、環境方針等に自然保護とか生物多様性保全、自然環境教育についてはかなり浸透しているが、持続可能な利用、生物資源の利用の関係については、それより遅れている。」などの報告をいただきました。 詳しい内容は以下の資料をご覧ください。

(2)にじゅうまるプロジェク卜
IUCN日本委員会 道家 哲平

IUCN日本委員会とは国際自然保護連合(IUCN)に加盟する団体が集り、協力を進めていくための組織です。COP10の後、日本委員会では国連の目標でもある愛知目標(正式名称:生物多様性条約戦略計画2011-2020)を実現していこうということになりました。愛知目標は20の目標があります。その非常に多岐にわたる目標を10年間にどのように実現していくのかということで始めたのが「にじゅうまるプロジェクト」です。

にじゅうまるプロジェクトとは20ある目標を行動に移していくために可視化、見える化していく。企業も自治体もNGOなど多様な主体を巻き込んで皆が参加するプロジェクトにする。愛知目標を知り、どんなことが自分たちにできるのかを考え関連する個別目標とともに活動を宣言し、登録するという枠組みです。

それに加え世界につながっているIUCN日本委員会の強みを生かし、にじゅうまるプロジェクト的な活動を本部やIUCN加盟団体に働きかけていきたいと思います。

にじゅうまるプロジェクトの名前には「2020年に達成の○」「20の個別目標すべてに達成の○」「世界を見据えて、しかし現場で汗をかく人々こそ、○じゃあ足らない◎(にじゅうまる)」という思いを込めました。

10年後私たちは、子供たちに「君が生まれたこの世界は約束を守る。さぁ、力をつなげて生物多様性のための約束を守ろう。」言えるようにしたいと思います。

IUCN日本委員会は、これからも皆さんと一緒に活動を盛り上げて、2020年に「にじゅうまる」という評価を日本も世界も受けられるように頑張っていきたいと思います。

 (3)生物多様性民間参画グローバルプラットフォーム会合の報告
IUCN日本プロジェクトオフィスシニア・プロジェクト・オフィサー 古田 尚也

sympo20111216_007
昨日と本日午前中に行われた生物多様性民間参画グローバルプラットフォームの目的の1つめは、グローバプラットフォームの一部である国別ビジネスと生物多様性イニシアチブを紹介し、現状の課題やグローバルプラットフォーム構築に向けての課題について議論を行うことでした。

2つ目の目的はCOP10での関連決議の実施状況や事業者が日々の事業活動の中に生物多様性を主流化する上での課題、COP11における関連決議に関する初歩的な提言などに関する議論を行うことでした。

1日目のセッション1と2では国別プラットフォームの紹介と議論が行われ、各国の具体的な取組みが紹介されましたが、その中でもドイツと日本では取組みが進んでいるという印象でした。

続くセッション3では企業の取組みが紹介され日本からは三井物産さん、大成建設さん、ブリジストンさんの事例が紹介され議論されました。 セッション4では生物多様性をビジネスに統合するためのテーマ別イニシアチブ、ツール、メカニズムの議論です。UNEP‐WCMCと生物多様性条約事務局では、生物多様性に関連する認証スキーム等の比較や改善検討を行うと同時に生物多様性事務局はそのツールやメカニズムに関するオンラインデータベースを構築しWebサイトを通して検索できる仕組みを現在整えているという報告がありました。セッション5ではCOP10以降のアクションとCOP11に向けての提言でした。具体的には日本政府の取組みや日本の民間参画パートナーシップが紹介され、その後、条約事務局が用意したCOP11に向けての決議案のたたき台に関して活発な議論が行われました。

例えば生物多様性に関するマーケットの創出、認証の仕組みを国をまたいで相互承認していく等です。非常に議論が活発だったこともあって条約事務局では今後この意見を公開し、より幅広く集約して2012年のWGRIという会議で正式に提出するというとのことでした。

sympo20111216_008

2日目の午前中セッション6では国を超えた地域の取組み、例えばEU、ASEANの事例紹介、また海を対象とした世界海洋協議会の海という非常に大きな生態系全体を対象とした取組みの紹介がありました。

最後のセッション7はCOP11に向けてCOP11 におけるビジネス関連イベントに関する情報共有とアイデア交換が行われました。

以上のセッション以外にもABS名古屋議定書に関するインフォメーションセッション、パネル展示など非常に盛りだくさんの内容でした。 このようなグローバルプラットフォーム会合が名古屋のCOP10の1年後に、東京で第1回の会合を開催することができたということは、大変画期的なことだと思います。

 (4)環境省からの情報提供
環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性施策推進室長 牛場 雅己

生物多様性施策推進室は2011年10月1日に発足した部署です。生物多様性の主流化を目指しております。
我が国では2008年、環境基本法の基本理念に則って、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、生物多様性から得られる恵みを将来にわたって享受できる、自然と共生する社会の実現を図り地球環境保全に貢献することを目的とした生物多様性基本法が成立しました。本法では生物多様性の保全等の基本原則を定め、国、地方公共団体、事業者、国民または民間団体の責務を明らかにするとともに、生物多様性国家戦略の策定あるいは地域版の生物多様性戦略の策定等について規定されています。

ビジネスに関係深い規定もあり、事業者の責務として、事業活動による影響を把握し、生物多様性に配慮した事業活動の実施等により、影響の低減及び持続可能な利用を図るために必要な措置を講じていくことが規定されています。
生物多様性国家戦略については、1995年に最初の生物多様性国家戦略を策定しております。その後2002年、2007年の改訂を経て、生物多様性基本法が2008年に施行されたことも受けて、基本法に基づく初めての戦略、生物多様性国家戦略2010が閣議決定されています。

現在 COP10 の成果を踏まえ COP11を目指して愛知目標の達成に向けたロードマップとして、また本年3月の東日本大震災からの復興に向けた生物多様性施策のあり方に対する対応も含めまして国家戦略の見直しに着手しているところです。
また、環境省では2009年生物多様性民間参画ガイドラインを作成公表しています。

これは事業者の皆さんに、生物多様性の保全と持続可能な利用に取り組む際の指針や参考となる情報を提供し、企業の環境管理システムを支援する目的で作成したもので、生物多様性と事業活動との関係に関する基礎的な情報の共有だけでなく事業者の取組みにあたって認識すべき理念、進め方等を、指針として示しています。ブラジル政府から外交ルートを通じて、日本のガイドラインを翻訳してブラジルの国内にも紹介したいといった話もいただいています。

次に本日、お集まりの皆さんに関係の深い事例を紹介させていただきます。COP10を契機とした取組みの一つとして、生物多様性条約事務局からの呼び掛けに応じまして、わが国でも2009年より5月22日の国際生物多様性の日を中心に、青少年をはじめとした様々なセクターによる、植樹活動などを行うグリーンウェイブを実施しています。植樹・育樹活動のほか、苗木の提供等、社会貢献活動の一環としても企業・団体の皆さんからご協力・ご支援をいただいています。2011年には42の都道府県、383団体、約2万8000人の方々が約80,000本の植樹等にご参加いただきました。

さて、2010年10月の COP10では、1万3000人以上の方が愛知県名古屋市に集結しました。成果としては、2010年度以降の次期目標、愛知目標の採択、あるいは遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する名古屋議定書の採択、国連生物多様性の10年の提案、IPBESと略しますけれども気候変動分野のIPCCのように、 生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームの設立提案、SATOYAMAイニシアティブのの採択、民間参画に関しては、昨日と本日行われましたグローバルプラットフォームの会合等に関する47に及ぶ決議がなされました。

愛知目標では自然と共生する社会の実現が2050年までの長期目標として、また主に2020年までの短期目標として20の個別目標が示されています。特に民間参画に関しては、個別目標4に、政府、経済界あらゆるレベルの関係者が、持続可能な生産・消費のための計画を達成するために行動し、自然資源の利用を生態学的限界の十分に安全な範囲に抑えるとあり、決議文書として、事業活動による生物多様性への影響を評価し、その影響を回避・最小化するため取組み、そのための技術知識の共有、活動報告の公表などが経済界に広く奨励されているところです。

もう一つ、COP10の大きな成果として、ABS 名古屋議定書があります。生物多様性条約の三つの目的のうちの一つ、遺伝資源の取得の機会の提供と、その利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に関する議定書です。我が国はすでに、2010年5月名古屋議定書への署名を終えています。本議定書を提案した議長国として早期に議定書の締結を目指して、関係省庁とともに国内措置の検討を進めています。

ABS議定書は、医薬品業界の方々に限らず食品業界ですとか、種苗業界を初め、また今後遺伝資源を利用するあらゆる産業分野や学術分野でかかわりが出てくる可能性が高いと思います。いずれにしてもこの議定書では、遺伝資源の取得にあたって、海外の提供国の国内法令等に従って、権限のある当局からPICと称する事前の同意を得て、遺伝資源の提供者と利益配分を含む契約を結ぶことが求められていることを十分認識していただくことが必要です。11月現在で、締結国はまだ一カ国のみですが署名国は67に上っています。

日本は利用国という面が強いと思われますが、国内で遺伝資源の利用が適切に行われることをチェックする役割が求められることになります。

さて、2011年から2020年までの10年間を国連生物多様性の10年とすることが、市民セクターからの提案によってCOP10において勧告され、第65回の国連総会で決定しています。我が国でも、国内の取組みを推進し、世界に発信していくため、経団連の米倉会長に委員長にご就任いただき、ビジネス界を含む様々セクターの皆さんの参画を得て国連生物多様性の10年日本委員会が本年9月に発足しています。

経済界、NGO、ユース、自治体、学術界、メディア等、様々なセクターにかかわっていただいて連携を行い、愛知目標の達成、生物多様性の主流化を目指した取組みが、国民運動として展開、発展するように活動して行きたいと思います。

この委員会の主要事業の一つとして、既に生物多様性全国ミーティングの第一回目の会合が、愛知県名古屋市で10月29日に開かれています。この会合では各セクターの取組みや、今後の取組みに関する発表の場を設けて、情報共有を図りセクターの垣根を越えた連携を強化していくことを目的としました。また、来年度以降も開催地域の様々なセクターの取組みを紹介して、全国に情報を発信し、地域活動の掘り起こし、あるいはセクター間連携の強化等を図っていきたいと考えています。

最後に、地方自治体の動きを紹介をさせていただきます。愛知目標の達成を実現するためには、地域に根差した現場での活動を自ら実施し、また、地域住民や関係団体の活動を支援する地方公共団体の役割が非常に重要だと考えています。このため14の発起自治体を核に、環境省が事務局を務め、生物多様性自治体ネットワークの設立を呼びかけて参りました。全国各地の生物多様性保全に関心の高い自治体からなるネットワークが、さる10月7日に設立されまして、現在119の自治体にご参画いただいています。

国連生物多様性の10年日本委員会への要望、意見の提出や、全国各地の自治体の取組みの情報共有等も計画されています。今後、このネットワークを通じて、国・民間団体・事業者等のさらなる連携・協働を期待したい。

企業の取組み事例紹介

sympo20111216_009

「いきものにぎわい企業活動コンテスト受賞事例」
いきものにぎわい企業活動コンテスト審査委員長 進士 五十八

生物多様性といいますと難しそうですが本当に当たり前のことだと思っています。今回受賞の皆様も世界のトヨタから漁連の皆様まで、つまり世界的に活躍される人たちも、ローカルで頑張っている人も業種もまさに多様性に富んでいます。このコンテストではこの多様性も重視して審査しています。私はいろいろな主体がいろいろなアイデアで、いろいろな活動を担ってこの日本の社会に広がることが、どんなに大事かと思っています。

多様性は生き物だけではなく土地利用も多様でなければいけません。土地利用が多様であるからこそ生き物も多様になるのです。生物は最後のアウトプットなのですね。私たち人間の社会のあり様、ライフスタイル、暮らし方も多様であるべきです。多様性というのは非常に広い、そして社会を元気にする最も重要な概念であると思います。

また、生物多様性を実現するための行動・アクションは、国連が決めたから、日本政府が決めたからというだけでは盛り上がりません。頭で理解する知識からずっと降りてきて、おなかで理解する、つまり腑に落ちる説明と意義がなされるべきだと思います。行動・アクションは、腑に落ちて納得したとき、動きます。腑に落ちるということが参加者や企業にとって生物多様性の主流化ということなのです。

さて、明治神宮の森はあと10年で100年ということで脚光を浴びていますが、われわれの先輩は神宮の森をつくるとき84の社叢(鎮守の森)を調べ、いろんな種類、いろんな高さが組み合わされていることを発見、神宮の森もそのような多様性と多層性の原理で造成しようということで50年100年150年後をシュミレーションして、成功したのです。その実現のため全国から10万本の献木、10万人の青年ボランティアが集まりました。当時の国鉄は樹木をタダで原宿あたりの引き込み線から運んで順番に植えていく。樹木は生き物ですから置いておくわけにはいきませんので形や種類に関係なく順々に植えていきます。これは今でいう作業効率で、企業活動と同じですね。

大事なのは多様性と多層性という生物多様性の科学的原理と、一方で作業効率をも合理的に考えるという企業的判断を一致させているということです。主流化とは、まさに企業そのものが、また政治社会文化のすべてが生物多様性の考え方、すなわち「みんな違ってみんないい」を考えて、ひとりひとりの構成員も元気になれるということですし、それぞれの地域も元気になるということです。これが多様性の最も基本的な意義だと思います。私はこの思想がもっともっと広がることを期待しております。

【環境大臣賞】トヨタ自動車株式会社
トヨタ白川郷自然学校自然共生プロジェクト

そもそもトヨタはなぜ森づくりをやっているのか?何をやっているのか?ということからお話したいと思います。先ずは「なぜ」ですが、トヨタには創業以来、豊田綱領というものがあります。その中に、『産業報国』と『神仏崇拝』という2つのキーワードが出てまいります。私たちが解釈しているところでは、『産業報国』は「自然と人とが共生できる豊な社会を作っていきたい」ということ、『神仏崇拝』は「自然というものを敬って、自然の恵みに感謝する心を忘れてはならない」ということです。そしてこれがトヨタの森づくりに対する想いとなっています。 次に「何を」ですが、大きく分けますと海外と国内に分かれます。主に海外ではグローバル植林、国内では環境保全・学習を行っています。グローバル植林では、中国で2001年から3000ヘクタール、フィリピンでは2007年から1800ヘクタールの大規模な植林を行っています。 国内は「街・工場」「里地・里山」「奥山」の3つのフィールドに分かれます。

「街・工場」では地域の人にも入っていただいて、ビオトープを作ったり、植林をしています。「里地・里山」では「トヨタの森」です。こちらは第一回いきものにぎわい企業活動コンテストで審査員長賞をいただきました。そして「奥山」ですが今回受賞いたしました「トヨタ白川郷自然学校」です。

そのトヨタ白川郷自然学校ですが、世界遺産でご存じの白川郷の山の奥に入った馬狩地区というところにあります。学校の理念は「共生」をテーマに「日本一美しい村に日本一の自然学校を」というものです。環境に対する思い入れを深めるきっかけを作っていただくということ、癒しの場を提供するということ、それに白川村の持続可能な発展に微力ながら貢献したいという想いで運営をしています。運営は白川村の村民の方々、弊社、環境NPOの三者が一体となって立ち上げた、白川郷自然共生フォーラムで行っています。

今回受賞の対象になりました自然学校共生プロジェクトは「地域伝統文化との共生」「自然との共生」「社会との共生」の3つの柱から構成されています。地域・伝統文化との共生では、蓮如上人が通ったと伝えられる古道があるのですが、人が住まなくなることによって藪のような状態になっていました。この道を整備する「古道ぶしんプロジェクト」、また自然学校の敷地内にある萱を刈って合掌造りの家屋に使用する「萱場復元プロジェクト」を行っています。

自然との共生は「里山・奥山いきものプロジェクト」です。奥山の代表的な生き物として「ツキノワグマ」、里山では「ギフチョウ」、その中間にいる「ヤマネ」の希少種3種を選定し、その調査や繁殖への取組みを行っています。ギフチョウについては生息環境維持活動として産卵数・繁殖状況の調査、幼虫が食べるための食草とかカタクリといった蜜源を整備しています。ヤマネに関してはヤマネはいるはずだとか、昔見たことがあるといった話を頼りに2008年から巣箱を50箱くらい設置して生息状況を調査してきましたが、今年やっと一匹だけ入っていることが確認できました。これから調査に入る段階です。

ツキノワグマは岐阜大学、名城大学と一緒に調査を行い、捕獲した熊にGPSを取り付けて活動範囲を調べました。結果、分布や行動範囲が大体わかってきましたが、今後は熊と人との間に緩衝帯をつくり、共生を図っていきたいと考えています。

最後に社会との共生です。白川郷自然学校ではこれまでご説明した活動をプログラムとして使い、小学校とか企業の方々に、ギフチョウのバタフライウォッチング、ツキノワグマ観察プログラム等など環境学習・企業研修として提供しています。

今後の取組みとしては、文化遺産白川郷、自然遺産白山の山麓という文化・自然の恵みに感謝して、持続して共生できる森づくりに取り組むとともに、この共生の想いを皆様と共有して取り組んでいきたいと思います。

【農林水産大臣賞】株式会社 滋賀銀行
「琵琶湖の環境と生態系保全のいきものがたり」活動

先ずこの活動の背景からご説明します。琵琶湖は京阪神1,400万人の貴重な水源で、滋賀県民の暮らしや企業活動のあり方が、そのまま映し出される「人と自然のバランスを映す鏡」です。その琵琶湖の姿が大きく変わろうとしています。水質の悪化、水草の異常繁茂、外来魚の増加、また「琵琶湖の深呼吸」と言われるように、低酸素が原因で、イサザやスジエビが琵琶湖の湖底で死んでいる実態があります。これらの現象は、世界の環境問題を象徴していると言えます。

琵琶湖には61種類の固有種、つまり琵琶湖にしかいない“いきもの”がいます。しかし、その62%が絶滅危惧種、絶滅危惧増大種ということで「命のゆりかご」琵琶湖が非常に危険な状態に陥っています。そこで私たちは守るべき場所を実感・自覚し、実践をする活動を行っています。 今回「農林水産大臣賞」を頂戴した滋賀銀行の活動は、魚の産卵場所、水鳥の住み家であるヨシ群落を保全し、琵琶湖の固有種で絶滅危惧種のニゴロブナ、ワタカを保護・育成・放流し、侵略外来魚のブラックバス、ブルーギルを駆除するという、滋賀県ならではのローカルな「いきものがたり」活動です。

1点目は琵琶湖の環境保全のシンボル的な活動である、「ヨシ刈りボランティア」をご紹介します。ヨシは成長する春先から秋口にかけて琵琶湖のリンやチッ素を吸い上げるので水質の浄化に繋がります。また、フナやモロコの産卵場所、カイツブリなどの水鳥の休息場所となるため、ヨシ群落を保全する活動は非常に重要です。冬場に枯れたヨシを刈り取ることによって、春また新たな新芽が芽吹いてきます。私たちは環境ボランティアでそのヨシを刈り取っています。ヨシを刈り取り、ヨシ群落を「守り、育てる」活動から、ヨシを名刺に活用しています。このヨシ紙名刺1枚で琵琶湖の水を30リットル浄化します。名刺は年間53万枚使用していますので1万5,900キロリットルの水質浄化に繋がっています。1999年に65名で始めたヨシ刈りボランティアが、直近では1,410名が参加する当行の一大イベントになっています。1時間半から2時間ヨシ刈りをすると、うっそうとしたヨシ原が本当に綺麗な湖景に帰ります。ヨシ刈りボランティアでは、終わった後に温かいカレーを皆で食べるのが恒例になっています。また今年は、獣害被害の対象である狩猟された鹿肉をカレーに入れて食べるという取組みも始めました。

2点目は、環境対応型金融商品の「カーボンニュートラルローン 未来よし」について紹介します。自然エネルギーの導入促進と生物多様性保全の目的で、太陽光発電システムを導入される方のローンについては、金利をさらに0.1%優遇させていただいております。環境保全に“志”のあるお客さまを応援させていただく取り組みです。銀行は太陽光発電システムを導入されるお客さまに対して金利を優遇して融資を行い、削減されたお客さまのCO2排出量を擬似的に滋賀銀行が買い取ります。その金額に応じて琵琶湖の固有種で絶滅危惧種の「ニゴロブナ、ワタカ」を放流しています。2007年に始めた当時は、この取り組みがなかなか普及せず苦労しましたが、一昨年あたりから太陽光発電システム導入の実行件数が非常に増え、ニゴロブナ、ワタカを放流する量も増えているところです。放流するニゴロブナについては、2センチ、3センチのニゴロブナを琵琶湖に放流しても外来魚に食べられてしまうので、12センチまで大きくして放流しています。またこのニゴロブナには滋賀銀行のマークを付けています。魚の年齢がわかる耳石のところに特殊な色素で“三重リング”に染色することによって、滋賀銀行が放流したニゴロブナだということを認識できるようにしています。2年後、3年後にサンプリング調査をしたときに外来魚にどれだけ食べられずに大きく成長したかがわかるようにしています。そのニゴロブナが日本最古の“なれずし”であり滋賀県の郷土料理でもある“ふなずし”になります。滋賀銀行の放流した三重リングがついた“ふなずし”が流通していますので是非お食べください。また、ワタカは、水草を好んで食べる草食系の魚です。琵琶湖で異常繁茂した水草の駆除のためにワタカを放流しています。

3点目が、「外来魚の駆除釣りボランティア」です。ブラックバスやブルーギルの侵略外来魚が増加し、琵琶湖の固有種が激減して生態系が大きく乱れています。外来魚の駆除を一人でも多くの役職員が体験することによって、生物多様性の保全について理解を深めようと取り組んでいます。釣り上げた外来魚は障がい者福祉施設で堆肥として加工し、循環活用していただいています。琵琶湖に竿をたれると、ものの30秒から40秒で釣りあがってきます。ブラックバスでは無くほとんどブルーギルですが、琵琶湖にどれだけ外来魚がいるのかということを実感します。子供たちや女性の参加が非常に多いので、皆さん楽しみながらレジャー感覚で生物多様性の保全を取り組んでいただいています。「釣り堀よりもよく釣れる琵琶湖の外来魚釣り」ということで、琵琶湖にお越しいただいた時は外来魚の駆除もしていただけると幸いです。

以上の3点以外にも、「エコプラス定期」という商品があります。環境預金と環境学習と生物多様性保全の3つをミックスして、子供たちが「環境学習の実践の場」として活用いただく、「学校ビオトープづくり」のお手伝いを行い、現在20行でビオトープが完成しています。

また、「環境格付」から「生物多様性格付」へステップアップして、わかりやすい生物多様性の格付8項目を策定しました。環境格付と生物多様性格付を取得していただくことによって、最大年0.6%の金利を優遇させていただく「しがぎん琵琶湖原則資金」を作り、お客さまの地球温暖化防止、生物多様性の保全をサポートさせていただいています。

最後に近江商人の「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」に「地球環境よし」加えた「四方よし」の考え方で、「琵琶湖はクリーンに、経済はホットに、地球を愛す(ICE)」をスローガンに、これからも環境ビジネスや生物多様性の保全をサポートしていきたいと考えています。

【環境大臣賞国際森林年特別賞】サントリーホールディングス株式会社
サントリー「天然水の森」

サントリーは地下水に頼っている会社です。いい地下水がなければ、ビールも、ウイスキーも、清涼飲料も、なにひとつつくることが出来ません。地下水―天然水は、サントリーという会社の生命線なのです。その生命線の「持続可能性」を守るために、私たちは2003年から「天然水の森」と名づけた水源の森を守る活動を行っています。

地下水は限りある資源であり、その貴重な地下水の「安全性」「おいしさ」「水量」を子供たち、孫たちの世代に残すために、私たちは、全国の工場の水源涵養エリアで、地下水を育む力の大きい森を目指して、森林整備を行っています。「森での地下水涵養量>工場で汲み上げる地下水量」という目標を掲げ、現在「天然水の森」の活動面積は、中期目標であった7,000haを超え、約7,300ha(12都府県14箇所)に達しています。(2011年末時点)

サントリー「天然水の森」はボランティア活動ではありません。私たちは、この活動を、サントリーグループの事業活動の生命線である「水の持続可能性(サステナビリティ)」を支える基幹事業だと位置づけています。森林整備の目標は、大きく分けて、以下の5つです。①水源涵養林としての高い機能を持った森林、②生物多様性に富んだ森林、③洪水・土砂災害などに強い森林、④CO2の吸収力の高い森林、⑤豊かな自然と触れ合える美しい森林。

さて、それでは、地下水はそもそもどうやって涵養されているのでしょうか?

降雨でもたらされた水が、蒸発や蒸散、表面流などで失われず、大地に浸透していったものが地下水です。また、大地に水が浸透するには、良い土壌が必要です。「天然水の森」の水源涵養活動とは、地下水を育むのに最適な土壌、即ち有機的な「団粒構造」を持つ土づくりとその保全を当面の目標としています。しかし、畑と違い、森の土は耕すことができません。そこで、木や草、動物や微生物など多様な生物の力を借りて、土を耕すことになります。健全な森づくり──水づくりの目標は、実は土づくりにあります。

「天然水の森」における具体的な活動は以下の通りです。

・調査
まずは水文調査を行います。社内の水科学研究所が主体となり、工場の水源涵養エリアを調査します。水の成分分析や、地下の地質・地層の調査、工場とその周辺の井戸情報などにより、どこから、どのような地層を通って、どのくらいの歳月をかけて流れてきた水なのかを、推定していきます。さらにすべての森に対し水文学はもちろん、植生、土壌、鳥類、昆虫、砂防、微生物など、多彩な専門家とともに、保水力が高く、水質浄化機能の高い「土づくり」に繋がる整備計画を立案します。すべての森が、研究者の演習林としての機能も果たしている点が、この活動の特徴のひとつです。

・健全な生産林や針広混交林への誘導
「間伐」や「枝打ち」により林床に光が入ると、やがて下層植生が繁茂し、生物多様性も拡大します。その結果、ふかふかの土壌が形成され、水源涵養等の機能も増進されます。
一方、明らかに生長が悪いヒノキ林などでは、スギ・ヒノキなどの針葉樹を多めに伐り、針葉樹と広葉樹が混じり合う「針広混交林」に誘導する場合もあります。

・環境に優しい作業道
山に負担が少ないことを前提とし、急峻な地形に敷設でき、水にも強く、設置工事も早く、コストも安い作業道の敷設を推進しています。こうした道は動物たちの通い道や猛禽類の狩場にもなり、生物多様性回復へも貢献しています。

・材の利用
間伐された材は、できるかぎり、搬出し活用することを目指しています。間伐材の活用は、二酸化炭素の固定、即ち温室効果ガスの削減にも繋がります。

・竹林問題
竹は地下茎を伸ばして雑木林に侵入し、次々に木を枯らしていきます。竹の生長は早く、林床に入る光を遮るので、他の植生は育たず、生物多様性を阻害し、地下水を減らし、さらに一斉に「竹枯れ」を起こす性質があり、急斜面では崖崩れの危険性も高めます。斜面の竹林は、皆伐するとかえって崖崩れの危険性を高めるので、間伐し、広葉樹の実生を導入します。なだらかな場所では皆伐して、広葉樹を植樹する場合もあります。

・獣害対策
日本各地で増えすぎた鹿が、草や木の皮を食いつくし、山を荒らしています。下草がなくなり土がむき出しになり、土壌流失や崖崩れが始まった箇所も増えています。稚樹・実生を育てる必要がある場所では、鹿の不嗜好性植物を植えたり、部分的に植生保護柵を設置するケースもあります。
・崩壊地の再緑化
日本各地には大規模崩壊地といわれる場所が数多く存在します。そういった場所では、周辺の間伐材で階段状の土留め工を施し、やがて土に還るヤシネットで土砂を止め、再緑化を促します。

・松枯れ問題
全国の山で、未だに松枯れが進行中です。後継樹がある山での自然な遷移なら良いのですが、跡継ぎになる主役が見当たらない山では、松を守ったり、植樹をしたりする必要があります。

・ナラ枯れ問題
ブナ科の巨木を食い荒らすカシノナガキクイムシの影響により、日本海側のコナラやミズナラ、クヌギ等の巨木はほぼ全滅し、太平洋側にも、長野、群馬、岐阜、愛知、滋賀、京都、大阪、岡山などから被害が出ています。これはかつての薪炭林が放置され、巨木化し始めているのが原因です。現在、放置された材を活用し、萌芽更新させて里山を再生させるなどの対策を講じています。

・愛鳥活動、次世代環境教育
水源涵養活動だけでなく、愛鳥活動を中心とする野生生物保護活動はもちろんのこと、水育「森と水の学校」といった次世代教育のフィールドとしても活用しています。

改めて、いま日本の山で起こっている問題を要約すると人工林問題も、鹿の食害も、拡大竹林も、松枯れも、ナラ枯れも、生物多様性の劣化という一言につきます。1種類の樹で構成されている森よりも、10種類の樹がある森の方が、10種類の樹がある森よりも100種類の樹がある森の方が、よりバランスがとれ、より健康で、環境の激変にも強い。多様性に富んだ豊かな森をつくることで、多様性に富んだ、豊かな土をつくり、その土の力で、豊かで清浄な地下水を育む。それが、「天然水の森」の目標です。

【農林水産大臣賞国際森林年特別賞】北海道漁協女性部連絡協議会
「お魚殖やす植樹運動」

北海道漁協女性部は浜のお母さんたちの集まりです。毎朝朝早くから夜遅くまでお父さんのとってきた魚を陸廻り申しまして、一生懸命網から外したり出荷したりして生活しているあつまりです。全道の漁協は約70ありますが女性部117支部で9,000人の女性部員が毎日活動しています。
活動内容ですが、女性部の目的の1つは、木を殖やす。2つ目は魚食を殖やす。3つ目は一番大事な貯金を殖やすという活動に取り組んでいます。

植樹活動は、創立30周年記念の大会をめどに「100年かけて100年前の自然の浜を」という目的で始めました。北海道は森林が豊富でしたから開拓の名のもとに、川の淵の木が全部伐採され、炭や燃料などいろいろなものに費やされてしまいました。その影響で魚が取れない。どうしたらいいかということをいろいろな人に聞いたところ、川の淵に木が無いのが一番の原因ではないだろうかと、であれば100年かけて100年前の浜を取り戻そうということで、今20年目になりました。あと80年残っております。私は今65歳ですから、到底100年には間に合いませんけれども、頑張りたいと思います。

植樹活動はただ木を植えるだけではありません。保育というふうに申しまして、刈り払い機を使った下草刈り、間伐、枝打ちをやっています。現在までに、全道で900,000本以上の木を植えてきました。最初に植えました木は、いまでは私たちを見下ろすような大木に育っております。植えるだけではだめ、時々観察してどれぐらい大きくなっただろうか、木は倒されていないだろうか、倒されたところには補植林などをして、一生懸命管理をしています。北海道庁からは、車で地球を7,600周した時の二酸化炭素を吸収するだけの木を植えましたよ、と褒めていただいています。 全道での植樹活動は、このようにアニメーション等で紹介されています。なぜ山に木を植えることで海の魚が殖えるのか。なぜ川が大切なのか。このことを理解していただくための資料も沢山作成して、幼稚園、小学校、中学校といろいろな団体に配って、また私たちもいろいろな機会をとらえて、子供さんたちに、「木は大事なんだよ」というふうに、どうして大事かということも含めて理解していただいているかどうかは別として説明しています。

森は川に出る濁りを抑え、魚のえさを提供します。落ち葉も川や海の栄養になり、きれいで豊かな漁場が安全で安心な魚介類の供給に役立っていると確信しています。安心して安全なものを食べていただくために、私たちは料理教室をその都度行っています。こうした活動は道では100回目を数えまして、各消費者団体、小学校、中学校、高校、大学それらの生徒さんのもとに、自分たちのところで取れているものを持ってき「私たちはこういったものを食べているんですよ。皆さんいかがですか。」というふうに宣伝に努める毎日です。海から産卵のために川の上流まで遡上した鮭は、ホッチャレという状態になります。ホッチャレというのは、産卵を終えた鮭、つまり私のような状態なのをホッチャレと申しております。ホッチャレは痩せており、余命いくばくもなく、しまいには亡くなるような状態の鮭をこちらではそのように申しています。このホッチャレがクマやフクロウなどのえさになり、やがてそれが循環して森の栄養に還っていく、そういうふうに私たちは考えております。
さらには、食事の大切さを子供たちに知ってもらうための資料も沢山作成しました。森川海山先生、どこかで聞いたような名前ですが、このような名前の先生が登場する資料も作成しております。

現在年間40,000本の植樹を行っています。少しでも多くの木が植えられるように皆様の協力を切にお願いしたいと思います。 私たちは企業と提携して、現地に来ていただいて植樹をしていただく。そして、植えた木に名札をつけまして、何年か後には必ず見に来ていただく。そして現地を見ていただく。そういった活動をしています。また私たちは、出前事業として、料理教室に行き、会員を増やしていただき、知ってもらって、食べてもらって、買っていただく、こういう活動を着実に進めています。

豊かな自然を守り続ける活動に皆様もぜひ参加し協力し、資金の提供もいただければ、私たちは、ますますはりきって植樹をしたいと思っていますし、北海道では皆様を大歓迎いたします。どうぞよろしくお願いいたします。