CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラム― 森と人と地域を元気にする、新時代の「企業の森づくり」 ―を開催しました

近年、企業においても事業活動を通じて社会的課題の解決に取り組む「CSV経営」が指向されており、地球規模の環境問題が顕在化する中で、「ISO140001」の規定の改訂などの動きが見られています。

また、「CSV経営」の中でも、社員の心と体の健康づくりを重視した「健康経営」が求められており、その中で森林を活用した一次予防等の健康づくりや教育研修への関心が芽生えつつあります。

さらに、増加するインバウンドを活かした地方創生に向けて、日本が有する豊かな森林を活用した観光への関心が高まりを見せており、林野庁は平成29年度から支援施策を拡充することとしています。

こうしたことから、CSV経営・健康経営時代において、企業が森林を多角的に活用した新たな「企業の森づくり」のあり方を議論するために、「企業×森林」フォーラムを開催しました。

日 時 2017年2月27日(月) 15:00~18:00
場 所 砂防会館別館「大会議室・木曽」(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-4 砂防会館別館1階)
参加費 無料 定員 150名
主 催 美しい森林づくり全国推進会議(公社)国土緑化推進機構
共 催 経団連自然保護協議会
後 援 林野庁健康保険組合連合会
開会挨拶  司会:野中 葵(2017年度ミス日本みどりの女神)

  • 主催者:宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長、東京農業大学 教授)
  • 来賓:今泉 裕治(農林水産省 林野庁 森林整備部 森林利用課 課長)
基調報告
  1. CSV経営時代の「森林×企業」
    井上 岳一((株)日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネージャー)
  2. 健康経営時代の「森林×企業」
    安藤 伸樹(健康保険組合連合会 常務理事・広報委員長(日本通運健康保険組合 理事長))
事例報告
  1. 「企業の森」における企業研修で実現する”早期離職対策”
    関本 和彦(TDKラムダ株式会社 管理統括部長)
  2. 「社有林」を活用した観光資源づくり・従業員家族向け「森のようちえん」
    宮本 英樹(どさんこミュゼ(株) 代表取締役)
  3. 企業が集う長野県信濃町癒しの森
    浅原 武志(株式会社さとゆめ長野支社長・長野県森林セラピー協議会アドバイザー)
パネル
ディスカッション
  • CSV経営・健康時代の「企業×森林」
    進行:宮林 茂幸(美しい森林づくり全国推進会議 事務局長、東京農業大学 教授)
    パネリスト:基調報告者、事例発表者、
    今泉 裕治(農林水産省 林野庁 森林整備部 森林利用課 課長)
閉会挨拶

主催者挨拶

宮林 茂幸美しい森林づくり全国推進会議 事務局長

皆さん、こんにちは。美しい森林づくり全国推進会議の宮林です。本日のシンポジウムにあたり、大変多くの皆さんや関係者各位がご参加くださり、大変ありがとうございます。

この美しい森林づくり全国運動は、もう足掛け10年を過ぎております。この10年の間に、日本の美しい森をつくるために、たくさんの企業の皆さんのご参加を賜り、森づくりのいろいろな活動を展開してきました。また、経団連自然保護協議会と連携したフォレスト・サポーターズという全国運動も、現在、約5万人を超すに至っております。

先ほどのパネルディスカッション等でも示されたように、生物多様性とグリーンウェイブが美しい森林づくりとうまくコラボレーションしており、今までのような、荒れた森を再生するとか、森林を整備することで環境貢献となるという大きな勢いの中で、活動団体の高齢化や活動のマンネリ化等があって、今後、どのように発展させるかが大きな課題になってきております。また、本日のキックオフ・フォーラムで議論されましたが、グリーンウェイブあるいは生物多様性という新しい課題も生じており、森づくりがますます重要になる時代を迎えています。

今回のテーマは、『CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラム- 森と人と地域を元気にする、新時代の「企業の森づくり」』です。新しい森との関わり方について多様な形ができています。それは、企業にとっても、地域にとってもプラスとなるwin-winの関係を構築し、言うならば、企業にとっては本業とのかかわりで、地域については地方創生とも一体となった、美しい森づくりの展開であり、新たなシステムを構築して次の世代に渡していくという現代的使命ともいえる部分を、この運動論において担っていきたい。そんな議論になることを期待します。

その様な観点で本日は、日本総合研究所の井上さんと健康保険組合連合会の安藤さんに基調報告をお願いします。森づくりあるいは森の利用にかかわった新しい展開の話があろうかと存じます。そして、企業の森づくりの現場で頑張っておられるTDKラムダの関本さんに事例報告をお願いします。TDKラムダさんは、約10年前から長野県野尻湖町で自分たちの山を持って、様々な活動を進めてきており、本業との関係で定量的にも大きな効果を出しておられますので、そういったお話を伺うことができると思います。

また、先ほどのキックオフ・フォーラムでは教育が課題として挙げられました。特に、環境教育は学校教育だけでなく、地域教育、企業教育、家庭教育等、いろいろな教育の現場があります。そこで、2番目の事例報告は、森林の中で、森のようちえんをはじめ、森に人が集まるさまざまな事業を経営という面から進めておられる宮本さんにお願いします。そして、森林セラピーということで森林による健康促進をテーマに全国各地でご活躍の浅原さんから、3番目の事例報告を頂戴します。

今日は、皆さまの具体的なお話を聞きながら、新しい展開を探ることが課題ですので、ぜひ忌憚のないご意見を賜りたいと思います。後援くださった林野庁ならびに健康保険組合連合会並びに国土緑化推進機構の皆さまに心から御礼申し上げまして、私のあいさつと致します。どうぞよろしくお願いします。

来賓挨拶

今泉 裕治農林水産省 林野庁 森林整備部 森林利用課 課長

皆さん、こんにちは。林野庁森林利用課長の今泉と申します。
『CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラム』の開催にあたり、一言ごあいさつを申し上げます。本日、美しい森林づくり全国推進会議と国土緑化推進機構の主催、経団連自然保護協議会の共催による、このフォーラムが大変多くの方のご参加を得て、盛大に開催されることを、まず、心からお喜び申し上げます。

林野庁においては、平成4年度に国有林をフィールドとするし「法人の森林」制度を開始しました。また、平成16年から、民有林も含めた、企業の森づくりの取り組み状況を把握し、その推進方策等を検討しています。しかし、その頃はまだ、CSRにおいても、民間企業側が森林に関わるというニーズが本当にあるのかといった認識が支配的でした。ところが、そんな心配をよそに、企業による森林づくり・森づくりの箇所数は、平成16年当時に国有林で約400件、民有林で100件弱だったものが、今や、民有林で1000件以上、国有林を合わせると1500件以上と、大きく数が伸びました。

先日、私は、こういった企業の森林整備・森づくりに早くから取り組まれている和歌山県におじゃましました。森林整備の活動のために企業の社員の方々が子どもさんもたくさん連れて、大勢で地域を訪れてきます。森のある山村地域の皆さんは、長らく途絶えていた子どもさんの声、にぎわいが戻って大変うれしいと喜んでおられます。そして、地元の食材を一生懸命、料理して、村の人総出で訪れる皆さんをもてなします。こうした企業と山村との顔の見える関係が構築され、非常に素晴らしい交流が行われていることが伺われました。

本日、このフォーラムにご参加の皆さまには、既に森林整備に取り組まれている企業の方、今後、取り組む、あるいは、取り組みを検討されている企業の方も多くおられると伺っています。先ほど申し上げた先行事例も参考にしながら、取り組みの輪を広げてくださればありがたいと存じます。

現在、わが国の森林は本格的な利用期を迎えています。森づくりは、植えて、育てて、切って、使って、また植えるという、まさに資源循環の営みです。今後、企業の皆さまを含め、日本中で木材を循環的に利用していくことが、森づくりの活動の先には必要であり、重要になってきます。これがまた、山村に雇用を生み、地域の活性化にもつながっていきます。

先ほどのフォーラムでは、エシカル消費の話もありました。適切に伐採された木材を、適切に利用することも、エシカル消費の一つです。本日のシンポジウムを通じて、企業の森づくりの取り組みが、植えて育てる活動から、さらに、山村地域と交流し、同時に事業活動においても、適切に伐採された木材を適切に利用していくことが広がってほしいと思います。

本日は、企業の健康保険組合の関係者の方も多数、ご参加されていると聞いています。昔から、森の中は気持ちいい、癒やされるといわれますが、そういった効果を科学的に検証する取り組みも行われています。心と体の健康づくりという面から森林を捉えて、企業活動の一環として、社員の皆さまがリフレッシュや癒やしを求めて森林を訪れるという取り組みも進んでいけばありがたいと思います。

本日のシンポジウムでの議論が、企業による森づくりへの理解のさらなる推進に役立つことを祈念申し上げて、私のあいさつといたします。本日はよろしくお願いします。