CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラム― 森と人と地域を元気にする、新時代の「企業の森づくり」 ―を開催しました

基調報告2 健康経営時代の「森林×企業」

安藤 伸樹健康保険組合連合会 常務理事・広報委員長(日本通運健康保険組合 理事長)

どうも皆さん、こんにちは。健康保険組合連合会の安藤と申します。自分が何を話すのか忘れてしまうぐらい、井上さんのお話を真剣に聞き入ってしまいました。

まず、なぜ、健康保険組合がこういう場で話をするのかを説明します。
今日、お集まりの皆さんは健康保険証をお持ちだと思います。しかし、現在、日本における国民皆保険制度が大変な危機にあることを、皆さんには認識していただく必要があります。その上で、なぜ、森が必要なのか、森の力を借りなければならないのかということを説明します。

このスライドは、健康保険組合の現状です。健康保険組合連合会(以下健保連)は大企業のサラリーマンが所属する健康保険といわれますが、日本の主な銀行をはじめ、約3000万人が所属しています。
また、中小企業の方たち、約3500万人が所属する全国健康保険協会、通称、協会けんぽという全国健康保険協会があります。そして、国民健康保険と後期高齢者医療制度、さらに、先生たちが所属する共済組合という5種類の保険があります。

平成27年度の健保連の決算は1278億円の黒字でした。黒字でよいではないかと思われるかもしれませんが、平均保険料率が初めて、9パーセントを超えました。平成19年度は7.3パーセントだった保険料率を9パーセントにしなければ、健康保険組合は黒字を保つことができないということです。
皆さんが病院に行った場合、通常は、支払った医療費の約7割が健康保険組合負担、3割が個人負担です。保険料率を上げなければ、その7割の部分を支払えなくなるということです。

これを見ると分かるように、一人当たりの年間平均保険料合計が、平成27年度は平成19年度に比べて、年間で10万730円増加しています。これでは、いくら給与が上がっても、手取り額は増えず、財布のひもは緩くなりませんよね?

この図は、平成19年度から27年度までの、一人当たりの月標準報酬月額、賞与額、支援金・納付金、法定給付費の推移を示したグラフです。支援金は、後期高齢者医療制度を支援するためのお金であり、納付金は、65歳から74歳までの前期高齢者の健康保険に充当するためのお金です。つまり、直接関係のない人たちのためのお金を、健康保険組合に所属する人たちが負担しているわけです。その率は、平成19年度を100とすると、平成27年度には140.5となっています。

一方このグラフの一番下の緑色の折れ線グラフは、平成19年度を100としたときの、平均賞与額ですが、平成27年度は96.7です。給料はようやく、平成27年度で100に戻りました。一方、医療費の7割部分に当たる法定の給付金は118.4と増加しています。

そして、それをわれわれが所属する健康保険組合連合会の支出に占める保険給付費という医療費の割合は、平成19年度は53.5パーセント、平成27年度が50.6パーセントと、割合は減っていますが、金額では5909億円増えています。一方、支援金・納付金は37.8パーセントだったものが42.8パーセントに増え、金額的にも9521億円増えているという状況です。

注目して頂きたいのは、保険事業費です。保険事業費は、皆さんの健康診断や人間ドックに、あるいは、保養所に行くとき等の補助として使われるものです。平成19年度と平成27年度を比べると、他の費用は大幅に伸びているのにもかかわらず、金額的にはほぼ変わっていません。支出全体に占める割合は著しく低くなっています。

健康保険組合は、本来、保険に加入している企業の従業員が健康で働くためのものなのに、そこに掛ける費用が全く増えていないのです。ここが一番の問題だと思います。この対策については、後ほど説明します。

そして、支援金・納付金も大きな問題です。個々の健康保険組合のうち、支援金・納付金の占める割合が50パーセント以上という所は、平成19年度に86組合だったものが、平成27年度には267組合と、異常な数字になっています。
その割合がどんどん増えていくと、もう健保連には所属していられないという健康保険組合が出てきます。これは、また別の問題を生みます。健保連から脱退した健康保険組合は、協会けんぽに行きます。協会けんぽは、健保連とは異なり、国費が16.4パーセント入れられています。つまり、皆さんの税金がそこに行くわけです。

健康保険組合連合会の組合数は、平成19年度の1518組合から、平成27年度は1405組合へと減少しています。これらの脱退した組合は、協会けんぽに移ったわけです。しかし、この間、被保険者数は増えています。これは企業の寡占化といったものが進んだためではないかと思います。各企業の健康保険組合は、自分たちはここにとどまるぞと、一生懸命頑張っている現状にあることをご理解ください。

これは、1960年、2010年、2060年の人口ピラミッドです。左側が15歳と65歳で区切られたグリーンの部分が多いほど、労働力人口が多くなります。しかし、日本は、それが年を追うごとに減っていく状態です。従って、このままでは国民皆保険制度が維持できなくなってしまいます。

さて、直近の医療保険制度を取り巻く現況を見てみましょう。昨年の4月に診療報酬改定が行われました。これは2年に1回、実施され、薬価の改訂と医療費の改訂がなされます。今回の改定では、全体で0.84パーセント引き下げられました。

また、データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者会議による提言等もありましたが、われわれにとって影響が大きなものは、消費税の値上げが先延ばしされたことと、平成28年12月に介護保険制度の納付金総報酬割導入案が閣議決定されたことです。消費税の値上げ分の2パーセントは、社会保障に使われる予定でしたが、それがなくなりました。また、介護保険制度の納付金総報酬割導入も、われわれ健康保険組合連合会にとっては、非常にマイナスとなります。

今朝の日本経済新聞の総合面にも出ていましたが、固定費が下がるどころか、どんどん増えているところに、保険料までどんどん値上がりすると、ますます、消費者の財布のひもは固くなります。

では、今後、健康保険組合は何をやらなければいけないのでしょうか。保険者である、われわれ健康保険組合は、保険者機能を最大限に発揮して、加入者の従業員が常に健康に働くことができる「健康環境」を提供することであると考えます。特に、われわれ健康保険組合は、組合員の健康診断のデータを持っています。しかし、今までは、その有効な使い方ができていませんでした。

最近、厚生労働省も、データヘルス計画を提唱し、実施に乗り出しています。われわれも組合員のデータを生活習慣の変容、疾病予防、重症化予防のために有効活用して、組合員の健康を維持し、医療費の削減につなげていかなければなりません。しかし、これは健保連だけでは難しく、企業側、事業主側の協力が不可欠です。