CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラム― 森と人と地域を元気にする、新時代の「企業の森づくり」 ―を開催しました

事例報告2 「社有林」を活用した観光資源づくり・従業員家族向け「森のようちえん」

宮本 英樹どさんこミュゼ(株) 代表取締役

こんにちは。宮本と申します。
結構、健康やセラピーと言っている割には少しストレスフルになってきたと思いますので、先に映像を流します。まず、これを見てください。

JR北海道と北海道にあります北洋銀行とのコラボレーションの事例です。JR北海道が民有化されたとき、ゴルフ場を造ろうということで、新函館北斗駅のすぐそば、大沼公園に隣接した200ヘクタールの土地を購入しました。ところが、残念ながら、ゴルフ場が造られることなく、その土地の中にある農地と森林が30年以上も放置されていました。先ほどのTDKラムダさんの森は5ヘクタールでしたが、その200ヘクタールの土地には森林が150ヘクタール、農地が30ヘクタール、温泉を含めた開発地が20ヘクタールあり、そこを再開発したという事例です。では、少し映像を見てください。

なんといっても広いので、人間だけではじゃ無理だと思いまして、今日話の中にあった共生として、動物を使うことにしました。開拓をともにする動物といえばやはり馬だろうということで、私たちは馬で森づくりをしています。機械とは違い、馬だと人間も近づきやすいようで、たくさんの子どもたちや大人たちが一緒に作業をしてくれるようになりました。そして、JR北海道さんがいますから、なんと、私たちは駅も持っています。そのため、幼稚園の子どもさんたちもどんどん、駅を使って来てくださいます。また、人工林の所では造材をやっていますが、スタッフだけではなく、体験として来てくださる人たちと一緒にやっています。

この馬搬は今、復興公園でも使ってもらっています。取りあえず、こんな所にも馬を入れて、開拓、森づくりを進めています。森の中に動物がいるのは世界的にも非常に珍しいそうで、多くの外国人の方が写真を撮りに来られます。
その結果、広がった空間を利用して、こういったヨガ等などもしています。また、間伐材はグリーンネットワークをはじめ、いろいろな加工に使っています。今は、什器から器まで作っています。これはスギの板ですが、バーベキューをするとき、板ごと使ったりしています。施設もどんどん大きくなってきたので、最近は、間伐材で厩舎を作り、動く木のトレーラーハウスを開発しています。

これがうちの展示厩舎と呼ばれるものです。全部、道南スギで造っています。とにかく広いので、森の中に住みたいと言う人も現れたので、小屋を造って住んでもらうという、不動産開発も考えています。
そして、樹液がたくさん採れます。今はシラカバ樹液とメープルシロップを作っています。こんなクラシカルな加工のやり方をしているのは、世界でも私たちぐらいではないかと思いますが、まきを使っています。

さらに、所々に生えているスゲを使う等、とにかく生えているものは何でも使いました。最近では、大人の木工育といって、生えているものを使ってお酒のジンを造ろうということもしています。
当然、まきも売っているのですが、売るだけだともったいないので、ピザ窯のあるレストランをつくって、まきでピザを焼いています。ピザには何でも乗せられるので、そこに生えている山菜や野草入りのピザを販売しています。

こういうわけで、たくさん人が来てくれるようになりました。そうなると、働く人たちが必要になるので、従業員のための保育施設、いわゆる企業主体型保育施設を始めました。先週、内閣府の認可が下りましたが、今、実際に保育園も運営しています。
私どもの事業の概要はこのようなものです。それでは、スライドに戻ります。

これが牧場の全景です。駒ヶ岳のすぐ麓にあります。私は、これまで、森を使って人をつなげていくようなコミュニティー・フォレストリーといったものを北海道に幾つかつくってきました。それは、森こそが日本人をつなげる最適な場所だと思っていたためです。コミュニティーセンターをつくったり、木育活動を北海道庁に提言したりというようなことをしてきました。

人をつなげていく一つの手段としてそういったことをしていたところ、JR北海道さんからいきなり、「こういう土地があるから、君の言っていることを実践してみないか」と言われました。それが約5年前です。そのとき、なぜかと尋ねると、間もなく新幹線が通るので、それに合わせこの土地を有効利用したいとい一方で北洋銀行からもこの契機に地域創生につながることがしたいと打診があり、この両者を結びつけプロジェクトがスタートしました。

今日は、健康保険組合連合会さんのお話も含め、超高齢化社会がずっと話題になっています。では、その超高齢化社会の日本で伸びるもの森を使ってできることは何かというと、それはやはりヘルス産業だろうと思います。
それから、国内の人口が減っていくのだから、海外に売れるものが必要です。北海道の場合、海外からインバウンドのお客さんを誘致できるものがよいだろうということです。

また、私は東大沼地区という所に住んでいるのですが、そこは本当に過疎地域です。小学校も、小学生が4人しかいないミニ小学校です。どんどん移住してきてほしいのですがそうなると、ソーシャルサービスが足りません。保育園はなく、小学校もなくなりそうだしというように、もういろいろなものがないのです。それならば、その部分をビジネス的に考えて、ソーシャルビジネスを森の中で展開できるのではないかと考えたわけです。

名目はもちろん、自然や森づくりですが、私たちは、その周りにコミュニティービジネス、例えば、託児所や障害児童対象のデイケアサービスといった施設を、まずつくろうと考えました。そうして、今日の皆さんのように、たくさんの人が見に来てくれるようになれば、観光事業やレストラン事業が成り立つのではないかというイメージを持ったのです。

それにしても、まずは森づくりからです。なんといっても、30年も放置され、ここはヤナギ畑になっていました。今日は環境省の方も来られていますが、やはりエコだろうということで、最初は人間の力で頑張ろうと思いました。私の他にスタッフが2人いたのですが、計算してみると、90年ぐらいかかるということで、これはもう全然無理だということになりました。しかし、健康、エコという流れでやろうとしているのに、機械でどんどんやってしまうと、ブランド価値が高まりません。そこで、考えた策が、昔の人の知恵を借りようということでした。

北海道いる在来馬である「どさんこ種」の馬を導入して、それをとにかく、森に放ったのです。そうすると、文句も言わず、本当に24時間働いてくれました。と言っても、ただ、えさを食べているだけなのですが、森がきれいになっていきました。

こんなことをしていたところ、イギリスのホース・ロギング協会の方が来られて、イギリスではそんなことは当たり前だからいろいろ教えてやるということになり、協定を結び、だんだんと大型種の馬を入れ、馬搬技術も上げていって、物を運んだりすることに馬を使うようになりました。

そのときにもう、自分で6次産業化を考えるようになっていました。どさんこ種の馬は、馬肉としては大体60万円で売れるのですが、乗馬に使えば、1時間で1万円ぐらいの売り上げになります。そうすれば、200人ならば、200万円になります。馬の立場から見ても、肉で売られるよりも乗馬のほうがいいですね。だから、私たちは、ホースセラピー事業を行っています。先ほどの保険点数の話を聞いた後なので言いづらいのですが、ホースセラピーは保険点数の対象です。障害児童デイケアサービスの通所支援事業として、1セッションにつき8000円を頂いています。

木を切ることについても、プログラムを使って切ると、対価が10倍、20倍になることに気付きました。そこで、森の木を切るのは最後にすることにしました。そのような折、林野庁が始めた森林・山村多面的機能発揮対策として、材の利用、里山の利用、空間利用があることを知り、われわれもこの三つを実施していこうと考えました。木材の利用はもちろんですが、里山については、北海道本州島とは異なる北の里山ということで、樹液の販売やアグリフォレストリーを行おうと思いました。

実は、私たちが東南アジアに馬を輸出しようとしたとき、スリランカでアグリフォレストリーをやっていたのです。いわゆる熱帯雨林の中で、なるべく農薬を使わずにコショウ等を栽培していました。そこで、私たちも、林の中に在来種作物を栽培しようと考えました。今、私たちは、ヨモギや野草茶の材料になるものを森の中に植えて、シンパシーの中で農薬を減らしています。

そして、空間利用については、国土緑化推進機構さんのフォレストステージがいいのではないかと考えて、これら三つのことを全部合わせていけばいいのではないかと考え、今、何とかなっています。
現在は、約100ヘクタールの森に、常勤が3人、地域のおじいさんたち4人を非常勤として雇用できるくらいの収入があります。こういう感じの複層型、多層型の森林業をやっているわけです。

ところで、午前中の話にもありましたが、自然の中にあるもので人間にとっての有益種をあらためて探すことは大切だと思います。実は、すぐそばには大沼国定公園があり、私たちの土地は広い湿原地域もあります。

この上の部分がまた、この上のほうは酪農地帯で、私たちの土地がバッファゾーンとなっているため、森や自然を壊してしまうと、酪農地帯から出るふん尿が全部、湖に流れてしまいます。そこで、この湿原地域を守ることにもつながる「ヨシ原」の保全をヨシを建材として有効利用できないかということを、オランダと一緒に進めています。

それから、どさんこ種の馬は北海道発祥の和種馬です。今日の種の保存という話は野生種が話題でしたが、実は、家畜種においてもやはり、種が重要です。つまり、オリジナルで生まれたときの種が非常に重要で、それを保存するということです。

今日は、価値という言葉がよく出てきますが、私たちも、価値を確認することによって生き永らえることができないかと考えています。すなわち、森も素晴らしい、森林セラピーも素晴らしいと考え、その価値を提供することを実践しています。それに加えて、その中で雄種馬を保存し、人を育てるという価値を掛け算したときにより大きな価値が創出され、多くの共感をよび、それを経済価値かえ、自然環境の保全につながるように考えています。私たちは、今、それをミュージアム化しているわけです。


私たちは、ブランドと人はどんどん成長すると思っています。従って、このブランドを活用して、企業等にもどんどん仲間に入ってもらって、この価値を使いながら、森をつくっていこうと考えています。つまり、いろいろな価値を掛け合わせているのです。

それから、JR北海道産と北洋銀行さんの研修もやっていますし、今、わが社で働く、馬を調教するほとんどの人は、以前は皆さまがたのような会社で働いていて、少しくじけてしまったという経験を持っています。うつ病になってしまい、会社辞めたという人が、口コミで私たちの牧場にだんだん来るようになりました。そういう人は、コミュニケーションでつまずくことが多いので、まず、馬等を世話しながら、森の中で作業をしてもらいます。そうすると、ほぼ、他人と言葉を交わさずに、そういう所でずっと作業をしていると、だんだんと復活してくるのです。今度新しく牧場をつくる所には、そういう方と馬とをセットにして一緒に送るようにしています。つまり、自己実現と癒やしを後押しできるような場所をつくっているわけです。


私の事例発表は以上です。ありがとうございました。