『SDGs時代の森林×企業シンポジウム』
-持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい-

基調報告

「持続可能な開発目標(SDGs)と国内外の持続可能な森林経営の推進」
五関 一博林野庁 森林吸収源情報管理官

皆さんこんにちは。林野庁森林吸収源情報管理官の五関でございます。

今日は、持続可能な開発目標(SDGs)と国内外の持続可能な森林経営の推進というテーマでお話をさせていただきます。
本日お集まりの皆様、お伺いしますと、ほとんど企業の経営者の皆さんで、SDGsについてはご承知の方も多いということですが、中にはSDGsって何、という方もいらっしゃると思いますので、まず、その辺の話からさせていただきたいと思います。


まず、SDGsの前に実はミレニアム開発目標(MDGs)というものがありまして、これは途上国の貧困が1900年代に悪化していたということを背景に、2000年に国連ミレニアム宣言が採択されて、この中で2015年までに極度の貧困と飢餓の撲滅など、8つの目標が掲げられたものです。
これは一定の成果を上げたのですが、残された課題もありますし、また新たな課題も出て参りましたので、2015年に国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」というのが採択されました。この中で2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現しようということで17のゴールが設けられました。これがSDGsです。


SDGsの特徴ですが、まず一つ目は途上国だけではなく先進国を含むすべての国が取り組むものであること。それから、先進国の政府だけではなく途上国、民間企業、市民社会等が役割を果たすこと。それから、目標が増えていますが、これは俯瞰的な視点の下で総合的に取り組みましょうという意味であること。それから、人間中心、「誰一人取り残されない」といった考え方が反映されているという点にございます。


それで、日本ではなかなかSDGsという言葉が出てくることはないんですが、世界では、今やいろんなものにSDGsが結びつけられておりまして、例えば2015年、南アフリカでありました世界林業会議のダーバン宣言、これはこの宣言自体がSDGsに貢献するための森林・林業のビジョンだという扱いになっております。同じく2015年、皆さんご存じだと思いますが、地球温暖化対策のパリ協定、これを採択したCOPの決定文書の中でも、SDGsを歓迎するということがはっきり書かれております。あるいは昨年12月、生物多様性会議というのがあったのですが、こちらの方ではSDGs自体が生物多様性を強く反映したものであると述べられております。また先ほど挨拶の中でも触れられておりました国連森林フォーラムの国連森林戦略計画、こちらの方でも、これ自体がSDGsの実現に向けた森林関連の貢献の枠組みであるということがはっきりと示されております。


それでは、SDGsと持続可能な森林の関係というものをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
まず、先ほど言いました世界森林会議の際に採択されました「国連総会サミットへのメッセージ」の中で、森林を持続可能な形で経営する必要性についてはSDGsのゴール15に明確に述べられている、とされています。これについては後で詳しく見たいと思いますが、それだけではなく、ゴール6においても、水に関連する生態系の保護や回復がターゲットとされています。さらにそれだけではなく、森林は多面的な役割を有することから多くの分野のSDGsの達成に重要な役割を示しているということで、SDGsの1番、2番、7番、13番こういったものに貢献するのだと述べられています。また、何度も出てきますが、国連森林フォーラムの国連森林戦略計画の中でも森林・樹木の持続可能な管理経営は目標15の達成のみならず、SDGsの統合的な実現に不可欠なものであるということが書かれておりまして、やはり、森林の持ついろんな機能について述べ立てられております。


この、問題のSDGs15ですが、この中のゴールというのがこの赤字で示してある部分でして、「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、」の次に「持続可能な森林の経営」と、はっきり書いてあるわけです。その後「砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」と続くのですが、「持続可能な森林経営」はもちろんなんですが、森林だって「陸域生態系」ですし、また、「砂漠化」によって森林も失われていると、あるいは、森林自体「生物多様性」の一部であるということで、このゴール15自体が持続可能な森林経営によって達成されるものであるということになると思います。さらに、下の方にゴチャゴチャと12ほど上がっていますのが、これがターゲットというものでこのゴールとターゲットは一体のものであるということになっています。今日はちょっと時間もありませんので、いちいち説明しませんが、12のターゲットとゴールで森林等の持続性を発揮していくというようなことになっています。

それで、先ほどからも挨拶の中で述べられていますように、この国連森林フォーラムで作られました国連森林戦略計画、これは持続可能な森林経営のための地球規模の枠組みでございまして、その中に世界森林目標というのが6つ掲げられております。それぞれの目標の中にその目標がSDGsの達成にどう結びつくかということがはっきりと示されております。これもちょっと時間がありませんので、後で資料を見ていただきたいと思いますが、ザッと見ていきたいと思います。

まず世界森林目標の1番目。これは森林減少を反転させ、森林劣化を防止し、気候変動に対処するというものですが、この目標を達成することによってSDGsの中の水・衛生の6番のゴール、生産・消費の12番のゴール、気候変動、海洋資源、陸上資源、こういったいろいろなSDGsの達成に貢献するんだということがはっきり示されております。
同様に、目標の2番は、森林を基盤とする経済的、社会的、環境的な便益を強化するというものなんですが、これもSDGsの中の貧困、飢餓、教育、ジェンダー、水・衛生、成長・雇用、イノベーション、生産・消費、こういったゴールの達成に役立つということが書かれております。
また、3番目の目標、これは保護された森林面積、あるいは持続可能な森林経営がなされた森林面積、持続的な経営がなされた森林から得られた林産物の比率、これを増加させるというものですが、この目標を達成することによってSDGsの方のエネルギー、生産・消費、海洋資源、こういった目標も達成することができるということになっています。

また、世界森林目標の4番は、持続可能な森林経営の実施のための、大幅に増加された、新規や追加的な資金をあらゆる財源から動員し、科学技術分野の協力やパートナーシップを強化する、というものですが、これによってSDGsの生産・消費、実施手段、こういった目標も達成することができます。
さらに、目標の5、ガバナンスの枠組みを促進し、SDGsへの貢献を強化する、これを達成することによって、SDGsの貧困、飢餓、ジェンダー、平和、実施手段、こういった目標を同時に達成することができます。
さらに、最後の目標ですが、こちらはあらゆるレベルにおいて、協力、連携、一貫性及び相乗効果を強化するというものですが、これによってSDGsの実施手段のほうの目標も達成することができるということになります。

これを整理してみますと、SDGsの17の目標のうち、この緑の四角が、今申し上げました世界森林目標になるのですが、要するに14のゴールが持続可能な森林経営によって達成できるんだ、ということが明確に示されているということになります。


それでは、我が国のSDGsの実施の中で、この持続可能な森林経営、それから本日のテーマであります民間企業との連携、こういったものがどういうふうに行われていくのかということを見ていきたいと思います。
我が国においては内閣にSDGs推進本部というものが設けられまして、SDGsの実施を総合的かつ効果的に推進するものとしております。そして全閣僚がこの構成員になっておりまして、さらにNGO、有識者、民間セクター、国際機関等からなる円卓会議を設置しまして、SDGsに取り組むための国家戦略である広範な関係者との意見交換を経て、SDGs実施指針というものを決定いたしました。

この実施指針を見て参りますと、まずそのビジョンは、「持続可能で強靱、誰一人取り残されない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」、というものです。実はこの考え方が持続可能な森林経営の考え方と非常にシンクロしていまして、持続可能な森林経営の考え方が示されているのは1992年の地球サミットの森林原則声明なんですが、この中で「森林資源及び林地は、現在及び将来の世代の人々の社会的、経済的、生態学的、文化的、精神的な必要を満たすため持続的に経営されるべきである」とされているのですが、要するに色々な分野の統合的な向上を図るものが持続可能な森林経営ですし、現在及び将来の世代ということで、誰一人として取り残されない、というような考え方も入っておりまして、さらに将来の世代ということも入れてありますので、未来の先駆者を目指すということで、SDGsの実施と持続可能な森林経営というのは、かなり概念的に似ているんだということがわかると思います。
それから、SDGs実施指針の中に実施原則と、さらに8つの優先課題というのがあります。このうちの6番目が「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」ということで、持続可能な森林経営はこの中に入っています。

これをもう少し詳しく見ていきますと、具体的施策として国内でいろんなことをやっていくということがあげられておりまして、その中に「持続可能な森林経営の推進」というのが入っておりまして、また、国外の施策の中にも「世界の持続可能な森林経営の推進」ということが謳われております。そして、こうした国内、国外の施策によりまして、特にSDGsの2番(食料)、3番(保健)、14番(海洋)、15番(生物多様性)、こういったものに貢献していくんだということが示されています。


さらに、この持続可能な森林経営の推進について詳しく見ていきますと、国内においては、多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくために、資源の循環利用を確立、多様で健全な森林の整備及び保全等を行うこと、また、林業の持続的かつ健全な発展を図るために、効率的かつ安定的な林業経営の育成を行う、という方向性が示されております。これをどうやって測るのかという指標としては、森林面積、森林蓄積、保護されている森林面積、計画が策定されている面積、こういったものを使って見ていこうということになっております。
また国外に関しては、持続可能な森林経営に向けた取り組みを推進するために、国際的な政策対話や取組に参画し貢献し、途上国の森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減等を進めるということにしておりまして、こちらの方はODA並びに公的支出といったもので見ていこうということになっております。


また、SDGsの中で、2030年への道を歩き出すのは「われら人民」、この「われら人民」という言葉は国連憲章で使われている世界の人々を指す言葉ですが、これがビジネス、民間セクターのすべての人々を取り込んでいくものである、としておりますので、これを踏まえて日本の実施指針においてもSDGsの実施、モニタリング、フォローアップ、レビューに当たっては、民間セクター等との広範な連携を推進していくことにされておりますし、また、民間企業が有する資金、技術、これがSDGsの達成に向けた鍵であるということを明確に示しております。


では、この実施指針をどうやって推進しているかということですが、今年の7月にニューヨークで国連のハイレベル政治フォーラムというのがありまして、ここに日本政府が報告しております。この中で、国内の持続可能な森林経営の推進に関しては、資源の循環利用に向けた林業の成長産業化、条件不利地における森林整備等の推進、これは、先ほど林野庁長官から話がありました、現在林野庁が取り組んでいる施策とも一致するのですが、こういったことに取り組んでいるということです。


また、国外に関しては、途上国における森林の減少・劣化を抑止、あるいはREDD+という熱帯林の保全の活動を官民連携により推進し、これによって温室効果ガスの排出削減と吸収源及び貯蔵庫の保全及び強化、社会的、環境的、経済的な便益の発揮に貢献するということを報告しております。また、民間企業との連携に関しては、SDGsを自らの本業に取り込み、ビジネスを通じて社会的課題の解決に貢献している企業があるということを報告するとともに、政府としても民間企業のグッド・プラクティスの共有や評価、表彰等による奨励策を実施し、更なる連携の強化、イノベーションを生み出すための支援や環境整備に取り組んでいくといったことを国連に報告しております。


それでは、民間企業の皆さんの取り組みを、若干見ていきたいと思います。まずこれは、先ほど言いました国連ハイレベルフォーラムでの報告書の中でも紹介されているのですが、ヤマハさんがタンザニアでやっている、JICAの民間連携事業を活用した取組です。現地のNGOと協力して植林や持続的な森林経営を行いまして、これによって既存の楽器製造技術・販売マーケットを活かした資源の安定利用、材料の利用効率の向上の実現、材料の安定的な調達及び森林コミュニティの持続的な開発を目指す、ということをやられています。これはSDGsの15番(陸上資源)、12番(生産・消費)、8番(成長・雇用)、こういったいろんな目標に貢献するものになっております。


また、こちら外務省のSDGsのサイトで紹介されている事例ですが、株式会社レノバさんが、秋田県のバイオマス発電事業に出資している事例でして、国内の未利用材を使って発電を行い、木材などを燃焼することは、これはカーボンニュートラルにもなっており、このように未利用資源を利用することによって地域の活性化にもつながるということです。これはSDGsの7番(エネルギー)、13番(気候変動)、15番(陸上資源)、こういった目標の達成にも貢献するものとなっております。


また、「森から世界を変えるREDD+プラットホーム」という取り組みがありまして、こちらは途上国の熱帯林の保全のために民間企業・民間団体・政府機関・研究機関・関係省庁等オールジャパンで情報経験を共有して協働していくもので、現在約90の団体に加盟していただいております。こちらの方で様々な取り組みを行っておりまして、実際に、たとえばJICAがベトナムでやっているプロジェクトに民間企業の皆さんが参加しているような事例も紹介されております。
こういったプラットホームの取組自体が実施手段(SDGsの17番)、陸上資源(SDGsの15番)、こういったものに貢献しているということになります。


なお、SDGs推進本部では、民間企業のSDGsの達成に向けての優れた取組を表彰しようということで、現在、優れた取組を行っている企業や団体の皆さんを募集しておりますので、こういった取組をされている皆さんは、是非ご応募をしていただければ、と思います。


また、SDGsに示されている17の課題は、国際社会全体で取り組むもので、日本でも国民一人一人が自分のこととして取り組む必要があります。ただ、残念ながら認知度がまだ低いということが言えます。そこで、外務省ではピコ太郎さんをSDGs推薦大使に任命しまして、PPAP、ペン、パイナップル、アップル、ペンではなく、官民パートナーシップ(Public Private Action for Partnership)の強化をアピールしています。ところが、残念ながらピコ太郎さんがこの中で紹介しているのは、SDGsの「貧困をなくそう」と、「質の高い教育をみんなに」、でございまして、本日のテーマの持続的な森林経営と密接に結びつく「気候変動」あるいは「陸の豊かさを守ろう」、こういったものは入っておりません。で、これをチョットやってみましょう。(略)


ということで、PPAP、ペン、パイナップル、アップル、ペンではなく官民連携、による持続可能な森林経営でSDGsを達成しよう、ということで、私の基調講演を終わらせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。