『SDGs時代の森林×企業シンポジウム』
-持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい-

事例報告

「ESG投資の潮流下における企業にとっての持続可能な森林管理・利用」
飯塚 優子住友林業(株) CSR推進室長

 皆様こんにちは。住友林業の飯塚でございます。

非常に立派なタイトルをいただいて、何を話そうかなと思っているのですが、こういう機会をいただいた場合には、必ず会社の歴史からご紹介することにしています。約400年前に京都で書物と薬の店を開いた住友政友という人が住友の始まりですが、「南蛮吹き」という新しい銅の製錬技術を開発し、1691年には、愛媛県の別子に非常に純度の高い銅がとれる銅山を発見します。このとき江戸幕府から、銅の採掘権とその周辺の山林の伐採権を得ました。だんだん時代が進むと掘削技術が進歩してきますので、坑道を支えるための坑木と銅の精錬のための燃料として、木が大量に必要になりました。

別子銅山の周辺には当時約12,000人住んでいましたが、過伐採と精錬の際の亜硫酸ガスによる煙害により、左側の写真にありますように一木一草もないところまで自然が荒れてしまいました。当時の別子銅山の支配人である伊庭貞剛は、「自然の恵みである銅で事業を行っているのに、自然を荒れるままに任せておくことは天地大道に反する」ということで、これを元に戻そうと1894年に「大造林計画」を樹立しました。多いときには年間200万本以上を植樹し、銅山から得られる収益以上をこの植林の事業につぎ込んだと伝わっています。CSRという言葉が生まれる前から、120年以上前から、木は伐って使ったら、またきちんと植えるという「保続林業」の考え方をしてきてきました。画面右側に2003年の写真がありますが、別子銅山は現在、青々とした森に戻っています。当時、住友林業という会社があったわけではなく、住友家の中で木を調達してくる部門だったわけですが、私たちの会社の一番のDNAは、先ほど林野庁長官のお話しにもありましたように、木は、植えて、育てて、伐って使って、また植えてと、この循環をしっかりやっていくっていうことが、ビジネスにとっても、自然にとっても非常に大事だということが、本当に身にしみてわかっている会社だというふうに考えています。

住友林業は、実は林業だけを事業としているわけではなく、戦後になりますと、高度経済成長期を迎え、戦争で焼けた多くの家を建て直すため建築資材の需要が急増したため、自社社有林以外からも木材の調達をはじめます。さらには国内だけでなく外材の輸入も手がけますが、商社機能として木材の流通を担うだけでなく、自分たちで木造の家を造ったならもっといい家ができるんじゃないかということで、この40年ぐらいは、木造の戸建注文住宅の事業も行っています。皆さんの中には、住友林業というと家の会社かなと思われる方も多いかもしれません。最近は、木の価値をもっと膨らませていこうということで、木質バイオマス発電事業や、木質を多用した有料老人ホームなど、色々な事業を行っています。国内には、社有林が約46,000ヘクタールあり、これは民間企業では第3位の面積です。北海道、住友林業発祥の地である愛媛県、九州と、それから和歌山などにも森林がございます。海外でもパプアニューギニア、インドネシア、ニュージーランドで、約230,000ヘクタールの森林管理を行っています。

会社としては、1691年の別子銅山開鉱の年を創業としていますが、株式会社になりましたのは、財閥解体で戦後の1948年に住友林業株式会社が設立されました。売り上げで見ますと、木材建材の商社をやっている部分が4割ぐらい、国内の住宅事業の売り上げが4割ぐらい、海外で合板など木質パネルの製造事業のほか、オーストラリア、アメリカで木造の住宅事業を行っていますので、この売り上げがいま2割ぐらいあります。売り上げ別に主な事業をご紹介していくと、実は林業はなかなか出てきませんで、「その他事業」という中に、海外の植林、国内の社有林の売り上げが入っているという状況です。残念ながら主要な収益源ではないということですね。

様々な事業を行っていますが、住宅事業では戸建注文住宅ほかにも賃貸住宅も造っていますし、リフォームやリノベーションなども手がけています。木に関することでいきますと、新興国を中心に、まだ15歳から30歳までの若い世代がたくさんいますので、その人たちが育って家を持つことになったら、やはり木材というものが必要になりますので、どうやって個々の需要に安定的に応えていくかというところで、私たちは、早くからこの植林事業を海外で展開しています。

そのほかにも、材を出す産業植林だけではなく、環境植林ということで、荒れ果ててしまった森林の再生も行っています。これは実は、自分たちの名前でやっているわけではなく、たとえば保険会社さんが、紙をたくさん使うから植林したいという社会貢献プロジェクトを、私たちはコンサル事業として受けまして、インドネシアの荒廃地を元に戻すというようなことも行っています。それから先ほど申し上げましたように、木というのは材料にするだけではなくて燃料にもなりますので、いま全国4カ所で木質バイオマス発電の事業を行っています。そのほかに「緑化」という言葉がありますけれども、私たちは「木化」という言葉を造りまして、いままで木造でなかったものを木造化する、もしくは内装を木質化する、ということで木化事業を行っています。老人ホームや幼稚園、盲導犬の訓練施設とか、商業施設や店舗を手がけています。画面の一番右下にあるのは、トヨタさんと一緒に造った「SETSUNA」という木で造った車です。このように木の価値や可能性をどう広げていけるかというようなことも、色々トライしながら事業を行っています。

また、スピーチの機会をいただいたら必ずお話ししていますが、先ほどから色々お話しにでていますように、日本というのは世界の中でも非常に有数の森林大国です。森林は、河口さんのお話しにもありましたけれども、木材を出すという「材料」面だけではなく、CO2の吸収をする、それから生物多様性保全、水源かん養、もしくは木が根っこを張って非常に水を蓄えますので、土砂災害などの防止に役立つとか、また、私たちは森に行って森林浴という言葉もありますけれども、レクリエーションとか、非常にたくさんのこの森林の公益的機能があります。しかし、この機能が実際にはどれくらいの価値があるのか。これは、色々試算があって一時期75兆円という試算が出たこともあるりますが、なかなかどれぐらいの価値なのかというところがわかりにくい。でも、土砂災害による被害っていうのは、本当に最近台風が起こるとたくさん出てきますし、それは金銭換算することが難しいですけれども、この公益的機能っていうものをどういうふうに維持していくかということも、私たちの大事な使命だと考えています。

そんな中で、このチャートは国産材の自給率の推移ですが、一番低いときには18.8%ということで、2割を切っており、これを林野庁が2025年度には50%まで上げたいという目標で、いま33%まで国産材の自給率が上がってきています。そういう意味では、皆様の国産材とか木とか木造というものに関する関心が非常に高まっているかなと思いますので、私たちにとっては追い風が吹いているんじゃないかなと思います。さきほど河口さんが、森を大切にする気運が高まってきたとおっしゃいましたが、実は大切にして使わないでそのままとっておくだけではダメで、実は日本の森は、伐って使わないといけないんです。戦後に、やはりたくさん家を建てるので、山を持っていると一財産あるっていうふうに、みんなが思っていた時期がありますけれども、たくさん木を植えたと、で、植えたんだけれども、それがいま70年ぐらいになって伐期を迎えているのに、なかなか使われていない、安い外材も入ってきますし、林業界のその高齢化の問題ですとか、過疎化の問題も進んでいて、誰の持ち物かもわからない森があったりして、この「伐って使う」が進んでいないと。適切に手を入れられない森は、このように朽ち果てていって、こうした森が逆に土砂災害の原因になったりしています。

私たち住友林業は、国内に46,000ヘクタールの森を持っている会社ですので、どうやって社有林をきちんと保っていくかということで、ISO14001の認証を取得したり、認証材SGEC『(緑の循環』認証会議・森林認証制度)、これは日本独特の認証の仕組みなんですけれども、これを社有林で100%取得いたしまして、あとは生物多様性保全の取り組みと、いうようなことを、こつこつとやっております。生物多様性保全に関しても、社有林では独自の社内ルールを設けまして、そういうものがトータルになると住友林業グループ環境方針というものに集約されるわけですが、こういうことをこつこつとやって参りました。そのほかにも、カーボンオフセットの取り組みをしてみようとか、もしくは自分たちの社有林で培ったノウハウっていうのを、ほかの人たちにも提供できるんじゃないかと。最初に会長が、地方創生という話しをしましたが、地方の自治体さんに、私たちが行ってきた施業の工夫をご紹介しています。

こういう活動をですね、ESG時代ということなので、私たちはどうやって投資家の方々にお伝えしていくのか。私たちは、こうした事業の取り組みを投資家の皆さんにお伝えする必要がありますが、CSRレポートを作ったり、ニュースリリースをしたりして、いまどういう取り組みをしているかお伝えしています。先ほど、足立さんのお話にありましたように、色んなところからアンケート調査がきます。CDPの気候変動にも回答していますし、CDPウォーターにも回答していますし、全部で32社というお話しがありましたけれども、CDPフォレストにも回答しています。ここに加えて最近さらに色々なところから、どういう森林の管理をしていますか、どういう木材調達をしていますかという問い合わせがたくさん増えています。地球温暖化の原因の15%~20%が森林減少によるものだという報告がありますので、やはりパリ協定以降ですね、森林っていうのは材をどうするかっていうだけではなくて、いかにそれを守っていくかっていうことで様々な問い合わせがきます。そんな中で私たちは、幸いにも7月にGPIFが発表しましたESGの3つのインデックスに3つとも組み入れられることができまして、CDPの気候変動でもAリストに入っています。こういうことで、非常に評価はいただいていますが、それでもやはり先ほど申し上げたように、どうやって森林の価値を皆さんにわかりやすく伝えるのかということについては、まだまだ悩んでいるのが現状です。

例えば、国産材の輸出を増やそうとか、そういう目標をたてるときに、立米(立方メートル)で目標を立てるんですよね。何立方メートルということで。ところが、投資家の皆さんは、それはいくらですか、という聴き方をしてきて、もしくは私たちが扱っている木材のうち、金額の何%が認証材の販売によるものですかというような問い合わせが、最近増えています。環境への取り組みや社会面への取り組み。で私たちがこれまで考えてきた立米で計ったり、回数で計ったりという方法は、社内取り組みへの社員のモチベーションを上げながら、どうやってここの目標をコントロールしていこうかっていう工夫だったわけですが、投資家の皆さんが知りたい「いくらですか」というようなところにどうやってそこをわかりやすく開示していくかということが、まだまだ我々の課題だなあと感じています。

先ほどの森林の公益的機能もきちんと金額で示せるようになれば、木材がどれだけ取れるようになるかというコンサル事業だけではなくて、どれだけ生物多様保全に適した森を作れるかとか、どれだけ水源かん養の力を増やせるような森林管理ができますという、新しい価値の増やし方、そしてコンサル事業も行っていけるのではないかと思っています。まだまだ勉強中ではありますけれども、森林の価値というものをですね、皆さんが思っていた出材の部分だけではない、河口さんがおっしゃったような幅広い価値をどういうふうに世のかなに提供していけるか、これが住友林業に与えられた使命だと考えています。

どうもありがとうございました。