『SDGs時代の森林×企業シンポジウム』
-持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい-

「世界に評価される、多様な地域資源を活かす「木の建築」」
 堀木 俊隈研吾建築都市設計事務所

ご紹介いただきました隈研吾建築都市設計事務所の堀木と申します。若輩者ではありますが、みなさまにお話をさせていただける機会をいただき光栄に思います。

通常行っている建築設計の中で、木材を使う機会が多く、木材を使っていると、建材としての木だけではなく、その後ろに潜んでいる社会や、人間関係とも関わらざるを得なくなってきます。我々のような建築設計士がそういった事柄をどのように考えられるのでしょうか。今日は、我々の行ったプロジェクト等を通して、木材だけではない森に対しての考え方、素材と場所と人との関係性に関してのご報告をさせていただきます。

『触れる公共』。公共というと至極漠然としたものに聞こえますが、木材や素材に触れることで公共という概念をもう少し引き寄せていくような考え方ができないかと私は考えております。自己紹介になりますが、もともと鎌倉で生まれ、関東近郊に住んでいましたが、父の仕事の都合で色々なところに渡り住んできました。

弊社で働き始めてから6年ぐらい経ちまして、その6年の間に、30弱の数のプロジェクトをやらせていただきました。プロジェクトに関係して色々な場所に行くことができ、地図上の白い県以外には伺わせていただきました。その移動の中で、環境を見て比較をし、色んな人と話したり、その周りには自然っていうものがあって、そういうものを広義の意味での環境の違いを見ながら生きてきたというのが、私の人生です。

プロジェクトの中にはプロダクトデザインなどの小さなものから、大きい開発まで、色んなスケールの横断した仕事をやらせていただいています。その中で、ほんとに建ったものが○で、進行中のものが△で表しています。最初の方はやっぱり上の人がいて、直接施主さんと話せないので、なかなかもどかしい気持ちでした。ある程度年月が経ってきて、直接お話しができるようになってから、実際にものが建つようになってきたと実感しました。直接じっくり腰を据えて話すのが昔から好きだったので、そういう仕事の仕方を意識し始めた途端に回るようになってきました。やっぱり人と話すことはすごく重要だということが、この働き方の中で重要にしているということです。大きなスケールから小さなスケール、人と話すこと、その全体の関係性の中で、どうやって世界を見て、どうやって解釈するかっていうことを、建築を通して日々考えています。


アメリカの建築家・プロダクトデザイナーのイームズ夫妻が考えていた『パワーズオブテン』という10の倍数で世界を概観する映像作品があります。自分の皮膚の上から10倍の距離、そのまた乗数、どんどん宇宙の方に離れて行ったときに、自分の皮膚の中にある世界、細胞の絵と、一番離れていったときの宇宙がすごく似ているという発見なのですが。小さいとこだけ見るのではなく、大きいところだけ見るのでもなく、色んな視点を横断してみていくと初めて世界の中の相似形のようなものが見えてくると解釈できます。

次に建築の具体的な例に行きますが、外国の宗教施設にある装飾の写真をお見せします。日本の建築ではあまり、具体的には装飾と呼ばれるものは少ないですけれども、やはり装飾を建築は持ってきたわけです。それを研究している装飾研究家みたいなものが建築の周りにおりまして、このオーエン・ジョーンズは、大航海時代の装飾の研究家です。大帝国時代に、大英帝国時代の色んなネットワークを駆使して、色んな世界中にある模様をコレクションして一冊の本にまとめ、様々な世界を装飾を通して分析しました。

次は有名なル・コルビジェという人で、コンクリートを使って、機械的なものの美学をベースにしながら機能的な建築物を造ってきた人です。彼も幼少時代には、自然のパターンであったり、装飾のことを勉強していて、装飾が世の中をどういうふうにリプレゼントするか、それを再現して建築の装飾を通して、世界を伝えるかっていうことを、実は勉強していました。時は遡って、昔のポリネシア人も枝などを使いながら、世界をどういうふうに表すかということで、身の回りにあるものを使って地図を造っていきました。
これらの3つに見られるように、自分たちが暮らしている周りの世界をどういうふうにものにしたり、空間にしたり、目に見えるものにしていくか、ということを建築は装飾を通して行ってきました。
建築を通じて世界、場所を解釈して、切り刻んで解釈することをやっています。
ここで一つ、言葉遊びをしてみます。


これは、畠山さんという写真家の一つの、僕の大好きな文章なんです。
ちょっと暴力的に聞こえるかもしれないですけど、東京にあるビルを爆破したときに石灰が出てきます。その石灰を元あった鉱山にスプーンで一杯ずつ戻していくと、例えば山口県の石灰を集積した山が東京のビルによって元に戻るということになります。離れている場所と東京は、実は、素材という観点でつながっており、場所は物質の集合体であるということに気づかされます。


これはニーチェの言葉で、実は裏側にあると思ったものが表にあるという話です。実際に目に見えるってものをもって判断していくっていうことを、人間は、実は裏に何か大事なことがありそうだと考えるけれども、やっぱりそれを知覚するのは表側に出ている。物質の表面・素材の表面を通して知覚していくことで、関係を知ることができるんではないかと問いかけています。


これはまた別の話で、部屋の壁紙にお花の模様とかがあって、それを子供が見て追っている時の話です。部屋全体をこう見ていって、一個の花びらみたいなものが花畑になって部屋中に広がり、そこに窓があって、外の木とつながって、その一つの世界を構成している要素がどういうふうに成り立っているのかというのを理解して、世界を理解するような場面です。
場所や空間は色々な情報の集合体であるというふうに考えることが出来る一分です。

公共デザインすることは、あまり関係ないように見えるんですけれども、一人一人の肌感覚であったり、その身体が感じるものをデザインしていくことが関係しているんではないかというふうに考えています。
そういうことを気づかされたのがですね、建築を造っていく職人さんていうのが目の前にいて、で、図面を僕は描いているんですけれども、職人さんは図面を見ているんですけれども、例えばそこの壁をもう少しなめらかにしてっていう言葉は、図面にはかけないんですね。なぜそれがいいかっていうと、その場所の空気を感じて、みんながそう思っていて、こういう方がいいよね、そういった共通言語みたいなものがあるんです。そういうものを手を通して伝えていくっていうことの壁にぶち当たりまして、建築は、実は図面を引く作業と別の作業があるんじゃないかと思いました。仕事の移動、人生の移動を経験しながら、こういう出会いに遭遇しながら、公共みたいなものは触れられるんじゃないかと、人とこう触れて、素材と触れていくうちに、その一つの場所を深く理解しているような気がしました。

ここからは我々が木材を使ってやっている事例をいくつか紹介させていただきたいんですけれども。木材を使いはじめるときのきっかけになった建物、町といえばいいんでしょうか、高知県の檮原にあるタウンホールですね。こういったように木質の空間を作って、ここでの実験は、床のフローリングを現地のスギ材を圧密にして作っていると。このときは、木造で、木を多用してやるということに対してすごく評価をいただいたと。同じ町で、町を通して木材の使用を推進している町であるので、宿泊施設を作りましょう、ギャラリーを作りましょうと。そういうときにまた、こういったことをやらせていただいて、その周りに森があって木があるっていう関係を見ながら、どういう形の建築が、どういうふうな現し方が、お互いの関係をきれいに見せれるかな、っていうことを考えています。

これが2012年にできた市役所です。長岡市の市役所でアオーレと呼ばれています。これはオープニングの日なんですけれども、建物の中にですね、赤い部分が中庭になっていて、雪国ですので、こういう中を土間空間と呼んでいるんですけれども、そういうところが人のコミュニティスペースになると。そこで地場産の木材のパネルですね、を作りながら全体の光を、外みたいな中っていうようなコンセプトで造っていきましたと。地場産の材を使っているんですけれども、何が面白かったかというとですね、1回視察に行ったときに、市民のお絵かき大会みたいなものをやっててですね、6割ぐらいの人がこの建物を描いていたんですね。そのことをパタパタと、我々は呼んでいるんですけれども、ある種のシンボルを作ることと、素材で柔らかく空間を包むこと。単純に木をいっぱい使うだけではなくて、人の心を掴むような建物を造ることという実験に対してすごくうれしい反応が返ってきた建物の一つで、我々は、このあたりから公共と素材ということを特に意識して造るようになってきました。サインなんかも、むかし残っていた建物の古木なんかを利用しながらやらせていただいていると。

これは十和田、青森県ですね、シティプラザ。先ほどのは土間だったんですけれども、これは周りに商店街がありまして、その当たりがさびれていると。都市的な物語があって、そういうものに対して道を、賑わいのある道を建物の中に引き入れたい、ということで、この赤い部分が公共スペースになっています。天井も県産材を使っていて、基本的に機能がある部屋は機能的に造っているんですけれども、人が集まる空間に対して効果的にアピールするものを造るというのが考えとしており、これはプレイルームです。

飯山の音楽ホールですね。こちらは形式としては似ているんですけれども、考え方としては雪国、ここも雪国なんですけれども、昔の民家の周りは雁木空間という、雪が降っても歩行空間を守るというような、ちょっと力強い構造でもたれた周りの縁側空間ですけれども、内側に雁木空間を設けて、そこでみんなが色んな季節でも集まれて楽しめると。そういうところに木材を使用して暖かい空間を作ろうという試みです。写真の状態はまだ物が入る前ですけれども、構造に対して少し横に渡すもの、これがベンチになったり、これが本棚になったり、ホールのチラシ置きになったりと、多様な使い方に対応できる設計になっています。これはホールなので、小ホール、大ホール、に対しても木材を効果的に使うと。音響の計画がありますので、反射のことを計算しながら木材のパネルをこのように使っています。小ホールも小さい気積ですけれども、天井に関しての音響計画を行ってこういうことをしています。

次は富山ですね。これは、キラリ・ガラス美術館と図書館と、あと銀行の施設が集合した建物になります。
こちらは先ほどの平べったい建物と違って、アトリウム空間、ビルにあるアトリウム空間がありますので、そこをダイナミックに、みんなが集まるように、その複合した機能がありますので、そういう違う用途の空間をどういうふうにアトリウムにつなげるか、その自然にここにつなげるかということで、計画をしております。
これも県産材ですね、使用した全体の中で、ダイナミックな斜めに抜ける空間と。いまここに建っているのがカフェの空間だとかお土産屋さんの空間なんですけれども、その上に図書館があって、一番、上にガラス美術館があって、本来であれば、その関係性を切ってですね、音をコントロールしてやるものを、敢えてつなげて全体を緩やかにつなげて、関係し合うようなアトリウムを造ったと。そこの中で木材が使われていて、全体の中で空間が竜巻のように上に行くような設計になっています。最近ではソーシャルメディアも発達してきていて、いまここで撮っているのがフォトスポットのような場所ですが、その建物の中でフォトスポットを一つ作るっていうのが建物を愛してもらうときにも重要だと、皆さんおっしゃっています。

次は最近建ちました、南三陸の震災被害があった商店街の復興の計画です。ここも三陸のスギを使っています。さんさん商店街という街のシンボルを復興して、最近工事が完了したものです。あまり難しいことはせずに、みんなが集まりやすい、市場のような空間を作っております。

ハウスビジョンというプロジェクトが去年ありまして、展覧会の中で組み立てられる木のパビリオンを作りました。人が持ち運べるスケールで、積み上げていくだけで作れる、家具になったり、建物になったり。そこで生産者の方と話しながら、次の時代の木の使い方を考えられないかと、色々チャレンジしました。その一部の材料が福島県で採用されていたり、住友林業の方々のやられている美蓄(美しく蓄え)の活動など、木を伐って使うということのほかに木を共有して、素材を中心に地方同士が交流したりとかっていうことが起こっていて、一つ面白い実験だと思っています。ちょっと色々な事例を紹介しましたけれども、素材、木を中心に色んな人がつながって、場所を考えるきっかけになればいいなと、そのきっかけになる建築を作っていければいいなと考えております。

ありがとうございました。