『SDGs時代の森林×企業シンポジウム』
-持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい-

パネルディスカッション

「SDGs時代の企業の森づくり・木づかいの価値・意義」

《パネリスト》

  • 五関 一博(林野庁 森林吸収源情報管理管)
  • 足立 直樹((株)レスポンスアビリティ 代表取締役、(一社)企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB) 理事・事務局長)
  • 河口 真理子((株)大和総研 調査本部主席研究員、グローバル・コンパクト・ネットワークジャパン 理事)
  • 飯塚 優子(住友林業(株) CSR推進室長)
  • 堀木 俊(隈研吾建築都市設計事務所)
  • 石川 晋平((株)小湊鐵道 取締役社長)

《コメンテーター》

  • 出井 伸之(美しい森林づくり全国推進会議 代表)

《コーディネーター》

  • 宮林 茂幸(東京農業大学 教授、美しい森林づくり全国推進会議 事務局長)

宮林

五関さんからは全体的なお話がありましたので、一番最後にお願いいたします。まず、事例報告をしていただいた皆さんから今日のテーマであるSDGs時代というキーワードと、それに対するその森の価値とがどういう意味を持つのかについて整理をしていただきたいと思います。最初に面白いデータがあります。事務局が用意したものですが、スライドをお願いします。

これは実は、持続可能な社会づくりに向けた消費者の意識ということで、子どもたちが、地域開発のために森林伐採が進んでいますが、その影響について、どうなっているか、知っているか、あるいは将来どうしたらよいか、ということを聞いているものです。これを見ると、各国がいっぱい並んでいますが、森林の伐採やその影響などについてあまり認識していない。あまり関心がないという結果が出たのです。
私たちは、ずっと美しい森林づくり運動などを、10年間くらい進めてきましたが、子どもたちに何をお話ししてきたのかという感じを受けてしまいます。しかし、この結果は、逆に言えば今どん底で、これからどんどん上がっていくというわけですから、関心があがる傾向に向かっていく、現状は、悪い傾向にありますが、将来は良い方向になることと思います。ただ、その中で、森林や木材への関心度は、国によって違ってきますけれども、これから森林をどう価値付けたらいいかについて、大きく期待したいという値が、13.8から8.8%と、関心の中身が少し落ちていることです。これはちょっと問題かなと思います。

本日の議論はまさに社会全体の目標を持ちながら森を守っていこうということになります。そのような意識の違いの中で、ここで再度、森の価値とは何だろうかということをお聞きしたいと思います。まず里山を再生していらっしゃる石川さんから。

石川

― 準備中 ―

宮林

森の価値とは、みんなが持っている共通価値という中で、安らぎだとか、あるいは楽しみだとか、安心だとかというものを与える場面、そしてその中に、現代風の活動が加わって、そこに集まりが出てくる。そしてそれはつながりへと発展する、そんな関わる構造というものでしょうか。ありがとうございました。
堀木さんいかがでしょうか。

堀木

ものを作る仕事ではあるんですけれども、森というように一つの言葉をピックアップしても色々な側面があります。依頼の内容にも木をつかってくださいという仕事もありますし、森をどうにかしてくださいという漠然とした話もありますし、切り口が多チャンネルに及びます。
私は設計をやっていますが、幸い都市計画などの大きなスケールから、プロダクトデザインというの小さなデザインまで、そのいくつか切り口で森と関係することが出来、いろんな森を知ることができました。そういうふうに森の多チャンネル性を認識するような取り組みがもっと起こればいいな、と思っています。

以前に、単純に和紙を作っているおばあちゃんに会いに行ったんですけれども、例えば和紙という切り口としてあったとしても、最終的に森を気にすることになっていました。その町では昔から和紙を作っていたんですが、川からの土砂災害を防ぐためと和紙を作るためにコウゾを植えていたようですが、色々環境が変わって和紙が持っている多様な切り口がなくなってしまって、最後におばあちゃんは一人で半ば意地になってやっていました。なんかやめそびれちゃったみたいなことを言っていましたが、その和紙、すごくいい和紙なんですね。和紙を切り口に環境を見るとか、森を見るとか、その時に多チャンネル性に気が付きました。その時、和紙を工芸素材として使用するためにその町を訪ねたので、森に対してプロジェクトを作ることができなかったんですね。すごくショックで、ただ色々な切り口を持っていれば、そこでフォローアップできるな、新しい取り組みができるのではないかと感じました。

宮林

ありがとうございました。まさにいま見ている視点というのは、切り口が大事だということで、和紙の話をされました。和紙というのは、昔私たちの生活には欠かせないものであり、売り買いもちゃんとできていました。それは単に自然資本というとらえ方だけではなくて、産業資本としての位置づけが出てくる。ここで両方の関わりが、現代風にいえば総合的な価値が森に生まれてきている。そういう中で、単に和紙を生産するということだけではなく、生産する中におばあちゃんのお話がありましたけど、やはりその暮らしの豊かさとか、和紙の持っている様々な価値がある。つまり、一つの価値ではなくり、色々なものが含まれている。そのような切り口によって、森林は色々価値判断されるのではないか、ということだと思います。まさに色々なことが関わって、価値化されるということです。

飯塚さんの場合は難しいですけれども、御社にとっては昔から森林を育てることが、結果的に持続を担保することになる。それが実は先ほどお話しの中で、実際森林はあまりお金になっていません、という話がありましたけど、その時の御社の森林のとらえ方というのは、いま何なんでしょう。

飯塚

予告通り難しい質問をありがとうございます。
私たちは自然と人に優しい木という自然素材を使って、豊かな持続可能な社会を作っていくことに貢献するというのが私たちの経営理念の中に入っていますので、やはり木というものがすべての事業の中心にあって、それで家を作ったり、バイオマス発電を行ったりということなので、単年で見たときに、社有林から利益が上がっている、上がっていない、だからやめる、やめないということではなく、全部つながっている話なんですよね。森がすごく生活から離れてしまっているので、森や木の価値というものがなかなか感じられない部分もあると思います。

住友林業は、20年前から富士山の2合目で、96年の台風17号で風倒被害ところの、その天然林の再生のプロジェクトを社会貢献でやっていますが、私たちが生きている間には森の再生は完成しないので、地元富士宮市の小学生を毎年1,000人ぐらい呼んで、環境学習をやっています。やはり次の世代を担う子どもたちが森の大切さを理解して、守ってくれないと森の再生が完成しないのです。富士山「まなびの森」は、90ヘクタールの国有林をお借りしているのですが、台風で倒壊した30ヘクタールと、元々残っている天然林と、それからヒノキの人工林があり、まだら模様に入り組んでいるのが特徴です。子どもたちに天然林を散策してもらって、木肌にさわってもらったり、葉っぱのにおいをかいでもらったりと同時に、人工林の見えるところにいったら、「こうやって人間が手を入れて育てている木もあるよね」と説明し、「みんなの身近に木から作られているものは何がある?」といった問いかけもしています。

最近では魚の切り身が海を泳いでいると思っている子どもたちがいるともいいますし、本物の木とシートで印刷した木の机の違いがわからない子どもたちがいる中で、地道にこの教育を10年以上やってきました。木や自然に直接触れることで、人間が手を入れ、使っていく森と、守っていく森と二つあるよと。アマゾンの熱帯林が消失している話しと日本の国内の森をうまく手を入れて使っていくということと、これには違いがあるねということはぜひ伝えたいと考えています。私たちの中では、それこそ式年遷宮と同じように、非常に当たり前のこととして皆さんに伝えていきたいメッセージとして、社員一人一人が思っていることです。

宮林

大変難しい質問をしてしまいましたけれども、おそらく、御社にとって色々専門の分野があるけれども、現在、森林は全国的に、経営は難しい、金にならない。しかし、人づくりという側面にとっては、十分役に立つている。社員教育とか、子どもの教育とか、色々な場面で森林を活かしていく。これが会社の森林に価値を生むところで、社会的貢献度であるといえる。やっぱり人づくりとか、健康とか、そういうところに関わっており、私たちの暮らしの中に関わって大きな価値が、森林にはあるということが再認識されました。事務局すみません、もう一つスライドを出していただけますか。

これは、2020年、2030年を目指して、経済社会のシステムがどのように変化するのかを、社会の消費の動きを予測したものです。出井代表の言葉にもありましたが、消費の形が、大量生産志向からブランド志向に変わってつながりの志向になるという、色々なものがつながって消費がされてくるバリューチェーンになっていきますということがいわれています。今までの消費の構造とは違ってくる、すると、生産の構造もだいぶ変わってくるという方向性を示していると思います。今、日本はオリンピックに向けておりますので、2020年までは生産力優先でいくけれども、それ以降は大きく変わるということです。その大きな変化を踏まえて、私たちは新しい社会にその変化を見込んでいかないといけない、そのようなことを踏まえて、国際社会の中では、SDGs問題に対して参加している企業がたくさんある。例えば、サプライズマネーような形でチャレンジしてきている。こうした中で、今日、日本の企業はどのように動いているのか、お話ししていただきたいと思います。

足立

日本がどう動いているか、ということなんですけれども、その前提として、まず、何で世界がそういうふうに動いているのかを、もうちょっと確認させていただきたいと思います。
それは、要は森林資源、あるいは里山というような自然資本に人間の生活が依存している、ただそれが、そこから少し、いやかなり乖離してきてしまった。経済が乖離してきた中で、この100年間経済活動が行われてきたと思うんですけれども、そこが、もう乖離しすぎてしまって、このままだと続かないということに気づいた、ということだと思うんですよね。

そこがちょっと不思議なのがですね、日本というのは、やはり里山の話がありましたけれども、一番その自然とふれあいながら共存するってことをしてきたんですけれども、割とそこにまだ気づく人が少なくて、今までのビジネスモデルで、まだこの先もいけるんじゃないかと、20世紀のビジネスモデルでやっていけるというふうに信じているところがやはり多いようなんですね。一方、逆にアマゾンの原生林をばんばん伐ってきたような企業であったり、そこにお金を出すグローバルの投資家が、このままだと10年先、20年先にはもう続かないなと、なので、ちょっとその前でブレーキをかけようとし始めたというのがいまの状況なんじゃないかと思いますね。

日本の中でも、もちろんそのことに気づき始めている企業さんがいくつかあって、住友林業さんもそういう中の一社、だからこそああいう色々な投資家の方からも評価されていると思うんですけれども。ただ、その中でちょっと残念なのは、よくそうした企業さんがおっしゃるのは、一般の消費者の方が、なかなかそこをまだ応援してくれない、たとえば住友林業さん、先ほど国内にたくさんの森林をお持ちで、だけれどもそれが必ずしも価値につながっていない、売れていないとのお話がありました。まさにそこだと思うんですよね。

私たちは、多くの消費者の方が家を立てるときに国産材、県産材を選べばそういう問題はなくなると思うんですけれども、それよりも、木で家は作った方が快適だよね、でもそれはどうやったら安くできるのかなと、まだそこの部分なんじゃないかなと思います。もちろんそういう取り組みがないわけではなくて、先ほどの隈研吾事務所の様々な作品なども、県産材を使いながら公共施設ができているのを、私も非常に素晴らしいと思ったのですが、そこをもう一段、さらに一人一人の消費者にどのように訴えていくかという課題をいま持っているというのが日本の現状なのかな、と思っています。

宮林

ありがとうございました。かなり掘り下げていただきました。
私たちは、やはり消費者として、こういった考え方を持っていなければいかないのではないか、企業は大方わかっている。新たな社会において、その価値観をどうするかというと、消費者の段階ではまだまだ浸透していないことがわかりました。

しかし、遷宮をみると、その価値観は、昔から社会一般に共通して繋がってきている。というお話が河口さんからありましたけれども、河口さんは、今の時代における森林の価値観についていかがでしょうか。

河口

先ほどのお話で遺産を資産にということだったんですけど、式年遷宮はまだ遺産なんですね。まだ資産と思っている人が少ないので、これは資産だよという形でお話をしているんですけれども。里山もそうですし、式年遷宮もそうですし、鎮守の森もそうですけれども、そしてその里山に手を入れる、炭を焼く、山菜を採る、キノコをちゃんと選別する、和紙を作る、そしてそれを使う技術ですね。ストックをフローとして使えないと、単なる塊【遺産】なので、使う技術というのが必要だけれど、それがまだ遺産で。そのうちの一部を取り上げて資産化しているというところで小湊鐵道の取り組みは非常に注目されていて、これが日本中で同様の取り組みを行っていたら、別にグッドデザインではなくて普通のデザインになってしまうと思うんです。

これが、ある意味小湊鐵道は別に当たり前で、100年前に小湊鐵道の取り組みをを行っていたらすごく目立っていたんですけれども、どこでもやっているよね、となるのが本当のゴールだと思うんです。ですが現状はそうではないので、そちらへ持って行くために、まず遺産の中から棚卸しをして、これって使えるじゃないかと思うものを、皆さんがお家へ戻ってから古くさいものを一度出してもらいたいです。

そして、やっぱりこれから脱炭素の時代というのは、炭素がない時代に戻るという知恵を選ぶと思います。この間、商船三井の方と話をしていたら、まじめに帆船で船を動かすことを考えていらっしゃいました。それで、鉄鉱石などを運べないかというお話で。昔だって、ついこの間までもそうだったんですよね。帆船で世界大航海などをしていたんです。そういう発想に逆転しているんですね。そこの知恵は炭素の前の時代のもので、それを今の技術でバージョンアップをしていくことになります。そういったことを見ていく上で森というのは、先ほど多面的な形の話がありましたけれども、本当に見る人によって、入る人によって色々な価値がいっぱい引き出しがあって引っ張り出せると思うので、いろんな方がいろんな形の入り方をしていくと、出てくるし、プライドを持って日本の森っていうのを見て、だから大切にして、自給率3割を、5割にあげていこうという国民的な意識にもなるかなと思います。

宮林

価値観というのが大きく、生産構造でどんどん拡大していく、生産力を拡大していくうちに、少し価値観が変わってきたという話がありました。しかし、価値観が変わってきたこともあるけれども、実は、森林という財産や資産をうまく使う術があったのに、それが忘れられてきた。しかし、それは現代社会にまだ残っているということです。そのように観たときに、森林の価値は非常に高まってきているので、古くからの関わりと術を掘り起こしたらどうか。というお話でした。

先ほど、五関さんからは、大変素晴らしいパフォーマンスをいただきまして、ありがとうございました。そういう中では、まさにSDGsの時代の中における森林は多様な考え方があるけど、SDGsは、社会づくりを総合的に進めるということが基本であるけれど、その取組の中で、森林は一番わかりやすいところにある。というお話でしたが、今後、林野庁として盛り上げていくお話はあるんでしょうか。

五関

私どもは、もちろん、伝統的には森林の価値は、木材生産だというふうに考えていたわけですが、一方で、森林に多面的な機能があるということも訴えておりまして、それは例えば災害防止であるとか、保健休養であるとか、水源涵養であるとか、そういった多面的な機能、こういったものがあるので、森林には価値をやはり見つけていただいて、大切にしていこうと。そのために、やはり国民の皆さんに参加していただいて、日本の国の森づくりをしていこう、あるいはその森から作られた木を一所懸命使うことによって、たとえば温室効果ガスの排出削減などに役立てていこうということですね。

森林のいろんな機能に着目してやっていきましょうということを訴えさせていただいてきておりますし、それにまた、気づいていただいていろんな取り組みが起きてきているということだと思うんですけれども、まだまだ私どもとしてもその辺のPRが不足しているかなというところもありますし、そういうことで、もっとできることがあるんではないかなと、ということで考えていきたいなと思っています。例えば今年の森林林業白書では、企業の森づくりというのを取り上げさせてもらっていますし、そういった色々いい事例をですね、どんどん取り上げていって森林っていうのはほんとに色々な機能をもっているんだということを、もっともっと、皆さんと一緒に理解していきたいなというふうに思っています。

それから、もう一つ、私のプロフィールで紹介させていただいていますように、外国で何度か仕事をさせていただいておりまして、そうすると、やはり外国の皆さんは、森林の価値っていうものを非常によくわかっているなと。例えば、遷宮の話しと共通するんですけれども、ベトナムの奥地で焼き畑をやっている少数民族の皆さんは、実は、焼き畑をやるのは自分の村から遠いところでやっていて、自分の村の周辺の森林はしっかり守ってたりするんです。ですから、そういった途上国の人たちは、日本人は森林から疎遠になってしまったけれども、途上国の人たちは森林とまだまだ密接になって生活をしていると。そういうところでも皆さん、色々困っているので、やはりCSRとか、あるいはもっと積極的に森林保全に協力しなくちゃいけないわけですけれども、それを一方的に先進国から途上国への支援でなく、その現地の人たちの森林に対する考え方を我々も学んでいくと、双方向でですね、もっともっと森林を守り育てることができるんではないのかなと、そういうふうに考えております。