『SDGs時代の森林×企業シンポジウム』
-持続可能な社会づくりに向けた、新時代の企業の森づくり・木づかい-

宮林

ありがとうございました。まさにCSVのような、両方が共通の価値観を持ち、一緒に活動するところにあるわけです。

次に入りたいと思います。SDGsというのは17項目のパネルが有ります。そのうちの環境とか社会づくりのところで森林など緑に関連する項目が出てきますけれども、17項目のうちの14項目で緑や森林が関わっており、森林と関連すると一番わかりやすく、すなわち、新たな社会を築くときに、環境教育の問題とか、あるいは平等の問題とか、色々な項目がありますが、結果的に森林との関連で考えるとわかりやすい時代が来ている。しかし残念ながら日本の場合、まだ、なかなかSDGsに着地していないところがありますので、これからは日本において進めるときに、どのような方法をとったらいいか、という点に議論を進めたいと思います。

スライドで、パネルが映っていますが、企業がいままでどういった形で地域の森林に関わっていたかについてみると、そこでは企業の持っているノウハウと地域が要請するものウインウインの関係になっていることがベターとしておりました。ところが、現在は、もう一つ進まない。それは、今までは企業が持っている手法によって多様な関わり方を進めていた。それに対して、森林とか、地域とかの対処法に対して、企業の持っている手法を関わせることによって、結果として何かを生み出すことができる。具体的には、観光ツーリズムを生み出してみたり、農業と関連した六次産業を生み出したり、企業が関わっていくことによって新しい価値観を生み出すという方向として捉えていくと、それぞれがウインウインの関係でもっともっと広がりが出てくると思います。そういったことを考えると、今後はどのように具体化して進めてたらいいか、ということに対して、今度は、足立さんの方からお願いいたします。

足立

一番難しい質問の最初ということで緊張するんですけれども(笑)。SDGsの中でいくつかいわれていることがありますけれども、SDGsってそもそも経済開発ではなくて、つまりエコノミックデベロップメントではなくて、サステナブル・デベロップメントというところにまず着目していただきたいと思うんです。これまでであれば、貧困に関しても、経済開発をすることで問題を解決しようとしてきたのですが、そうではなくて、サステナビリティを最初に出しているところ、そこが非常に特徴だと思うんです。

もう一つは、それをどうやって達成するかという中で、イノベーションを起こしていきましょうと、あるいはトランスフォーメーションをしましょうということを言っていますね。トランスフォーメーション、日本語で言うと、変革なわけですけれども、今までと同じやり方ではもう無理だよ、ということが最初のスタート地点であるんじゃないかと思うんですよ。となるとですね、これを森づくりあるいは企業が関わるという中でも、今までやってきたことを改良してとかですね、少し延長して少し効率よくしてというのでは問題が解決できないであろうということが最初から想定されている訳ですよね。じゃあそのイノベーションは何なの、というところは非常に難しいと思うんですけれども、私は一つのヒントは、いかに大量生産大量消費、別の言葉でいうとコモディティから抜け出すことじゃないかと思うんですよね。

先ほどのポスト2020年の経済社会システムということで出井代表の言葉にもありましたけれども、もう同じものをたくさん作るというのはいい加減いいわけですよ。あるいはそれをやったところで、もちろんそれが必要な場面もありますけれども、もう儲からないということがわかっているんですよね。それをいくら続けても、特に日本の場合には、エマージングマーケットあるいは新興国には勝てないわけですよ。だからこそ日本の木材は高くは売れなかったし、高く売れないから放置されたと。となると、そこにどう固有の価値をつけるかですよ。その固有の価値っていうのが、コモディティから脱するためのヒントだと思いますし、じゃその固有の価値というのが何かというと、私はたぶん土地の固有性だと思うんですね。小湊鐵道がなさったことなんか、例えばそれはもちろんほかのところでまねることはできると思うんですけれども、でも小湊鐵道がやった、あれは養老渓谷のこれだよ、っていうことになればですね、それは、他は真似はできないわけですよ。あるいは、伊勢神宮もそうだと思うんですけれども、伊勢神宮と同じシステムを他は真似てもいいけれども、やはり伊勢神宮は伊勢神宮でしかないわけです。その固有性というのをいかに活かしていくかっていうところに、私はたぶん次のヒントがあるのかなというふうに思っています。

宮林

ありがとうございました。色々なところに固有性がある。それをきちんと見ていく、そのことをわきまえて新しいイノベーションを起こしていく。それは、他のところでは真似できない、そこにしかないオンリーワンができあがってくるだろう。そのことが価値観をぐっと前面に押し出す可能性がある。それは、今までとは違った生産力視点であるというところが特徴で、それはサステナブルであり、それを優先する姿勢が大切であるということでした。

この辺について、では河口さんどうでしょう。

河口

いくつかお話ししたい、一番私の好きなテーマなんですけれども。まず最初にSDGsについてなんですけれども、サステナブル デベロップメント ゴールズを、持続可能な開発って訳しちゃったのがすごく間違ってると思っていて。これは発展と訳すべきで。日本人って、開発といったら「あ、途上国ね」という、いきなりそうなった瞬間に頭が途上国のって、半分ぐらいがそういうふうにいっちゃうので。途上国の問題っていうので頭の中でそっちの箱に整理されちゃって、いくら日本の問題なんですよと言っても、そこに入っちゃうと、なかなかこう、その後の話しが入ってこない、っていうのがあります。発展となるとどこの国でも適用するんですけれども、言われた後に先進国も関係しますと言われて、みんな頭の中がハテナになってしまうので、これは最初に開発と訳した人はすごい間違っていて、MDGsがそうだったんですけど、これは発展と訳すべきで、今からでも発展という概念に日本語では変えるべきだと思っています。

それからもう一つ、SDGsは何かということで、学校にそのSDGsに関する本を贈ろうという活動が始まってまして、これはクラウドファンディングでお金を集めたりしてるんですけれども、そこにあのコメントを寄せました。子ども向けなので、「SDGsとは何か。これは人間と地球母さんとの約束だ」と。地球が、人間が暴れすぎて地球母さんを痛めつけてると。いままで母さんは優しく、子どもがチョット暴れても許してくれてたけど、さすがにもうチョットいい加減にしろと、お母さんの堪忍袋の緒も切れそうになっている。地球母さんの上で人間が暮らしていくためには、人間は、こういう人間子どもは約束をしていくっていうのがSDGsなんだよと。そうやって社会を作り替えようとしているものなので、ある意味で憲法と同じであらゆることが入っていますと。日本国憲法でもね、両性の平等から天皇の話しから、戦争の話しから全部はいっているのと同じように、全部はいっていて、でも、それがないと持続的に暮らしていけないものだということです。

それから企業の取り組みで、先ほどの図を見せていただいて、企業の森が3つのフェーズがあって、2つめのところですと、企業がまる、企業の森づくり3つのフェーズというところで、企業の森1.0と2.0ですと、その関係性が、2.0だと企業の森があって周りに矢印が一方的に外へ出ているんですね。これは社会貢献としてやっているから、企業サイドとしてはコストなんですよね。社会貢献でコストと。これが、次の3.0になると、矢印が両方向になっています。これはソーシャルビジネスとしてやるということなので、ビジネスですからキャッシュフローを生み出して回収するとなると、ここでやることは投資として企業が投資判断を下すと。投資ということになれば回収ということを考えますから、最初のイニシャルのコストがたくさんでも、それ以上に回収すればいいじゃないかと。でも単なるコストだと、できれば減らしたいよな、みたいなところで終わってしまう。なので、ここにあるのは、どのような形にしてビジネス化しているということで矢印が両方向になると思います。

それで、両方向で矢印を持っていくっていう発想を持たなくてはいけない、そのためには、国産材っていうものが良いものであるいう価値を持ってもらわなければいけないんですけれども、日本人が国産材をいいものだと思うかどうかということに関して、歴史的にずっとそれを捨ててきたと思うんですね。例えば、私は祖母が嫁入りのときに持ってきた100年以上前の津軽塗の五段重っていうのがあって、100年前のものなんですけれども、今の我々の生活を見回してみると、昔の親が持っていたような昔のいいものっていうものがない。ヨーロッパって100年、200年前のいいそのアンティークな家具っていうのが身の回りにある。何が言いたいかというと、若い人でも100年経ったらこんなに価値があるんだというものに身近に触れる。ただ、我々の周りには、そういう家具だとか、そういう調度品というものが戦後なくなっちゃっていて、そういう50年、100年経ったものの、特に木の価値というものを知らないんですよね。そうすると、デパートに行って、安くできて見てくれがいい3万円の家具と、国産材の30万円の家具と、若いとその違いがわからないんですよ。知らないから、50年、100年の価値を。私も結婚のときに買った安い家具が壊れちゃって、高く買ったものは未だに残ってて、何十年か経って、ああこの値段の違いはこういうことか、とわかったんですけれども。

そういう意味では、公共の施設にですね、いい木の価値っていうものを作ってもらって、個人じゃなかなか買えないので。それで時間を経た価値っていうものがいいよ、ということを、色々な高級な質の高いもの作ってもらう。そうすると、そういうふうなものに価値を見いだす消費者というのが出てきて、国産材作る家具、国産材で作る家、そういったものは、今は高いと思うけど、たぶん30年後にこっちの価値が出るっていうことを理解できる、そういう消費者を作ることで変えていくと。同時並行で。企業はそういうところにアピールするような製品を開発していく。そういうつながりがあるといいかなと思います。

宮林

ありがとうございました。ある意味本物を使っていこう、本物をしっかりと見極める能力を持とう、ということだと思います。本物を子どもたちに供給するのは、社会づくりによってであり、お母さんたちに任されるのでは困っちゃった、これはわかりやすいかもしれませんね。そういう中で、社会の価値づくりや価値観を変えなければ、なかなかこの問題は進んでいかないだろうと、いうことでした。

ちょうど今、木材の価値と視点が出ましたので、堀木さんは建築屋さんとしての考え方はどうでしょう。

堀木

ものの話から少し飛びますが、時間の考え方が基本的にあると思っていて、相手が自然なので、人が利潤を生み出すペースと自然のペースの間に、どうしてもコンフリクトが起こると思っていあます。いろいろなところで矛盾が起こっているような気がしていて、いいものは長く使いたいけど、コンスタントに利潤を生みたいというのはいい例です。昔は、どの家にも床の間があって、床の間がどこにもあるから見せるための木が必要で、結果的にきれいに製材された日本の木が売れるという需要と供給のペースがありました。でも今は、住まい方が変わったので、そのペースが根本的にずれてしまっています。

こういったトレンドのようなものが変わることは往々にしてありますし、それは0か100かで推移するものでもないので、それが好きな人も少なからずそれぞれの時代にいるものです。パラダイムの変化に対してすごく機械的に対応するんではなく、先程ちょうど菌の話が出ましたけれども、たぶんそこには床柱が好きな菌も残っていて、もう切り捨てようとかじゃなく、ではそれをどうしようとか、この環境でどのように違うペースを維持しようなどと考えることがまだまだ産業全体に染み渡っていない気がします。そこで工夫して新しい知恵を出すとか、長中期の時間軸などのゆったりした設定を一度受け入れて、そこの色々な切り口を楽しむような態度が必要で、自然に感じる風流や移ろっていくものの美しさを、喜びとして考えることが大事なのかもしれないと思います。

宮林

ありがとうございました。先ほど足立さんが、新しい価値観の中で、今持っているものと違った新しいイノベーションを作り上げていくときに、時間の推移あるいは時間的な問題があると思われます。昔はこんなものを使っていたけど、今はそれとは異なった価値がある。しかし、この価値観というのは、社会の価値観が違う中での違いであって、昔のものと全然違うことから、そこに変わって新しい考え方あるいは価値が生まれてくる。これはイノベーションとして、また、商品としても生まれてくるとなると思います。そのような発展には、SDGsという、価値と考え方を作り上げないと難しいのではないかという感じを受けました。ありがとうございました。

飯塚さん、これからの発展の方向、そういったものについていかがでしょうか。

飯塚

ちょうど今、時間の話が出ましたが、先ほどご紹介した木化事業の担当者は、「経年劣化」という言葉が嫌いで、「経年美化」という言葉を使っています。家は建てたら新築からどんどん資産価値が下がっていって、20年経つとゼロ円になってしまうといわれるわけなんですけど、木は使い込むほどに味が出てくるので、実際には一緒に住んで手入れをすることによって、味が出てきて家族とともにその思い出になっていくという価値は、時間によるものはあると思っています。

あともう一つ、住友林業の森は儲かってないらしいよという印象になって皆さんが帰られると困るので、少し申し上げたいと思います。20年前に比べると確かに材の価格は下がっているのですが、私たちは民間企業でも一番初めに長期森林経営計画を作って、長く自分たちの社有林を使っていけるように適切な量を伐るという長期計画で施業しています。ある単年で儲けるためにたくさん伐るぞというやり方はしていません。長い目で見て事業を続けていくということなのですが、足立さんのお話の中にイノベーションという言葉と、土地の固有性という言葉が出てきました。実は、私たちは、四国の社有林の中で、林班を細かく分けて管理していますので、この林班のここから出たこの木であなたの家を造りませんか、というようなことを試験的にやっていました、まだ、数はあまり出ていませんが、こだわりを持たれる方は、どこから来た木かわからないのではなく、この新居浜の別子銅山のここの林班にあった木から我が家は造られているんだな、ということに喜びを感じてくださる方はいらっしゃると思います。

また、森ということではありませんが、イノベーションでいえば、木という素材はカーボンナノファイバーですとか、いろいろな形で素材としての技術開発の可能性がたくさんあります。化石燃料からプラスチックなどいろいろなものが造られている。燃料もそうですが、そこを木に置き換えていくことに多くの研究機関が兆戦していますし、ヨーロッパでも、CLT(直交集成材)は、ラミナを交互に重ねていくとそれだけ強さが出ますので、いまヨーロッパで8階建てや10階建ての木造の建物が増えてきています。日本でもそういう試みが出始めましたので、いままでなんとなく木造というと2階建のイメージがあったと思いますが、構造の技術開発や素材そのもの技術開発が進む中で、今までよりもっと大きな、大規模な木造の建物も出てくると思います。

こうしたイノベーションや土地の固有性という切り口からいけば、木の価値というのは、まだまだたくさんの可能性があると思いますので、SDGsを考えるときに、過去の延長線上ではなく、全然違う視点から考えていけば、もっといろいろなことができるという点は、本当にワクワクする可能性があるなと感じています。

宮林

ありがとうございました。決して儲かっていなというつもりはなかったんです。申し訳ありません。
固有性の問題をきちっと担保することによって、もっともっと商品の価値というものが明確になってくる。これは、おそらく地域の中のブランドとも関連すると思います。その一方で、木材の使い方に対するイノベーションだと思います。両方がマッチした社会、その中で何を求めるかというと、正に、環境と価値に着地点がある、といったお話しだったと思います。

石川さん、どうでしょうか。

石川

― 準備中 ―

宮林

新しい文化の交流によって自分たちの持っている価値を生み出していく。それが、里山イニシアティブが、国際化の中で動いています。これもそのようなお話しから出てきたと思います。さて、これから林野庁としては、この問題をどう浸透さ、発展させていくかというところに入っていくわけですが、林野庁代表として何かいい手法はないでしょうか。

五関

いやあ、難しい問たてなんですが、まずSDGsを考えるときに、やっぱり大切にしなくてはいけないのはSDGsの根本的な発想として、「誰一人取り残されない」と、いうのがあるわけですよね。ですからSDGsというのは世界中の人たちを幸せにするためのものであると。そういったときに、日本はこれだけ森林があるんだけど、まだまだ十分活用されていない。片や、アフリカの砂漠に近いところだと、燃料にするような木がどんどんどんどんなくなっていって、非常に苦しい思いをしている人たちがいると。まあ、そういったことを頭に浮かべると、そういった人たちのために私たちは何ができるんだろうと。

そうするとまず、まあCSR活動とか、現地に行って植林を手伝いましょうというのももちろんありますし、一方で日本の森林をもっともっと大切に使って木材自給率を上げれば、外国からの木材輸入を減らすことができて、その外国の人たちも、もっともっと森林を活用して豊かになれるんじゃないかと。そういったことにもなるんじゃないのかなと。まあ、そういうふうに森の価値を、本当に日本の皆さん、世界の皆さんに、もっともっと理解していただくということを、私たちはやっていかなくてはいけないのかなと。あの、都市鉱山という言葉がありますが、森林鉱山、森林にはまだまだ使われてはいない価値があるんだと、ということを、やはり訴えていかないといけないのかなと、そういうふうな気がします。なんか、役所の施策らしくない話しで申し訳ございません。

宮林

難しい質問をしてしまったかと思います。やはり森の持っている色々な価値があるわけです。今まで私たちは、その公益的機能あるいは直接的な経済的機能というような言い方でみてきましたけれども、それをトータルとしての価値、総合的な価値として捉えるというのは、SDGsの問題ができて初めての論点ではないかと思います。だから、現代はやっぱり良いポイントだと思います。そして、それに対して足立さんも、考え方を変えないと、このままいったら同じこととお話ししています。ここはまさに消費者と企業とが一体となって、また、各セクターが一体となって価値観を大きく転換するチャンスに来ている。これに乗り遅れちゃうと、また元に戻っちゃう、戻っちゃうというか、どんどん遅れてしまう。スライドにありましたように子どもたちもなかなか関心が薄いということから、この問題は、もっともっと色々なところで総合的に議論していかなければいけない。そしてまた施策的にも、プラットホームのような一つのセクターを作って、そしてそれをフラットで、日常的に議論していくような仕組みを構築する必要を感じます。

ちょうど12月ぐらいに森林環境税が議論されるものと存じます。その中で、企業さんからの資金も含めて一緒にし、事業化し、予算化するような議論を期待します。そして新しい価値観の時代に対してどのような森林を造成したらよいのか、地域の森林に対してどのようなモデルを造っていったらいいのか、等についてもっともっと細かく議論して、そしてグランドデザインを作り上げていくというような、仕組みが必要になってくると思いますけど、今日はその入り口論であったと位置付けたいともいます。ただ、大変多くの様々な議論が出てきましたことから、チョット消化不良なところがあります。まさに新しい考え方、価値観を養成しなければという感じを受けております。

足立さん、何かそれに対する提言はありませんか。

足立

もう自分の役割は終わったと思って、ホッとしていたんですけど…(笑)。
そうですね、まさにこれからほんとにそういう新しいものが始まってくると思うんですけれども、先ほど私はサステナビリティで、エコノミックじゃないところが違うんじゃないかと申し上げたんですけれども、とは言いながらも、やはりお金っていうのがこの世の中を動かしている、あるいは私たちはお金をメディアにしてやりとりをしている、ここは変わらないわけですね。そうすると、やはりそこにどういう新しい経済を作っていくのか、っていうことですね。その経済も、いままでのやり方でいくと、非常にグローバルになってしまう。で、世界の裏からものを買ってこれると。そっちの方が安い場合もあったと。そこでやはりうまくいかなかった、うまくいかないこともあるということがわかってきたわけです。じゃあ、それを今度は、どういうふうにちっちゃい経済を作っていくかっていう、そこがたぶん次のポイントになるかな、というふうに自分ではうっすら考えています。

宮林

ありがとうございました。小さな経済における一つのとらえ方ですね。これは、地域づくり論などでも、よく議論されるものです。小さな経済からものを考えていこうということ。それは地域経済の循環に欠かせない一つの論理ということです。

専門である先生、どうでしょう。

河口

小さな経済ということで、私は最近廃県置藩という言葉を作って、廃藩置県ではなく廃県置藩。地方に行くとですね、この町よりも、県庁所在地の町よりも、隣の県の町の方が仲が良くて、生態系的に言うと同じ流域じゃんみたいなことがあります。自然に一番ナチュラルな地域というのがあって、それが藩の領域だったんじゃないかと。では生態系を中心に考えると藩のほうが県よりはいいんじゃないかなと。そういう発想が必要だというのと、意識を変えるというところで、私たちは木とも離れた生活をしているっていうのと、火と離れちゃったのがいけないのかなと。

私は先ほどもログハウスをお見せしたんですけれども、2m雪が降るところなんですが、ストーブがあって、薪ストーブがあるんですけどね、薪で火を焚いているときの炎っていうのが、すごく不規則でランダムな火で、見ていると癒やされる。子どものときに読んだギリシャ神話で、プロメテウスが太陽の一部を持ってきて火にした、っていってね、意味がわかんなかったんですね。なぜかというと、当時見ていた火はガスの火だったので。ではなくて、木の火っていうのは、これはたぶん太陽のかけらだよなって。木というのは、お日様の光を得て炭素が固まってできているものなので、ある意味でそれが燃えるっていうことは、ミニ太陽がそこにできているのかなというふうに思うと、ずっと火を見ていると癒やされる人間とか、そういう暮らしがないわけです今。

火も見ない、IHになっちゃって火も見ないみたいな。そこで、火を見る、木に触れたら、森にふれたら、木の楽しさを知る、そういうことで、皮膚感覚でたぶんこれは人間のDNAで埋まっているもの、そういうものを掘り起こすことで、基本意識のレベルを変えて。ただお金を使うっていうお話しがあって、確かにそうなんですけれども、皆さんがお金を使う、投資をする際の決定判断の、その判断基準のなかに少しでもそういうものが、自分に直接返ってこないけれども長期的にそういうものが返ってくるであろうという方向に行くと、世の中かわりますね。さっき3万円と30万円の家具で、3万円安いじゃないというのではなくて、30万円の価値がわかるほうに行くような、ちょっとずつそういうような人々の意識を組み替えていくようなことができたらな、と思っています。

宮林

ありがとうございました。もう、時間になってしまいました。今回の問題をここでまとめるということができません。また、あとで出井代表がまとめてくれると思いますけど。

私たちは、ここで理解しなければならないのは、価値観の大きな転換が必要な時代が来ているといことです。これは、経済性を豊かにするという生産力を展開するという時代ではなくて、環境とか、暮らしとか、私たちの生活環境とか、に対して持続性を担保するような、そういう社会をどのように作っていくかについて、正面から考える新しいチャンスとして捉えなければいけない。それは、あまりにも私たちが木から離れたり、自然から離れた生活を送るようになったのは、私たち自身じゃないか。SDGsとしてどう暮らしたらよいかみんなで考えること、そこには社会の有り様というのがあることから、流域だとか、あるいは小さな経済だとか、そういったところを見直しながら、議論をつなげることによって、それぞれの個(人、もの、地域など)、を活かすことになる。そして個を活かせば、社会に、世界に、合意可能な価値観を持った個になることができる、ということであります。みんなで新たな社会の目標を持つための議論を深めましょう。

そのためには、早い段階に、様々な分野でプラットホーム方の議論の場所を作っていただいて、みんなでもっともっと議論しながら展開していく必要があるんではないかと思います。本来ならば、フロアの皆さんからお話を聞かなければいけないんですけれども、時間が来てしまいましたので、ここで、最後に本日のコメントということで、出井代表にマイクを渡したいと思います。

よろしくお願いいたします。

出井

今回の議論を聞きながら、私も色々なことを考えたのですが。

まず第一に、河口さんからご提案された「廃県置藩」という概念。実は私も長い間、ずっと提唱しています。それは森という文脈だけでなく、世の中そのものが変遷していることもあります。テクノロジーが目まぐるしい進歩を続けている現代、特に顕著じゃないでしょうか。その萌芽の一つが、いま盛んに取り上げられているブロックチェーン。これは分散型台帳技術とも呼ばれるものですが、今まで国家や巨大組織などを中心に中央集権で管理せざるをえなかったものを分散管理させるというテクノロジーで、それにより中央の管理が不要になるもの。なかなか説明が難しい概念ではありますが、恐らく数年後にはあらゆる分野で導入がかなり進むでしょう。最終的に、例えば今の銀行みたいな中央集権的な仕組みは、大きく様変わりせざるをえなくなるでしょう。そして、そういった世の中になると、県のような概念は不要になり、藩ぐらいのサイズでちょうどよくなる。今の県というのは、明治維新のときに、隣同士のだいたい仲の悪い藩を無理やりくっつけてつくったもので、今の時代でもそのときの歪みが残っていたります。であれば、もと通り藩にしてもいいんじゃないかなと思うのです。

それからもう一つ、森そのものの魅力について。私は軽井沢が大好きで、幼いころから東京と軽井沢を行き来しながら育ってきているんですけど、最近面白いことが起きています。なんと、中国人観光客がものすごくたくさん来るようになったんですよ。そして、ついに駅のホームの案内板やアナウンスが、日本語と中国語になっちゃったんです。この流れはなぜ起きたのかと考えてみたのですが。軽井沢って、みんな森の中に存在して、人々も森の中に住んでいるんです。私もあまり大した家じゃないですが別荘をもっていて、同じく森の中にあります。そしておいしいご飯が食べられるところも多い。森の中を自転車で走ってくると、なんか驚くような小さなレストランとか、美術館とか、そういうものがたくさんあって、森と人間は共生していっているのです。だから、森そのものと人間の生活を別々に分けて議論している気がしますが、もう少し連動させてもいいのかもしれません。先ほどのパネルで住友林業・飯塚さんにもお話しいただきましたが、例えば住友林業の持っている森林にしても、森と人間との共生エリアという概念をもって新しくつくりだしていったら、もっとバリューが出ていくのではないでしょうか。石川さんが手掛けられている里山の再生も、そういうことだと思います。里山では、鹿も、熊も、人間も一緒に住んでいるわけです。軽井沢にいると、熊が家に上がってきて、勝手に冷蔵庫開けて食料を食べているという冗談を言われるくらい近いんです。

それから、森の魅力っていうのは、人間にしかわからないものだと思うんですよね。いま、人間をコントロールできるくらいのAIが出てくるのは、あと30年後ぐらいに生まれると言われていますが。そのロボットがさらに進化を続けて、森に行ったら何を感じるでしょうか。おそらく、そよ風すら感じないでしょう。風が吹いていることは感じるかもしれませんが、いい空気だとか心地いいとかなんて思わないでしょう。やっぱり人間がロボットとかヒューマノイドに向かって、森っていいねて言っても、何でいいのかなって言われそうな気がしますよね。だから、やはり森というのは、人間の価値観の中でこそ、素晴らしい価値を発揮するものだ、そう思うわけです。だから、もっと人間が森に近づくようにしないといけない。東京なんか都市部が大きすぎますよね。例えば、ドイツへ行ったら、ミュンヘンとかフランクフルトとかは100万人ぐらいの都市だから、森がすごい近いところにあります。BMWだってフランクフルトにの本社がありますが、周囲は森だらけですよね。そう考えると、ドイツって10個くらい、100万人~200万人の都市があるというのは、すごいハッピーな構成なのかなと思います。

それから、価値ということを考えてみましょう。例えばGDP (国内総生産)というのは国家全体で合算して算出していますよね。これってもうほとんど意味がないと思いませんか。こういった資本主義的な価値観そのものが、転換をしていくタイミングかと思っています。次の世代にどういう指標で価値を考えていくのか。いまでも既に、「ポスト資本主義」などの言葉であらゆる書籍が出ていますよね。たとえば、中国が10年後どう変化しているのか、アメリカが20年後どう変わってしまうということを考えても。徹底した民主主義で「自由の国」だったアメリカが、アメリカファーストを掲げて人種間差別を強めるようになったり、国を閉じたりしていっている。反対に中国はオープン化を進めている。世界の2大国家が真っ逆さまな動きになってきている。そうすると、じゃ次の世界がどうなるかっていうような問いは本当に難しい。私はだから、いまメディアでは次の選挙(衆院選2017)でどっちが勝つのかと取り上げられていますが、日本が一番考えなきゃいけないのはそういうことではなくて、自分たちの国をそもそもどんな国にしたいかという考えを持ち、日本の方向性や指針を作っていかなきゃいけないと思います。

日本は戦後、目まぐるしい経済成長で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界からいわれましたが、それはもう30年ほど前までの話。世界は、多極化が進んでいて、じゃあこれからどうなるかっていう議論に世界的になっています。

先ほど申し上げたとおり、テクノロジーの進化もあり世の中の前提が動き始めています。2045年に人類全体の知能を超えるといわれる人工知能や、そのもとになるビッグデータ、それらのインターフェースとなるハードウェア。さらに通信がさらなる進化をとげたところにブロックチェーンの活用が進む。全く新しい社会が、すぐそこにきています。

そしてこの会の趣旨である森の価値ということにしても、地球から見た森の価値と、人間から見た森の価値はだいぶ違うものです。いま地球はかなりの悲鳴を上げていることでしょう。夏の暑さや冬の寒さなど、異常気象の起き方も凄まじい。だからこそ、このSDGsみたいなものが設定されたわけです。現在は、ちょうどあらゆるものが転換期にあります。明治維新で非常に近代化を進めたと思ったら、戦争まで踏み込んでしまった。それで敗戦して焼け野原になり、そこから這い上がり、大量生産でものを供給するいい国になったと思ったら、それも、韓国とか中国とか、ベトナムの台頭を受けて国際競争力がなくなった。次はどういうふうになるか、本当に今までの価値観のまま次の時代に突っ込んでいくのか、もう新しい価値観を作る社会を作るか、自分たちで見極めるようにならないといけません。

森林に対しては、まだまだ軽視されすぎていることが多いと思っています。原子力発電は経済産業省の管轄なのに、森林を管轄する林野庁はまだ「庁」なのです。さすがに林野省ぐらいになっていてもいいと思います。だからまだ予算もそれほど多くないみたいですし、発言権も正直足りない。官僚の方の仕事のすみ分けも今のままじゃ絶対にダメです。例えば、いまだに経済産業省がコンピュータを担当して、総務省が通信を担当している。コンピュータと通信なんて分けてどうやってやっていくのでしょうか、本当に今の時代に合わない変なやりかたをしているんです。20世紀に合った仕組みのままで動いているわけで、人の生き方も、地方行政も、国の行政も、細かくは官僚の区分の仕方も、世の中の変化に合わせて全部変えなきゃいけないところまで来ていると。

いま街角でやっている選挙演説を聞いてみてくださいよ。もう、つまんないことばっかりです。本当に短い時間軸でのことばかり言って、どこも人気取りに走っているだけ。だからこそ、我々はもっとしっかりしないと。こんな世の中だけど、もっとちゃんとしたものを生んでいかないと。私たちの子どもとか孫とかに対して、本当に申し訳ないと思いますよ。

だから、日本がやっていくべきことは、SDGsで定めた目標を超えて、日本のアイデンティティそのものしっかりすると、そう考えて今後の議論をみんなでしていったら面白いんじゃないか、そう思います。

(了)