CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラムⅡ
~“企業・医療保険者×農山村地域”で実現する、SDGs時代の健康づくり・森づくり〜

これは車両競技公益資金記念財団の助成金で研究した別の研究結果で、アドレナリンとコルチゾールについて、ほぼ私の初期の研究の結果を再現できました。実は、これで血中のコルチゾールも低下していることがわかりました。

これは男性の日帰り森林浴の結果で、森林浴をする前のコルチゾールは16台で、翌日になったら一気に12台くらいに下がって有意差が出ました。なおかつ1週間後も有意差はなくなっていますが、数字的にはまだ低いです。

それからもう一つのホルモン、これは脂肪から出ているもので、アディポネクチン、これは善玉のホルモンで、この善玉のホルモンも生活習慣病の予防とかアンチエイジングの効果があることが報告されています。これも一番右の緑の線を見ていただければ、上昇していることがわかると思います。

ということでまとめてみますと、森林セラピーによる高血圧の予防効果として4つのメカニズムがわかりました。1つ目はアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールといったストレスホルモンの低下によって血圧降下の効果があること、2つ目は私の研究でも宮崎先生の研究でも、副交感神経の働きが上昇することにより、交感神経の働きが低下し、結果的に血圧が下がる効果があるということ、3つ目はアンジオテンシン系に関することで、これは中国の研究者の研究で、ここでは効果があるという結果だけを述べます。最後の4つ目はストレス管理で、先ほどお話ししたように、ストレスホルモンが下がっているので、当然ストレスも下がるという効果があるということです。ですから、ストレスが解消されれば、当然血圧も下がります。お話ししたように、血圧への効果として以上のようなことが挙げられます。このように、血圧が下がっていることはわかりましたが、次は、森の力で心を癒やす、いわゆるうつ病の予防効果についてお話しします。

これは鳥取県の智頭町で調査したデータの結果を表したもので、約50人の方々に日帰りでたった半日の森林浴をしてもらったところ、こんなに効果が出ています。これは、POMS調査用紙を用いた結果で、ブルーの線は森林浴をする前の調査データ、グリーンの線は森林浴をした後のデータを表していて、ご覧のとおり、緊張、不安、抑うつ、落ち込み、怒り、敵意、疲労、混乱といったネガティブなフィーリング、ネガティブな気分が下がっていますが、その一方、赤い枠で囲んでいるように活気だけは上昇しています。一般的なうつ病の患者さんの症状は、活力が低下して抑うつなどのネガティブな気分が出てきます。この智頭町での調査は正常な人でやっていますので、将来的に実証する必要はありますが、この結果を見れば、森林浴は絶対にうつ病の予防効果があると、私は推測しています。

次に、これはもう一つの実験をしたときのもので、この赤い丸をつないだラインは活気を表しています。森に入るたびに活気が上昇し、森に入ってからは一気にネガティブな気分が下がって、先ほどのPOMSの結果と同じような傾向で、これは半日ではなく、もっと長い2泊3日のときのデータです。これが男性の結果です。

次は女性の結果で、赤い丸を見ていただくと、同じように森に入るたびに活気が上昇しています。ネガティブな気分は一気に下がっていて、それは最後まで持続しています。

さらに自覚症状について、1群、2群、3群と区分し、1群は肉体的・身体的なストレス、2群は精神的なストレス、3群はより強い身体的なストレスとします。これをみると、特に2群については、森林浴をする前のブルーが、森林浴後は緑で約4分の1になっています。このように森林浴がストレス低下に効果があることはわかっていましたが、精神的なストレスにはより効果的であることがわかりました。この調査は、何回実施してもほぼ同じ結果が得られました。

これはつい最近、2017年に森田先生が、森林浴参加の頻度と有訴率、特にうつ病・メンタルヘルスの有訴率について、日本森林学会で発表されたデータです。このグラフを見ると、森林散策の回数が、月に1回以上の人と、年に数回以下の人を比較すると、月に1回以上の人の方がメンタルヘルスの有訴率が約半分になっています。ですから森林に行けば行くほどメンタルヘルス不良率が低下していることがわかります。これは結構大規模な研究で、3395分人のデータです。ということで、先ほどから色々なデータに基づいてお話ししてきましたように、森林セラピーによるうつ病の予防効果については、将来的に臨床の場で検証する必要はありますが、いまのデータから見ると十分効果があることが皆さんもおわかりになると思います。

次に、森林浴によるがん免疫機能効果についてお話ししますが、これは森林セラピーによるがんの予防効果も期待できるかもしれません。先ずはこの画面を見てください。これは私の研究ではなく、今井先生が有名な雑誌に発表している研究です。このグラフの縦軸ががんの発症率、横軸が追跡の期間・年数です。上の図は男性、下は女性です。NK(ナチュラルキラー細胞)活性が低い人とNK活性が高い人の2つのグループに分けて11年間追跡しています。その間にがんの発症率をカウントします。そして11年経った結果では、ご覧のとおりNK活性が低い人ががんの発症率が高く、NK活性が高い人ががんの発症率が低くなり、これは男女とも同じ傾向を示しました。このことから、NK活性がいかに重要か、ということがわかります。このように、NK活性が重要であるということで、私の研究ではNK細胞をターゲットにします。

次に、NK活性が高いとがんの発症率が低いかについての理由としては、NK細胞はナチュラルキラー細胞で、自然にがん細胞をやっつける細胞であるということです。NK細胞の中には、パーフォリン、グランザイム、グラニューライシンという3つの抗がんタンパク質と命名されたものがあります。これら抗がんタンパク質である団子3兄弟が、がん細胞の膜に穴を開けて中に入って、がん細胞の自殺を誘導します。そして結果的にがん細胞がなくなるというのがメカニズムです。ということで、私の研究ではNK細胞の数、NK細胞の活性、そして抗がんタンパク質の量、こういうパラメータを実験の中に持っていきます。期間は2泊3日、なぜかというと、だいたい将来的に皆さんが休暇を利用するときには、金曜日に出発して、2泊して日曜日に帰ってくるというパターンが一番いいと思うからです。

ですから、最初のデザインも、中高年の男性、いわゆるお疲れのサラリーマンを対象にして、なおかつ現実的に2泊3日という週末のプランを利用して、森林セラピーの健康効果について検証しました。1年目は長野県飯山市で行いました。

 

ご覧いただいているように雑木林の散策です。森林浴では、森の中でゆっくり歩く、疲れたら休憩する、のどが渇いたら水分を採るといった感じで、リラックスするということです。

 

そしてこれが結果です。このブルーが森林浴をする前、赤が森林浴の1日後、グリーンが森林浴の2日後で、NK活性が徐々に増えて、なおかつ統計的に有意差があることがわかりました。さらにNK細胞の数も、ほぼ同じ傾向で増えていることがわかりました。

さらに抗がんタンパク質・団子3兄弟のパーフォリン、グランザイム、グラニューライシンも徐々に増え、そして有意差があることが確認できました。この結果に対して一部の人から、森林浴の結果というふうにはわかったけれども、本当に森林浴の効果なのか、旅行の効果なのかわからないではないかとの疑問もあるとして『普通に週末は仕事をせず、週末に休暇を利用しての都市旅行でも効果は出るのではないか』といった質問が寄せられました。

 

そこで、2006年の5月に、中年サラリーマン、お疲れサラリーマンを対象にしてもう1回、これは都市で調査を行いました。場所は名古屋で、名古屋の中でも木が少ないところを探して2泊3日の実験をしました。旅行ですから、この写真ように皆さんはリラックスの状態です。

これでNK活性を計ってみたところ、ほとんど変わりませんでした。ですから、都市部に旅行に行っても、何のメリットもないということです。これはちょっと言い過ぎたかもしれません、ごめんなさい。ということでして、これでおわかりいただけたと思いますが、森林に行かないとNK活性は上昇しないということです。
ところで、この上昇したNK活性はどのくらい持続するかということが、また1つの課題として出てきました。

そこで今度は、日本の森林浴の発祥の地である長野県木曽上松町の赤沢自然休養林(国有林)で、もう1度実験しました。この森には、当時の林野庁長官であった秋山智英さんが書かれた『森林浴の発祥の地』という記念碑があります。非常にきれいなヒノキの森、森ばかりでなくきれいな水もあるところで、同じように2泊3日の森林浴をやってみました。今度は森林浴の持続効果を見ますので、当然のこと森林浴から帰ってから1週間後、さらに1ヶ月後に採血して、その持続効果を検証しました。

その結果がこのグラフで、同じように、ブルーが森林浴をする前、グリーンが森林浴をした1日目と2日目、赤と紫は、森から戻って1週間後、1ヶ月後に都市部で調査したデータを表したものです。まずは、1年目に行った研究結果を再現できました。要するに、森に行くと間違いなくNK活性が上昇するということです。