CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラムⅡ
~“企業・医療保険者×農山村地域”で実現する、SDGs時代の健康づくり・森づくり〜

概要報告

1.「森林セラピー県」長野県の取組と32の企業・団体との協定事例
~長野県森林づくり県民税を活用した森林セラピーの推進について~
 【 上田 岳義長野県 林務部 信州の木活用課 
 【 浅原 武志野県森林セラピー協議会アドバイザー、しなの町Woods−Life Community 

私は、長野県林務部の上田と申します。県の組織の中でも、ちょっと変わった『信州の木活用課』というところに所属しております。長野県内にある木や森林を活用した活動を推進するという意味で、こういった名前がついているという部署です。

今回は、長野県が推進している森林を活用した多面的な取り組みを紹介させていただきます。また、私の話のあとには、長野県信濃町で様々な活動を展開しています『株式会社さとゆめ』の浅原さんから具体的な事例をお話ししていただきます。

最近テレビで、よく「長野」、「長野」と聞かれると思いますが、私がちょうど県に入庁して1年目に開催された冬の長野オリンピックで獲得したメダルの数が最多だったのですが、今回の冬のオリンピックがそれを上回ったということもあり、時期的に冬山のイメージが浮かぶかなと思っています。それを今回は、夏のイメージに置き換えていただきたいと思います。

ところで、日本の国土面積の67%は森林です。東京都では36%、北海道ではもう少し多くて71%、沖縄県では46%となっていますが、長野県では79%、実は県土の約8割が森林ということです。ちなみにこの森林率は、高知県、岐阜県に次いで、全国で第3番目の順位となっており、森林資源が非常に豊富であるということです。県では、この豊富な資源を使って色々な方に来ていただくこともそうですが、住んでいる方も、健康に近づけるということの取組を推進しています。

ちなみに長野県の平均寿命は、今年の最新のデータでは、女性は87才でNO.1、男性はずっとNO.1 だったのですが、最新データでは滋賀県に1位を奪われて81才でNO.2となっています。つまり、女性が非常に活躍しているという県です。ついでにお話ししますと、自然の中の活動の1つで『信州やまほいく』という制度、これは幼児教育、保育の関係で、自然豊かな野外活動、屋外活動を通じて積極的に取り入れる制度、こちらを認定する制度もあります。さて今回は、この豊かな自然、森林を活用した取組の1つで、先ほど李先生からもお話しがありました、森林セラピーの取組ということについてお話しをさせていただきます。

森の中を歩いていると、さわやかな気持ちになるとか、心が落ち着くなどの、森林浴の効果を皆さんも聞かれたことがあると思います。この効果を科学的に解明して、心と体の健康づくりに役立てていこう、というのが森林セラピーの取組です。ちなみに全国には、この森林セラピーの基地が62カ所あり、最近では63番目が認定されるという話しもありますが、長野県にはそのうちの10カ所があり、日本一の認定数を誇っており、数の上では森林セラピー県である、ということが言えます。

さて、その一端を紹介します。長野県の森林セラピー基地の10カ所は、県全体のあちこちに点在しており、昨年の夏にJR東日本とタイアップして『信州ディスティネーションキャンペーン』というものを行いました。都内で頻繁にCMが流れていたと聞きましたのでご覧になった方も多いと思われます。内容は、女優の吉永小百合さんが山の中でヨガや森林セラピーを体験しました、というようなものです。こちら長野県の北部に位置し、先ほど地名が出てきました飯山市のなべくら高原、また、スキーや温泉で有名な山ノ内町の志賀高原、さらに雪深く新潟県との境にあります信濃町、南には森林浴発祥の地である木曽上松町の赤沢自然休養林、最近では星空で有名になっている阿智村、ヘブンス園原など、様々な森林セラピーの基地、ロードがあります。

さて、そこで長野県の取組ですが、全国に先駆けて平成15年から『エコメディカル アンド ヒーリングビレッジ事業』を開始しました。これは、森林の癒やし効果を活用して、拠点作りと積極的な活用を進めることで山村の活性化を図る、という支援事業です。その内容は、体験プログラムの作成やガイド、トレーナー等の育成、さらには交通整備等の支援といったものです。そうした中、全国的な流れで言いますと、全国セラピー研究会が発足しました。さらには森林セラピーソサエティの推進により、全国的な森林セラピーが展開されることとなります。その後長野県の中でも、平成27年に『森林セラピー推進協議会』を発足させています。協議会の委員には、李先生と浅原さんにお願いしました。

少し話は戻りますが、県では、基地の認定件数だけではなく、質的にも全国1位を目指そうという取組をしています。その中には、ガイドの育成研修、東京の銀座に長野県のアンテナショップ『銀座NAGANO』でのPR、ツアー誘致のための関係者のバスツアー、それからYouTubeでも見られる、長野県次世代ヘルスケア産業協議会と連携したPRビデオの作成などがあります。さらに長野県らしい雪を利用したプログラムの開発、また、県庁の中ではありますが、観光部門を担当している部署と連携したモニターツアーを進めました。これらの取組によって、森林セラピーの基本となるガイドの資質向上と、基地内のおもてなしについての気運が高まってきています。

さて、来年度、平成30年度からの予定についてお話しします。県では『長野県森林づくり県民税』これは通称『森林税』と呼んでいますが、長野県の中での超過課税という形で、県民や関係する方にご協力をいただいて長野県の森林づくりを進めるという取組です。こちらは5年を1期と考えており、来年から3期目ということで継続する運びとなっています。具体の内容は、現在開会中の長野県議会で審議されておりますので、詳細まではお伝えすることはできませんが、森林セラピーに関わる取組について、森林を活用して森林セラピー利用者にやさしい取組を行う予定です。

キーワードとしまして『人材の育成』『施設の充実』ということが挙げられており、より実践的な研修会によるガイドのレベルアップ、また、利用者が安心して利用できる森林の整備や施設の整備への支援、さらには、森林セラピーを核として関連する産業と連携するためのコーディネーターの育成などを考えています。特に県内には、森林セラピー基地、ロードとしての認定が10カ所もあるという他県にはない強みがあり、潜在的な地域資源を活用するため、こうした支援策を通じて、森林を核とした活用を進めるということ、さらには、地域の自立的・継続的な森林管理を進めるという道筋を構築する手段として、応援し魅力あふれる長野県への推進を図っていきたいと考えています。

さて森林のことで言いますと、もう1点ご紹介したいことがあります。森林を活用した取組に『長野県森林(もり)の里親促進事業』というものがあります。これは都市部の企業の皆様に、長野県の森林づくりにご支援いただき、地域も参加して、企業の皆様も地域も元気になってもらう参加型の取組で、企業の皆様を里親、地元の皆様を里子として、長野県が仲介をして1件1件、ハンドメイドでご縁を結ぶというものです。1月末の契約件数は128件あり、全国でもトップクラスで、この3月にもう1件契約の運びとなりますので、今年度末では129件になろうかと思います。

これらの取組の中には、社会貢献面とフィールドとしての活用という2面性があります。フィールドとしての活用には、社員研修、社員のご家族の方たちのレクリエーションの場の提供ということ、さらには、田舎・地域との交流ということで様々な体験をしていただいています。そして、フィールドで行っていただいた作業に関しては、CO2の吸収源の算定という独自のシステムを持っています。ちなみに、最近活躍されている里親さんである企業の中に、皆様もこの冬のオリンピックで名前を聞かれたことがあるかも知れませんが、相沢病院があります。こちらは、看護師の方に森林体験をしていただき、これから自分たちがどういった仕事をするのか、という社員教育の一環ということで参加されています。

このように、自然豊かな長野県では、森林を活用した多面的な取組が行われています。それらの事例に関して、引き続き『株式会社さとゆめ』の浅原さんから紹介していただきます。

『株式会社さとゆめ』の浅原と申します。まず、株式会社さとゆめについてお話ししますが、今年で5期目を迎える会社です。ふるさとの夢をかたちにする、というコーポレートスローガンを持っている企業で、そのままスローガンを企業名にしています。弊社は地域のコンサルティングをさせていただいており、『伴走型コンサルティング』というスタイルをとっています。伴走型コンサルティングは大変珍しい企業ではないかと思っています。その伴走型の1つに、長野県信濃町があります。『しなの町ウッヅライフコミュニティ』というのは、弊社さとゆめと『アファンの森財団』、そして森林セラピーを支える住民の組織『信濃町森林療法研究会〜ひとときの会〜』があって、その3団体がJVのようなものを組んで、森林セラピーのお客様を受け入れたり、営業を行ったりしています。元々は、信濃町の森林セラピーは、町が中心的にやってきており、私も3年程前までは信濃町役場の職員として事業運営等に協力していました。ちなみに私は、3年ほど前まで信濃町の役場の職員でした。

時間の関係もありますので詳しいことは割愛させていただきますが、本日ご紹介します信濃町は、C.W.ニコルさんの住まいがあるところでもあります。C.W.ニコルさんが、まだ森林セラピーという言葉がないときに、「ヨーロッパの方では森を歩くことで処方箋を出しているようだ」「なので、森林には癒やし効果がある」「信濃町でも、そういった事業をやってみようではないか」ということを提唱されました。当時、2002年に信濃町では、『合併をしない自立の町を目指す』ということになっていましたので、この構想を取り入れて町おこしをしようとしたのが始まりです。

森林セラピーの内容は割愛させていただきますが、『森林浴』ではなく『森林セラピー』ですので、森の中でたくさんのセラピー効果を得られるようなプログラムをやります。さらに、森林セラピーはドイツの『クナイプ療法』が大元だといわれていて、森林浴をするだけではなく、食べ物は、有機、減農薬のものを食べるとか、新鮮なものを食べることが大事であるということで、宿泊施設でもそういった食事を提供したり、お弁当などもそのようなものをご用意したりしています。

事業開始当初の2002年の頃には、まだ、癒やしが来るとか、ストレス、メンタルヘルスなんていう言葉があまり顕在化されていなかったのですが、信濃町の8人の住民有志が、当時からこの事業をやろうと言ったのがはじまりでした。その8人が、「これから癒やしの時代が来る、だから、サラリーマンやOLの皆さんに、ぜひこの森林セラピーみたいなものを受けてもらおう」というのが大元でした。

それでは、企業との契約のイメージを組んでみようと、できたものがこの図です。クナイプ療法は、健康保険の適用になっています。クナイプ療法では3週間滞在パッケージになっているのですが、これには保険がきいて個人負担は非常に少なくて済むということのようです。信濃町でもそれを目指そうと考えたのですが、それはなかなか難しいだろうということで、企業と信濃町を提携させて、例えば、健康保険組合が従業員に宿泊の補助をしてくれれば、ドイツと同じようなシステムが保てるのではないか、ということでこのようなシステムを考えました。

しかしながら、後ほどTDKラムダの関本さんにから話しもある予定ですが、なかなか契約を取ることができませんでした。また、契約は取れたものの、森林セラピーに来ていただく方が少ない。というのは、森の癒やし効果にばかり目線がいってしまうと、例えば、従業員が信濃町に行くことイコール『信濃町送り』みたいに思われたらまずいだろうと、そういうこともあって、癒やし効果じゃないところにも目をつけようと考えたところでした。

そうしたところ、どうやら森林環境下は、コミュニケーション能力を上げるには非常に良いということで、例えば森林の中でコミュニケーションを育てるようなプログラムを用意したり、例えば、森林だけではなく登山なんかもしたりしてみたらチームビルディングになるのではないかということで、癒やしのメニューのほかに、森林の効果を使ったプログラムコンテンツというものを用意しました。

そうしたところ、色々なタイプに分かれて、もちろん健康作りのタイプもあり、また、社員研修で信濃町をご利用いただく企業も増えてきて、色んなタイプの企業との連携が進んできています。後ほどお話しがありますTDKラムダさんにつきましては、新入社員の離職率が改善したというようなことが効果として出ています。さらに、信濃町では、2016年までの10年間に42社の企業と協定をしていて、年間5000泊以上の皆さんに来ていただき、実際に地域も潤っており、企業様の健康経営にも役立っているという結果が出ています。

今日はSDGsということでしたので、あえてもう1枚スライドを用意しました。SDGsというものは、企業様だけが取り組むということではなくて、自治体の皆さん等もが取り組まなければならないことになっています。

信濃町も当初、森林セラピーというと、観光・交流人口、というところに入ってしまいがちでしたが、実は信濃町は、当初から地域の住民の健康とか、自分たちの住んでいる地域の森林保全とか、環境を良くしようということも考えて進んできているところです。

ですから、信濃町は森林セラピーをやっていますよ、信濃町は先進地ですよ、などと言われますが、森林セラピーで交流人口を上げているだけではなくて、社会にも貢献していこう、地域の発展にも貢献していこうという志の下に進めているというところをお話しして、私の発表を終わらせていただきます。