CSV経営・健康経営時代の「企業×森林」フォーラムⅡ
~“企業・医療保険者×農山村地域”で実現する、SDGs時代の健康づくり・森づくり〜

2.森林・農山漁村を活かしたテレワーク・二地域ワークによる生産性向上
~和歌山発・ワーケーションの提案 20%生産性向上を実現した豊かな環境とは~
 【 天野 宏和歌山県 企画部 企画政策局 情報政策課長 

和歌山県情報政策課長をしております、天野と申します。当課課署の職務は、森林とか森林浴等とは非常にかけ離れていますが、本年度から当課が開始した施策が、森林浴や地域るへの訪問促進となりうる取組ということで、本日お呼びいただきました。ちなみに、いま出ている画面は、和歌山県の世界遺産る『熊野古道』のルートの一つである中辺路において、実際和歌山県にお越しになられた方々が、森林浴やウオーキングを楽しまれている場面です。今日はまず、和歌山県とはどういったところで、森林を使ってどういった取組をしているのか、そしてワーケーションという新しい取組について、それがいったい何なのか、そしてそれが今後の森林浴や地域への訪問促進にどのような関係・効果があるかということをお話ししたいと思います。

まず、和歌山県について紹介させていただきます。先ほどの長野県様からのご説明では、全国平均の森林率が67%で、長野県様は全国3番目の79%で非常に森林率が高いというお話しをされました。実は和歌山県も非常に森林率が高くて76.5%、全国でも上位10位に入っています。そのような森林の中に、先ほどお話したように、世界遺産の熊野古道、高野山のある高野町とその麓にある九度山町を結ぶ『高野山町石道』あるいは、これも熊野というか熊野三山の一つである『那智の滝』があり、和歌山県は水や森林が非常に豊富なところでございます。

本日いらっしゃる方々は都内の方が多いと思うのですが、実は東京から和歌山県はそれほど遠くなくて、羽田空港からJAL様の飛行機を使えば、南紀白浜空港まで70分で着けます。こちらは1日に往復で計6便を運航いただいておりまして、また、大阪からもJRの特急を使えば1時間で和歌山へ来ることができ、非常にアクセスが良好でございますので、本日の発表が終わりましたら、森林浴だけでなく、観光にもお越しいただけたら幸いです。

それでは、和歌山県が行っている取組をご紹介します。先ず『企業の森』ということで、平成14年度から数えると総計77の企業・団体に、植樹であるとか山の管理、あるいは山の下草刈りをご協力いただいております。企業の森のメリットとして、先ほどの長野県のお話しと重複しますが、企業が団体としていらっしゃって、多くの方々が一緒に森林保全をやっていただくことで、チームビルディングの促進であるとか、また、社会貢献活動が目に見える形でできるということが挙げられます。特に「目に見える社会貢献」について、都会と違って人口も多くなく、また、多種多様な企業・人々が社会貢献活動をしているわけではないので、地域にとっては社会貢献活動をしていただく企業様への認知度が非常に高まり、また、感謝されております。個人的には、そのような活動を通じ、都会の企業と地域の方々との関係が深まることで、更に一歩進んだ社会貢献の実践も可能になるのではないかと考えております。

また、「目に見える」ということの別の意味として、木を植えて、その後は継続的に森林の手入れを何年もやっていただくことで、自分たちの取組がどういった形で地域の山野・森林保全に役立っているのかを目で見ることができ、これまで参加した方々の満足度も高まり、また、継続的な参加が見込まれるのではないかと考えております。

これは、森林だけではなくて、山野の中にある歴史資源である熊野古道の保持についても同様ですす。先ほどお話ししましたように、和歌山県には、平安時代から1000年以上続く熊野古道という参詣道があります。しかし、熊野古道は、参詣のためあるいは地元の方々の生活道でありましたが、モータリゼーションが進む中で、地元の方々は生活道として熊野古道を使うことが少なくなったため、維持・管理する方々が非常に少なくなり、維持・管理に支障が生じてきたという問題がございました。こうしたことから、和歌山県と地元の田辺市が音頭を取り、企業のCSR活動の一環として、世界遺産である熊野古道に直接手を入れ、道を修繕していただくという活動に取り組んでいます。特に和歌山県においては、観光事業は非常に重要な産業の一つであるので、観光資源である世界遺産を保全するということで、県としても助かっています。

また、企業にとっては地域貢献以外の別のメリットもあり、先ほどの植樹の件と重なってきますが、各企業から10人、15人、20人、何百人と来ていただき、道の修繕を行っていただくことを通じ、地域への貢献のみならず、チームビルディングの推進等を図ることが可能となります。でまた、、特別な技能を持っていない方々が世界遺産を直せる、修理できるという例はおそらく世界でも和歌山県だけであると思っており、来ていただく企業の方々にとりまして、ものすごいプレミアム感があるかと存じますて。そのような資源をベースに、和歌山県としてワーケーションを進めていまして、これについて少しビデオをご覧いただきたいと思います。
(ビデオ上映中:https://www.youtube.com/watch?v=B0pRLz3e-7Q)

先ほどから、ワーケーションという言葉をよく使っていますが、ワーケーションとは何なのかと申し上げますと、これは『テレワーク』の『ワーク』と『バケーション』を組み合わせた欧米発の造語で、地域に滞在し、テレワーク等で仕事をしながら休暇取得等を行っていく、といったような新しい仕事のやり方です。ワーケーションという取組は、欧米では昔からあるのですが、日本においては和歌山県が全国に先駆けて今年度から推進しております。本施策を推進する背景には、いま政府の働き方改革の中で、テレワーク、すなわち、在宅に限らず、オフィス以外の場所でICTを活用して、どこででも仕事をしていこうということを推進していこうということがあります。他方、政府のもう一つの重要課題として地方創生があり、東京の一極集中性を排していって、地域の資産や資源を活かして地域の活性化を図っていこうとする流れがあります。

和歌山県としては、テレワーク、すなわち、場所にとらわれず働けるならば、東京で、あるいは在宅で必ずしも仕事をしなくてもいいのではないか、実際、将来的に特定の都市や場所以外で仕事ができるようになるのであれば、例えば東京だけに在住するのではなくて、一時期、周期的にでもそのテレワークを使って地域で働き・休暇を取りながら、地域により頻繁に訪問・滞在ができるようになるのではないかと考えております。そのため、先ず今年度からワーケーションのコンセプトを全国に発信しており、ワーケーションを実施する際に必要な支援の提供かやPR活動を行っています。

先ほど李先生から、森林浴は2泊3日でもよい、都会の方々にとっては週末が現実的に地域に出て行くことができる日程であるというお話しがありましたように、私たちとしても、ワーケーションというコンセプトが実現可能ならば、東京でやらなくてはいけない仕事とか、あるいは出なくてはいけない会議であっても、例えばICTが整備された地域にPCを持って行って、急ぎの仕事だけはテレワークでやりつつ、より長い間、例えば1週間とか2週間をその地域に滞在して、より継続的に森林に触れていただくといったような活動ができるようになるのではないかと考えています。

それではワーケーションの実際の形にはどういうものがあるのかということで、1つは個人として、会社員やフリーランスの方がやっていくという形で、これは地域のホテル等に滞在しながら仕事をして、空き時間等には観光、あるいは森林浴をするとかといったような方法があると思います。もう1つは、日本の会社にとって一番やりやすいと考えられる形として、団体で実施する方法があるとて考えており、最近はその方法も推奨させていただいています。これは、先ほどの長野県の取組の例と重複しますが、例えば午前中はリモートワークで、ホテルとかコワーキングスペースで仕事をする、午後は植樹であるとか、CSRとかボランティアであるとか、そういった活動を団体みんなでやっていく、というような滞在の仕方があるのではないかと考えています。

団体でのワーケーションの実施事例として、期間としてはちょっと短かったのですが、富士通の若手社員の方々の例があります。25人が2泊3日でワーケーションに来て、1日目に全員で熊野古道に行って修繕活動をやって、2日目はWi-Fi環境が整っており、インターネットを通じてテレワークができる施設でグループワークデーとして仕事をして、3日目は自由行動・グループワークの発表などが行われたようですた。

和歌山県では、ワーケーションを推進していく中で、この画面のようなひな形ができつつあります。今回は2泊3日ということでしたが、より長期的に滞在していただくようになれば喜ばしいと考えていますし、実施側も地域でできることが格段に広がります。これはワーケーションの実施イメージとなりますが、実際に来られたIT企業の方の写真で、午前中は民泊的な宿に全員がこもって仕事をして、午後は森に出て行って下草刈りであるとか、農家に行って農業の現地で収穫作業をするといったような内容になっています。

そういったワーケーションを実際にやることによってどういった効果があるのかということを考えてみますと、企業にとっては生産性の向上というところで、環境のいい地域に来ることによって実際に生産性が向上している事例がありますし、先ほどからお話ししていますように、CSR活動やボランティア活動がよりやりやすくなるといったことがあります。また、社員個人にとっても、東京から離れて地域で仕事をすることで、森林浴効果ではないですけれどもライフワークバランス改善とかストレスの低下、あるいは森林浴ということでは、別の合宿と組み合わせて能力開発もできるようになるのではないかと考えています。

先ほどライフワークバランスの改善というお話しがありましたが、厚生労働省は、日本人の有給休暇取得率や有給休暇を取得できない理由等に関する調査を行っていますす。日本人の有給休暇の取得率は、先進国の中では最低レベルで、約7割の方々が有給休暇を取るのにためらいを感じているというのです。有給休暇取得をためらう理由の中で、苦笑しつつも共感できるのが、第1位の皆に迷惑がかかる、また第二位として、休みを取っても、あるいは地域の研修に行っても、帰ってきたときには仕事がどっさり溜まっていて、結局多忙になってしまうということがあります。

すなわち、結局は休まなかった方が、あるいは研修に行かなかった方が、自分にとってより良いワークライフバランスを実現可能ではないか、ということです。しかし、ワーケーションを活用すれば、地方に滞在しながら、自分が東京のオフィスに帰ったときに負担にならない程度の仕事をテレワークでこなすことで、有給休暇を取らないとか、研修に参加しないといった理由を打破できるのではないかと考えています。

もう一つ、生産性の向上ということについては、いま和歌山県にサテライトオフィスを開設されている東京のIT企業さんの例が挙げられます。そこでは、だいたい10名が3ヶ月交替で白浜町にあるオフィスで働いていて、企業が2年間継続して取ったデータによると、東京のオフィスにいる社員よりも白浜オフィスの社員の方が、商談件数ベースで生産性が、20%高くなっているとのことです。

これには3つの理由があり、1つは、白浜は海辺で森も近くて環境が良いのでリラックスして働くことができる、2つ目は、東京のオフィスでは多くの人々が働いているが、白浜では約10名といった少人数で東京のオフィスと同じ仕事をしているので、これらの方々の間でチームビルディングであるとか、ベストプラクティスの共有がうまくいく、3つ目は、地元の方々との交流を通じて、コミュニケーション能力がアップし、社員の方々が日ごろ行っている電話営業がうまくいきやすくなっている、というものです。こちらについて、この会社の社員の方々は、白浜にいる間は、地域でのボランティア活動を頻繁に実施されているとのことですが、ボランティア活動を通じて地域の方々ちと非常に密接な関係を築くことが可能になるとともに、地域の方々の立場に立った課題・ニーズの把握が可能となるとのことです。また、その課題・ニーズの解決・実現のための、相手の立場に立ったソリューションの作成・提案が、まわりまわって仕事の営業活動に活きてくるとのことです。すなわち、より顧客の立場に立った提案が可能となるとのことです。

そのような地域の方々との密接な関係の構築に当たっては、個人の社会構成員としての自覚の強化が重要であり、それは白浜のような地方でのボランティア活動が有用とのことです。すなわち、東京でボランティアをやるのと地域でボランティアやることの違いとしてこの会社の方が挙げているのは、東京でボランティア活動をやると、「○○会社さんがやってくれた、ハイ終わり」となるが、地域でボランティア活動をやると、コミュニティの構成員の数も少なく、また、東京から来てボランティアをやってらっしゃる方もめずらしいので、ボランティアをやっている個々人を認知してもらいやすいというのです。社会の構成員としての個人が認知・受入れされることで、その社会への帰属度や責任感が一層増し、それによりその社会をより良くするために社会・相手の立場に立って考えるようになり、そのような思考の変化・鍛錬がコミュニケーション能力の養成・営業力の強化に繋がっているのではないか、とのことです。

ところで、ワーケーションはどのようなところで仕事をするのかという疑問もあるかと思います。和歌山県は、南部の田辺市に県立情報交流センターBig・UというIT施設を所有しており、そこでは、で365日(月曜休館)いつでも無料で電源・イWi-Fiが使えますので、そこで快適に仕事をすることが可能です。また、館内には多数の会議室があり、格安で貸し出していますので、団体ならばそこで会議や研修もできます。g)てまた、この施設の隣には新城総合公園があり、そこは平成23年度に全国植樹祭が行われた会場で、いまは都市公園になっていて、非常に緑豊かなところとなっています。

それでは、和歌山県がワーケーション事業を開始してから、どのような効果が出たのかということを示したのがこの画面です。手前味噌となり恐縮ですが、ワーケーションを推進した結果、去年の4月から今年の2月まで、延べ240名に来ていただき、1人が2泊から3泊しますので、泊人数でいうと700から多ければ1000泊くらいの実績となっています。また、和歌山県のワーケーションの取組みやワーケーションという新しい考え方そのものについて、全国報道を含めまして17回ほど報道されています。

また、報道によると、長野県の軽井沢町観光協会でも、ワーケーションは非常にいい取組だということで、観光協会を挙げてこれからワーケーションを推進していこうという流れになっているそうです。これまで和歌山県におけるワーケーション段の取組みを中心に色々申し上げましたが、軽井沢町さんの例が示すように、地域の観光とか森林と働けるところ、そして泊まれるところ、そういった一定の資源・条件が整ったところであれば、横展開が可能な、どこでも実施可能なコンセプトだと考えます。従いまして、ワーケーションというコンセプトを、逆に色んな地域の方々が、それぞれ地域の資源を活かしてどんどん進めていただくことで、東京だけでなく日本全国に広がっていって、この取組が一般的になっていったら、更に多種多様な主体に広がっていけると考えます。

先ほど和歌山県でのワーケーション実施者につきまして、のべ約240人と申し上げましたが、これは、和歌山県0が実施しました2回のワーケーション体験会の参加者数も含まれております。同体験会につきまして、各回、27名~12名程度に参加していただき、交流会、熊野古道の修繕活動、また、和歌山県はみかん、柑橘類の栽培が盛んなので、地域の農家へ行っての収穫体験であるとか、農業についての話を伺ったりといった地域ならではの活動が体験できるプログラムを提供させていただきました。


ワーケーション体験会の効果につきまして、参加者からは大きく分けて2つの効果が挙げられました。1つは、地域理解の促進や様々な主体とのネットワークの構築というイノベーション創出を支援するという効果です。すなわち、た地域貢献活動等における地域主体との交流を通じ、普通の観光ではわからない『地域の人が何を考えているのか』とか『何に問題意識を持っているのか』といったことを理解する機会ができたということです。また、色々な会社の方々が来て、単なる交流会にとどまらず、様々な活動を一緒にできるので、通常以上に深い関係を構築できる機会としても有効だった、ということを伺っております。

2つ目は、ストレスを軽減する方向での休み方・働き方改革やリフレッシュ効果等の福利厚生的な側面です。すなわち、ワーケーションで比較的長期な休暇取得が可能になることによって、これまで短時間でのアクセスが困難であった、素晴らしいた森林や農山村への訪問・滞在の機会も増えるのではないかということです。また、そのような環境の変化による休み方・働き方の変化、さらには先ほどからお話ししていますように、海や森に行くことによるリフレッシュ効果というのがあるのではないかと思います。

以上で和歌山県の取組等についてのお話しを終わります。ご清聴ありがとうございました。

※一部写真提供:(公社)和歌山県観光連盟