第3回「美しい森林づくり全国推進会議」

009_s6月22日(月)、東京都港区・虎ノ門パストラルホテルにおいて、第3回「美しい森林づくり全国推進会議」が、発起人及び構成団体等より200名以上の参加を得て開催されました。

平成19年に設立された全国推進会議の第3回目となる会議で、出井伸之代表(クオンタムリープ㈱代表取締役)挨拶、石破農林水産大臣の来賓挨拶に続き、発起人等を代表し、第48代横綱大鵬の納谷幸喜氏、服部幸應氏(服部栄養専門学校校長、医学博士)、亀渕昭信氏(音楽番組ディスクジョッキー、前ニッポン放送社長)よりコメントをいただきました。

また、構成団体等の活動報告として、財団法人ボーイスカウト日本連盟、古瀬誠氏(日本の森を守る地方銀行有志の会事務局代表、山陰合同銀行頭取)、全国推進会議の取組について社団法人ガールスカウト日本連盟よりそれぞれありました。その後、会議の途中に麻生総理大臣が出席し期待の言葉があり、最後に、社団法人全国子ども会連合会による活動宣言を行い会議を終了しました。

  1. 開会
  2. 「美しい森林づくり全国推進会議」代表挨拶
  3. 来賓挨拶
    麻生内閣総理大臣挨拶
    石破農林水産大臣挨拶
  4. 発起人及び構成団体等活動報告
    ・納谷幸喜氏(第48代横綱大鵬)
    ・服部幸應氏(服部栄養専門学校校長・医学博士)
    ・亀渕昭信氏(音楽番組ディスクジョッキー・前ニッポン放送社長)
    ・ボーイスカウト日本連盟
    ・古瀬 誠氏(日本の森を守る地方銀行有志の会事務局代表・山陰合同銀行頭取)
    メッセージ
    ・坂本龍一氏(一般社団法人more trees 代表)
    ・三浦しをん氏(作家)
    第2部講演とパネルディスカッション
    ・講演「地球温暖化防止に関わる森林分野の動向」
    松本光朗氏(独立行政法人森林総合研究所温暖化対応推進室長)
    ・パネラーによる事例紹介
    ・パネルディスカッション「地球温暖化防止のための森林づくりの取組」
  5. 活動宣言
  6. 閉会

「美しい森林づくり全国推進会議」出井代表挨拶

 「美しい森林づくり全国推進会議」 出井代表挨拶「美しい森林づくり全国推進会議」出井代表挨拶私は、仕事上方々にいくのですが、海外から帰ると本当に日本の森が素晴らしことを再確認します。海外では禿げ山も多く、当たり前のように木があるとことはすごいことと感じます。

先日読んだ本に文明論の本があり、その中で日本は奇跡の国となっており、何が奇跡かというと、鎖国時代に幕府が治山整備などを一生懸命にやっていた。城を築くために伐採しすぎたことの反動もあったようですが、昔の方たちは、我々以上にビジョンを持ってやっていたということは間違いありません。

この全国推進会議も平成19年6月に立ち上げて早いものでもう3年目に入り、この間、構成団体も47から97に増えました。木を植えることだけでなくもっと木を使うなど森林の質を上げる取組を進めるために、昨年12月には『フォレスト・サポーターズ』が創設され、約3,000の登録を記録しています。

また、3月8日を『フォレスト・サポーターズの日』として定め、前日の3月7日には、記者発表と坂本龍一さんや武井港区長をお招きしてのトークショーを行うなど、幅広い展開を図っています。本年はこの気運を引き継ぎ、国民運動を益々盛り上げるとともに、参加する団体の数も増やし行動していきたいと思っています。

麻生内閣総理大臣挨拶

明治神宮の森や神戸の六甲山も植林された森林 であることを例として紹介する麻生総理大臣

明治神宮の森や神戸の六甲山も植林された森林
であることを例として紹介する麻生総理大臣

日本は先進国の中で突出した森林率を有する国で、これは誇るべきことと思っています。それが、人手不足や過疎化などにより「今、森林まさに荒れなんとす」という状況になりつつある、というのが、日本全国で言われている実態なんだなと思っております。

森林というものが、木材を生み出し、また、山の土砂崩れを防ぎ、そしてご存じのように水をはぐくむということなんだと思います。

「水」「飲める水」が世界で大きな問題となり、21世紀は水の世紀と言われるようになっています。

森林はこのための緑の社会資本であり、これを良好に残すことが我々の大事な仕事です。過疎化などにより森林を守る人がいなくなっており、このままいくと森林資源が失われることになりかねません。そのためにも使って育てるという森林の再生に向けた一人ひとりの意識が大事なことです。

今、地球環境の話の中から、低炭素社会という言葉がよく使われるようになりました。炭酸ガスを吸って、また酸素に再生していくという意味でも森林の果たす役割はものすごく大きいと思っております。森林は、植えて育っていくまで何十年とかかっていく話なので、息の長い活動です。ぜひ今後とも多くの方々が森林再生の重要さに是非目を向けて頂いて、全国に今後広がっていくことを心から期待し、またボーイスカウトやガールスカウトの人たちのこういう問題に取り組んでいく姿勢に心から敬意を表します。

子どもたちからプレゼントを受け取り満面の笑みを浮かべる麻生総理大臣

子どもたちからプレゼントを受け取り満面の笑みを浮かべる麻生総理大臣

石破農林水産大臣挨拶

原点に立ち返り色々な施策を総点検したい

原点に立ち返り色々な施策を総点検したい

日本の国土の2/3は森林で、これは、世界でも有数の面積です。けれども、なぜか森というのは、国民から遠いところにあるような気がします。

林間学校って、今ほとんどないのではないでしょうか。もう40年以上前の頃ですが、私達が子供の頃は、林間学校や臨海学校がありました。海のすばらしさも恐ろしさも、森のすばらしさも恐ろしさも学ぶ機会がたくさんありました。身近に海があり、身近に山があり、身近に森がありました。

農業でも漁業でも林業でもそうですが、消費の現場と生産の現場がすごく遠い。そして、なぜ農業を守らないといけないのか、なぜ林業を守らないといけないかということを実感として捉えられていない。これは、大変なことだと思っています。

世界は木の伐りすぎということになっています。一方、日本の場合は、木を伐らなさすぎです。ある意味で、これは贅沢といえば贅沢なのかもしれません。なぜ日本の木材生産コストというのは、北欧の何倍もするのだろうか。これをどうすれば解決できるのだろうか。原点に立ち返って、色々な施策を総点検をしてみなければいけないと思っています。

国産材でお家を建てたいという人は、たくさんいますが、木材自給率は2割しかありません。法隆寺の五重塔を始めとする色々な建造物は、世界最古の木造建築です。風雪に耐え、千何百年も保ってきた。そして、私達が子供の頃、田舎の大きな家に行くと夏でも冷房一つないのにひんやりと涼しかった。
冬は囲炉裏一つ焚くだけで、家が暖かかった。南極の昭和基地の2階3階部分は木造建築でしたが、それは断熱性にものすごく優れているからです。それでは、省エネという言葉から、どうやって国産材の議論をしていったらいいのかということもやらなければいけません。国産材でお家を建てたいという人はいますが、どこに相談に行ったらいいのかが分からなくては、国産材の家は建つはずはないでしょう。そういうような人のためにナビシステムを立ち上げて、今、色々なアクセスがあるところで、まさしくありとあらゆる知恵を総合して、寄せ集めて、日本のため、そして世界のため、次の時代のために取り組んでいかねばなりません。

今日、お集まりの皆様方に果たしていただいている役割はものすごく大きく、これから先も、国民一人ひとりがなぜ森を守り、森を育てねばならないかという意識を一人ひとり持っていただくために、今日の会合を契機として、さらに運動が広がることを心からお願いいたします。

発起人及び構成団体等活動報告

納谷幸喜氏挨拶第48代横綱大鵬

若い頃の造林作業で下半身の強さ・粘りを培った

若い頃の造林作業で下半身の強さ・粘りを培った

私は、美しい森林づくりとどのような関わりがあるかと申しますと、16歳で相撲界に入門したわけですが、北海道弟子屈てしかが町という地域で、相撲界に入る前に営林署におりました。その時期は、海抜800mにある阿寒湖・摩周湖等のある山で一日に多くの苗木を植えていました。はじめの一年間は、植えた苗木より、雑草の方が伸びるのが早いんです。日が当たらなかったら、みんな枯れてしまいます。植えた苗木を守るために、長い鎌での下草刈りが必要になります。海抜があるため、上ったり下ったりしながら、木を育てていました。ちょうど、戦後の食べ物のない時期で、私は、体重65kgあるかないかの細身で、当時は生きるための糧として大人よりがんばって良く働きました。今思えば、そこで相撲に必要な下半身の強さを、強さというかねばりを備わったようなものです。

あれから50数年経ちましたが、相撲界に入って、それらの木々が今も力強く生きている。2年前、孫を連れて現地に出向き、ここにはじいさんが、若い頃に植えた木がいっぱいある、見てごらんと。いろんな人が見て青々してる、素晴らしいなとみんな思ってるんだよと。寒い北海道では、なかなか木は太くはならないけれど、厳しい冬の寒さを乗り越えて育った木々は、細いながらもたくましく厚みある緑の葉を茂らせて、みんなの目の保養というか、楽しませてくれています。私は、相撲界で残してきた32回の優勝など様々な記録と同様に、この手で増やした緑が私の大事な、大切な財産なんだと思っています。

相撲界に入り、全国各地に足を運んだ際も、緑を見ては、あの苗木を植えていた日々を思い出し、心を落ち着かせています。幸い、私の自宅の近くでも、美しい公園や庭園があります。緑、森林を増やすための社会づくり、今後も私なりに努力、協力していきたいと思います。

日本の国は資源のない国で、いろんな紙を作るにもどうしても木を伐らないといけない。使い捨ての時代はやめて、やはり大事に大事に使わなければいけないと思います。これはもう、一人ひとりが、心がけなければいけないのです。皆さんのこれからの時代、今日やったからやらなくていいというわけではなく、毎日そういう思いで、皆さんが努力してがんばっていかないと、この島国の日本というのは、あっという間に潰れてしまう。どうか皆さんも協力して、大変でしょうけども、がんばってもらいたい。だから私も協力していきたいと思います。よろしくお願いします。

服部幸應氏挨拶設立発起人・服部栄養専門学校校長、医学博士

食育や「シートゥーシー」を知っていますか?

食育や「シートゥーシー」を知っていますか?

私もこの美しい森林づくり全国推進会議、非常に感銘しまして、今日は妹と一緒に来ております。

食育基本法という法律ご存じですか。食育って聞いたことある人いますか。私ども毎年調べておりますが、今72.2%の人が聞いたことあるよといってくれています。そして、36%くらいの人が私は知っているよと言っています。そこでじゃあ食育ってどういう意味ですかと聞くと、親子料理教室でしょ、もしくは、農業体験じゃないの、というくらいの答しか返ってこなかったです。

そこで、食育は森林に関しましても関連があるものですから、今日皆さんにちょっと聞いていただきたい。「食育」には、3つの柱があるんです。

まず1つ目。どんな物を食べたら安全か危険か健康になれるか。私は、中央教育審議会におりまして、この3年間どうしても食育をその学習指導要領に入れたかったものですから、入れました。ですから、小学生、中学生の人はこれから憶えていくと思うし、勉強すると思うんですけども、安心、安全、健康を選ぶ能力、これが1つ目。

2つ目。衣食住の伝承。これが家庭でどうも途切れてきてる。昔から食卓で親御さんが子どもさんに、「何で君、姿勢が悪いの」、「なぜ箸が使えないの」、「なぜニンジン残すの」、といったことをみんな言ってきたんですね。ところが今、食卓で家族が一緒に食事をする時間帯というのが昔の1/3しかないんです。1/3の中で、おまけにテレビを見ながら食事をしていて、そういう躾の一番の基本がぽーんと飛んでしまった。私は、警視庁の仕事もしているのですけども、平成19年に無差別に人を殺めた人が137件あるんです。これは、20年前の44倍です。何故こんな人達が出てきたかというと、食卓できちんと躾を教わらないまま過ごしてきたからではないかと思うんです。

3つ目の柱が、これが環境問題。そして食糧問題。大量生産、大量消費、そして大量廃棄。まさに、もったいないことしてますよね。この、いわゆるもったいない意識、これは、ケニアの環境副大臣を務めノーベル平和賞をとったワンガリ・マータイさんが、一生懸命日本語で「もったいない、もったいない」とやってくれています。このもったいないというのを、私は3年半前に聞き、どうしてあなたは、「もったいない」って日本語で言うんですか?と聞いてみたら、この中にすばらしい意味があると。リデュース、リユース、リサイクル。そして最近は、4つ目の「もったいない」の意味を言ってくれました。リスペクトだと。全部最初が「R」なんです。私は、この精神の中にシートゥーシー(C2C)という精神が入っているような気がします。

皆さん、「C2C」って知っていますか?

クレイドルトゥークレイドル、いわゆる「C」、それにトゥーは「TO」のはずなんだけど、今それは「2」と書いて、「C」。この運動が、世界的にはこれから進んでいこうとしています。これは、「フロムザクレイドルトゥーザクレイドル」、「ゆりかごからゆりかごへ」。昔は、ゆりかごから墓場までというのがありました。これは、英国の労働党だったかが、社会福祉のために使った言葉ですが、今は違うんですね。この一連の流れの中で、我々資源の決まった地球の中でずっと生きている。そういうときに、永続的に、物を大切にしていかなければいけない。その時に、ただ木を伐採して消費するのではなく、それをまた植えていきましょうと。

そこが食育となんで関係があるかというと、今、漁師の人達と接触しているんですけども、実は、「上流の方にもっともっと木を植えてくださいよ」と言ってるわけです。そうすると、木の葉っぱが落ち、これが腐敗しながら腐葉土になる。それが川に流れ込むと、プランクトンを増やすんですね。そのプランクトンが今度、魚介類を増やして大きくしていくというサイクルが綺麗にできているんです。ですから「C2C」という精神を含めてですね、この森林をただ単に見るのではなく、周りにある環境を含め全体が大事なんですよと言いたい。それには、食を通じても、こういう物を見ていくことができるということ、身近なことからも、こういうことを知っていただきたい。

皆さん、「食育」憶えてくれたでしょうか。

ということで、これから、食育を含めて、この森を大切にする心、この運動に私も参加させていただきたいなというふうに思っております。よろしくお願いします。

亀渕昭信氏挨拶音楽番組ディスクジョッキー、前ニッポン放送社長

自然のサイクルを復活させなければならない

自然のサイクルを復活させなければならない

私もフォレスト・サポーターズのメンバーとして、「美しい森林づくり推進国民運動」がもっと多くの人に理解していただくようにお役にたちたいと思っている一人であります。

十数年前になりますが、持病の腰痛がひどくなったとき、「腰を治すのには山を歩くのが一番いいよ」とお医者さんに言われ、それから歩くことを始めました。

山に行って目につくのは、やはり山が荒れている状況です。今、我々がやらなければいけないのは、自然のサイクルを復活させるということではないかと思うのです。山を歩くと、余計な木や枝を切ることを忘れてしまっている。この伐採していない造林地がたくさんありまして、そういうところは、とても目につくわけですが、山が痩せていて、悲鳴があがっているような、そんな感じがします。

前に丹沢に行ったときに、山を持っている方から、30㎝の10m位の木について「亀渕さんこれいくらくらいするか知ってますか?」と聞かれ、「1万円くらいするんじゃないですか」と言ったら、「1本300円ですよ」と言われました。木を伐って、下まで下ろして、それを加工して、木材にするのですから、大変な仕事だと思いますが、あまりに安いのでびっくりしました。

農水大臣が、以前「日本の米をもっと食べて下さい」とおっしゃっていましたが、我々は「日本の木をもっともっと使ってください」というプロモーションや宣伝が必要じゃないかと思います。国産木材の需要を喚起して、供給を高めるということが大事じゃないかなというように思います。

それからもう一つ、植林した森もとても素敵なんですが、もう一つ、森や林を落葉の広葉樹林に作り変えるということもとっても大事じゃないかと思います。最近は里山を大切にしようという運動をなさっている方がたくさんいらっしゃいまして、僕はとてもいいことだと思うのです。

広葉樹林、雑木林には太陽の陽がさんさんと当たって、そこに動物もいれば、昆虫もいれば、木も生えている。木の実もあって、本当にたくさんの自然があるように思います。人間の生活の原点もあんなところにあるんじゃないかと、思うんです。

それから、植林ばかりしても、決して森が豊かにならないんじゃないか、できる限りこの自然の環境に任せること、これが一番良いことではないかなと思います。

今やエコの時代ですけども、我々がやらなければいけないことは、自然環境の循環を絶やさないこと。これもまた人間社会と同じだと思います。我々年配者の役目の一つは、あとに続く若者たちに、自分たちの夢を実現出来るような環境を作ってあげること。それと同じく、自然が循環出来るような環境を意識して作ること、これがとても大事なことじゃないかと思うのです。自然のサイクルを復活させ、自然環境と人間、動物とか生き物、といったものを調和させる、これがエコの原点じゃないかと考えます。
今後も私は、この山歩きを通じて、自然を守っていきたいと思っております。みなさん、これからもがんばっていきましょう。

(財)ボーイスカウト日本連盟全国推進会議構成団体

スカウト活動をすることにより、改めて森の大切さ、偉大さを実感することができます

スカウト活動をすることにより、改めて森の大切さ、偉大さを実感することができます

私達は、神奈川連盟小田原第2団に所属するベンチャースカウトの山本です。古橋です。船本です。
本日は神奈川での森づくりについてお話しします。

ボーイスカウト神奈川連盟は、平成11年に50周年記念事業として、多くの事業に取り組みました。メインテーマは、「役立つスカウティングを地域から世界へ」でした。その一環として、地球の環境を大切にし、整備していく活動の一つとして、各年代のスカウトにふさわしい緑を増やす活動を行うということになり、地域での緑化活動や緑の羽根募金活動、植林活動を行いました。その中のボーイスカウト神奈川の森植林活動は、中高生のスカウトを中心に約300名が参加して行われました。植林地は、丹沢山地の中腹で、水源の森林約1ヘクタールに、ケヤキやコナラなど計2,700本を私達の先輩が植林しました。この活動を先輩スカウトから引継ぎ、現在私達が育樹活動を行い、今年で10年目の下刈りが行われます。しかし、10年の間に、ニホンジカに苗木が食べられ、また私達も不慣れな山地での下刈りで苗木を伐ってしまい、元気の良い樹木の生えそろった森林となるには、まだまだ時間がかかりそうです。森林を育てていく難しさをとても強く感じています。これからもボーイスカウトの下刈りや植林や募金活動を通して、いつもお世話になっている自然を守っていきたいと考えます。

さて、私達の団では、ボーイスカウト活動を通して、様々に自然と関わってきました。森は私達に、活動の場所を与えてくれ、森にある薪を拾い火をおこし、森に流れる水を使い炊事をします。キャンプをするときは、できるだけ森を傷つけないように考え、終わった後は、何もなかったかのような状態で去り、自然に対する感謝の気持ちを持って、自然と共存してきました。キャンプでは、森の中で生活を送ります。時には夜になるとナイトゲームやキャンプファイアなどをします。ナイトゲームでは、夜の森の神秘さや静けさの中で、昼とは違う森を堪能します。キャンプファイアでは、歌を歌ったり、ゲームをしたりして大いに楽しみ、火の暖かさを森の暗やみに包まれながら感じます。このような環境の中で、スカウト活動をすることにより、改めて森の大切さ、偉大さを実感することができます。森林と触れ合うことのできる機会が多い中、活動を通し、この森林環境を悪化させることなく、より良い状態にして、未来へ受け継いでいけることができればいいと思います。

古瀬誠氏挨拶日本の森を守る地方銀行有志の会事務局代表、山陰合同銀行頭取

“日本の森を守る地方銀行有志の会”をよろしく

“日本の森を守る地方銀行有志の会”をよろしく

私どもの銀行業界では、全国地方銀行協会という会が64行あり、その団体の60行が参加(注:現在では全64行参加)いたしまして、日本の森を守る地方銀行有志の会を設立いたしました。活動をこれからまさに始めようとしているところですが、その経緯と目的について少しご報告させていただきます。
そもそも、昨年の5月、ちょうど洞爺湖サミットを2ヶ月後に控えた時期でしたが、東京で京都銀行の柏原頭取と会食をし、そこで、環境問題が国の重要な政策課題になっているということを踏まえ、私達の銀行でも何かお役に立てることはないのかという話をしました。その際に全国に山林は存在しておりますので、地域のリーディングカンパニーとして地域に密着した銀行が、それらの運動に取り組めば、少しは国のお役に立てるのではないかという話をいたしまして、合意をいたしました。

その日のうちに、すぐ持ち帰りまして、私共の銀行の中の事務局で、今後の展開について検討をいたしました。昨年の秋には、8つの銀行の頭取さんにご相談申し上げて、発起人会というものを立ち上げ、そこでさらに検討を加えて、今年になってから、加盟の各銀行にお誘いし、現在までのところ、60行をもって、第1回の設立総会の開催を予定しているところです。12月には、京都でキックオフイベントを行いまして、全国に広く発信をしたいとこう思っているところです。

そもそもなぜそのようなことを思いついたかということですが、私どもの銀行では、3年ほど前から本格的に島根県と鳥取県で森林保全活動を熱心に取り組んでおります。県土の70%以上を占めております森林が、大変に荒廃が進んできておる現状とか、あるいは森を守る大切さを広く県民に知っていただきたいということから始めた活動で、2つの切り口でもって具体的に活動しております。

1つは、県内に存在する企業が、森を一定の条件で借り受け、従業員や家族が、実際の森林の保全活動に携われている。これを広めていきたいとこう思いまして、両県の知事さんにご相談を申し上げまして、鳥取では共生の森、島根では企業参加の森づくりという主旨で、制度を立ち上げて頂きました。そこを我々が、両県内で4箇所の森を借り受けまして、実際に森林の保全の活動を行いますとともに、企業に働きかけを行って、今までのところ鳥取県で12社、島根県で5社の企業が熱心に森林の保全の活動に取り組んでおります。さらにまたこれが広がっていく状況にありまして、非常に一定の成果を得ているなと思っています。

そして、もう1つの切り口というのは、市民のNPO法人を始め各団体の活動をサポートすることによって、地域の運動に発展させていくということです。当初お集まりいただいたのは18団体でしたが、私どもで事務所を持ちまして、情報の交換をしながら、広く活動を広げていく作業をやってまいりまして、今ではお陰様で42団体が加盟して森を守ろう山陰ネットワーク会議というの作っているところです。地域に我々がいるから、こういうことが可能なわけで、地域の銀行同士がこういう風な活動をやれば、川下の方から全国的な運動を展開できる可能性があるのではないかと思いましたので、地銀の中で進めをいたしているところでございます。

もちろんこれから正式に取り組みますのは、この2つの切り口だけではありません。我々は銀行ですから、例えば、地域の材木を使って住宅ローンを借りられる。借りられた人には、少し金利を優遇して差し上げるとか、あるいは、森林の保全活動に熱心な企業には、様々な金融商品を提供することで運動を推進するとか、あるいは地域の森林ビジネスそのものを地域の主体である我々が金融のコントロールタワーになってですね、より地域に根ざしたビジネスのモデルを作るためのお役に立てないかといったような、いろんな切り口で4つぐらいのテーマごとに分科会を作って、具体的な活動をするように準備を進めているところです。

メッセージ

坂本 龍一一般社団法人more trees代表

009_07日本は森林の多い国です。
たくさんCO2を固着し、また水を保ち、
多くの生命を養い、はたまた海まで育ててくれる森林を、ぜひ健康に保つため一緒に努力しましょう。

私たちmore treesでは、高知県四万十川流域や北海道下川町などで森林整備を進めています。

これによって生み出されるJ-VERを用いた
カーボンオフセットの取り組みを進めています。

ぜひ皆さんで一緒に森と地域を盛り上げていきましょう。

more trees!!

一般社団法人more trees代表 坂本龍一

三浦 しをん作家

009_08林業の小説を書くための取材を通し、山で働く人々の情熱と、日本の山の奥深さとを垣間見ました。

「自然」とは、なんなのか―――。たとえ、ひとの手で植林されたスギやヒノキの山であっても、それはやっぱり、循環する自然の一部なんだ。濃い緑であふれた山と、愛情をもって山の手入れをするひとたちを見て、そんな当たり前のことを改めて痛感しました。

澄んだ水を生みだし、木を育む山と林業は、町で暮らすものにとっても、これからますます、身近で重要な存在になっていくと確信しています。

作家 三浦しをん

講演「地球温暖化防止に関わる森林分野の動向」
松本光朗氏(独立行政法人森林総合研究所温暖化対応推進室長)

1 地球温暖化と森林・木材の関係

松本光朗氏

松本光朗氏

森林にはCO2の吸収と貯蔵の役割があり、森林の面積や蓄積量を増やすことはもちろん、森林を健全に維持することが大切である。

また、森林からつくられる木材を利用することは、炭素が蓄える「炭素貯蔵効果」、他の資源に比べ加工に要するエネルギー使用が少ない「省エネ効果」、ゼロエミッションである森林から生産される資材を利用することによって化石燃料の使用量を抑える「代替効果」があり、地球温暖化防止に貢献している。

IPCCの報告書では、森林分野は森林面積維持・増加、蓄積の維持・増加、木材製品の積極利用が、地球温暖化防止に貢献と記載してある。

2 日本の森林吸収源対策

日本では、ここ数百年でもっとも森林が豊かと考えているが、短期的には間伐の推進、長期的には蓄積を高水準に保ちながらの木材利用の推進が課題。
日本国内の森林では、新たな植林と森林経営活動が行われた森林が吸収量の対象。森林総合研究所では、森林簿をもとにした森林吸収量の算出方法を開発し、これにより毎年森林吸収量が算定・報告されている。国際交渉においてもこの方法は高く評価されており、まったく批判を受けていない。
日本の森林全体については、戦後植栽した人工林の生長量が落ちてきているが、間伐を行った森林が増えているおり、2007年では吸収量3.2%まで増えており、間伐施策の効果が出てきている。

3 森林吸収に関する新たな話題

京都議定書のもとでは、先進国の森林吸収量を売買する仕組みはないが、実態を見ると山側にも企業等の都市側にもその需要がある。そこで、京都議定書の外ではあるが、環境省が音頭をとってつくられた国内オフセットクレジットJ-VERでは、厳しいルールに基づき、森林吸収量をクレジットとして売買できるようになった。森林経営プロジェクトとしては、2007年度以降に間伐した森林の吸収量を売ることができる間伐推進型、広域の森林で伐採によるCO2などの排出も加味して、上回った吸収量を売買する持続可能な森林経営促進型があり、都会と山村を結ぶ新しい取組として注目されている。

4 次期枠組みでの森林の取り扱い

今の森林吸収のルールは第1約束期間のみとなっており、現在2013年以降の第2約束期間でのルールについて交渉をおこなっており、今年12月のコペンハーゲンのCOP15で決着することになっている。

現在の吸収量算定のルールは、グロスネットとキャッピングという、基準年は考慮せず、該当年の吸収量について利用の上限をかぶせて、吸収量を認めるもの。EUはネットネットを主張しているが、これは基準年に対して吸収量が増えた分だけ利用できるというもの。日本は、人工林の高齢化により、ネットネットでは森林が排出源になる可能性もあり、今のグロスネットを主張している。EUは妥協案として、新たにバー(基準値)という提案をしてきたが、いまだ各国の主張には隔たりがあり、難しい交渉が続いている。

もう一つの問題は伐採木材。現在は、伐採した時点でCO2排出としているが、この方法は木材の炭素貯蔵機能を無視しているという批判を受けてきた。そのため、次期枠組みでは算入することで合意されているものの、その算定方法について難しい交渉が続いている。日本では、森林経営活動によって出てきた国産材の炭素については計上しようとの提案をしている。

また、途上国の森林減少によるCO2排出を削減することは、大きなテーマだが、京都議定書には途上国の森林減少を止める仕組みがない。交渉では技術的に途上国の森林の現況、排出量をどのように把握するかということを議論しているところ。大きな問題ではあるが、現状では多くの途上国には森林の炭素量変化を把握するデータや技術が不足しており、次期約束期間でクレジット化にまで至ることは難しいと考えている。

5 まとめ

地球温暖化の問題の中で、CO2の森林吸収源の役割は大きなものがあるが、森林は多面的機能を持ち総合的に役立っており、CO2の部分ばかりが注目されていることは問題がある。また、国際的な話と国内の話は別のものではなく、お互いが協調して良い結果を得ることが必要。

また、森林の問題は、山側だけではなく、都会、国民全体の理解が必要。JVER等の取組が理解促進に役立つことを望む。

パネラーによる事例紹介

安斎保氏

安斎保氏

安斎保氏(北海道下川町長)からは、北海道下川町の取組として、昭和29年の洞爺丸台風を契機に循環型の森林経営を目指し、60年サイクルでの法正林方式をとり、生長量以上の伐採をしないこと、生産された木材は、地元の製材工場で加工するなど、「内発的産業振興」と名付けて、林業・林産業を振興していること、森林を町に欠かせない資源として、木質バイオマスの活用や住宅建設を行う場合の補助、公共施設の木質化等を推進していることを説明した上で、森林の整備・保全に向けては川下対策が重要であることを強調するお話がありました。

 

近藤奈美氏

近藤奈美氏

近藤奈美氏((株)ジャパンエナジー社会貢献担当課長)からは、CSRとしての社員のボランティアによる森林づくり、自治体との森林の里親事業や1,100haにも及ぶ鉱山跡地等の社有林の整備等について説明。さらに、間伐材の運賃の負担により、童話の絵本など紙での間伐材の活用、SS店頭における木製品利用等について紹介し、まずは、森林とのふれあいに力点を置きながら、息の長い取組みを進めていきたいとのお話がありました。

 

竹田純一氏

竹田純一氏

竹田純一氏(山村再生支援センター事務局長)からは、5月22日にスタートした山村再生支援センターの取組について、①森林整備によるCO2吸収量や木質燃料利用によるCO2排出削減量のクレジット化・販売、②木質バイオマスの安定供給、③未利用山村資源の事業化、④教育・癒し効果を目的とした山村資源の利用の4分野について支援していることを説明した上で、企業向けセミナーの実施など当面の事業について紹介し、山村と企業のマッチングを行うコーディネーターとして取組を進めたいとのお話がありました。

 

速水亨氏

速水亨氏

速水亨氏((社)日本林業経営者協会会長、速水林業代表)からは、林業経営者協会として、森林の多様な機能の内部経済化の取組として、生物多様性を一定以上確保した森林に限ってのCO2吸収量購入の仕組み(フォレストック認定)を創設したことについて紹介するとともに、海外での違法伐採の問題点を指摘し、日本の適切に管理した人工林から産出された木材利用の重要性や人工林でも豊かな森林をつくることができることを林業者自らがアピールしていくことの重要性についてお話がありました。

パネルディスカッション「地球温暖化防止のための森林づくりの取組」

宮林茂幸美しい森林づくり全国推進会議事務局長

宮林茂幸美しい森林づくり全国推進会議事務局長

このあと、講演を行った松本光朗氏も加わり、宮林茂幸美しい森林づくり全国推進会議事務局長(東京農業大学教授)がコーディネーターとなりディスカッションが行われました。ディスカッションの中では、各パネラーの発言を踏まえ、CO2吸収機能の重要性を踏まえつつ、森林が適切に整備・保全され、多様な機能が発揮されるような状態にしていくことにこそ、「美しい森林づくり」の本質、運動論があるのではないかとの視点で展開されました。

会場からも質問が出されるなど、活発な意見交換が行われ、宮林事務局長から、まとめとして、009_18①美しい森林はみんなの財産であり、みんなで参加してよくしていくべきものであるからこそ、それぞれの役割を明確にしていく必要があること、②地域の中で経済性を考え、評価する手法を確立する必要があること、③100年先の日本の姿を見据えた美しい森林を創造し、取組を展開していく必要があることについて、提言があり、ディスカッションを終了しました。