岩手、宮城の沿岸に立地する合板工場等が被災する。

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東北地方は森林面積も大きく木材の一大供給地です。切り出された木材は、水運によって沿岸部に渡り集積地を形成してきました。岩手県、宮城県の沿岸は、高度成長期には木材輸入港としての機能も付加されたことで、大型の合板工場や製材工場、流通施設等が多数存在していました。これらの地域の6社で、実に全国の合板の約3割を生産していましたが、東日本大震災では津波が沿岸にある各社の建屋、原木、製材機械や乾燥機などをのみ込み、機能不全となる事態を招きました。結果、震災による被害は90カ所、507億円に及びましたが(2011年6月現在)、加工機械等の復旧の遅れなどから廃業や閉鎖を余儀なくされた被災工場等も数多くあります。

その一例が、津波で被災した岩手県大船渡市の合板工場です。合板用の原木を受け入れられない状況となると、伐採地から搬出される材木の量も減らさざるを得ないのは自明の理。採算性により、山からはなかなか材木が出せないと、利用されずに放置される木が増加します。こうした「点」の影響だけにとどまらず、地域経済、雇用、林業振興など「面的」に深刻な影響が表れています。

岩手県三陸沿岸の木材生産業のケースでは、震災前は地元の合板工場向けに搬出していた原木を、秋田などへ運搬し販売していますが、時間的ロスや工場での受け入れ量が限られるなどの影響が出ています。また、同県の場合、森林整備で得られる木材は、建築向けのA材が1.5 割、合板工場向けのB材が7割、製紙用や木質ボードに使うチップ材(C材)が1.5 割、という産出の割合です。合板工場の閉鎖・廃業と操業の効率低下でB材がだぶつき、いまなお森林整備が進まない状況といわれています。被災地の林業復興のためにも地場材の出口を確保することが、いま求められています。