放置され荒廃が進む、被災地の森林。

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東北地方は、本州の北部に位置しており、国土全体の約2割を占める広大な面積を有し、その土地の70%を森林が占めています。東日本大震災に見舞われた東北東部は、北上山地、阿武隈山地があり、地形的制約等が地域間の交流機会の障害となってきた地域でもありました。

今回の大震災で甚大な被害に遭った東北(三陸)沿岸部の森も漁業と密接な関係にありました。漁師は代々山を所有し、燃料としての薪も、養殖筏の材も、そして舟の材も自らが管理する森林から得てきました。歴史的に船大工が多かったのもこうした背景があったからに他なりません。漁師の足を山から遠ざけ、また豊富な森林資源をもつ東北の林業が後退する契機となったのは戦後。大戦後の復興等のため木材の需要は急増し、供給が十分に追いつきませんでした。そこで政府がとった政策が、スギやヒノキを植える「拡大造林政策」です。木が育つまでには、少なくとも30年程度の年数が必要ですが、その間に、比較的に安く一度に大量に入手できる外材(輸入材)が多く使われるようになりました。さらに、昭和30年代の燃料革命によって薪炭材は燃料として適さなくなり、国産材の需要はどんどん落ち込んでいきました。こうした背景があり、十分な手入れがなされずに森林の荒廃が目立つようになっていたのです。

拡大造林政策によって生み出された多くの人工林は、被災した東北沿岸部の海の間近でも数多く見ることができ、その多くが津波による塩害を被りました。被害の及ばなかった人工林も、いまが収穫期を迎えていますが、伐採されないまま放置されたことで荒廃が進んでいます。台風等の被害や大雨による土砂災害も危惧されていますが、今回の震災を機に、残された資源として森が見直される中、植える、育てる、上手に使う、収穫する、といった本来あるべき森林の循環が望まれています。