木材と木工の町として、木の温もりを地元宮城へ、全国へ広めるために。

宮城県・登米市

もくもくハウス

海の町の隣に、木の文化が香る町あり。

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豊かな森をバックに建つ道の駅つやま・もくもくランド

img0306-1宮城県登米市津山町は、東北を代表する大河、北上川の下流に位置し、舟運の拠点として木材が集積するなど木の町として知られる。町内には製材所が6カ所もあり、森や木の恵みが暮らしに活かされている。そしてものづくりの拠点が、津山産の杉の木を使った特産品「矢羽(やばね)木工品」を販売する「もくもくハウス」。東日本大震災が発生した日は、新製品の発表イベントが行われていたが、急遽、式も途中で取りやめになったといいます。

img0306-8「怖いほど激しい地震だったけど、もくもくハウスは被害が無かった。ただ隣の南三陸町は、ご存じの通りとんでもない事態となっていたし、震災の翌日からは食料を届けたりと支援活動を始めました。ここは道の駅となっているので、観光地からの帰宅困難者を受け入れたり、被災地に入る最終地点なので、自衛隊や海外からの救助隊、各県からの警察やレスキュー隊や報道関係の拠点にもなりました。建物自体は無事だったけど、周りはかつては沼地だったので陥没したり、トイレの配管がずれて使えなくなったりで大変でした。震災当初は男はもっぱら水汲み、女は食事の提供という日々でしたね。」(津山木工芸品事業協同組合 理事長 菊池 覚さん)

困ったのは震災で町内の森林組合や製材所の機能がストップしたことだそうです。

「もくもくハウスの利点は、町内の森林組合との連携にあるんです。欲しい材があれば森林組合に相談すれば工面してくれる恵まれた関係ですが、商品を作ろうにも材料が入ってこないのには参りました。」

激減する来店客で生産活動の休止も視野に。

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組合の職人さんのなかには、被災し廃業を余儀なくされた方もいた。もともと津山町は南三陸町とは同じ本吉郡で繋がりが強い間柄で、町内では南三陸町に住む親戚が被災者になってしまったケースも少なくはないといいます。「南三陸町は観光地でしたので夏は海水浴客がここに立ち寄ったし、それ以外でも土日はドライブなどでお客様が大勢やってきました。けれど、震災があってからは客足も消えちゃって、それに当時は観光の自粛もあってでしょう・・・。木工品でいえば3月、4月は、大幅に売上げがダウンして、経営を続けていけるのか本当に心配したものです。5月くらいからは全国からボランティアの方が被災地に入るためにここを利用してくれましたが、それでも売上げの低迷は続きました。」(事務主任 阿部 幸恵さん)

img0306-5ボランティアの方に励ましてもらったり、企業から声を掛けてもらいキャンペーンの商品として使ってもらったり各方面からの助けもあったそうです。

「宣伝活動もしなきゃなと思っていたところに、県からも支援をしてもらえると、仙台にアンテナショップを作ったのは9月。お陰で問い合わせが多くなり、商品を取り扱ってくれる店も増えました。」(菊池 覚さん)いままでは接点の無かった会社とも繋がりができたり、商品作りのノウハウや技術、ネットワークを発揮できる場面も増えてきたといいます。

被災地支援の輪が広がり、木製品の温もりも見直される。

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今回の大震災では宮城県の幼稚園や保育所も被災しました。世界から、国内各地からもたくさんの支援がありましたが、地域の保育の再生を目指し、必要な手と物を届ける「みやぎ・わらすっこプロジェクト」にも使われる木製のキッチンセットも、もくもくハウスでつくられています。

img0306-3「被災した幼稚園への復興支援の一環でユニセフと宮城学園女子大学の先生たちが立ち上げたプロジェクトですが、南三陸町の幼稚園などへの支援品として、ここの玩具を利用していただいています。木の温もりのあるもの、本物の玩具にふれてもらいたいとの理由から選んでいただいているようです。東京の方が購入して被災地の幼稚園に玩具をプレゼントにしたり、いままでにない注文の仕方もありますね。支援を必要としている幼稚園・保育園はとにかく一杯あるので、うれしい取り組みだと思いますね。」(事務主任 阿部 幸恵さん)

「さわってみて温かいしやわらかい、そしてやさしい、それが木の魅力です。当組合は矢羽木工品をつくっていますが、伝統工芸品の枠を超えて食器からインテリア・文具、玩具、家具まで幅広く手がけていることも特徴。津山町発、木のある暮らしの温もりを全国のみなさんにお届けてしていきたいですね。」

木材を供給するのは700人の組合員を抱える津山町森林組合。津山町は林業地であるだけに植樹祭も多く、子供たちも森には親近感があるようです。また、組合員の山を借りて、近郊の工業高校を対象とした就業体験も実施するなど、組合自体も主体的に教育機会に関わっています。『森』や『木』にふれあってきた子供たちが、未来の工芸家になる、あるいはフォレスターになる素地がこの町にはあります。

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クラフトショップ もくもくハウス(道の駅つやま・もくもくランド)
宮城県登米市津山町
http://moku2.biz/

店内には、特産品の杉矢羽集成材やアカマツ、ケヤキ、エンジュなどで作られた木工品が約2000点。そこは器やトレー、食卓小物や文具、子どもたちに人気の木の玩具、オーダーメイドも可能な家具など、木の温もりにあふれる木工品が所狭しと並ぶ、木工クラフトのデパート。年間を通じて多彩なイベントも催されている。