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令和6年度 森林づくり活動レポート

佐賀市

貢献したSDGs目標

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佐賀県内の全市町は、豊かな森・川・海の自然環境を未来につなぐ「森川海人っプロジェクト」に賛同し、森づくり協定の輪を民間企業や団体にも広げて活動しています。佐賀市においても、幾つかの企業や団体が佐賀市と協定を締結し、佐賀市有林の植栽、草刈り、枝払い等の森づくり活動や、森林とのふれあい体験の提供などに取り組まれています。

今回、このような取組みとは別の視点、具体的には佐賀市の公共調達(物品購入)の側から、森林の整備保全を目的の切り口とし、環境保護や環境教育、さらには地域振興(中山間地域の振興)等にも寄与する総合的な政策として取組んでいる「木になる紙」について、以下のとおり紹介します。この「木になる紙」は、社会的に価値のある取組みとして評価をいただき、佐賀市はこれまで「グリーン購入大賞・大臣賞」2回と「エコプロアワード・奨励賞」1回などの受賞実績があります。

佐賀市は平成17年の市町村合併で、市域は約40%の森林面積を占める北部地域から、平野部を経て南部の海岸地域までに及び、その先には海苔養殖が盛んな有明海を有しています。このような地域性を背景に、山から里・町・海まで一体感のある地域振興策が必要と判断しました。この政策を充実させていくことで、北部中山間地域を含む旧町村への配慮につながり、合併後の新佐賀市の一体感の醸成が図られていくのではと考えました。こうして、森林行政や環境行政ではない総務部門の公共調達行政の側から仕掛けて取組みを開始したのが「木になる紙」です。

佐賀市では平成21年度から未利用資源の地元間伐材を活用した用紙「木になる紙」の公共調達(全庁グリーン調達)を開始し、環境保護、森林保全、林業支援、地産地消などの政策効果を同時に目指す多面的で効率的な行政運営を実践してきました。これは経済価値の低い地元間伐材の有効活用による商品開発(最初はコピー用紙、その後封筒や印刷用紙などに拡大)に協力し、市場メカニズム(生産・流通・消費)を通じた公共調達の実践によって、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)の実現に貢献する取組みです。

「木になる紙」の取組み図

「木になる紙」製品の販売額の一部に含まれる、間伐材を拠出した森林所有者へ支給される還元金は、調達実績が高まるほど支給額が膨らみ、森林所有者の間伐意欲の喚起につなげる仕組みとなっています。平成26年度からは市内産の間伐材のみを使用した「佐賀の森の木になる紙」を生産できるまでの市場規模に拡大し、現在は県内の他の地方公共団体も巻き込んだ協調調達を行う新たな流通市場が形成され、紙の地産地消が強化されています。令和6年度までの過去16年間の調達実績がもたらした成果は累計で、間伐推進面積が約987ヘクタール、CO2の吸収量が約4,487トン、還元金の支給額が約2,560万円、国内CO2削減量が約506トン(カーボン・オフセット機能付商品購入)となり、これらはもし取組んでいなかったら得られなかった成果です。

そして、取組みの付加価値を高めるために、令和4年度からは新たに炭素取引(J-クレジット)制度の活用も始めました。これは、「木になる紙」の調達実績に基づいた炭素価値(カーボン・クレジット:累計116トン)を無償で取得して佐賀市のCO2総排出量と相殺し、市自らの排出量削減に活用しています。これは脱炭素にも貢献する取組みです。さらに、令和6年度からは市内全世帯に毎月宅配する市政広報誌(印刷用紙)の作成経費に「森林環境譲与税」の充当を開始し、より低コストでの調達を行うことで効率的な行政運営に寄与しています。

佐賀市は「木になる紙」のモデル都市として、全国各地へ普及啓発に努めています。令和6年には著書も出版しています(『SDGs 自治体白書 2023-2024』)。「木になる紙」の取組みに賛同する県外地域も徐々に増えつつあり、既に滋賀県、愛媛県、大阪府などでも「佐賀の森の木になる紙」と同様の各地元産「木になる紙」が誕生し、現在は東日本に向けて拡大中です。令和7年4月には林野庁長官直々に称賛と激励のお言葉を頂戴しました。 今後も佐賀市は、全国各地で「木になる紙」に賛同し取組む人たちに共通する思い(より良い山々を残して後世の子どもたちにバトンをつなぎ渡して行くこと)に共感・共鳴するとともに、地域振興策の一つとして「木になる紙」の生産から消費に至るまでに関わる様々なステークホルダーとの協調関係を継続しながら、市内中山間地域の活性化に貢献するよう取組んでいきたいと考えています。

『SDGs 自治体白書 2023-2024』表紙と目次から抜粋(佐賀市 山口和海)

2025.09 更新