□ 椎野潤ブログ(塩地研究会第26回) 木造大型パネル工場で働く女性でも木造躯体を作れる仕事
モック株式会社千葉工場にて木造大型パネルの生産に携わっている岡沢です。今回は“女性・高齢者でも木造躯体を作れる工場”について書いていきます。
私は医療介護従事者として長年勤め、建築の知識は全くありませんでした。それは大工さんの仕事自体を深く考えていないだけではなく、いわゆる“3K”と呼ばれる職種だということも頭にありませんでした。そもそもモックへ入社してから仕事内容に驚いたくらいの私の認知の低さではありました。
「女性なのに建築の仕事凄いね」「なぜこの仕事に就いたの?」とよくお声掛け頂きます。それ程、女性が珍しいのだなあと感じています。女性が珍しい=女性が働き辛いということなのでしょう。柔道整復師に女性が少ない理由と通じる部分に加え、危険作業も多い為、女性が建築現場の仕事を選びにくいのだと思っています。
建築物は何十年先も存在し続ける、そんな場所を人の手で作り上げるのは凄い事だと思います。また、1つの芸術であるとも感じています。工場内で出来上がった製品たちを見て、日々惚れ惚れしますし、現場で一つの建物として納まっても美しいなと感心します。建築に関わることが出来て日々幸せです。
木造の在来工法は、大工さん不足や高齢化が進み、この先も減少していくことが懸念されています。この仕事を始める前は知らなかった事でした。大型パネルによって大工さんたちの仕事を奪ってしまうのではないかと当初は感じていました。実際に工場内外問わず、色々な方とお会いする機会が増えましたが、他工場の方や現場大工さんは年配の方が多く、80歳近い方も現役で働いていて驚きました。若い男性は少なく、女性大工さんにはお1人にしか出会えていません。
大型パネルは設計情報をデジタル化し、建物をパネルに分割して正確な施工図を作る技術です。それによって、これまで大工さんが現場でやってきたことを、工場内であらかじめ作る=プレファブ化することができます。現場は危険な作業、高所での作業が多いですが、大型パネルによりこれらの負担は大幅に削減出来ます。危険な作業や重労働は大型パネル工場へ任せて頂き、“大工さんにしか出来ない仕事”、“伝統的な仕事” を若い世代への継承・発展に繋げて欲しいという思いが今はあります。
人の手で作られるもの、日本人故の繊細な技術はこの先もなくてはならないものです。現場に若い方が増えるきっかけに、大型パネルの存在が今後生きていくのではないかと思います。また、怪我や事故災害が減り、安全に仕事がし続けられるのではないかと感じています。
若い方や女性が、建築業界の仕事を選んでくれたらいいなという想いもあり、椎野ブログを執筆させて頂きました。
次回は大型パネル生産現場の様子についてお話します。
☆まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二
職業とは職であり、生業であるものです。では職とは何でしょうか?
私は世の中のため世の人のために必要な行為とそれを行う体制を指していると思っています。職業とは、世の中のため世の人のために行う行為を生業にしていることを言うと思っています。私の友人に会社を辞めて、株などの取引で稼いでいる者がいますが、誤解を恐れず言えば、これは職業とは言えません。本人も職業とは思っていないそうです。稼ぎなのです。基本的には、自分のための行為を生業にしている稼業というべきものと考えています。
世の中のため世の人のために、家やその他の建物を建てる大型パネルを作ることは、岡沢さんの職業です。大工さんは重筋労働が避けられなかったので女性が少ないのは事実でしょう。どうしても関係者が男性ばかりの職場になりがちだったですから、女性の働きやすさに心配りが行き届いていないのだと思います。しかし、農業土木をやっている私の別の友人は、「多くの人が目にし、後世に残る。これが建設産業に携わる者の醍醐味です。」と言っています。女性にとっても素敵な職業だと思います。
新年度になり、新たに仕事に就いた方たちへの街角でのインタビューで、スキルアップのためにこの仕事を選んだ、自分に合った仕事がなかなか見つからなった、と街角のインタビューに答えている方もいました。私は、これから、自分のためだけでなく、どんな仕事でも世の中のため世の人のためにということを頭において働いて欲しい、と思います。
岡沢さんは、ぜひ、若い方や女性が建築業界の仕事を選んでくれたらいいなという想いで、その仕事が世の中のため世の人のためになるんですよ、ということも発信していってください。