豊かな森林の役割

森のもつ8つのチカラ

森林は、生物多様性を育み、地球環境や水源を豊かにするだけでなく、土砂災害を防ぎ、人の心を癒してくれます。さらに、食や文化にも深く関わり、私たちが生きる環境を守るために、さまざまな機能を果たしています。

その役割は、大きく分けて8つ。なかでも、定量的な評価が可能とされる「地球環境保全機能」「土砂災害防止機能・土壌保全機能」「水源涵養機能」「保健・レクリエーション機能」の4つの機能は、この4つだけで、年間約70兆円分の経済的価値があるとされています(日本学術会議の試算による)。

これら森のチカラが最大限に発揮されるには、森林の生態系が人にとっても生き物にとっても、バランス良く保たれていることが大切です。そのためには、私たち一人ひとりが森に関心をもち、みんなで関わっていくことが必要です。

生物多様性保全機能

いろいろな生き物のすみかになる

国土の約7割を占めるわが国の森林には、約200種の鳥類、2万種の昆虫類をはじめとする野生動植物や菌類・細菌類など膨大な数の微生物が生息・生育しており、その土地の環境に応じて、複雑かつ多様な生態系を形成しています。このような森を保全することは、遺伝子や生物種、生態系など生物多様性の保全につながります。

生物多様性保全機能(いろいろな生き物のすみかになる)

地球環境保全機能

地球温暖化を防ぐ

森林は、産業活動や家庭生活によって排出される二酸化炭素を吸収して、地球温暖化を抑える重要なはたらきを持っています。樹木は光合成をすることで、二酸化炭素を吸収し炭素として取り込む働きがあり、特に若い樹木は、幹や枝、根などに大量の炭素を蓄えていくことができます。

さらに、伐採され木材となってからも、建物や家具などに利用することで、炭素を長期的に固定することが可能です。また、森林はその土壌にも多くの有機物を含んでおり、大量の炭素を貯蔵しています。わたしたちは、森林に親しみ、植林や間伐を適切に行いながら保全し、木材を暮らしの中で持続的に活用することが大切です。

地球環境保全機能(地球温暖化を防ぐ)

土砂災害防止機能/土壌保全機能

土をつくり、山が崩れるのを防ぐ

森林は、生態系の活動によって土壌をつくり、地中にはりめぐらされた樹木の根によって、土壌を斜面につなぎ止める能力を持っています。また、土壌の表面をおおう落葉落枝やかん木、下草等によって、降雨などによる土壌の流出を抑え、土砂崩れなどの土砂災害の未然防止に力を発揮します。

土砂災害防止機能/土壌保全機能(土をつくり、山が崩れるのを防ぐ)

水源涵養機能

水を貯え、きれいにする

森林の土は、有機物やさまざまな生物によって、たくさんの小さなすき間のある、スポンジのような構造をつくっています。このため、裸地と比べて、雨水を地中に浸透させる能力が約3倍もあり、雨水をしっかり貯えてゆっくりと河川に流すことができます。大雨のときに河川の氾濫(はんらん)を防いだり、渇水を緩和するほか、水質を浄化するはたらきも期待できます。

水源涵養機能(水を貯え、きれいにする)

快適環境形成機能

空気をきれいにし、生活環境を快適にする

森林は、土壌や植物の蒸発散作用によって、夏の気温を低下させ、都市部におけるヒートアイランド現象を抑える等、地球の気温の変化を緩和するはたらきを持っています。また、防風、防音、樹冠による塵埃(じんあい)の吸収や汚染物質の吸収機能なども備えており、快適な生活環境の形成に貢献しています。

快適環境形成機能(空気をきれいにし、生活環境を快適にする)

保健・レクリエーション機能

健康の向上や癒やしをもたらす空間になる

何らかの精神的あるいは肉体的ストレスや疲労感のある人にとって、森林が安らぎや癒しの効果を持つ空間であることがわかっています。研究では、森林空間で免疫細胞の機能が向上することや、樹木が発散する揮発性物質が健康増進に効果を発揮することなど、実証的なデータが蓄積されています。このことから、森林浴やハイキングが、気分転換や健康維持に高い効果を発揮することが期待できます。

保健・レクリエーション機能(健康の向上や癒やしをもたらす空間になる)

文化機能

文化・景観を形づくる

森林の景観(ランドスケープ)は、日本人の自然観や宗教、伝統文化の形成において、重要な要素になっています。また、子どもの頃の自然体験は、学ぶ意欲を高めるとともに、自尊感情(自己肯定感)にも良い影響を与えることがデータで示されており、森林は環境教育や体験学習の場として重要な役割を果たしています。

文化機能(文化・景観を形づくる)

物質生産機能

木材やきのこの生産の場になる

森林は、木材、竹、きのこ、山菜、薬材などさまざまな資源を供給してくれます。これらの資源は、適切に森を管理することにより、半永久的に繰り返し生産ができる“循環型資源”として私たちの生活を支えています。また、石炭・石油などの化石燃料に代わる再生可能エネルギーのひとつとして、環境負荷が少ない森林バイオマスの活用が期待されています。

物質生産機能(木材やきのこの生産の場になる)

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