□ 椎野先生との往復書簡(第2回返信) 椎野先生への返信
酒井秀夫
椎野潤先生
椎野塾ブログへの執筆再開、お慶び申し上げます。
日頃の喧噪から離れて、クルーズ船でゆっくり港めぐりをできたらと想像するだけでもうらやましくなります。2024年の国内寄港回数が2479回もあるとは知りませんでした。仮に乗客4,000人として、1,000万人が上陸したことになります。真偽の程はわかりませんが、昨今の米の高値の理由にインバウンドが挙げられていたのもうなづけます。円安で海外の人には割安感があると思いますが、清水港だけでも100回の寄港があり、40万人が上陸したことになります。365日で割れば、人口が1,000人増えたのと同じ経済効果です。2艘同時に寄港ができるようにしたことで、重複によるキャンセルを防げたことと思います。清水港といえば、次郎長親分の頃の名物はお茶の香りと男伊達でしたが、いまは身延山や静岡市まで足を伸ばすことができ、その土地ならではの体験や特産品を楽しむことができます。
クルーズ船の乗客は裕福層とあります。経済的に余裕のある層に間違いはないでしょうが、本当にそうなのかまず考えてみたいと思います。
1980年代に聞いた話では、アメリカでは50歳代で定年退職し、あとは年金で暮らすことにして、奥様への慰労も兼ねて、夫婦で世界一周の旅に出かけるというのが一般的なパターンとのことです。年金額もはっきりしたことは覚えていませんが、おそらく月額20数万円でしょう。それでも食料品の物価が安いので、生活は苦労しないとのことです。決して贅沢旅行ではなく、真面目に勤め上げてきた自分へのご褒美です。欧州でもそうした老夫婦の団体ツアーに巡りあったことがありますが、カウボーイハットやサングラスなどの格好を見ればアメリカ人とすぐにわかります。
ここで何を言いたいかと申しますと、老後は年金で暮らせて、食料品などの物価が安ければ、庶民でも世界旅行をする余裕ができるということです。日本もそのような当たり前の暮らしができる国づくりを目指す必要があると思います。
話しが脱線しますが、アメリカ人が老後に暮らしたい土地のナンバーワンはオレゴン州だそうです。中でも温暖なポートランドは人気が高いです。なぜオレゴン州かというと、消費税がないからです。おもな財源は木材産業です。日本でも、林業や木材産業が盛んな地域の消費税を免除する特区にすれば、老人に限らず若い人の移住も増えるのではと思います。
さて、船旅の楽しみは、映画やダンス、イベントですが、一番は食事でしょう。私も一度だけストックホルムからヘルシンキまでの船旅を選んで移動したことがあります。船内のバイキングは一見豪華でしたが、正直言って美味しくありませんでした。一度に大量に用意しなければならないので、冷凍した食品を解凍しただけのものが多かったような気がいたします。そこで、寄港地ごとに、地元の旬の料理を楽しむことができるようにして、農家や漁業関係者の方にその仕組みを整えていただくことが大事になってくると思います。第6群の海のない県からも食材の提供は可能です。食材を介した海外の方との交流もいろいろな気づきをもたらしてくれるはずです。余談ですが、ペリー提督が開港を求めた理由のひとつが捕鯨船への水と薪の補給でした。日本の水は世界で一番美味しいです。
第2群を拝見しますと、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、愛知県、大分県、宮崎県、徳島県と、いずれも食文化が豊かで、伝統文化にも富んでいます。第1群に遜色ないです。第3群も、港湾やサービスが整備されれば上昇に転じるポテンシャルが高いです。第4群は瀬戸内海に面した県が多く、ハンディを背負っています。素人考えですが、大阪府で上陸して、山口県で出迎えるという手はいかがでしょうか。
実回数では1位から4位の沖縄、長崎、広島、福岡が、「クルーズ船寄港回数の増減」では成績最下位の第5群であるという椎野先生の分析力に感銘いたしました。統計の期間にもよると注記されていますが、これらの県は実力者で悲観することはないと思います。実回数が多いだけに減少のリスクも大きいということだと思います。
寄港地のお互いの特色を出せるように、テーマをつくってパートナー、例えば清水港の赤エビと富山の白エビとか、を見つけて組み合わせてみるのも面白いのではと思います。実回数の上位県で世界平和をテーマにしてもよいかと思います。美術館やジオパークなどのツアーも需要があると思います。
未来の先導者として執筆を再開されました椎野先生のブログに久しぶりに啓発されました。ありがとうございました。