転職人材、地方で優遇、求人時の賃金、高知16%増、企業改革へ管理職Uターン

□ 椎野先生との往復書簡(第1回) 転職人材、地方で優遇、求人時の賃金、高知16%増、企業改革へ管理職Uターン

                              

椎野 潤 (しいの じゅん)

「巻頭の一言」

人手不足を背景に転職市場の活況が地方へ波及しています。主要転職サイトに掲載された正社員の求人を勤務地ごとに集計しますと、沖縄・高知の2県で募集時の月額賃金の上昇率が東京都を上回りました。若者の転出に悩む高知県は「Uターン転職」を呼び込んでいます。企業も転職人材を、管理職などの主軸として期待しています。2025年6月14日、日経朝刊、2面記事、(桜井祐介)を参照・引用して記述。

[日本再生][地域創生] 転職人材、地方で優遇、求人時の賃金、高知16%増、企業改革へ管理職Uターン。

ここでは、日本経済新聞の2025年6月14日、朝刊2面記事(桜井祐介)を紹介します。

「はじめに」

 人材サービスのフロック(東京・千代田区)が集めた転職サイトのデータを活用し、2025年4月第1月曜日に募集があった正社員の平均月給を勤務地に基づいて都道府県別に集計しました。全国平均は28万9385円で、2020年の同時期より2万9128円(11.3%)上昇しました。

都道府県別では沖縄県が平均26万1014円で、上昇率全国首位の16.0%。高知県は24万4613円で上昇率2位の16.7%、東京都は3位の15.2%でした。

[高知県]

高知県内の求人を転職サイトのデータで分析すると、管理職が5.9%を占め、5年前に比べ4.2%増えました。伸び幅は全国で最も大きく、高知県へ転職する人材の賃金の上昇につながりました。「地元の産業を守るには県外に担い手を求める必要がある」。浜田省司知事は家族をつれてのUターン・Iターン転職を促し、年間の移住者3000人の目標を掲げています。

四国銀行の掛橋勇人人事グループ部長代理も「新卒採用に苦戦し、人手不足には一刻の猶予もない。即戦力を県外から連れてこなければいけない」と語っています。

高知県は人口が全国で3番目に少なく4月には65万人を割りました。就職時などに若年層が流出し、県内企業は新卒採用がままならなくなっているのです。

県は県内34市町村と共同出資で無料職業紹介所「高知県Uターンサポートセンター」を開設し、東京・大阪で年2回ずつ「高知就職フェア」を開催しています。県内企業も危機感を共有しており、転職人材の活用に積極的です。ここ2年は求人ネットでの求人が増え、フェアの出展枠は1週間ほどで埋まります。

機械模型メーカーの高知機型工業(同県香南市)の松田祐一さん(46)は2月に同社に転職し、東京から移住しました。妻の出産を機に妻の実家のある高知県への移住を検討していたところ、県のサポートセンターを通じて貿易事務の経験を生かせるマネージャー含みの求人に出会いました。

同社では模型を基に中国で量産した機械部品を、顧客のために調達する業務が急増しています。貿易事務を担える人材は不足しており、新卒確保も難しいのです。北泰子副社長は「いずれマネージャーとして調達業務のDX(デジタルトランスフォ―メーション、注1)を牽引してほしい」と期待しています。

[沖縄県]

リゾート施設の開業が相次ぐ沖縄県も、副支配人や料理長といったマネージャー級の募集が目立ちます。県は就職活動にかかる交通費や宿泊費を、上限5万円で、最大3回補助して、Uターン転職などを促しています。

[おわりに]

市区町村別に転職月給の上昇率をみますと、東京都内で最も高い文京区の27.0%を上回る市町村が全国で100以上あります。

北海道ニセコ町は40万5655円で2.2倍でした。5年前からの求人が計300件以上の自治体に絞っても、半導体工場の立地に沸く熊本県菊陽町と北海道千歳市は文京区を上回りました。

転職市場に詳しい立教大学の中原淳教授は「新卒は大手志向が強まっているが、転職者にとってチャンスは、地方の中堅中小にこそある。自治体が地元の魅力を発信し、いかに人材をよびこめるかに、地方産業の未来はかかっている」と話しています。(桜井祐介)

[まとめ]

この研究報告の執筆で参照・引用した、日本経済新聞、2025年6月14日の朝刊

2面記事に、三つの図表が記載されていました。「転職月給上昇率ランキング」。(注)

2025年4月第1月曜日に転職サイト4媒体に載った正社員転職求人の募集月給の平均値を2020年同期と比較した。フロッグ調べ。「市町には半導体工場立地の影も」。(注)5年前からの求人数が300件以上に絞った。「5年で3万円近く上昇」。

[図表1]

図表1(注2)は、2025年6月14日の日経新聞紙上に、日本列島の地図として記載されていました。この図表は「転職月給の5年前比上昇率(%)」のランキングを示した図表でした。そして、この「転職月給上昇率ランキング」を4段階に分けて整理し、これを日本列島の地図の上に、青色系の色彩で塗り分けて記述していました。これは以下です。

第1群,「転職月給の5年前比上昇率(%)」が15%以上のところ(黒色)

第2群,「転職月給の5年前比上昇率(%)」が10〜15%未満のところ(濃い青色の右斜線)

第3群,「転職月給の5年前比上昇率(%)」が5〜10%未満のところ(濃い青色の左斜線)

第4群,「転職月給の5年前比上昇率(%)」が5%未満のところ(淡い青色)

次に、この第1群から第4群の各地域について述べます。

[第1群]

ここでは「転職月給の5年前比上昇率(%)が15%以上のところ」を第1群とよびます。第1群に入っていたのは以下の地域です。その第1群の第1位は、沖縄県でした。また第2位は高知県、第3位は東京都でした。第1群に入っていたのはこの3ヶ所です。

沖縄県は、リゾート施設の開業が相次いでおり、副支配人や料理長といったマネージャー級の募集が目立っていました。県は、このクラスの人材の獲得が、極めて重要だと考えてその対策に力を入れていたのです。就職活動にかかる交通費や宿泊費などを、上限5万円で、最大3回補助して、Uターン転職などを促しています。

 

一方、高知県は、人口が全国で3番目に少なく、今、65万人を割っています。就職時などに若年層が流出し、県内企業は新卒採用がままならなくなっているのです。この人口減少に高知県と高知のひとびとは強い危機感を持っています。

浜田省司知事は、地元の産業を守るには県外から、担い手を求める必要があると痛感しました。知事は、家族をつれてのUターン・Iターン転職を促し、この上で年間の移住者3000人達成の目標を掲げています。

高知県が、このような活動を開始する前に、着手したのは管理職の増強でした。高知県の求人転職サイトのデータを見てみますと、管理職が5.9%を占め、5年前に比べ4.2%増えていました。その伸び幅は全国で最も大きく、これが高知県へ転職する人材の賃金の上昇につながりました。

県は県内34市町村と共同出資で無料職業紹介所「高知県Uターンサポートセンター」を開設し、東京・大阪で年2回ずつ「高知就職フェア」を開催しています。これらの活動の効果もあり、関心が高まり、フェアの出展枠は1週間ほどで埋まる盛況です。

私は、インターネットで、色々調べてみましたが、高知県の最近の児童の出生率は上がっているようです。これを見て私は、高知県は人口増加に転じる、期待の星になるのではないか予感しています。

このプロジェクトでは、日本を代表する巨大都市、東京都が転職月給の5年前比上昇率の第一群に入りました。最も技術をもち,有能な人材も最も多くもつ東京都が、日本の都道府県別の月給の5年前比上昇率でトップに立つのは必然的なことです。でも、この活動での実質的な実績については、この記事では、なにも記されていませんでした。まだ、実施状況の調査には、手が回っていないのでしょう。私は、この点に関しては、もう少し時間をおき、報告が発信されるのを待って、丁寧な解説を試みたいと思っています。

[第2群]

第2群は、「転職月給の5年前比上昇率(%)が10〜15%未満のところで、濃い青色の右斜線で示した地域でした。これは以下です。北海道、宮城県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、奈良県、島根県、岡山県、広島県、福岡県、長崎県、香川県の13道府県でした。

この第2群には、大阪、京都の2府や、トヨタのいる愛知、東京の重要なサポーターの神奈川など、これから急成長して第1群に昇格し、日本国の進化の中心を担っていくことが期待されている大物が、いまは、この第2群に止まっています。これらの大物には、今後の大活躍を、私は期待しています。

[第3群]

第3群は、「転職月給の5年前比上昇率(%)が5〜10%のところ」です。これは濃い青色の左斜線で示した地域です。それは以下です。青森県、岩手県、山形県、新潟県、福島県、石川県、富山県、長野県、群馬県、栃木県、茨城県、滋賀県、岐阜県、埼玉県、山梨県、千葉県、静岡県、三重県、和歌山県、兵庫県、佐賀県、熊本県、愛媛県、徳島県。この群には最も多い地域24か所が入っており、全4群の中で、圧倒的な多数なのです。

このプロジェクトの牽引チーム(第1群、第2群)に加わって、日本の未来の産業社会を牽引していくべき地域が、この第3群に多く含まれていることは確実です。この中から超大物が誕生してくるのではないかと、私は大いに期待しています。

[第4群]

第4群は、「転職月給の5年前比上昇率(%)が5%未満のところ」で、淡い青色で示した地域でした。これはこのプロジェクトで、最も立ちおくれた地域です。それは以下です。秋田県,福島県、鳥取県、山口県、大分県、宮崎県、鹿児島県の7か所でした。この地域の人達には、これから頑張ってもらわねばなりません。

[図表2]

図表2(注3)は、「市区町には半導体工場立地の影響も」と題した図表でした。これは日本経済新聞の2025年6月14日の朝刊に掲載されていた図表です。これは以下の表です。

図表2 市区町には半導体工場立地の影響も

市区町     上昇率   月給     転職月給上昇率ランキング

1位 熊本県菊陽町  43.1% 28.6万円 第3群(都道府県別)

2位 北海道千歳市  37.7  29.8   第2群

3位 東京都文京区  27.0  33.1   第1群

4位 北海道室蘭市  26.2  26.3   第2群

5位 大阪府和泉市  25.6  26.7   第2群

6位 愛知県知立市  24.0  26.2   第2群

7位 東京都国分寺市 23.8  29.3   第1群

8位 栃木県芳賀市  23.4  26.3   第3群

9位 滋賀県野洲市  22.5  27.1   第3群

10位 栃木県高根沢町 22.5  26.0   第3群

現在、日本全国の市区町では、転職月給の上昇を目指した活動が熱心に行われています。ここでは、その進捗が順調な市区町のベストテンを列記して、その月給額(万円)と共に示しています。また、この図表2に記した内容と、図表1で分析した「都道府県別の転職月給上昇率」とを照らし合わせて見たいと思い、これを図表2に付記しました。

この結果、都道府県別に見た転職月給上昇のランキングと、市区町の転職月給上昇の動きは、かなり異なっており、このブロジェクトで進んでいる都道府県では、市区町でも進んでいるとは言えない事がわかりました。

市区町のランキング1位は、熊本県菊陽町で、熊本県の都道府県別ランキングは、第1群ではなく第3群でした。第2位の北海道千歳市も、「北海道」は第2群でした。また、 都道府県別の活動報告で多くの紙数を占めた高知県は、この市区町のベストテンには入いっていませんでした。

また、都道府県別のランク第1群に入った、東京都は、第1群の実績説明では、同じ第1群の高知県については、多くの記事が記されていたのに、東京都の活動記載の記述はありませんでした。

このブロジェクトは、まだ、開始直後で、実施データの調査は、まだあまり進んでいないと思われるのです。私は、そのようなところは、もう少し時間をおいて、次ぎの報告を待って、丁寧に報告したいと思っています。

[図表3]

図表3(注4)は、「5年で3万円近く上昇」と題した図表でした。これは日本経済新聞の2025年6月14日の朝刊に掲載されていた図表です。これは以下の通りです。

この図表の縦欄には、転職月給の全国平均値が記してあり、左側縦欄には、25、26、27、28、29万円の転職月給の数値が列記されていました。また、横欄の下欄には2020年、21、22、23、24、25年が記してありました。

この縦欄と横欄を用いて、転職月給の全国平均値の折れ線グラフが書いてありました。このグラフは2022年の25.7万円からスタートし、2025年の28.6万円に至る、右肩上がりの直線を示していました。すなわち、「転職月給の全国平均値」は、この5年間の間で3万円近く着実に上昇したのです。

ただ、この直線は2022年の時点で僅かに凸型に折れていました。すなわち、上昇率は、2022年以降は、僅かに減少していたのです。

結局、このグラフを示すことにより、転職月給の全国平均値は、この5年間、確実に増加しているのが良くわかりました。

(注1) DX(デジタルトランスフォ―メーション)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することである。

(注2) 日本経済新聞2025年6月14日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。図表1転職月給上昇率ランキング。(注)2025年4月に、転職サイト4媒体に載った、正社員転職求人の募集月給平均値を2020年と比較した。スロック調べ。

(注3)日本経済新聞2025年6月14日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。図表2市町には半導体工場立地の影響も。(注)5年前からの求人数が300以上に絞った。

(注4)日本経済新聞2025年6月14日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。図表3

 5年で3万円近く上昇。

(1) 日本経済新聞、2025年6月30日、朝刊(2面)。

[付記]2025年6月14日。