□ 椎野潤ブログ(伊佐研究会第16回) 新しい物流施設のデザイン・在り方に学ぶ
伊佐ホームズ株式会社の家づくりのご縁から注目させていただいている日本GLP株式会社が9月20日、大規模多機能型物流施設である「GLP ALFALINK 相模原」が世界三大デザイン賞の一つであるアメリカのインダストリアル・デザイナー協会(IDSA)主催の「International Design Excellence Awards(IDEA)2024」において、環境部門の最高位「GOLD AWARD」を受賞したと発表しました。日本GLPのホームページでは次のようにお知らせを出しております。
☆引用
今回、環境部門における最高位「GOLD AWARD」を受賞した「GLP ALFALINK 相模原」は、2023年5月までに全4棟が竣工した、総延床面積約68万の、日本GLPが誇る最新鋭の設備・物流ソリューションを備えた日本最大級の次世代型物流施設です。本施設のブランドコンセプト、ネーミング、ロゴデザインおよび建築・空間デザインは、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏によるものです。本受賞にあたっては「GLP ALFALINK 相模原」が、物流業界が直面するさまざまな社会的課題に対して、デザインの視点からのソリューションを提示したことが高く評価されました。
米テキサス州オースティンで開催された表彰式に参加した佐藤可士和氏の受賞コメントは下記のとおりです。
<佐藤可士和氏コメント>
「GLP ALFALINK 相模原」のプロジェクトは、デザインの力で社会課題の解決にどこまで貢献できるかに注力して取り組みましたが、これを国際的にも評価していただけてたいへん嬉しく思っています。完全竣工を迎え、当初の予想を超えるほど、GLPグループの皆さまとテナントの皆さまが施設を活用して下さっているのが何より嬉しいです。
(日本GLP株式会社ホームページから引用https://www.glp.com/jp/topics/news/1105/
☆本文
物流業界に対する世間のネガティブなイメージを、コミュニケーションデザインでポジティブに変えて物流施設の新しい未来のかたちを表現する「GLP ALFALINK 相模原」の、この度のIDEA2024環境部門最高位「GOLD AWARD」はまことにおめでたく、当社としても嬉しく感じており、また当社伊佐ホームズ、森林パートナーズ事業の展開にかかる学びが多くあると気づかされます。本施設は「Open Hub」というコンセプトでデザインされているということです。地域の方々に開かれた遊歩道、イベント交流の広場やフットサルコートなどのマルチコートがあり、また災害時には避難所や災害支援物資の集積配送拠点になります。保育所をつくることで働き方をサポートすることもできており、また施設内に集う企業同士のコミュニケーションの機会を提供することや、派遣会社も入居してもらうことで新しいサービスも創出につながっているとのことです。人が集まる仕掛けをつくり、人が集まることで対話が生まれ、対話が生まれえることでアイディアが生まれる、アイディアが生まれることでビジネスが生まれるという創造の連鎖をつくっているのです。以前に本施設に関する記事で、「GLP ALFALINK 相模原」クリエイティブディレクターでSAMURAI代表の佐藤可士和氏、日本GLP株式会社代表取締役社長の帖佐義之氏の本施設に関するご対談を拝見しました。その中で現在日本の木材流通、木材サプライチェーンにも大いに必要であると気づかされた言葉が多くありました。いくつか抜粋すると「生活と隣接した物流施設」、「本来、持っているはずの価値を伝える」「うまく伝わっていないものを伝えようとする」「『見える化』ではなく『見せる化』」「『コストセンター』ではなく『プロフィットセンター』として意識」などです。
当社森林パートナーズ株式会社では、三方良しの精神をICTで結び、需要情報からつくる流通改革で、山元への利益還元と、木材安定供給を実現するという理念を共有し、地域工務店、プレカット工場、製材所、林業家で「森林再生プラットフォーム」を実運営しコミュニケーションをしております。8年目を迎え、新年度はじめての関係者全体会議をつい先日開催しましたがやはり対話からアイディアが生まれ、具体的なビジネス実装、また重要な検討事項の確認が出来ました。需要者・消費者へ対する木材価格の内訳表示によるオープンコスト化の実装(「見せる化」)や、機能内製化によるJAS材ストックヤードの高付加価値化(「コストセンター」から「プロフィットセンター」へ)、また消費者への家づくりの時だけではないプラットフォームへの親近感創出ツールづくり(生活と隣接した木材流通)などです。また現在は埼玉県の主導のもとで木材流通に関する協議会にリーダー的な立場で参加させていただいていますが、新しい「場」づくりとして「GLP ALFALINK 相模原」のコミュニケーションデザインは、コンセプトや方向性を議論する段階から、設計段階、また具現化後の運営段階、それぞれのデザインで見習うことだらけです。抽象論にとらわれず、「GLP ALFALINK 相模原」のような具体的実例を参考にしながら、プラットフォームに集まるメンバーと実運営を通した対話をし、そこから生まれる具体的なアイディアを忍耐強く重ねて写実的なビジネス構築を今後もおこなっていきます。
☆後述
今年、第17回本多静六賞を当社代表伊佐裕が受賞いたしました。本多静六という偉大な人物を記念しての賞を賜り、誠に光栄です。この受賞は林業改革への理念を抱き運営を続けてきた、数多くのパートナー企業の方々とともに頂いたものであり、この受賞を励みとして本格的に林業再生、木造建築の復興へ取り組んでいきたいと思っております。
また本ブログで昨年発信させていただいた「サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父」が今年も開催されることになりました。このイベント継続も森林と人のつながりづくりのデザインの一環であります。是非ご参加ください。https://www.isahomes.co.jp/forest/tour2024/
☆まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫
「GLP ALFALINK 相模原」が「GOLD AWARD」を受賞され、まことに喜ばしいです。物流業界が直面するさまざまな社会的課題に対して、デザインの視点からのソリューションが高く評価されたとのことです。具体的には「Open Hub」というコンセプトでデザインされ、人が集まる仕掛けをつくることで対話が生まれ、さらにアイディアやビジネスが生まれるという創造の連鎖をつくっています。
そして、本ブログでは、同プロジェクトの佐藤可士和氏と帖佐義之氏の対談から、「生活と隣接した物流施設」、「本来、持っているはずの価値を伝える」「うまく伝わっていないものを伝えようとする」「『見える化』ではなく『見せる化』」、「『コストセンター』ではなく『プロフィットセンター』として意識」などの気づきが抽出されました。
これを「森林再生プラットフォーム」にあてはめると、木材価格の内訳表示によるオープンコスト化の実装(「見せる化」)や、JAS材ストックヤードの高付加価値化(「コストセンター」から「プロフィットセンター」へ)、プラットフォームへの親近感創出ツールづくり(生活と隣接した木材流通)など、いまの木材流通に欠けている肝心なことが照らし出されました。
話しが飛びますが、1992年のリオデジャネイロで開催された地球サミットを受けて、世界各国では、政策立案に対話の重要性、とりわけ市民参加という考え方が重要視されるようになりました。これによって関係者の円卓会議は劇場化していきます。「GLP ALFALINK 相模原」の公式サイトの上空からの写真を見ますと、大きな建物群がコンピュータの基板のような美を放ち、劇場街のようにも見えてきます。「GLP ALFALINK 相模原」のコミュニケーションデザインは、安定に甘んじることなく、既成概念に対する破壊力が絶大です。
最後になりましたが、伊佐裕様の第17回本多静六賞受賞おめでとうございます。