□ 椎野潤ブログ(大隅研究会第24回) 川下から川上へ 山佐林業の“持続可能”を目指した取り組み経過報告
山佐ホールディングス株式会社 代表取締役社長 佐々木 政典
おおすみ 100 年の森に参加しております山佐林業株式会社の佐々木と申します。不勉強により諸先輩方のような情報発信は出来ません。イレギュラーと存じますが取り組みの全体像を述べさせて頂きます。引き続きご指導頂けますと幸いです。
【会社の歴史と背景】
祖父が製材業、土木建築業、木工家具事業、住宅事業と展開し、父の世代に 3 兄弟で各々の分野を深掘りし、現在に至ります。関係する企業は、製材・集成材を主力とする山佐木材株式会社、土木建築事業の山佐産業株式会社と有限会社外西建業、住宅事業のヤマサハウス株式会社(大工事業の合同会社絆工房ヤマサ含む)、家具小売の株式会社オンリーワンです。製材・集成材分野に注力していた叔父より、建築用の森林資源の持続性について向き合うべき課題があると提起されたことをきっかけに、3年前に山林保有会社の山佐林業を立ち上げました。鹿児島県と建築物木材利用促進協定も締結しています。
【取り組みの概要】
木材業界の川下を主力として取り組んで参りましたが、既存のプレーヤーと協力関係を築く前提で、手薄な部分を自ら主体的に埋める取り組みを進めています。流れがスムーズに、将来に渡り持続するようなカタチにしていく発想で挑戦中です。
【事業計画と挑戦】
山林保有会社の立ち上げ計画においては 60 年の事業計画 を組み立て、個々の山林の管理方針から事業計画へしっかり紐づくように取り組んでおります。全くもって予定通り行きませんが、色々ご指導頂きながら勉強を継続しております。余談ですが大工技能者不足という課題に挑戦するために大工会社を 9年前に立ち上げ、当初事業計画通り 10 年近く赤字継続した経験がありましたので、このようなスタンスは社内的には驚かれませんでした。
【木育活動の重要性】
川上へ向けて主体的に取り組むためには川下の強さこそが大事だと考えています。そのためのアプローチの一つが 木育活動 に主体的に取り組むことです。幸いにも、他県で民間グループとして全県的な木育活動を立ち上げた経験のある方が身近にいたり、大学の先生方に趣旨賛同いただき研究室としてご協力いただけたり、金融機関より地域貢献活動としてご支援いただいたり等、大変熱意ある方々とのご縁に恵まれております。
【イベントの成功と今後の展望】
鹿児島市では親子連れ 2000 名規模 を動員する木育イベントを 3 年継続 して開催することが出来ております(事前予約枠は即日完売)。目下、鹿児島市すなわち薩摩半島側のイベントの継続、大隅半島側への展開、常設的役割を果たせるカタチも模索しています。
強固な川下から川上に対して安定的な経済条件を保障し、持続的な資源循環を川上で実現していくことに挑戦しています。
以上
☆まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二
ありがとうございます。お話に出ました山佐木材の佐々木幸久様とは、林野庁在籍時代に、何度もお話をさせていただいたことを覚えております。特に、15年以上前だったと思いますが、世田谷区下馬に木造5階建てビル(集合住宅)を作る計画があり、そこに集成材を供給するんだということを熱く語ってくださったことが強く記憶に残っております。その後、色々、紆余曲折はあったようですが、後に、1階部分はRC造にせざるを得なかったと残念がっておられたのを思い出します。
森林の保有・管理〜製材・加工〜建築を一気通貫でやることで、全体で利益を出すことが重要だと思います。垂直統合と言われますが、この流れが多段階化しており、関係者それぞれが利益を出そうとすることが、国産材が高いと言われたり、国産材が必要な時に必要なだけ手に入れることが難しいと批判されていることの大きな理由だと思っています。山佐HDの取組に期待しております。たとえ山林部門単独で利益を上げるのが難しくても、この垂直連携全体で利益が上がるのであれば森林資源の循環利用は持続するのではないでしょうか。
木育活動は、本来的には、子ども達(大人も含めて)の健全な情緒育成、人と木の関わりから暮らしや環境の学習を目指すものなのでしょうが、下世話な話で恐縮ですが、私は木材を使ってくださる消費者をつくり育てる取組としてたいへん重要だと思ってやってきました。しかし、なかなか、その意味での目的の達成度合いを測れないのが悩みでした。木育の成果の一面として、木のおもちゃなど木工品の購買、木の家具を使ってくれる、木の家を建ててくれるなどという消費者の木材利用の拡大が起こっているのかどうか、定量的にこれを報告してくださると嬉しいです。