2020年8月は、伊佐裕さんの「木材トレーサビリティで流通改革」を中心に、ブログを書いてきました。伊佐さんの「次世代林業と木材流通」の熱い活躍のお話を聞くうちに、岐阜県の小森胤樹(注1)さんの活動に、心惹かれました。久しぶりにお会いして、お話を聞きいてみたいと思いました。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2020年8月(№29)
□椎野潤(続)ブログ(240)なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか(その1) 設立の必要性の確信 2020年8月25日
☆前書き
小森胤樹(注1)さんから、「なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか」と題する論説(参考資料1)の寄贈を受けました。それで、これを基にして、インタビューをすることにしました。(聞き手=椎野潤)
☆インタビュー
[小森胤樹さんは、異業種から林業に入られたのですが、林業を目指した動機と林業に入られてからの経緯につて、お話ください。]
2002年(平成14年)に大阪から岐阜県郡上市へ移住しました。そして、林業会社に現場技能者として転職しました。日本の森林を守る仕事をしたいと考えて、現場作業から始めました。2006年(平成18年)から、現場作業だけでなく、森林施業計画を立て、補助金申請を行うようになり、日本の森林行政の仕組みを知るようになりました。
2009年(平成21年)、郡上市の「郡上山づくり構想」作業部会の委員になりました。翌年には森林づくりの推進課題を検討する、「郡上市森林づくり検討会議」の委員になりました。現在まで時には作業部会の座長を務め、10年間、委員を続けています。
この間2回、ドイツ林業を現地で学んでくる機会を得ました。また岐阜県内で開催されたスイスフォレスターを招いた研修会に参加する機会にも恵まれ、「フォレスター」という立場の専門職の存在を知ることになりました。
[地域林業にかかわって、様々な疑問を感じるようになったわけですね]
はい、そうです。感じた大きな疑問は、「日本において、異動がなく、地域に張り付いている森林管理の専門職は存在するのか?」ということです。
まず、県職員はどうでしょうか。林務職で採用されると、 ずっと専門職として林務にいますが、どこかの地域に長期間いることはあるでしょうか。多くの人は数年ごとに異動してしまいます。
市町村職員はどうでしょうか。最近は林務専門職を採用する市町村も増えましたが、多くが数年で他部署に異動します。
研究ノートの報告(石崎涼子、参考資料2)によりますと、2012年当時、林務職員数の平均は2.7 人。うち専属職員数は1.4 人です。そして、この職員の3人に2人は3年以内に、9割以上が5年以内に、他部署へ移動してしまうのです(参考資料3、注2)。
2009年(平成21年)民主党政権は、森林・林業再生プランを打ち出し、同プランにおいて日本型フォレスター制度の必要性を訴えました。翌年、森林・ 林業基本政策検討会が取りまとめた、「森林・林業 の再生に向けた改革の姿」に示されたフォレスター制度に、大きな期待を寄せました。
この取りまとめ中で、人材育成検討委員会の最終まとめで制度的位置づけとして、以下のように記載しています。
「また、こうしたフォレスター(市町村職員以外の者)が配置される場合においても、人事異動等に左右されず、常に一定レベル以上で業務が執行されることが求められる。このため、フォレスター(市町村職員以外の者)の在任期間の長期化を図るとともに、例えば、フォレスターと市町村職員、森林組合職員等がチームを組んで業務 に取り組み、その継続性を確保するなど、人事異動や体制整備等について、 地域の実情に応じた柔軟な対応が図られるべきである。」(参考資料4、注3)
現在、日本型フォレスターである森林総合監理士は、林業普及指導員資格試験の地域森林総合監理区分に合格した者の登録制度になっています。この制度は、柔軟な対応が図られているでしょうか。 私が期待したフォレスター制度は、実現しているとは言い難いと思われます。
そして2019年度(令和元年度)には、森林経営管理法が施行されました。この法律が整備される方向にあることを、2017年度(平成29年度)に知りましたが、これまで以上に市町村の役割が重要になり、さらに専門性が問われると感じました。 やはり、日本にも異動の無い、地域の森林・林業 に関する知識を持つ、専門家、欧州のようなフォレスターが必要だと思うようになったのです。
(聞き手=椎野潤)(参考資料1から引用)
☆まとめ
ここまでに、小森胤樹さんの凄い発想と実践を聞くことができました。この続きは次回です。さらに盛り上がります。楽しみにお待ちください。
(注1)小森胤樹:一般社団法人 ぎふフォレスター協会代表理事、森林総合監理士、岐阜県地域森林監理士、林業技士(林業経営)、郡上エネルギー株式会社 代表取締役、株式会社郡上割り箸 代表取締役。
(注2)参考資料3、pp.53。
(注3)参考資料4、http://www.zenmoku.jp/moku_kankei/structural_reform/101207-2.html 。
参考資料
(1)小森胤樹:なぜ、一般社団法人 ぎふフォレスター協会を設立したのか、2020年8月。
(2)石涼子(森林総合研究所):研究ノート、「平成の大合併」後の市町村における森林・林業行政の現状−担当者に対するアンケート調査の結果報告、林業経済65(6)。
(3)鈴木晴彦ら:市町村における森林行政の現状と今後の動向〜全国市町村に対するアンケート調査から〜Journal of Forest Economics Vol.66 No.1 (2020)。
(4)森林・林業基本政策検討委員会最終とりまとめ 骨子及び各検討委員会における最終とりまとめ。
[付記]2020年8月25日、椎野潤記]