新型コロナウイルスの感染拡大で、イベントや学校行事の中止、店舗の休業などが相次ぎ、彩りを添えるはずだった多くの花々が行き場を失ないました。「ロスフロワー(注1)」と呼ばれるこうした花を購入できるサービスが今、注目されています。(参考資料1から引用)
林業再生・山村振興への一言(再開)
2020年9月(№38)
□ 椎野潤(続)ブログ(249) 大量廃棄予定の花を救おう
2020年9月25日
☆前書き
2020年8月8日の日本経済新聞(参考資料1)の記事の巻頭で、記者は、その喜びを以下のように書いています。
☆引用
「『おうちにたくさんのヒマワリを飾りたい』――。幼い娘の願いをロスフロワー(注1)がかなえてくれた。
6月下旬、記者の自宅に段ボールいっぱいのヒマワリが届いた。生花業大手のジャパン・フラワー・コーポレーション(JFC、富山県射水市)が運営する『2020スマイルフラワープロジェクト』で購入した20本だ。花瓶一つでは収まり切れないボリュームで、子供たちは大喜びだ。」(参考資料1、2020.8.8、日経、岡田真知子から引用)
また、記事は、以下のように書き出しています。
「コロナ禍でかってない量のロスフラワー(注1)が生まれるなか、JFCが4月に生産者支援の取り組みとして始めた。廃棄予定の生花を買い取り、インターネットを通じて全国消費者に販売している。
一般店頭価格より3〜6割ほど安い。農林水産省が送料を補助する「インターネット販売推進事業」に認定されたため送料も全国無料だ。」(参考資料1、2020.8.8、日経、岡田真知子から引用)
☆解説
「ロスフラワー(注1)」という語が、コロナ危機の襲来以来、俄かに(にわかに)流行しました。でも、この語は、大分前から使われていたのです。フラワーサイクリスト河島春佳(かわしま・はるか)さん(RIN、東京・渋谷)が、廃棄直前の花を回収し、美しいドライフラワー作品へと仕上げるクリエイターの仕事を確立する過程で、この語を使い始めたのが始まりです。
この河島さんは、2020年5月には、新型コロナの影響で出た廃棄花を専門に扱うオンラインショップ「フラワーサイクルマルシェ」を開設しました。ここでは、花好きの顧客が、自分が本当に好きな花を、作っている人から直接買える「ダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C、注3)」が出来上がっていました。
野菜や魚などを消費者が生産者から直接買えるD2Cの先覚者、ポケットマルシェ(岩手県花巻市)も、5月に花卉の取り扱いを始めました。切り花のほか、苗や観葉植物も扱っています。ここでは、生産者を選んで買うこともできるので、自分の古里など、ゆかりのある地域の生産者を選んで買う動きも始まっています。
また、ここでは、価格設定は、生産者ごとですので、購入前に、購入者と生産者が、直接やりとりできます。(参考資料1、2020.8.8、日経、岡田真知子を参照して記述)
☆まとめ
記者の子どもさん達が、大喜びしたヒマワリを送ってくれた「2020年スマイルフラワープロジェクト」で、花が安く買えたのは、花が廃棄予定の花だったということばかりではないのです。ここで大きいのは、D2Cでは、卸し業者や卸売市場を経由しておらず、流通経費がかかっていないことなのです。
また通常、花の店頭価格には、売れ残り廃棄処分の分も見込んで設定しています。D2Cでは受注を受けたものだけ発送しますので、この余分なコストは入りません。それだけ、顧客に安く納品できるのです。さらに、卸し業者や市場(いちば)を経由しないため、注文した人に届くまでの時間が短いのです。それで、鮮度の高い花が届けられます。
花が大好きな顧客が、本当に欲しいと思っている色、香り、姿などの微妙な素敵を、満足させ、コストの無駄もない、まさに、理想の花卉の供給システムです。農場の仕事も、これから、自動化が、どんどん進みますから、このような花卉の農場は、様々な雑用をこなしながら、掛け持ちで管理する山村の女性に最適な仕事でしょう。
コロナの突然の襲来で直面した、花の大量廃棄の危機が、この素敵なシステムの実現を、大幅に前倒しました。コロナは、貴重なものを多く奪いましたが、進化の障壁も破壊してくれたのです。(参考資料1、2020.8.8、日経、岡田真知子を参照して記述)
(注1)ロスフラワー: 廃棄された花のこと。または、廃棄予定の花のこと。今まで、生花店の店頭販売で、30〜40%の花が 廃棄されてきた。
(注2)河島春佳(かわしま・はるか):フラワーサイクリスト。廃棄直前の花を回収し、美しいドライフラワー作品へと仕上げるクリエイター。ロスフラワーの新語の提唱者。
(注3)ダイレクト・ツー・コンシューマー: D2C(Direct to Consumer):農場から顧客までを垂
直統合したビジネスモデル。インターネット上のECサイト中心で販売するモデル。インスタグラムなどのSNSを通じた消費者(コンシューマー)と生産者の情報交換が主力になる。
参考資料
(1) 日本経済新聞、2020年8月8日。
[付記]2020年9月25日、椎野潤記