畏友、伊佐ホームズの小柳雄平さんが、森林パートナーズの社長に就任されました。新任のお祝いを申し上げ、御社の近況はいかがですかとうかがいますと、「有能なスタートアップが大勢きてくれていて、凄い盛況です」と言われました。「ブログで紹介したいので、情報をいただけませんか」と申し上げたところ、貴重な資料を送ってくださいました。今日は、これを取り上げます。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2020年10月(№46)
□椎野潤(続)ブログ(257)森林パートナーズ 俄かに活性化
スタートアップ続々参入(その1) 2020年10月30日
☆前書き
恵贈いただいた資料は、多岐にわたっていますが、今日は、スタートアップの方々について、ブログを書きます。スタートアップについても、2編書きます。今回は、その1です。以下、下柳さんの報告を引用させていただきます。
☆本文
森林パートナーズは3年前の2017年に、事業目的として「森林の維持・再生」を掲げ、この社会課題に取り組むベンチャーとして設立しました。地域工務店、山元、製材所、プレカット工場を情報で結び、6次産業化する森林再生プラットフォームを構築しました。これにより工務店の需要情報を起点とした情報流産業を形成し、収益化を実現してきました。その中で、木材関連産業に関する様々なベンチャーの方々とお会いでき、この方々との連携によって、前進することを楽しみにしております。
[中川の中川雅也さん]
中川の中川雅也さんとは、ある講演会で同じ登壇者としてお会いしました。地元の和歌山県田辺市で、木を伐採した後に植栽されない、する余裕がない山が多く存在する実情の中で、山を守るため、林業を産業として復活させるためのニーズ・ビジネスチャンスを感じ、「木を伐らない林業」というテーマを掲げています。
育林事業(植栽などの森林管理業務)を展開し活躍しています。育林業を中心に苗木生産、獣害対策、森林経営計画等の書類作成代行や業務設計などのコンサルティングを行います。若者の採用、高賃金、勤務時間の自由化、ドローンによる苗木運搬など、今までのイメージにとらわれない新しく楽しい林業を創造しています。先進的で活き活きとした造林ベンチャーです。
[百森の中井照太郎さん]
その中川さんが、中井照太郎さんと手を組み、中井さんを代表とする新会社Green Forestersを設立しました。中井照太郎さんは岡山県西粟倉村の森林管理専門会社、百森の代表です。百森は「新時代の山守」としてテクノロジーを駆使し、所有者700名を越える民有林および公有林を包括受託し、間伐や植林などの事業を展開しています。
そしてGreen Forestersは、両社が保有する技術を統合し、自治体ならびに森林組合等の林業事業体と連携しながら、全国の各地域だけでは不足する、森林管理の効率化・仕組化を実行するノウハウを補完しています。これは地域一体で森林を活用していくモデルを、作っていくベンチャーです。中井さんと中川さんが、新会社設立の前日に挨拶に来てくださり、刷りたての名刺の一号を頂きました。
[角仲林業の山中浩義さん]
森林パートナーズの設立前から、一緒にプラットフォーム構築の構想を練ってきた角仲林業の山中さんも、新しい事業を展開しました。信州大学発ベンチャーの精密林業計測に委託し、ドローン撮影を進めています。これは森林資源のデジタル化を実施し、適切な森林管理をする取組です。
[NPO法人蔵前バイオエネルギー(K−BETS)の米谷栄二さん]
NPO法人蔵前バイオエネルギー(K−BETS)は、チェーン式連続集材装置(Kシステム)を開発してきました。これにより原木集材を行い、急峻な山での安全で低コストの施業を本格的に開始しました。施業の計画段階では、施業を行う角仲林業、木村木材フォレストも一緒にオンライン会議ソフトを使用し、森林のデジタル情報と、Kシステムの集材ルート計画画像などを共有し、シミュレーションをして現場に反映する、新しい取り組みを始めています。
今、このような多くの方々とお会いしています。森林パートナーズが持つ消費者の声を代弁する、工務店の需要情報による木材流通の出口戦略が、ますます大事であると確信しています。この皆様と連携しながら、一層、森林の資源活用を拡大して行きたいと考えています。(小柳雄平著:参考資料1から引用)
☆中間まとめ
伊佐さんのところに、凄い発想を持ち、重要な仕事を実践をしているスタートアップの人達が集まっていました。この人達が智慧を結集させれば、森林パートナーズは、日本の「林業再生と山村振興」を牽引していく存在に、成長していくことでしょう。
私は、このスタートアップの全ての方々に尊敬の念を感じていますが、特に、中井照大郎、田畑直さんの「百森」に、かねてから強い関心を持っていました。インターネットで見付けた、中井さん田畑さんの「地方自治体・森林組合向けコンサルティング事業開始」の文章に、強い感銘を受けました。この一文を、私のブログを読んでいる方々に、是非、読んで貰いたいと思いました。そこで以下に引用させていただきます。
[引用]
森林管理専門会社「株式会社百森」。地方自治体・森林組合向けコンサルティング事業を開始。岡山県西粟倉村で10年以上培ってきたノウハウで、行政や森林組合の森林管理業務をフルサポート。
株式会社百森(岡山県西粟倉村、代表取締役共同代表 中井照大郎、田畑直)は2020年4月より、地方自治体・森林組合向けに、森林管理のコンサルティング事業を開始します。
当事業は、これまで10年以上にわたって、個人が所有する森林の管理を推進し、森林経営管理法および新たな森林管理システムのモデルとなった、西粟倉村における人工林管理ノウハウを、全国の同様の課題を抱える地域へ提供し、地域の森林管理を支援することで、豊かな森林を次世代に、引き継いでいくことを目的としています。
株式会社百森は、所有者個人では管理しきれない小規模な森林を、行政と連携して、700名以上の方々の森林を受託管理してきました。そのノウハウを活かし、全国で同様の問題意識を持つ行政・地域の方々を支援すべく、コンサルティング事業を開始します。
[コンサルティング事業の概要]
(1)地域において持続可能な森林管理体制(座組み)の構築支援
(2)自治体業務の棚卸しおよび民間視点での業務効率化
(3)森林管理に関わる各アクターの業務設計と移行支援
(4)最新のレーザー測量・画像解析技術を用いた森林資源量把握と解析・ゾーニング
(5)汎用型ドローンによる継続的な資源量解析体制の構築支援
(6)森林所有者の集約化業務の設計および業務支援と所有者とのコミュニケーション支援
(7)森林経営管理法に基づく意向調査等各種手続きを支援
(8)間伐等各種施業の仕様策定・検査支援
(9)バイオマス利用を含め搬出材を活用した新商品開発
(10)認証の取得および運用支援
[コンサルティングのメリット]
(1)森林管理業務の明確化とスリム化をし、実効力のある体制へ
(2)自治体や森林組合の職員構成に応じて業務を再編成し、最適な森林管理体制への移行を支援します。西粟倉村では自治体業務を棚卸しし、必要な業務は除いて民間(当社)へ委託することで、人数が少なくても実効力のある体制を構築しています。
(3)地域のプレーヤーで連携し、地域みんなで森林を守り育てる森林管理へ
地域のプレイヤー(自治体、森林組合、民間の林業事業者)や森林の状況に応じて、地域の森林管理における役割を再定義し、地域みんなで森林を守り育てる「地域みんなで森林管理」への移行を支援します。
(4)データを徹底的に活用した森林管理へ
航空レーザー等による森林資源量解析を活用し、ゾーニングやゾーニングを踏まえた継続的なデータ取得による森林の管理を支援します。
(5)森林を管理し、放置林を地域資源に転換
それまで放置されていた森林を、管理し手入れしていくことで、特に災害抑止(土砂災害や河川の氾濫の抑制)機能を最大化し、地域の暮らしを守るだけでなく、木質バイオマス利用や森林のCO2吸収量を、カーボンクレジットとして販売したり、新たな地域資源として商品開発することを支援します。(中井照大郎、田畑直著、参考資料2から引用)
☆まとめ
菅義偉首相は、国の直面する大きな課題を断固として解決する強い決意を示されました。それは「縦割り」「既得権益」「前例主義」の打破です(参考資料4参照)。また、ただちに、強力に推進する課題として「地域創生」をあげておられます。
日本経済新聞が、日本を代表する社長100人に行ったアンケート「社長100人」アンケートでは、「地方創生」の最も重要な課題である「地方銀行の再編促進」「中小企業の再編促進」を、早急に実施すべきという回答が、ぞれぞれ、97.9%、97.8%に達していました。日本を代表する100人の社長のほとんどが、実施すべしの回答でした。日本の経済界も、「地方創生の断固たる実施」を求めているのです(参考資料3、4参照)。
今日、このブログに引用した「百森」の地方自治体・森林組合向けコンサルティング事業は、まさに、「地方創生」の具体的な実施そのものです。そして、特にこれは、前例主義では、決して出来ない改革であり、民間の最先端のスタートアップが、地方自治体に直接
コンサルティングするという、画期的な取り組みなのです。
この百森が、全国各地に作り出す「新しい前例」は、今まで、行わねばならないことは解っていたのに、さっぱり改革が進まず、先延ばしになっていた改革を、一気に進めるでしょう。
コロナの悪魔は、人々が築き上げてきた「ほとんど全ての仕事」を吹き飛ばしました。大事なものの多くが破壊されましたが、縦割りの壁も一気に吹き飛ばしたのです。今は、改革が進展するチャンスです。
「森を未来に向け」永続的に守り育てていくためには、山で木を伐採した後、苗木を植え成木になるまで育てあげられる体制を、なんとしても築かねばなりません。それには、木を買う者は木材代金とともに、伐採後の育林費用を必ず支払う決意をする必要があります。
企業は普通には、効率を上げ品質を保ちつつコストを低減し、利益を上げることを目指しています。でも、ここでは、足元の利益ばかりでなく、幸福社会が未来に向けて永続できるように、未来に投資することが絶対条件と考えるのです。
その点で、伊佐さんが始めた、「先に一年分の木材を買い」「木材費+育林費を前払いする」方策は、きわめて優れています。百森も、これを取り入れてもらいたいのです。それには、今、指導先である自治体と森林組合に、工務店を加えていただきたいのです。伊佐ホームズのような工務店を、全国各地に急いで増やしたいのです。
伊佐さんは、杉の購入時に、1立方メートル当たり1万円の木材費に育林費7千円を加算して.支払っています。でも、この7千円で本当に育林が行われるかどうかも、凄く重要です。ですから、この育林を正しく指導している「木を切らない林業」の中川さんの活動も、きわめて貴重です。
このようなことから、百森の中井さんと中川さんが、合同して設立した「Green Foresters」は、さらに著しく重要な活動の始まりでした。このお二人が、伊佐ホームズを訪ね、小柳君に、新会社設立、第一号の名刺を渡したという「イベント」は、とにかく最高でした。私の心は、喜びに満ち溢れました。
伊佐さんの活動は、これまでは、山の傾斜が緩く、木材を出しやすいところしか実施が困難でした。でも、この活動は、全国の全ての山地で実施できなければ、人口減少下の日本社会を支えていくという大役は担えません。その点、急峻な山での木材搬出を容易にした「K−BETS」の開発は、その路(みち)を拓くきわめて重要な開発です。
ここに、日本の未来を担う重要技術を持つ、精鋭のスタートアップが揃いました。大きな期待が膨らみます。
今回、小柳さんが送ってくれた資料の半分は、紙面の都合から、次回送りになりました。次回の「つづき」を楽しみにお待ちください。(まとめは、椎野潤が記述)
(注1)参考資料2、プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPRTIが発信。
URL:https://www.hyakumori.com/
(注2)参考資料3、国土緑化推進機構、フォレストサポーターズ、活動報告、mori-zukuri.jp/signp=704。
(注3)参考資料4、国土緑化推進機構、フォレストサポーターズ、活動報告、mori-zukuri.jp/signp =705。
参考資料
(1)小柳雄平著:森林パートナーズの近況、2020年9月30日。
(2)中井照大朗、田畑直著:森林管理専門会社「株式会社百森」。地方自治体、森林組合向けコンサルティング事業を開始、2020年4月10日。
(3)椎野潤(続)ブログ(255)規制緩和「拡大」すべしの回答9割 日本経済新聞「社長100人」アンケート 2020年10月23日。
(4)椎野潤(続)ブログ(256)規制緩和 改革の波 地方にも 菅政権に期待と緊張 2020年10月27日。
[付記]2020年10月30日