東京都心23区では、コロナ禍のもと、人口減少が続いています。23区に住む人達の間には、「近場の田舎」への移住を考える人が増えてきているのです。テレワークが普及し、自宅で仕事をする機会が増え、広いゆったりとした家で、仕事に集中したいという思いも強まりました。
地方都市に住む人達の間にも、同様な動きが出ているはずです。その移住先として、注目されている地域には、「山村振興」の絶好のチャンスが巡ってきています。今こそ、官民をあげて、その受け入れに、全力投球するべきです。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2020年12月(№61)
□ 椎野潤(続)ブログ(272) テレワークが普及「近場の田舎」に移住広がる
2020年12月18日
☆前書き
2020年10月9日の日本経済新聞に、「近場の田舎に移住広がる」という、大きな見出しの記事が出ていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。
☆引用
「コロナ禍を切っ掛けに、首都圏の都市部から郊外への移住を目指す動きが広がっている。テレワークの普及で会社に通勤する機会が減る一方、自宅で過ごす時間が増えたことで、住環境の大切さが見直された形だ。郊外の自治体は「近場の田舎」の良さをアピールし、移住促進に力を入れる。」(2020年10月9日、日本経済新聞から引用)
☆解説
この新聞記事は、東京の会社を退職後、家族を連れて、埼玉県小川町に移住し、地元企業で働きはじめた男性について、以下のように書いていました。この人は、古民家をリフォームし、自宅前でニンジンや小松菜を育てる生活を楽しんでいます。移住は、コロナ禍の前から検討していたのですが、結果的に時宜にかなった決断となりました。
小川町は、東京都心から電車で1時間半で、決して近くはないのですが、小川町の担当者は「近場の田舎として評価されているのでしょう」と言っています。
神奈川県の自然環境の良い郊外も、「近場の田舎」として、評価が高いのです。葉山町では、京急不動産(横浜市)が発売した分譲マンション「プライム葉山」への来場や問い合わせが、当初の予想の5倍にのぼりました。
不動産サイト「SUUMO」を手掛けているリクルート住まいカンパニー(東京・港)によりますと、戸建て中古住宅の2020年7月の閲覧回数は、葉山町はコロナ禍以前の1月に比べて、2.1倍と急増しました。逗子市も1.7倍、鎌倉市も1・5倍と軒並み注目が集まっているのです。
このような、都心の人達の心の動きを受けて、自治体側も、積極的に移住の受け入れに動いています。成田空港に近い千葉県多古町は2020年8月、町単位では初の移住イベントを開きました。移住を支援する「移住コーディネーター」らが、町内の生活ぶりなどについて説明しました。予想以上に希望者が多かったので、2021年2月にかけて、関連イベントを計画しています。(参考資料1を参照して記述)
☆まとめ
東京都民の首都圏郊外への移住希望者は、東京23区の住民が多いと見られているのです。東京区部の人口推計(2020年9月1日 時点)によりますと、23区で、前月より人口が増えたのは、千代田区のみです。一方で、都内でも奥多摩町や檜原村など多摩西部の一部では、人口が増えています。
奥多摩町では、移住や定住関連の相談が、2020年6月以降、急速に増え、6〜8月の相談件数は、前年同期の2.1倍にのぼりました。都心23区の住民からの問い合わせが多く、奥多摩町の担当者は「近場の旅先として、メディアの取り上げが増えて、旅を切っ掛けに、住んでみたいと思う人が増えたのでしょう」と言っています。
奥多摩町は、2020年から、「0円空き家バンク」を開始しました。リフォーム費用は自己負担ですが、土地と建物は無償で手に入ることから、今、移住希望者の関心が高まっています。埼玉県の小川町も、空き家の活用支援や、通勤電車の指定席券購入にかかる費用の助成を始めています。
このように、東京23区内の人口は、コロナ禍のもとで、流出が続いており,「近場の田舎」への移住が広がっているのです。都心23区の人達が移住したいと希望している、このような地域では、地域の魅力を一層高め、魅力あるマチづくりを推進していくことが重要です。次世代に向けて求められている、豊かな自然に囲まれて人情豊かな魅力ある地域を、強力に構築して行かねばなりません。
この動きは、全国の地方都市の住民の「近場の田舎」への移住希望も、同様に高まっているはずです。今、地方都市近郊の山村にも、大きなチャンスが巡ってきています。いまこそ、官民をあげて、積極的な対応を進めるべきです。(参考資料1を参照して記述)
参考資料
(1)日本経済新聞、2020年10月9日。
(2)日本経済新聞、2020年11月16日。
[付記]2020年12月18日。
[コメント](日本経済新聞、2020年11月16日から引用、参考資料2)
新型コロナウイルスの感染が続く中で、人口の「東京の一極集中」に変化の兆しがみられる。総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都は7〜9月、転出した人が転入者を上回った。3カ月連続の転出超過は、外国人も統計に含めた2013年7月以降で初めてという。
在宅勤務やテレワークの広がりを背景にして、東京郊外に移り住む人が増えたとみられる。7〜9月の東京の転出超過は計1万674人。この間、都内からの転出者が最も多かったのは、神奈川県の2万2028人で、埼玉(1万8075人)、千葉(1万3376人)が続いた。北海道は2620人で6番目に多かった。