教育に独自色を打ち出して移住を促進し、人口減を克服している地域があります。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年11月 (№156)
□椎野潤(続)ブログ(367) 地域再生 独自な教育対策で移住促進 活性化地域が多数 「教育移住」の先進地を追う 2021年11月12日。
☆前書き
教育に対する独自の対策で移住を促進し、活性化につなげている地域が多数あります。2021年10月9日の日本経済新聞が、これを書いていました。今日は、これを取り上げてブログを書きます。記事は、以下のように書き出しています。
☆引用
「教育に独自色を打ち出すことで、移住を促し人口減にあらがう地域がある。出生率の大幅な向上が見込みにくい中、豊かな自然の特色を生かしたり、海外の方針を導入したりと知恵は様々。「教育移住」の先進地を追った。(参考資料1、2021年10月9日、日本経済新聞から引用)」
☆解説
全国の15歳未満の人口「年少人口」は、1508万人います。この年少人口は、過去10年で、11%減少しました。都道府県単位で増えたのは、都心23区で「年少人口」が増えた東京都だけです。その他の46道府県は、軒並み減少しました。減少率が最も少なく済んだのは、1.7%減の沖縄県です。減少率最大は秋田県で24.5%で、全国的に厳しい少子化に直面しています。
しかし、市区町村別にみますと37都道府県の148自治体が、子供を増やしています。この年少人口を増やした自治体は、これまでデメリットと考えられていた「都市から遠く離れている」ことを、逆に「魅力」としてアピールして成功していました。
増加率のトップは、新潟県の離島、粟浦島村でした。ここでは牧場で馬の世話をしながら、小中学校に通ってもらう「しおかぜ留学」を、2013年から設けていましたが、これが受けて人口を倍増させました。2021年4月入学の募集では、コロナ危機にもかかわらず20人の公募に60人以上の応募が首都圏などから殺到しました。
これは、コロナの悪魔が来たのが追い風になったのです。でも、私は、コロナを考えると島は安全だと思って集まったばかりではないと考えています。島で馬の世話をしながら子供を育てるのが、子育てとして理想だと考えるのは、次世代の社会で親が考えることだと、私は考えていました。コロナの悪魔の襲来は、その実現を、大幅に前倒ししたのです。私は、そのようにに考えています。
ですから、学校を卒業したあと、親たちは一旦、島を離れて都会へもどりますが、子供たちは育って親になった後、「第二の人生」として子育てにもどって来る可能性が多いだろうと、私は感じています。
2位の鹿児島県十島村は、1991年に創設した小中学生「山海留学」の、苦節30年の努力が、コロナの追い風でようやく開花しました。これまで、毎年10人程度の参加でしたが、2021年は42人に増えて全校生徒の半数を占めました。お蔭で教員の割り当ても増えて70人になりました。これは地域の人達の意欲と活性を呼び起こしてくれています。
6位の福岡県新宮町は、2016年、地元大学の協力で、気象の変化や太陽光発電量のデータを観測し、モニターで公開する「スマートスクール」を開校しました。このスクールで、今、日本社会で最重要課題となっていますSDGs(注1)に、興味をもたせる環境教育の場を整備しました。この次世代を目指した子供たちの教育に乗り出して、新たな生徒を呼び込むことに成功しています。これも近次世代をみれば、教育移住による地域活性化の重要な出発点です。(参考資料1、2021年10月9日、日本経済新聞(地域エディター 桜井佑介、塚越慎哉、伊藤敏克、橋本慎一を参照引用して記述)
☆まとめ
年少人口を増やすまでには至らなくても、ユニークな教育を打ち出す自治体は、求心力を強めています。文部科学省の指定を受け独自教育に取り組む「教育過程特例校」は、全国に176校もあります。市区町村内に特例校が10校未満の自治体の場合は、転入者の平均は3000人ほどなのですが、特例校がこれよりも多く10〜29校の自治体では、転入者は5000人に達しています。すなわち、特例校が増えれば転入者が増える傾向にあるのです。地道な努力で、特例校を増やせば地域は活性化します。
理想の教育を地方で実施しようとする取り組みは足元で、さらに加速しています。2019年には、異なる年齢の子供を共に学ばせ、個性や発達度合いに応じた教育の実現をめざす欧州発の「イエナプラン教育(注2)」を採用した認定私立校が、長野県佐久穂町に開校しました。これは自主性の確立や生徒同士の教え合いで、自己肯定感を高められることで、現在、全国で人気が高まっていますが、先行して開校した同校は、今、大人気になっています。全校の8割が移住者になりました。都内から進学した生徒は50人を超えています。
広島県福山市は、イエナ認定の公立校を2022年に開校します。2021年11月の募集開始を前に、「引っ越ししてでも通わせたい」とする保護者からの問い合わせが、全国から殺到しています。
国際教育に力を注ぐ学校の設立も相次いでいます。英国のハロウスクールは、岩手県八幡市に全寮制のインターナショナルスクール(注3)を開く予定です。長野県白馬村にも、全寮制の白馬インターナショナルスクールが開校します。これから、このような次世代を先取りしたスクールが、百花繚乱で咲き乱れるものと思われます。(参考資料1、2021年10月9日、日本経済新聞(地域エディター 桜井佑介、塚越慎哉、伊藤敏克、橋本慎一を参照引用して記述)
(注1)SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標:17の世界的目標、168の達成基準、232の指標からなる持続可能な開発のための国際的な開発目標。ミレニアム開発目標が2015年に終了することに伴って2015年9月の国連総会で採択された。
(注2)イエナプラン教育(ドイツ語 Jena-Plan):ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼンが 1924年に同大学の実験校で創始した学校教育。 子どもたちを『根幹グループ』と呼ばれる異年齢のグループにしてクラスを編制したことに大きな特徴がある。
(注3)インターナショナルスクール(International school):本来は、外国人子弟を対象にその所在する国や地域の教育システムに基づいて就学前・初等・中等教育を施す学校。日本では、日本人の海外での活動、海外生活、国際的な視点に立つ経営活動に対応する教育をすることを目的にして、同様な教育をする先進的な大学院が、2000年初頭から開設されている。世界の未来に向けた進歩が、今、急加速しており、それについて行ける人材を育成することを目的として、様々なかたちで、同様な学校の開設が進むものと思われる。
参考資料
日本経済新聞、2021年10月9日。
[付記]2021年11月12日。