関東圏8県では、首都圏の周辺部の群馬県・山梨県で若年就労者の増加が顕著でした。首都圏内で唯一、若年人口が増加した千葉県は、大学との連携を強化しました。
林業再生・山村振興への一言(再出発)
2022年1月 (№172)
椎野潤(新)ブログ(383) 地域再生 関東圏でも一部地域で若年層就労者数急増 工場立地件数が全国上位の群馬県・茨城県 若年層増加顕著 丁寧な就労支援の山梨県も好調 千葉県は大学との連携強化 2022年1月11日
☆前書き
日本経済新聞の2021年12月4日の朝刊は、このことを報じていました。今日は、これをブログに書きます。記事は、以下のように書き出しています。
☆引用
「都市部からの人口流入などを追い風に、関東圏では周辺部で若年層の就労を増やした自治体が目立った。工場が増えた群馬県や茨城県のほか、きめ細かな就労支援を行っている山梨県でも県内で働く若者が増えた。大学との連携で学生を定着させる取り組みも功を奏している。」(参考資料1、2021年12月4日、日本経済新聞(古田博士)から引用)」
☆解説
関東圏で若手就労者の増加が目立つのは、首都圏を囲む周辺の地域です。一方、首都圏の1都3県で、若手就労者数が増えたのは千葉県のみで、その他の1都2県では、若手就労者数の増加は、伸び悩んでいました。
関東県で若手就労者の増加率が最大だったのは群馬県で、その増加率は188.5%でした。次いで2位は千葉県で73.4%、3位は山梨県で4位は茨城県でした。この内、群馬県と茨城県は、工場数の急速な増加が、若者の増加の大きな要因でした。群馬県は、2020年までの10年間で、工場立地数累計値が557件で、都道府県別で全国3位で、茨城県は4位でした。
一方、山梨県は、きめ細かい若者への支援策で、若者たちからの期待を集めていました。それで、若者の県内就労を増加させていました。
ここでは、まず、群馬県と山梨県を取り上げます。この2県は、前回、2022年1月7日のブログ(参考資料2)でも取り上げていますが、今日は、もう少し具体的に書いてみます。
[群馬県]工場の立地件数増加率で、静岡県・愛知県に次いで全国3位の群馬県の、工場立地の増大に伴う若手就労者の増加について、具体的な事例を書いてみます。
「冷凍食品「大阪王将 羽根つき餃子(ぎょうざ)」の製造販売を手掛けるイートアンドホールディングスは、2021年12月1日、群馬県板倉町で新たな生産拠点「関東第三工場」の建設に着手しました。投資額は24億円です。この工場は2022年10月に稼働する予定です。
同社は2012年に同町で「関東第一工場」を稼働させました。さらに需要増に対応して2019年に、隣接地に「関東第二工場」を建設しました。両工場における従業員は、現在340人で、2012年当初の3倍以上に増えています。
日本中に、このような工場は全国各地にあります。コロナの悪魔の襲来による宅配便の増加などで、このような工場は、今、大分、全国的に増えているのです。全国各地で様々な特産品を開発し、それを全国の人達に、上手に届けることを考えていくと、各地の中小都市でも、経済成長を先導して行ける存在になれると思います。
[山梨県]山梨県は、機械電子産業や教員、医師・看護師などを対象に、県内で就労した場合の奨学金の返済支援を開始しました。これは、前回のブログ(参考資料2)でも取り上げましたが、これは今や、全国的に注目されています。近年、奨学金を借りなければ、大学の学費を払えない親が急増しているからです。意欲ある若者が高度の教育を受けるのに、必死の決意が必要になってきましたが、社会のこのような変化は、必死で勉強をする若者を増やす好ましい環境になってきたと言えるでしょう。
また、東京都内にある「やまなし暮らし支援センター」では、山梨県内の企業に関心のある学生らの相談を受付け、伴走型の支援での就職実現へと導いています。大学への出張相談を行なうほか、模擬面接を実施して希望する企業とのマッチングを図っています。2018年に997件だった相談は、2019年には1121件になり、2021年にはオンラインを含めて2262件に増加しました。山梨県では、意欲を持つ職員の懸命な支援で、必死で働く若者が急速に増えてきていると、私は、手応えを感じています。
また、山梨県は、早くから首都圏の大学との連携を進めて来ました。大学や学校法人との就職促進協定は、2016年での8件から、2020年までの4年間に47件まで、5.8倍に増えました。山梨県では、自治体職員の懸命な支援が実り、若年層の就職内定率は急速に増加してきています。
[千葉県]私は首都圏の1都3県で唯一、29歳以下の入職者数が増加した千葉県に、注目しています。そこで、千葉県の実情を覗いてみます。千葉県では、県内5つの私立大学・短大が連携して地元企業への就職を後押ししています。神田外語大学などが牽引する「ちば産学官連携プラットフォーム就職支援連携事業部会」が、2021年秋から学生向けに、「ちば仕事研究塾」をオンラインで開始しました。
千葉県酒々井町の酒蔵の飯沼本家、岡本硝子など県内の老舗3社が、経営ビジョン研究会を開設し、学生に常時啓発を与えています。これらの活動が学生たちの地域定着を、大きく進展させ、地域内での若手の就職増加を前進させています。(参考資料1、2021年12月4日、日本経済新聞(古田博士)を参照引用して記述)
☆まとめ
全国48都道府県の内、半数の24自治体で、若年層の就活の支援により、若手就職者の増加が進んでいます。また、この新聞記事では、若年層の就職率の増加と県民一人当たりの収入の増加には、一定の関連があると述べています。
2021年12月4日の日本経済新聞で、若手の就職率の増加した自治体を抜き出してみますと、以下の24カ所ありました。
沖縄県、群馬県、鳥取県、長崎県、山口県、和歌山県、島根県、徳島県、香川県、熊本県、千葉県、山梨県、秋田県、岐阜県、茨城県、長野県、高知県、佐賀県、宮崎県、大阪府、奈良県、石川県、栃木県(以上24府県、増加率の大きい順)。
これを通観してみますと、若手の新規就職者数の増加が続いている自治体は、全国に広く分布しています。
この日本各地で、県民の一人当たりの収入が、本当に、年々増え続けるのなら、日本の未来は、希望に満ちたものになるはずです。待望の林業創生と山村振興が実現する社会になると思われるのです。
でも、本当に現実は、そのような状況なのでしょうか。私は、この新聞にあるデータを再読して、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。日本各地に、意欲に満ちた自治体職員が現れ始めています。それに応えて必死に生きようとしている若者が目立ってきました。それを発掘するブログを次回に書きます。(参考資料1、日本経済新聞2021年12月4日を参照引用して記述)
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年12月4日
(2)椎野潤(続)ブログ(382) 地域再生 若年層就労者が急増 沖縄県では3倍、群馬県・鳥取県では2.6倍に 2022年1月7日
[付記]2022年1月11日。
[追記(1) 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]
[指導を受けたブログ名:地域再生 各県で若年労働者数が増加すると 県民一人当たりの所得も拡大する(その1) 若年層就労者が急増 沖縄県では3倍、群馬県・鳥取県では2.6倍に 2022年1月7日]
[引用文]
大谷様
5年間で2.6〜3倍は大変な数字です。各自治体のノウハウも蓄積されてることと思います。
山梨県は東京にも近いですし、観光資源にも恵まれていると思います。奨学金返済免除の道がほとんど閉ざされている現在、奨学金返済は若い人にとって大変な負担ですが、1/8補助は英断です。他の県にも広がればと思います。
酒井秀夫