☆巻頭の一言
日本は外国人にとって、住みやすい国ではないことが解りました。長い間、定住しても、なかなか正社員になれないのです。これが原因で、日本人と賃金格差が大きく、昇給も遅いのです。現状では、海外の若者たちから、選ばれる国にはなっていないのです。(椎野潤記)
林業再生・山村振興への一言(再開)
2022年7月(№223)
□ 椎野潤(新)ブログ(434) 定住外国人「正社員」に壁 昇給が遅い 非正規社員が日本人の2倍いる 2022年7月8日
☆前書き
長期間、日本で働きながら正社員になれない外国人が多いことが分かりました。日本には、定住外国人が活躍しづらい状況があります。これは、海外の人材を敬遠する要因となりかねないのです。2022年6月9日の日本経済新聞は、これを記事に書いています。以下のように書き出しています。
☆引用
「長く日本で働きながら正社員になれない外国人が多いことが、国の賃金構造基本統計調査(注1)を分析して分かった。外国人は勤続5年以上でも非正規社員が36%を占め、国内全体の2倍を超す。正社員を新卒中心に採用する雇用慣行が、社会人で来日し中途入社することが多い外国人に不利との指摘もある。定住外国人すら活躍しづらい実体は、海外の人材を敬遠する要因となりかねない。」(参考資料1、2022年6月9日、日本経済新聞(覧具雄人)から引用)
☆解説
契約社員や嘱託などの非正規社員は、正社員より、昇給しにくく、生活が安定しないのです。新型コロナ対策の入国制限が緩和され、外国人材の来日が拡大する中、働きながら日本語やスキルを磨けて、正社員になりやすい環境の整備が求められています。
厚生労働省は、国内の外国人労働者に関する調査を実施しています。2012年の調査は、172万人、4万9千事業所が回答しました。ここでは、フルタイムの外国人労働者の47%が非正規社員でした。
「技能実習」など在留の短い人が含まれない勤続5〜9年でも、36%が非正規社員なのです。同じ勤務期間で日本人を含む全体は16%でした。すなわち、外国人労働者の非正規雇用の比率は、日本人の倍なのです。
正社員になれるかどうかが、賃金水準の分かれ目となります。勤続10年以上の外国人正社員の1カ月換算の給与(賞与も含む)は、53万9千円で、勤続1〜2年の2.2倍でした。しかし、非正規社員は、同様の比較で1.5倍にとどまるのです。この非正規の多さを背景に、外国人の9割は、所定内給与が日本全体の平均を下回っています。
30年前にブラジルから来日した男性(63)は、派遣社員として数十の職場を転々としていました。自動車メーカーの正社員採用では、「漢字が苦手で雇えない」と断られました。今は、手取り月15万円程度です。自宅のローンの1400万円支払いに苦しんでいます。(参考資料1、2022年6月9日、日本経済新聞(覧具雄人)を参照引用して記述)。
☆まとめ
新卒入社なら、外国人と日本人の待遇は変わらないとの指摘もあります。国立社会保障・人口問題研究所(注1)の是川夕国際関係部長は、2019〜2000年調査の個票を分析しました。大卒の専門職や技術者が対象の在留資格「技術・人文知識・国際業務」の20代では、日本人と統計学的に有意な賃金格差はみられませんでした。しかし、是川部長は「一括採用や長期雇用を前提とする日本企業の賃金体系は、処遇面で外国人に不利になりやすいと思う」と話しています。
契約、派遣社員の外国人は、景気後退で職を失いやすいのです。厚生労働省によりますと、新型コロナの影響が深刻化した2020年6月、ハローワークで外国人の新規求職者は、前年同期比、1.89倍上昇しました。ここでも日本人の1.15倍を大きく上回っていました。すなわち、一旦職を失うと、外国人の再就職は、極めて困難なのです。
日本の企業は日本語力を重視しますが、日本では働きながら学ぶ機会が乏しいのです。文化庁によりますと、全国の1900市町村の中で、日本語教室が設置されているのは4割に止まっているのが現状です。
日本では、高齢化と人口減少が続いています。今後、国力、国内総生産(GDP、注2)を維持して行くには、大きな努力が必要です。ですから、外国人労働者の支援は、極めて重要なのです。特に、海外の若者から選ばれる国にすることが著しく重要です。
日本は、世界の先進国の中で、年功序列型賃金体系を色濃く残している数少ない国です。随分長い間、その改革が叫ばれてきましたが,まだまだ、抜本的な改革には至っていません。今こそ、国をあげ、日本人の総力をあげた大改革を実施すべきです。海外の若者たちから、選ばれる国に、一日も早く脱皮しなければなりません。(参考資料1、2022年6月9日、日本経済新聞(覧具雄人)を参照引用して記述)。
(注1)賃金構造基本統計調査:厚生労働省が実施している賃金に関する調査。統計法に基づいた基幹統計であり、毎年6月に実施されている。この調査は、年齢・雇用形態・就業形態などを分類した上で、それぞれに支払われている賃金を調査し、国内における賃金の実態を明らかにしている。この調査は1948年に始まった。最低賃金の決定、労災保険の算定資料などに活用されている。
(注2)国内総生産(GDP=gross domestic product):一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計のこと。その国内領土に居住する経済主体を基準にした数値で「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額」をいう。国内総生産は「ストック」に対する「フロー」を表す指標であり、経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の一指標で、GDPの伸び率が経済成長率に値する。
参考資料
(1)日本経済新聞、2022年6月9日。
[付記]2022年7月8日。