林業再生・山村振興への一言(再開)
2021年5月 (№102)
□ 椎野潤(続)ブログ(313) 2拠点居住(デュアルライフ) 地方に活力 郊外自治体 若者呼び込む 2021年5月11日
☆前書き
都心と地方の両方に生活基盤を持つ、2拠点居住(デュアルライフ、注1)が、本格的に始まりました。2021年4月10日の日本経済新聞は、以下のように書き出していました。
☆引用
「新型コロナの感染リスクが低いとされる郊外生活が脚光を浴びる中、都心と田舎の両方に生活基盤を持つ2拠点居住(デュアルライフ)が注目を集めている。都市部で希望者向けのセミナーが増える一方、地方の自治体は呼び込みに力をいれる。郊外暮らしに接する都心居住者が増えれば、少子高齢化が進む地方での活力回復に、大いに役立つと期待される。」(参考資料1から引用)
☆解説
都市と農山漁村を行き交う生活を送る人を、「デュアラー(注1)」と呼ぶことを提唱したのは、リクルートホールディングでした。2018年頃のことです。当時は、都市と郊外の2拠点生活という意味が主流でした。でも、最近は、「デュアルライフ(注1)」という語が、俄かに、使われるようになりました。これは農山漁村と都会の両方に住居を置く生活様式を示す語です。
今、大都市に居住する若者たちの中に、自然豊かな処で、ゆったりと過ごしたいという思いが強くなっています。一方、都市の会社側は、コロナ対策があるので、テレワーク(参考資料2、3参照、注2)やワーケーション(参考資料2、3参照、注3)を、推奨するようになりました。それで、俄かにこれが、大きな動きになってきたのです。
都市に住む若者たちにとって、ワーケーションは、ここへきて本格的になってきました。農山漁村にも生活拠点を設け、2地域居住を目指す、積極的な若者が増えてきたのです。各地の自治体の受け入れ体制も、熱い息吹が感じられます。
若い層を呼び込もうと、農山漁村の自治体は、PRを強化しています。埼玉県長瀞町は、都心部に近いという利便性のさと、自然豊かで環境が良いことを強調して、移住や2拠点居住をアピールしています。2020年には、同町を生活拠点の選択肢として考えてもらおうと、1話2分前後の連続ドラマを製作しました。担当者は「まずは長瀞を知ってもらおうと、クセのあるものを作った」と強調しています。
動画を掲載する特設サイトでは、ネット上の会話「チャット(注4)」でも受け付けています。役所の職員が、要望に応じて個別ツアーを組み、町内を案内しています。
千葉県南房総市の観光協会は、2021年3月末から、2拠点居住やワーケーション(注3)、移住などに、幅広く相談に応じるプランを用意しました。特設サイトから申し込むと、同協会の職員や地元の専門家から詳しい話を聞くことが出来ます。
これは、東京を第一居住地とし、東京近郊の休息に適した静かな環境を、第二の居住地と考える例ですが、最近の「デュアルライフ(注1)」では、逆の発想も出てきています。山形県や山梨県の山村、宮城県、岩手県の三陸海岸の漁村を、第一居住地にし、東京を第二居住地にする例も耳にするようになっているのです。(参考資料1、2021年4月10日、日本経済新聞(出口広元)を参照して記述)
☆まとめ
「2地域居住」を求める人達の要望に応える「デュアルライフセミナー(注1)」は、最近、盛況です。NTTデータ経営研究所と産直サイト、ポケットマルシェ(東京・渋谷)が、2020年に立ち上げた「ちょっと先の暮らし方研究所」は、この春から、2拠点居住者(デュアラー、注1)になりたい人向けのオンラインセミナーを開始しました。郊外居住の希望者は、従来は、定年退職者など高年齢層が多かったのですが、最近のセミナーは、若い人が中心です。
最近の都市と農山漁村の2拠点居住を求める若者には、「自分の故郷(ふるさと)が欲しい」という声が大きいのです。また、2015年から、熱心に進められた「ふるさとテレワーク」は、ここへきて、しっかりと根を張り始めたと感じます。(参考資料3を参照)
戦後、各地から東京へ出てきた人の孫や曾孫たちは、「こころの郷里(ふるさと)」を失ったのです。若者たちは、自分自身の「故郷(ふるさと)」を求めています。ここには、若い人たちが夢に描いている、ポストコロナの生活が、見えてきている感じがします。
都会育ちの若者たちによる自分自身の「故郷創生(ふるさとそうせい)」の時代の始まりです。(参考資料1、2021年4月10日、日本経済新聞(出口広元)、参考資料2、3を参照して記述)
(注1)デュアルライフ(dual life):都市と農山漁村を行き交うライフスタイルを意味する和製語。二地域居住、二拠点生活ともいう。
(注2)テレワーク:勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT、Information and Communication Technology)を活用し時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。tel (離れたところで)とwork(働く)の合成語。
(注3)ワーケーション:work(ワーク)とvacation(バケーション)の合成語。休暇中、特に旅行先でテレワークを行うこと。
(注4)チャット (Chat):インターネットを含むコンピュータネットワーク上のデータ通信回線を利用したリアルタイムコミュニケーションのこと。ネットワーク上のチャットは、会話を楽しむための手段。
(注5)参考資料2、2021年5月10日に、国土緑化推進機構フォレスト・サポーターズ研究報告に登載。
(注6)参考資料3、2021年5月11日に、国土緑化推進機構フォレスト・サポーターズ研究報告に登載。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年4月10日。
(2)椎野潤(再開ブログ(001)新型コロナの大爆発で世界は危機に直面 今求められているのは「遠く離れていても相互に信頼を高められる働き方改革」「テレワーク」「ワーケーション」、2020年4月1日。
(3)椎野潤(再開ブログ(002)ふるさとテレワークとワーケーション、2020年4月10日。
[付記]2021年5月11日記。
[コメント] 椎野潤再開ブログの出発時のブログについて
私は大病を罹患し、手術を目前にした一年前の一月末、長い間、書き続けていたブログから、引退を宣言しました。でも、その後の回復は、想定外に順調でした。それで、書けるだけ書いてみようと、再開を決断したのです。
その再開第一号のブログが、2020年4月1日の(№1)ブログです。(№10)の6月15日のブログから、国土緑化推進機構フォレスト・サポーターズ研究報告に登載していますが、(№1〜9)のブログは、読者が検索できるような体制にしておりませんでした。ここに執筆開始から一年ぶりに、その(№1)(№2)ブログを参照しました。2021年5月10、11日に、このブログを、国土緑化推進機構フォレスト・サポーターズ研究報告に登載します。一年ぶりのブログを、是非、ご参照ください。