新しいブログに移行するにあたり、私が、これまで書いてきた「林業再生・山村振興」のブログのテリトリー(分野)名を、「次世代産業社会へ」「地域創生・山村振興&林業再生」に変更しました。
これまでブログの主要テーマであった「地域創生・山村振興」は、これからも中心に置きつつも、安高さんが推進されている新しい林業「森林サービス産業(参考資料2)」を中核にする林業再生へ、一歩ずつ近づいていきたいと思っているのです。そのためテリトリー名を変更しました。
「次世代産業社会へ」「地域創生・山村振興&林業再生」
2021年8月 (№132)
□ 椎野潤(続)ブログ(343) 首都圏等の大型9都府県外の38道府県でも131市町村が人口増 2021年8月20日
☆前書き
人口が減少している中で、人口増加しているところを都道府県別に見ると、増えているのは首都圏、大阪、愛知など9都府県のみです。残りの38道府県は、全て、減少しています。でも、この38道府県内でも131の市町村が人口増加を達成していました。2021年7月17日の日本経済新聞が、これを書いていました。今日のブログは、これを読んで、頑張っている市町村を訪ねる旅を書きます。
☆引用
「2020年の国勢調査で人口が増えた市区町村は324に止まる。高齢化の進展に加え、若年層の都市部への流出や出生率低迷で多くが人口減にあえぐ。そうした中、外国人や子育て世代に照準を絞った施設などを展開し、新たな住民を呼び込みに成功した地域がある。(参考資料1、2021年7月17日の日本経済新聞(地域再生エディター 桜井佑介、山本公彦)から引用)
☆解説
総務省が2021年6月末に発表した国勢調査速報で、人口が増加した処は、都道府県別として見ると、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、大阪、愛知、滋賀、福岡、沖縄)の9都府県のみでした。そして、残りの38道府県は、全て減少しました。
しかし、全国1741市区町村別で見てみると、大分、見える景色がちがいます。ここでも人口増の市町村の6割が9都府県内でした。でも、残りの38道府県でも、人口増の市町村が131あったのです。
これは私にとって、望外の喜びでした。首都圏をはじめとする一部の大都市以外でも、頑張って人口増を達成している市町村が結構あるのです。これを丁寧に調べて行き、その進めている努力を集めていけば、地方創生・山村振興に有望な対策も、発見可能と思えたからです。
☆解説
周囲の人口が、全て減少する中で頑張って人口増を続けている市町村には、幾つかの類型があります。
[観光地として外国人の誘致を続けた処]
このタイプの代表的な市町村として、北海道の2つの村があります。
どちらも、過疎に指定されている、北海道占冠村(人口増8%)と北海道赤井川村(同4%)は、海外からのスキーリゾートとして注目されたチャンスを生かして、外国人の定着に力を注ぎ、人口減少から脱却しました。占冠村は1990年から、赤井川村は1995年から人口増の村となっています。
占冠村では、2017年、フランス系の「クラブメッド北海道トマム」が開業し、外国人が急増しました。村は、入れ替わりの激しい外国人従業員に、土地への愛着を持ってもらおうと、無料教室などを通じて住民との交流を深める活動に、強い熱意を持って取り組みました。この結果、2018年には、42カ国392人が来日するに至りました。この取り組みが成功した最大のポイントは、多言語翻訳設備の導入の決断をしたことです。
赤井川村でも、外国人従業員の生活支援に注力し、英語のパンフレットを作り、村の住民が交流を深めています。この村も、過疎に指定されていますが、今も人口増加村です。
[市町村を支える基幹産業を定め育て続けた処]
北海道鶴居村は、村の基幹産業は酪農であると定め、その育成に執念を燃やしてきました。2017年から酪農家が従業員住宅を立てる場合、1棟当たり150万円を補助する制度を始めました。その結果、人口を維持し増加を続けています。これまでに、補助金の総額は、1億4000万円に達しています。でも、この村の酪農は、村の基幹産業として定着し、従業員も増え、この人達が村内の消費を支えてくれて、村の経営は安定しています。
[市町村の都市計画を早くから整備しそれを継続的に維持してきた処]
山梨県昭和町は1971年の町制施行以来、7%の人口増を続け、2020年に人口2万人を突破しました。昭和町は、身の丈に合った町の整備計画を設定し、積極的に投資し、住民の働きやすさや子育てしやすさを、丁寧に支援し、住民を呼び込み移住者を獲得してきたのです。同町の担当者は、「多額の投資を投じたが、地域の活性化に成功し、投資は元はとった」と言っています。地方の自治体経営の立派な成功例です。
茨城県つくば市と守谷市は、筑波エクスプレスの開通とともに、都市計画にもとづき諸建築物を配置し、子育て支援を、全国各地に先行して実施してきました。現在、中堅の都市に成長しています。
[子育てと仕事の両立を支援し、子育て世代の移住を招致してきた地域]
茨城県阿見町と岡山県早島町は、早くから、職住近接と子育て支援に注力し、小学校1年生の入学児には、全員にランドセルを配布するなど、子育てしやすい町を標榜してきました。この結果、2005年以来人口増を続けています。現在も、2%の人口増を維持しています。
(参考資料1、2021年7月17日、日本経済新聞(地域再生エディター 桜井佑介、山本公彦)を参照引用して記述)
☆まとめ
コロナ危機の到来後、各地の市町村は、職住近接や子育て支援施設の整備など、子育てしながら働らくことが容易な環境作りに努め、移住を促進させる努力を強めています。その結果、近年、人口増に転じた市町村も、増えてきているのです。
参照した新聞に記載されていた、「人口が減った道府県で、人口増となった市町村(2020年)」のベスト10を示しておきます。
[人口が減った道府県の中で、人口増となった市町村(2020年)]
(1) 北海道占冠村 7.9%
(2) 山梨県昭和町 7.0
(3) 京都府木津川市 6.6
(4) 京都府日向市 6.5
(5) 茨城県つくば市 6.5
(6) 熊本県合志市 5.9
(7) 熊本県菊陽町 5.8
(8) 茨城県守谷市 5.7
(9) 茨城県嘉島町 5.5
(10)熊本県大津町 5.3
(注)%は人口増加率
このベスト10には、熊本県、茨城県、京都府が多くなっていますが、全国を丁寧に調べれば、頑張っている市町村は、全国の道府県のどこにも、いるはずだと思います。私は、今後、それを丁寧に発掘する旅を始めねばならないと思っています。(参考資料1、2021年7月17日、日本経済新聞(地域再生エディター 桜井佑介、山本公彦)を参照引用して記述)
(注1)森林サービス産業:多様な生活者を意識し、森林空間が生み出す恵みを活用したサービス。医療・福祉、教育・学習支援、観光・旅行、娯楽、林業等に関わるサービスを複合的にビジネス化。相乗効果を発揮することを目指す。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年7月17日。
(2) http://www.rinya.maff.go.jp/j/sanson/kassei/attach/pdf/sangyou-107.pdf
[付記]2021年8月20日。
[コメント]
このブログで論じた地域市町村の人口増加へのひたむきな努力は、この市町村内の山間部集落「山村」とよばれている地域でも、極めて重要です。
山村は、次世代産業社会でも重要な存在です。消滅を防ぎ、活性化しなければなりません。山村は林業を支える基盤なのです。新世代林業の基盤である「森林サービス産業(注1)」を、「山村内」で育てる努力が重要です。