地域での若年労働者数の増加と、その地域での都道府県民一人当たりの所得拡大の関係を分析する、新たな分析表の作成を試みました。
林業再生・山村振興への一言(再開)
2022年1月 (№173)
□椎野潤(続)ブログ(384) 地域再生 多くの地域で若年労働者数が増加 その自治体の一人当たりの所得も拡大 新たな分析の試み 2022年1月14日
☆本文(新たな分析表の作成)
各地の自治体による積極的な就労支援によって、各地で、若年層就労を増やす動きか広がっています。私は今回、2021年12月4日の日本経済新聞朝刊の1面と33面(東京首都圏経済面)に掲載されていた二つの記事を参照して「若年入職者増減率」と「一人当たりの所得増減率」の関係をさらに深く掘り下げてみました。
これに先立つ2022年1月7日に、これに関する第1号ブログ(参考資料2)を発信しました。さらに1月11日には、その第2号(参考資料3)を書いています。第1号では、日本全国で、この活動で成功している優れた自治体を丁寧に説明しました。さらに第2号では、その活動の関東圏(東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨の1都7県)の状況について書いています。
その結果、「就活」で、29歳以下の若者の就職人数が増加した自治体は、その自治体内の一人当りの所得も増加していることがわかりました。そうなると、地域創生を目指す各地域は、29歳以下の新規就業者数を、もし増やし続けていけるのならば、地域経済の持続的な成長を、見事に達成できるのです。すなわち、待望の地域創生が具体的に可能になるのです。
そこで私は、日本経済新聞の昨年12月4日(参考資料1)の1面記事に掲載されていた二つの図表「29歳以下の入職者増減率(2020年 15年比)」と、「若い働き手が増えると県民所得も向上」の2図表(注1)を、一層良くわかりやすく表示することにチャレンジしました。
私は、この新たな作表に当たっては、その日経紙の2枚の図表(参考資料1、注1)を引用しました。そのデータの引用元を辿ると、「若い働き手が増えると県民所得も向上図の縦軸の「若手入植者増減率」は、厚生労働省の「雇用動向調査」に基づいて、2020年の2015年比増減で作成されています。また、横軸の「1人当たりの県民所得増加率」は、内閣府の「県民経済計算」の2018年度と2013年度の所得額を比較した数値で作成されていました。また、29歳以下の入植者増減率(2020年、15年比)図は、厚生労働省の「雇用動向調査」から引用していました。この新聞は、厚生労働省と内閣府のデータを組み合わせて、見事な記事を書いていました。
☆まとめ
この一連のデータを1表にまとめたのが、下記の「表 若年入職者の自治体別増減率と1人当たりの所得増減率の対比表」です。この表では、若年入職者増加した自治体を、「まとめ」で取り扱う対象としました。この結果24の自治体が対象になりました。
表 若年入職者の都道府県別増減率と1人当たりの所得増減率の対比表
都道府県 若年入職者増減率1人当たりの所得増減率
(1)沖縄県 ◎ ◎
(2)群馬県 ◎ ◎
(3)鳥取県 ◎ ◎
(4)長崎県 ◎ ◎
(5)山口県 ◎ ○
(6)和歌山県 ○ △
(7)島根県 ○ ○
(8)徳島県 ○ ○
(9)香川県 ○ ○
(10)熊本県 ○ ○
(11)千葉県 ○ ○
(12)山梨県 ○ ◎
(13)秋田県 ○ ○
(14)岐阜県 △ △
(15)茨城県 △ △
(16)長野県 △ △
(17)岩手県 △ ◎
(19)佐賀県 △ ○
(21)大阪府 △ ○
(22)奈良県 △ ○
(23)石川県 △ ◎
(24)栃木県 △ ◎
(注)若年入職者増減率
◎:100%以上
○:100%以下〜50%以上
△:50%以下〜0%以上
1人当たりの所得増減率
◎:10%以上
○:10%以下〜5%以上
△:5%以下〜0%以上
なお、この表の表示では、若年入職者の都府県別増減率と1人当たりの所得増減率について、この若手の入職活動の支援における、成績最優秀(増加率100%以上)を◎印で表示しました。次いで優秀(増加率50%以上100%以下)は○印、良好(増加率0%以上50%以下)には△印を付しました。
この表の(1)〜(24)の順位は、29歳以下の若手入職者の増加率の大きい順に並べています。この表を作成した結果、「29歳以下の若者の就職人数が増加した地域は、その地域のひとり当たりの所得が増加している」ことを確認できました。特に(1)沖縄県から(16)長野県の16県は、この関係が、とても明瞭です。特例は山梨県です。山梨県は、その所得額が若手入職者数の増加に比べて、突出して多いのですが、これは、この県の技術レベルが突出している現れだと思います。
また、(17)岩手県から(24)栃木県の間に並んでいる岩手、高知、佐賀、宮崎、奈良、石川、栃木の7県は、何らかの対策を講じれば、一気に山村振興が爆発する地域だと思います。私は、この地域も、今後注目して見ていきます。
ここで私は、一つの疑問を感じました。この表には、首都圏(東京都を含む)、関西圏(大阪府、京都府を含む)、中部圏(名古屋市を含む)の三大都市圏が姿を見せないのです。そこで、これら大都市を抱える都府県の姿を調べ直してみました。また、これを思案しているうちに、札幌がないのは何故だろうかと思いました。そこで、札幌と九州の福岡も加えることにしました。それが、表の「大都市を抱える都道府県+北海道・福岡の若手入植者の増減率」のランキング表です。
表 大都市を抱える都道府県+北海道・福岡の若年入職者数と一人当たり所得の増減率
都道府県 若年入職者増減率 1人当たりの所得増減率
(1)千葉県 ○ ○
(2)大阪府 △ ○
(3)埼玉県 × ○
(4)愛知県 × ×
(5)兵庫県 × ◎
(6)神奈川県 × ○
(7)北海道 × ◎
(8)東京都 × ×
(9)京都府 × ◎
(10)福岡市 × ○
(注)若年入職者増減率
◎:100%以上
○:100%以下〜50%以上
△:50%以下〜0%以上
×:0%以下〜−5%以上
1人当たりの所得増減率
◎:10%以上
○:10%以下〜5%以上
△:5%以下〜0%以上
×:0%以下〜−5%以上
これをまとめてみますと、状況は大分違っていました。若年入職者増減率をみますと、この中には、若手入職者の増加率の最優秀◎印はいません。優秀○印は千葉県一つでした。増加組の最下流の良好グルーブ(△印)に大阪府が、かろうじて踏みとどまっている状況でした。この分析での第3位の埼玉県以下の愛知県、兵庫県、神奈川県、北海道、東京都、京都府、福岡県の凄い地域は全て、若年入職者の減少地域でした。
さらに、県民一人当たり所得増減率では、さらに様子が違いました。ここでは、最優秀◎印に、兵庫県、北海道と京都府が入っていました。優秀○印には、千葉県、大阪府、埼玉県、神奈川県が入りました。でも、愛知県、東京都は、若手入職者数の増減がマイナス(×印)であるばかりではなく、一人当たりの所得でも減少組(×印)なのです。
これには、何か特別な理由がありそうです。私は、これを今後、良く調べてみようと思います。日本を代表する世界の東京とトヨタを抱える愛知が、なぜ、若手一人当たりの所得の減少組にいるのかも、知りたいのですが、それ以上に、兵庫県と京都府が、若手入職者数を減らしている中で、なぜ、所得10%以上増の大増加に、躍進できたのかを、是非、知りたいのです。ここには、未来に向けた地域創生の大きな「鍵」が、隠れているのではないかと思えるからです。
また、北海道には、別の理由がありそうです。私は、今回の分析で九州は、「九州」と呼ばずに「福岡」と県別に呼びました。でも、札幌は「札幌」と呼ばずに「北海道」と呼んでいます。福岡市と同じように札幌市のデータで検討すれば、別の答えが出たでしょう。北海道は、別にデータを集めて検討しなければならないことが解りました。
(注1)参考資料1、2021年12月4日の日本経済新聞朝刊の1面に掲載さていた図表1「29歳以下の入職者増減率(2020年 15年比)」 と図表2「若い働き手が増えると県民所得も向上」。
参考資料
(1)日本経済新聞、2021年12月4日
(2)椎野潤(続)ブログ(382) 地域再生 若年層就労者が急増 沖縄県では3倍、群馬県・鳥取県では2.6倍に 2022年1月7日
(3)椎野潤(続)ブログ(383) 地域再生 関東圏でも一部地域で若年層就労者数急増 工場立地件数が全国上位の群馬県・茨城県 急増顕著 丁寧な就労支援の山梨県も 千葉県は大学との連携強化 2022年1月11日
[付記]2022年1月14日。
[追記) 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]
[指導を受けたブログ名:地域再生 各県で若年労働者数が増加すると 県民一人当たりの所得も拡大する(その2)関東県1都8県版 2022年1月11日]
[引用文]
大谷様
ブログ配信ありがとうございます。
群馬県に「大阪王将」の工場ができたのは目からウロコです。考えてみれば、水沢うどんの小麦粉、高原野菜、畜産、良い水があれば、美味しい餃子ができますね。これに子育ての環境、大学などの支援があれば活路がどんどん開けていくと思います。
今朝のテレビで、千葉県流山市が人口増加率全国一とありました。都心に近いということもありますが、子育てのサポートに力をいれています。市民のニーズをくみ取って、かゆいところに手が届く行政に人が集まっていくのではと思います。私たちはコロナを経験して、これから環境や健康志向がますます強くなっていくのではと思います。
酒井秀夫