☆巻頭の一言
私が楽しみにしていた、文月恵理さんリーダーの討論ブログが、いよいよ、登場しました。文月さんは、新進気鋭の素晴らしい方なのです。立派な討論会が出来るだろうと期待しています。「風薫る2022年初夏」の文月討論ブログに心が踊ります。(椎野潤記)
林業再生・山村振興への一言(再開)
2022年6月(№219)
□ 椎野潤(新)ブログ(430) 森林直販へ(その1)(司会)文月恵理 パネリスト今山哲也(佐伯広域森林組合) 塩地博文(森林連結経営) 2022年6月24日
☆前書き
このブログは、文月恵理さんの「2022年初夏」の討論会初司会の期待の一編です。
☆引用
文月恵理著 討論 森林直販へ(その1) 司会 文月恵理 パネリスト 今山哲也 塩地博文 2022年6月24日。
文月 : 佐伯広域森林組合の今山参事をお招きして、塩地さんにも加わってもらって、私がずっと提案し続けている「森林直販」というテーマで、議論したいと思います。佐伯さんでは、既に大型パネルを技術導入して、工務店さんまで直販を進められていますね。成果は如何ですか?
今山 : もう4年前になりますが、大型パネルを技術導入して、大型パネルの生産、販売を開始しています。当初は、工務店さんに直接販売することに苦労しました。先ず、建築に関する知識、人脈の無さに打ちのめされました。佐伯広域森林組合は、大型製材機を導入後、間柱生産に力を入れてきました。製材製品に絞ったためと大型製材機の生産量が多い事などから、大分県内は元より、九州圏内だけで売りさばくのは、難しいと判断して、当時、三菱商事建材に在職されていた塩地さんを訪ねて、広域での販売を依頼しました。結果、全国のプレカット工場に向けて販売網を広げていき、大きな成果を得るに至ったのです。しかし、今度は「大型パネルにして、広域に販売せず、地元で売れ、それも工務店に売れ」と言われて、ビックリしたのが、正直な気持ちでした。
塩地 : 当時を振り返りますと、佐伯さんの近隣に巨大なバイオマス発電を備えた大規模製材工場が新設されていました。佐伯さんも国内では大きな製材工場なのですが、その新設工場は規模では数倍、加えてバイオマス発電も連動しており、太刀打ちするのは難しい状況でした。このままでは地域の材は新設工場に流れていき、佐伯さんはじり貧に陥ると思ったのです。「君子なら 豹変せよ」と告げました(笑)
文月 : 今山さんはさぞ驚かれたでしょうね。間柱という単一の製品のため、広域に流通せざるを得ない、地元なのに工務店には地縁が無いと、塩地さんの提案を受け入れるのには時間がかかったのではないですか?
今山 : 組合長は「木材を出来る限り高く売りたい、それが山主への利益還元という森林組合の一丁目一番地の責任だ」と常日頃から方針を挙げていました。然しながら、木材価格は長く低迷し、加えて広域物流のコストや輸送に苦しんでいたのは事実です。塩地さんの提案にも一理あると思いました。規模では負けてしまう近隣のライバル対策には、「忘れていた地元需要で再浮上のきっかけを掴む」というシナリオもあるだろうと思えたのです。でも、強引に説得されたのも事実ですが(笑)
文月 : 森林組合は製材会社ではありません。製材機の都合を優先すると、「森林資源を残さず活用する」という大方針に外れることもあるでしょう。大径材が余剰になるのも、製材機都合優先の証明ですね。大型パネルの場合は、梁も、柱も、無論、間柱もすべて佐伯材で構成する訳で、森林組合の成果そのものとも言えますね。
塩地 : 佐伯さんなら出来ると信じて疑わなかったですね。なぜなら、再造林を旗印に経営されていたからです。再造林のためなら、なんでもやらねばなりません。それは地元で売ることも、大径材を使うことも、建築分野を学ぶことも、地場工務店に売り込むことも、大義の実現のためには、小さなことです。それほど再造林は超がつくほどの難事業だと思ってきました。その再造林を黙々とやり続けている佐伯さんに、大型パネルを生産して販売することなど、難問ではありません。僕が全面的にバックアップするからと、お尻を叩いてきました。
文月 : さて、本論に進みたいと思います。佐伯さんでは、次第に地元工務店に大型パネルが受け入れられていると聞いてます。販売棟数が伸びているとのこと。この先の展望は如何ですか?
塩地 : 僕から答えさせてもらいます。佐伯さんが大型パネル事業を伸ばしているのは事実です。しかし、それはウッドショックによる後押しがあるからです。本当の実力ではありません。地元工務店は、木材の高騰や品不足、そして大工不足を一気に解消できる、大型パネルを選んでいるのです。特に、梁材の不足は、佐伯さんの大型パネルを後押ししている要因です。ウッドショックが収まれば元の黙阿弥では困ります。地元に定着させてこそ、価値があるのです。
今山 : ジワジワですが、地元工務店に大型パネルは浸透し始めています。それと担当しているスタッフ達も、建築の知識や経験が厚くなっています。人材が育ってきたのです。これを成長軌道に乗せるには、更に強力な策が必要でしょう。ウッドショックに右往左往することなく、確かな成長に乗せる具体策が必要だと思っています。
文月 : それは森林直販ではないですか?地元工務店だけではなく、施主に直接販売する方策ではないですか?
塩地 : 「ハーフ住宅」という施主に直接訴求できる商品を開発しています。地元工務店だけでは、事業の安定感が保てません。生活者に、施主に、もっと訴求して、「佐伯さんの木材で、自分の家を建てたい。そして再造林に貢献したい」と言わしめてこそ、森林組合が大型パネルをやる意味が出てきます。佐伯さんは次のステージに進んでいくでしょうし、次のステージでもお尻を叩きたいと思います(笑)
今山 : もう充分ですと言う気持ちと、また次か〜という気持ちが混ざって、複雑な心境です。「伐ったら植える」を基本とする佐伯型循環林業を標榜する我々にとって、「林業は終わりなき旅」だと思っています。森林直販にも挑戦したいと思います。
文月 : 森林直販とは、私が言い出した事業モデルです。付加価値を逃すことなく、最終的な消費者や生活者へ木材製品を届けていく、そしてその収益を、買ってくれた生活者の想いを、再造林へ繋げていく、それが森林直販の姿です。そのためには、異業種の知識が必要だったり、設備投資や開発研究が必要となるでしょう。リスク分散から、分業ばかりが目立つ林業林産業を、垂直的に統合して、山から生活者へ一直線に届けてこそ、森林は甦ると信じています。佐伯さんの今までの奮闘に敬意を表すと共に、再造林を掲げて、新しい事業分野へ挑戦する姿は、多くの方々に勇気と希望を与えるでしょう。機会がありましたら、ぜひもう一度、この話の続きをやってみたいと思います。
☆まとめ
文月恵理さんは、この討論の「まとめ」として、以下のように、述べておられます。
「リスク分散から、分業ばかりが目立つ林業林産業を、垂直的に統合して、山から生活者へ一直線に届けてこそ、森林は甦ると信じています。佐伯さんの今までの奮闘に敬意を表すと共に、再造林を掲げて、新しい事業分野へ挑戦する姿は、多くの方々に勇気と希望を与えるでしょう。」
これは凄く立派な「まとめ」です。いつも、私が書いている「まとめ」の模範解答を書いていただきました。私は、ここでは「まとめ」を書く必要はありません。
この討論を、次へと先へ進めていただきたいのです。今回は、今山さんを招いての初めての「討論ブログ」でした。これで入口の扉は開きました。次は、中に入っての激論になります。今山さんが、熱い血をたぎらせて熱弁を振う姿が、目に浮かびます。
今山さんの挑戦を一緒にやってくださる部下の方々、業者の方々、お施主さんたちも、熱気に引き込まれて行くだろうと期待しています。続編を待望しています。
椎野潤ブログの読者の皆様、颯爽と登場した、この新星の味わい深いブログを、お楽しみください。林業再生・山村振興を強力に推進し始めた、この人達の活動に、ご期待ください。これは「森林サービス業の新たな展開を拓くかもしれません。(椎野潤記述)
[檄文]
再造林を進められる林業と木材の販売に関心を持ち、高い価格を実現する森林直販を実現しましょう。
参考資料
(1)文月恵理著 討論 森林直販へ 司会 文月恵理 パネリスト 今山哲也 塩地博文、2022年6月24日。
[付記]2022年6月24日。
[追記 東京大学名誉教授 酒井秀夫先生の指導文]
[指導を受けたブログ名:□椎野潤(新)ブログ(429) 公共施設集約でコスト削減 秋田県の自治体7割で面積圧縮 島根県邑南町 老朽住宅 転居促す 2022年6月21日
文月恵理様
ブログ配信ありがとうございます。
かつていわゆる箱物で人口減少を食い止めようとしましたが、人口減少が進めばだんだんお荷物になってきました。
廃校になった校舎を製材工場にしている例もあります。
雇用拡大支援と創業支援で、かつての公共施設に企業を誘致できればとも思います。地元の再生可能エネルギーを活用しながら、コンペをして知恵やアイデアを広く集めれば、活路が開ける地域もあるかと思います。
やはりブログでも指摘されていますように攻める気持ちが必要だと思います。
酒井秀夫