「美しい森林づくり」企業・NPO等交流フォーラム ~パートナーシップで進める森林づくり~

出井代表挨拶

出井代表挨拶今後、アジアで一番問題になってくるのは、水とエネルギーと思われ、その元になっているのが「美しい森林()」である。世界各地を旅する際、山々も見るが、アジアでは、岩山となってしまっている山を見かけることが多く、昔の日本の山を見ているようである。日本はこの100年あまりの間、山に森にたくさんの木を植えてきた歴史があり、今後は森の中のクオリティを上げていく必要がある。

私は、世田谷の成城生まれ、成城育ちだが、世田谷は木が豊かなところで久しぶりにここ(世田谷通り)を通ると、日本という国は、新聞が書いているよりかなり良い国であると感じる。他の国が日本(緑あふれる国)並みになるためには、大変な時間がかかる。

よって、我々は自分の国に誇りと自信を持ちながら、更に良い国にしていく必要がある。参加の皆さんも、森に対する愛情をより一層深めていただきたい。

内藤長官挨拶

内藤長官挨拶本年から、京都議定書第一約束期間に入った。しかし、先般発表された我が国の2007年度の温室効果ガス排出量の速報値を見ると、基準年から8.7%の増加、前年と比べて2.3%の増加と大変残念な結果が出ている。
地球温暖化防止対策は喫緊の課題となっており、森林で3.8%を吸収する取組が、ますます重要となっている。
森林吸収のためには、人の手をかけて育てていかなければ、目標の達成はできない。「美しい森林(もり)」も実現しない。

林野庁では様々な施策で、この美しい森林づくり、健全な森林づくりを推進している。皆様にも国の取組にご支援、ご協力をいただき、日本の豊かなそして健全な美しい森林づくりを実現し、そして後世代に残していきたい。

大澤学長挨拶

大澤学長挨拶私どもは常日頃から、緑と命を大切にする人材を養成しようと考えている。地球温暖化の中で考えると、「美しい森林」があってこそ、命が育まれあらゆる生物が生きていくことができ、我々も生きることができる。

「美しい森林づくり」は、大学にとって中核的な教育・研究の枢軸になっている。これからも協力・支援をしながら、新しい森林づくりを支援していきたい。

基調講演宮林事務局長

基調講演(宮林事務局長)かつて、私たちの先祖は山を切りすぎて荒らしていた。しかし現在、私たちは木を切らないで荒らしている。
日本には農業、林業、漁業があり、自然資本と上手に共生していく基本的な文化をもっている。中でも森林は、国土を保全するという最前線に位置し、国は総力を挙げてこの最前線基地を守っていかなくてはならない時代となっている。

我が国の国土は、上下流の中間地帯に里山や人工林があり、ここを荒らすと、下流域を荒らし、上流域に当たる自然林も荒らしてしまう。よって、その中間にある、スギ、ヒノキを中心とした人工林や里山を守ることが、現在の要となっており、そこが国民参加の美しい森林づくり運動への大きな方向付けであると考える。

基調講演(宮林事務局長)安全な社会、豊かなみどり環境を創造していく、持続的な国土管理を行っていく、参加型社会をつくっていく。そういう中で新しい地域づくりがあり、そこに「森林づくり」が入ってくる。

なぜ、美しい森林づくりを進めるかというと、私たちが先祖から受け継いだ国土の70%に渡る緑を、いかに良い状況で次の世代に渡していくという使命の問題だと考える。

この美しい森林づくりには、多様な人たちが入り込んでおり、異年齢層や様々な能力のある人たちが入ってくるため、新しい地域づくりが可能となる。

景観の美しさをつくり、良い材をつくり、そして良い人間・ハートをつくるという3つを進めることが美しい森林づくりである。

話題提供(株)博報堂DYメディアパートナーズ川廷昌弘氏

話題提供((株)博報堂DYメディアパートナーズ川廷昌弘氏)私どもは、この3年間チームマイナス6%を環境コミュニケーションとしてやってきた。広告会社が環境を扱うことは、非常に難しいテーマではあったが、このようなことを進めてきたことで、様々なコミュニケーションテクニックを学ぶことができた。

マスメディアは重要で、新聞やテレビなど大きなメディアから情報を発信することで、その本気感を伝えていくことが大事である。

情報は、そのメッセージを誰に伝えるかというのが非常に重要で、誰が誰に対して言葉を発していくかということに留意してきた。

地球温暖化にあっても、日本の温暖化であり、郷土の危機であるということでキャンペーンを進めてきた。

もう一つ大切なこととして、温暖化を肌で感じているスポーツ愛好家の方々で、彼らは非常に切実な問題として捉えている。特にオリンピックでは、スポーツ、文化、環境という3つが柱になっており、スポーツアスリートたちが声を上げるということになり、実際に横断幕を持ってもらったり広告に出てもらった。彼らはギャラのみで動いているのではなく、理念で動いているので、美しい森林づくりで彼らの力を借りる場合には、襟を正してお願いをし、森を守る活動に参加いただけるようになればと考える。

広告にはお金が必要であるが、単にお金があれば何でもできるかというとそうではなく、工夫すればできることもある。

昨年出された21世紀環境立国戦略では、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会が掲げられており、チームマイナス6%は低炭素社会、温暖化防止の国民運動であったが、美しい森林づくりは3つの社会すべてに関わる問題と考える。

6%のうち森林吸収3.8%は、半分以上を担う非常に大きな問題であり、チームマイナス6%の仕事の中で、森林吸収はもう既にできている前提で家庭排出の削減に努力してきたが、改めて3.8%の重要性を再認識している。
クールビズでは、1年間に150万tのCO2を削減したことになっているが、換算するとクールビズ30年間分と同じ効果を、森林は1年間で吸収しなければならないポテンシャルを持っている。私たち広告会社は、このことを国民一人ひとりにしっかり伝えていかなくてはいけない責任があると実感している。

事例紹介

大沢 年一 氏日本生活協同組合連合会組織推進本部環境事業推進室長

大沢年一氏(日本生活協同組合連合会組織推進本部環境事業推進室長)生協は、“生協の21世紀理念”に、「自立した市民の共同の力で、人間らしいくらしの創造と持続可能な社会の実現を」を掲げており、そのための事業や活動には、購買事業や福祉活動とともに、食品の安全を守る活動や環境保全活動の推進などの政策提言・社会貢献活動に取り組んでいる。

持続可能な社会の中には、低炭素、循環型、生物多様性が欠かせないものと考える。それに向けた生協の事業分野の取組としては、省エネ・CO2削減、環境に配慮した商品開発・普及、容器包装の削減やリサイクル等があり、これらを進める環境マネジメントシステムがある。消費者・組合員の取組として、家庭のCO2削減、くらしの見直し、学習・交流に加え植林や自然体験などを実施している。

006_08森林づくりへの生協の取組としては、生協組合員と一緒に行っているものと、事業として行っているものがあり、①林野庁の分収造林制度を活用(みやぎ生協)、②漁協の魚付き林の取組への参加(コープさっぽろ他)、③未利用地での森林づくり(ちばコープほか)、④行政との「企業の森づくり」への参加(コープこうべ)、⑤国産材を活用した商品の普及がある。

活動費は、組合員の知恵によりレジ袋有料化の代金、リサイクルの売却益、募金などから環境保全への思いを集めて実施している。

1992年からは、「間伐材・端材」とは何かを説明した国産材を活用した商品(「3.9グリーンスタイル」商品)の普及にも努めている。

佐藤 祐子 氏全日本空輸株式会社CSR推進室環境・社会貢献部アシスタントマネジャー

佐藤祐子氏(全日本空輸株式会社CSR推進室環境・社会貢献部アシスタントマネジャー)	ANAグループは、「クオリティ、顧客満足、価値創造において、アジアでナンバーワンになりたい」を経営ビジョンに掲げており、この中で環境面においても、世界のリーディングエアラインを目指している。

エコロジープラン2008-2011”を策定し、航空業界初のCO2排出量を設定するなど、地球温暖化対策や大気汚染対策をはじめとするあらゆる環境対策に積極的に取り組んでいる。その中の環境貢献活動として、ANAの森づくり『私の青空』がある。

これは、“安全を守るいのちの森づくり”をテーマに、①空港周辺の緑化推進、②環境保全・自然保護の啓発、③地域コミュニケーションのお手伝いを目的に、自社機が運航する国内50空港での森づくりを、2004年から10カ年計画で実施している(現在20空港)。

10月25日に「三宅島空港・アカコッコの森」(東京都三宅村)、11月9日には「米子空港・ハマヒルガオの森」(鳥取県境港市)で実施。

また、海外においても森づくりを実施している(中国、タイなど)。

植林ツアーや飛行機のスケジュールに合わせた時間設定など、航空会社ならではの森づくりへの参加形態で実施している。

鹿住 貴之 氏特定非営利活動法人樹恩ネットワーク事務局長

鹿住貴之氏(特定非営利活動法人樹恩ネットワーク事務局長)都市と農山漁村の人々をネットワークで結ぶことにより、環境の保全改良、地方文化の発掘と普及、過疎過密の問題の解決に取り組むことを目的として、1998年4月に大学生協の支援を受けて誕生した組織である。

設立のきっかけは、廃校を大学生のセミナーハウスとして活用したことと、阪神・淡路大震災の時の支援活動として、仮設学生寮を設置し、そのうちの1箇所が徳島の林業関係者から提供された間伐材を使用したミニハウスであったということがある。

森林を守る活動として、割り箸の普及促進(主に大学食堂で使用)、森林環境教育プログラム「森林の楽校(もりのがっこう)」森林ボランティア青年リーダーの養成企業の森づくり体験の受け入れなどを実施している。

国産間伐材製「樹恩割り箸」の良さとしては、①日本の森林を守る、②障害者の仕事づくり、③食堂の排水を減らすことがある。

割り箸は徳島、埼玉、群馬で製造しており、その数は昨年度1年間で約1,000万膳(日本の年間使用量250億膳の2%が国内産で、さらにその2%を製造)で、大学生協などで使用されている。

全国12箇所において地元の企業・NPO・大学等をパートナーとして、「森林の楽校」を展開しており、森づくり体験・自然散策・自然体験や地元の方々との交流を通じて、森林・環境問題・農山村文化について学ぶ活動を行っている。

パネルディスカッション

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006_12川嶋直氏(立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任教授、(財)キープ協会常務理事(環境教育事業担当))をファシリテーターに、コメンテーターに宮林事務局長、事例発表者をパネラーに開催されました。

パネラーに質問を出し、その回答に対して皆で意見を述べ合う方法で進められました。

006_13「好きな森林はどこか」「自身のセクターだからこそできる美しい森林づくりとは」「美しい森林づくりを進めるために、どことどのようなコラボレーションをしたいか」などの質問に対して、各セクターの特色を活かした美しい森林づくりへの意見が交わされ、会場の出席者も熱心に聞き入っていました。

また、川嶋氏からは森林づくりに関しての旗揚げアンケートも実施されました。(右写真)