活動の目的・理念とその概要
森と人をつなぐ「森林環境教育」
平成14年度の「森林・林業白書」で、はじめて明文化された森林環境教育。ここでは、森林環境教育は、“森林内でのさまざまな活動等を通じて、人々の生活や環境と森林との関係について理解と関心を深める”とされています。
そもそも、森林環境教育という概念が誕生した背景は、大別すると4つの要因があるといわれています。地球温暖化や生物多様性といった地球環境問題の解決に森が果たす役割の重要性が高まった「環境の問題」。日本国内の森が林業の低迷によって荒廃している「森林・林業の問題」。青少年をめぐるさまざまな問題が深刻化する中で、子どもたちの豊かな人間性や社会性等を培っていく観点から、自然体験等の多様な体験活動の重要性が指摘された「教育の問題」。都市生活がさまざまなストレスを抱える中で、安らぎを与えてくれる森や木材を、暮らしの中に取り入れていこうとする「暮らしの問題」。現在、これらの解決に向け、森林環境教育を通じて人々の生活や環境と森との関係を多くの人々に理解してもらい、関心を寄せてもらうことで、森と人とが共存する循環型社会を実現することが目指されています。
参加者の能力、意欲などを引き出し、行動につなぐ
森林環境教育は、森が持っているさまざまな機能の価値や意義を、単に知識として理解するだけでなく、自分の行動自体を見直して、改善や行動につないでいくことを重視しています。
そのため、自然豊かな森に実際に足を運び、森の多面的機能を肌で感じ体験するだけにとどまらず、体験を振り返り、自分と森との関わりを理解して、そこから循環型社会の実現に向けて自ら何ができるのかを考えていく。このように、参加者の理解、関心を深めて、意欲を引き出していく「体験学習法」という手法も大切にしています。
活動のタイプ
森林公園・県民の森等を訪問
行政等により設置されている森林公園や県民の森等では、自然観察が行える森や散策路、木工体験が行える施設等が整備されていますので、初心者でも気軽に訪れることができます。
学校の授業等での実施
総合的な学習の時間や特別活動、あるいは国語、社会、理科、図画工作等の各教科で、森にふれ、学ぶ活動を実施することができ、都道府県やNPO等による支援体制も広まっています。
関連書籍
行政やNPO等が行うイベントに参加
週末や夏休み等には、森林インストラクター等の指導者のもとで、森林について学んだり、さまざまな体験を行えるイベントが行政やNPO等によって開催されています。
森林環境教育ネットワーク
日本環境教育フォーラム
自然体験NOW
地域の子どもグループの活動への参加
緑の少年団や子ども会、ガールスカウト、ボーイスカウト等、全国各地で自然体験等を通して子どもたちの仲間づくりや心身の成長を促す活動を行うさまざまなグループがあります。
乳児・子ども向けの「森のようちえん」
乳児や幼児期の子どもの子育てや幼児教育を自然の中で行う「森のようちえん」という活動が、幼稚園、保育園から自主保育グループ、自然学校等によって全国に広がっています。
サポート制度・情報
WEBサイト・パンフレット
パンフレット(学校向け、森林組合向け)やWEBサイト「森林環境教育ネットワーク」を設けて、森林環境教育の目的や内容、全国の活動団体や教材等の情報を紹介しています。
「森林インストラクター」の養成・認定および紹介
森や林業に関する適切な知識を有し、森の案内や野外活動の指導を行える「森林インストラクター」が養成・認定されています。現在全国で約3084名が活躍しています(平成29年2月)。
子どもや指導者用の教材の提供
指導者の方を対象とした「森林環境教育の手引き」、「森林環境教育アクティビティ・プログラム集」、「安全管理ハンドブック」等、さまざまな教材やプログラムをご用意しています。
全国森林レクリエーション協会 刊行物
全国林業改良普及協会 出版物
パッケージドプログラム「子ども樹木博士」
子どもたちが楽しみながら樹木を学び、名前を識別することをきっかけに森に親しんでもらうことを目的としたプログラム。運営方法から教材、認定証までパッケージ化されています。
助成金による活動支援
「緑と水の森林ファンド」では、子どもたち向けの森林環境教育活動の実施や、その指導者の育成、教材作成等に助成しています。森林環境税による助成金を設けている都道府県もあります。
WEBサイト「こども森林館」
クイズやゲームをしながら、森や自然についての理解を深めるとともに、子どもたちのさまざまな体験活動の受入が可能な施設や団体を紹介するWEBサイトが用意されています。