□ 椎野潤ブログ 塾頭 酒井秀夫 「ヨーロッパ林業の勢い」
暑中お見舞い申し上げます。
先月ドイツの林業機械展KWF (https://kwf-tagung.net)に行ってまいりました。4年ごとに開催され、5日間で5万人の来場者が見込まれていました。
途中、フランクフルト市内のガソリンスタンドで燃料価格を見ました。ディーゼル油が1リットル1.649ユーロでした。当時の為替レートで280円/リットルになります。驚きの価格ですが、現地在住の日本の方に聞くと、1ユーロ100円で生活しているとのことでした。それでもこの単価で運送業が成り立っているとすれば、アウトバーン(直訳すると自動車のための道路)はほぼ無料で、高速走行することができますので、燃料代と走行コストを多少相殺することができるのでしょうか。日本では2024年4月からトラック運転手の労働時間に上限がかけられました。経費節約のため高額になる高速道路を使わないこともあるとのことで、政策としてフォローする手立てがないものかと思ってしまいます。
椎野先生のお話によれば、建築業界では、例えばビルの左官工事現場に材料を届ける場合、従来は建物入口で材料を届けていましたが、エレベータに乗って左官屋さんの手元まで届けるようにしたことで、左官屋さんが自分の仕事に専念できるようになりました。林業で言えば、トラック運転手が土場で造材したりして運賃に上乗せすることで双方助け合うこともできます。しかし、これから少ない運転手で運転により多くの時間を割かなければならないとすると、今までのようなサービスはできなくなり、そのコストは発注者側にかかってきます。左官屋さんが助手を雇うとなると労働力の奪い合いが始まり、それはさらに人手不足を加速させることになります。
道中こんなことを考えながら、林業機械展の会場に到着しました。前回2012年に訪れたときよりも出店社が格段に増え、小規模であった企業も大きくなっていました。かつてはチッパーや薪割り機は隅の方でしたが、今は会場のメインストリートで展示面積を広げています。林業が主要産業になっていることが伝わってきます。
枝や梢端部まで有効利用するには、全木集材が望ましいですが、それを可能にするホイール式トラクタ(スキッダ)として、かつては日本にはT50という製品がありましたが、今は生産されていません。しかし、会場では新規参入のメーカーもあり、農業用トラクタを林業用に転用させたものもあわせると、8社はありました。現場に応じて機械の洗練化と多様化が進んでいました。
林業機械展に先立って訪れたフィンランドのヨーエンスでは、バイオコールの工場がこの秋の稼働に向けて建設を急いでいました。25万の間伐材や製材所からの端材や樹皮を原料に、石炭と同じエネルギー密度に炭化したブリケットを生産し、石炭の代わりに地域暖房プラントの燃料や製鉄の精錬用に利用しようとするものです。
帰国して日本の森林資源を目の前にして、こうしたヨーロッパのぐいぐいと前進していく取り組みを見ると、今の日本林業に必要なものは何で欠けているものは何か、森林生産物のサプライチェーンの入口と出口をつながるにはどうしたらよいか。読者の皆様と様々な視点からいっしょに考えていきたいと思います。