□ 椎野潤ブログ(伊佐研究会第19回) ウッドステーション大型パネル活用
去年の年末、伊佐ホームズ設計施工の物件で、念願のウッドステーション大型パネルを活用することが実現しました。本ブログ「椎野ブログ」の元祖、椎野先生のご紹介で2018年末頃にウッドステーションの大型パネルを知り、その後ウッドステーション株式会社の塩地社長(現会長)とお会いして、その素晴らしい技術と塩地さんの熱いご姿勢に惹かれ、またこれからの日本にはとても大事な技術になるという確信から、すぐにでも協業したいと考えておりなした。それから「椎野塾」のメンバーとして塩地さんとは交流を重ねて来たにも拘らずなかなか当社施工での活用が叶いませんでしたが、この度、お施主様の強いご要望のおかげでようやく実現に至りました。
以前から技術内容お聞きし、現場視察などに参加したりしていたので、ウッドステーション大型パネルの技術は理解していたのですが、実際に当社での施工として経験すると、その技術の有益性がより具体的に感じられ、特に担当者や現場職人からの前向きな感想は顕著です。主な感想内容は施工精度の高度化、工期短縮、工事現場の環境整備、廃棄物削減、現場作業の省力化などです。これらの項目を導入前後の数値的に分析比較しメリットを可視化して、伊佐ホームズ物件の標準仕様として整備していくことを検討開始しております。
世界中で温暖化が進み、日本の夏の気温も大幅に上昇してきております。木造住宅の夏の工事現場はとても暑く、その中で腕の良い当社の大工たちには重たいサッシを持ち上げることなどの負担を強いております。ウッドステーション大型パネルを導入することで、上棟時にはサッシがと取り付いている環境下で、このような大工たちが造作や仕上げなどに専念できることは誠に喜ばしいことです。「美しい家」、「伝統と先導」を掲げる当社として、在来軸組工法の先導的な技術であるウッドステーション大型パネルを取り入れ、現場での負担を軽減し職人に大いに腕を振るってもらい美しい家づくりを仕上げてもらえるように体制をつくっていくつもりです。また当社の木材流通のプラットフォームである森林パートナーズのシステムとも連携させていき、地域林業への価値還元をより推進させていきたいと考えております。
☆まとめ 「塾頭の一言」 本郷浩二
ウッドステーションの大型パネル施工と伊佐ホームズ・森林パートナーズの木造軸組住宅建築の協働がようやく実現しました。この椎野塾に集まる方々の議論の一つの結晶の姿になって、これからの住宅建築のありようとなり、住宅建築での木材利用と林業のつながりを作る形になっていけばと思います。
私の自宅なので、棟上げの一部は私も見学しましたが、土台だけの形から、土曜日一日で二階屋の棟木まで組み上がりました。どのパネルも部材もきちんとはまり、組上げのトラブルはありませんでした。ただ、電線、電話線が数多くかかっている難しい立地で、西風もあったため、クレーンでパネルや部材を吊るのにも名人芸が必要だったようです。冬時間のため、その日に屋根までは架けられませんでしたが、日曜日のお休みを挟んで冬の東京の晴れ天気に恵まれ、月曜日には雨に会うことなく屋根が架けられました。工事関係者の皆様のご努力、ご精進に感謝申し上げます。
大型パネルでの建て方については、ご報告にあるように、働いてくださった方、担当者、の方達、小柳様が感じられた通りの意義や効果があったと思います。
構造材は、山長商店の紀州材を千葉の山長商店系列会社モックの工場で大型パネルにしました。パネル以外については、森林パートナーズのサプライチェーンに乗った秩父材を金子製材で挽いてもらい、山長商店でプレカット加工してもらったそうです。両者のサプライチェーンをミックスしてもらったので運搬費はかかりましたが、まさに協働と言えると思います。残念なのは、時間がなくてこれらの木の山の現場を見られていないことです。ただし、全部が国産材にはならなくて、梁桁には米マツ、ハイブリッドビームなんかも使っています。床のフローリングは、クリとキリ、一部サクラで使い分けています。
木材関係のもう一つの取組は木製窓です。リビングの窓に日本の窓の防火仕様のスギ材のサッシ、寝室の窓にYKK・APの新発売のヒノキ集成材のサッシを入れました。予算上の制約で、すべての窓を木製窓にすることはできませんでした。
木製窓は、アルミサッシや樹脂サッシに比べて窓の框部分の面積が大きいので木が目立ちます。サッシの額縁はタモです。今後、窓や額縁の木の内装としての役割に関する認識が広がっていくことを期待しています。サッシの木製化は以前からの日本の木材利用の課題で、欧米では既に当たり前になっているものです。日本の住宅建築では、建材・住宅設備の高価格化が原因で住宅用木材の価格が押し下げられているという面もあるそうなので、建材・設備そのものを木製化していくことも、住宅の中で木材の価値を取り戻していく一つの方法になるかなと考えています。ハードルはとても高いですが。