□ まず一言
私は大病を罹患し、手術を目前にした一年前の一月末、長い間、書き続けていたブログから、引退を宣言しました。でも、その後の回復は、想定外に順調でした。それで、書けるだけ書いてみようと、再開を決断したのです。その再開第一号のブログが、2020年4月1日の(№1)ブログです。(№10)の6月15日のブログから、国土緑化推進機構フォレスト・サポーターズ 研究報告に登載していますが、№1〜9のブログは、読者が検索できるような体制にしておりません。ここに執筆から一年ぶりに、その(№1)ブログを以下に記します。
一年前の執筆時には、このブログは、語る内容が深すぎました。記述も長すぎました。でも、一年を経過した今は、テレワーク(注2)、ワーケーション(注3)は、さらに重要度が増しています。今こそ、これを読者の皆さんに、頑張って熟読してもらわねばならない時になったのです。
林業再生・山村振興への一言(再開)
[再開の前文]
今、新型コロナウイルスが、世界で猛威を振るっています。世界人類は、最大の危機に直面しています。今、求められているのは、「遠く離れていても、相互に信頼を高められる働き方(参考資料1、注1)、「テレワーク(注2)、ワーケーション(注3)です。林業再生・山村振興の一言の再開にあたり、この文章は、私自身の言葉で一気に書きます。参考にした文献は記しますが、その本文の引用は、ほとんど、しません。良く理解したい方は、参考文献を開き良く読んで深く考えてください。
2020年4月(№1)
□ 再開ブログ(001)新型コロナの大爆発で世界は危機に直面
今求められているのは「遠く離れていても 相互に信頼を高められる働き方改革」「テレワーク・ワーケーション」2020年4月1日。
☆はじめに
新型コロナウイルスの恐怖は、世界を覆っています。政府も自治体も、「職場に出勤せず自宅で仕事を」「不要不急の外出は控える」ことを強く求めています。小池百合子東京都知事は人の密集を防ぐため、企業にテレワーク(注2)への協力を強く呼びかけました。これを受けて東京都の本庁舎では職員1万人が、テレワークに取り組んでいます(参考資料2を参照)。これは都庁自らが始めて、企業や国民に浸透させようとしているのです。 新聞はテレワークの文字で溢れています。林業再生・山村振興への再開の一言は、これから書き始めます。
☆本文
私が、このテレワークに、特に注目しているのは、労働生産性(注4)の向上効果です。総務省の報告によれば、テレワークの導入によって、労働生産性は、599万円から959万円へ、1.6倍になったのです(参考資料4、注5)。2017年の日本の労働生産性は84.027ドルで、OECD加盟35カ国中21位で、先進7カ国で最下位に沈んでいました(注6)。ですから、このテレワークの本格導入は、日本にとって、きわめて重要な課題でした。
2017年から、毎年、社員が一斉に出社しない「テレワーク・デイズ」のイベントが、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府の主宰で開催されていました。これは、東京五輪・パラリンピックの交通混雑の回避の切り札として実施されていたのです。それで、オリンピックを翌年に控えた2019年には、大いに盛り上がりました。2019年の参加団体は2887団体と、前年の1.7倍、参加者数は68万人で2.2倍に増えていたのです。
この様な盛り上がりの中で、2018年の日本テレワーク制度を導入した企業の割合は19.1%に達していました(参考資料3)。でも、参考資料1(注1)によれば、パーソル総合研究所が企業の正社員2万人を対象に実施した3月前半の調査ではテレワークをしている人の割合は13.2%に止まり、そのうち約半分が、今回が初めてという回答でした。すなわち、コロナウイルスが発生する前からテレワークをやっていた人は6%程度なのです。
これは、企業としてはテレワークに参加していても、推進プロジェクトの関係者以外では、無関心の人が多かったことを示しています。でも、今回のコロナウイルス危機の到来で、やっと本気になるはずなのです。やっと、始まるのです。
☆昔ブロク
テレワークに関しては、私は随分、古くから、ブログに書いています。幾つかの興味深い事例も書いていますので紹介しましょう。
一番古いブログは、2013年5月22日のブログです。国が女性が働く環境整備を定めた記事を取り上げています。
具体的には、自宅などで、子供をみながら働ける「テレワーク」の拡大と、第一子出産前後の女性の継続就業率の向上などの、数値目標を示したのです。
その数値目標は、以下などです。
(1)自宅などで仕事をするテレワーク(在宅勤務)の導入企業数を、現在の1割から2020年までに、3割に拡大する。
(2)(第一子出産前後の女性の継続就業率を、2009年の38%から、55%に引き上げる。
このブログでは、これまで、その中身が曖昧で、議論が総論に終始していた働き方改革の議論に、数値目標を示したのは、大きな前進だが、問題はその具体策だと指摘しています。そして、これを推進する雇用者(企業)に、どんな、インセンティブをつけるのか。働く女性自身に「よし、やろう」と元気を出してもらうために、どんな施策をとるのかが鍵だと指摘しています。このブログでは、これがうまく行くかどうかで、日本と日本人の未来が、明るいものにもなり、悲惨な姿にもなる現実を、しっかり自覚することが、極めて重要だと言う一言で結んでいます。(参考資料5、注8)
次のブログは、2018年8月16日のブログです。このブログでは、日立製作所が生産性向上のために、大々的にテレワークを実施するのを紹介しています。日立の社員は、子会社なども含め国内で17万人、世界で30万人います。ここでテレワークにするのは10万人で、国内勤務社員の実に60%です。なお、2018年、自宅で働いている社員は、既に1日8000人〜1万5000人いました。社内で調査した結果、9万人がこのような働き方を希望しました。
総務省によると日本でテレワークを導入する企業は、2017年の時点で14%でした。導入企業は、近年、増えており、富士通は社員3万人の7割が利用できています。東京海上日動火災保険は2017年10月に、対象を1万7千人の全社員に拡大しました。政府は、導入企業を、2020年に30%以上に高める目標を掲げています。
このテレワークは、大きな先行投資を必要とせず、手軽に実施できるので,今後、大いに増大するものと思われます。テレワークをAI、IoTを使ってうまく処理する方法を開発するスタートアップ も、今後、続々と出てくるものと思われます。(参考資料6、注9)
さらに、2018年10月14日のブログには、英蘭ユニリーバ(注7)の日本法人の、ユニリーバ・ジャパンのユニークな経営戦略が紹介されています。同社は地方自治体の役場の空き室を無償で借り、自治体のIoTを使った商品開発や販売促進を手伝い始めました。
ユニリーバ・ジャパンは、大分県別府市、宮崎県新富町など6カ所で、既に、このモデルを導入しています。同社は、市区町村の市役所や町役場の空きスペースを無償で借り、オフィスとして、社員500人と同社の働き方を支持する社外の集団のメンバー500人に、無料で提供しています。
社員には、各拠点で1日〜1週間滞在し働いてもらいます。旅行する場合、休暇の1週間前から現地に入って働き、そのまま休暇に入ることも可能なのです。
自治体が、役所の空き部屋を、民間企業に無料で提供するというのは、かなり異例です。どうして、このようなことが出来たのでしょうか。実は、自治体がなんとか売ろうとしても売れなかった、地域特産品が、この会社の人達の努力で売れるようになったのです。また、訪日外国人が喜ぶ、新しい名物を、作り出したいと考えていた時、それも見事に見つけてくれたのです。ですから、役場は空き部屋を是非、使ってくださいということになったのです。
今まで役所が、なかなか売れない特産品を上手に売る方法(販促手法)をコンサルタントに教わろうとすると、金を払わねばなりませんでした。でも、この企業は、金には全く関心を示さないのです。その上,物凄く熱心なのです。自分の仕事のような情熱を持って、役所がやるべき仕事に取り組むのです。訪日客向けの新しい名物を探すときも、同様でした。
そして「あなた達は、何の商売をしているのですか」と聞きますと、「全てのモノがネットでつながるIoT」をやっているのですと言います。結局、何か意図を持っている人と人。それに何かモノをつなごうとしているのです。
役場が探していた「特産品の売り方」も「観光客用の新しい名物」も、役所の要望に応えて、IoTでつないでいるうちに、自然に見つかったというのです。今、大騒ぎしているIoTとは、そんなものかと、役場の人達は眼を丸くしました。
役所が空室に是非入って、そこで仕事をして欲しいと頼んだ理由は、もう一つあります。それは、この会社の人達の意欲と情熱です。その熱とエネルギーは、凄いものがあるのです。その情熱に引かれて、役所の中に、全体として、エネルギーが出てきたのです。
地域の人達は、活性化の鍵とは、熱意のある人の参加だと気付きました。それは、この会社の働き方改革に、鍵があることがわかりました。この会社は、働き方改革を強力に進めていました。副業は完全に認めており、個人が顧客から金をもらうのは、原則、自由です。勤務時間も、勤務場所も自由です。これが桁外れの意欲と情熱の源泉でした。
この会社は、遠く離れていても、情報通信技術を使って仕事を円滑に行うテレワーク(注2)と休暇中にテレワークで仕事もするワーケーション(注3)も区別せずに行っているのです。それほど勤務体制は柔軟なのです。
この会社は、IoTの真髄を良く理解していました。働き方改革の狙いも正しく理解し実践していました。すなわち、この会社の事業モデルは、実に鮮やかでした。でも、それもそのはずなのです。ユニリーバ(注7)は、オランダと英国に本社を持つ、著名な多国籍企業なのです。世界180カ国以上に支社があります。ユニリーバ・ジャパンは、その日本支社です。日本には、古くから来ています。
私は、このブログを書いていて、随分鮮やかな事業モデルだと思いました。日本人離れしているのです。日本の国内モデルを、こんなに鮮やかに実行する日本企業を、私は知りません。私は日本国内に、外国企業の鮮やかなモデルを、先に作ってもらって、日本企業が追いかける方が良いだろうと思っていました。日本企業は最初にやるのは苦手ですが、誰かが先にやると、追いかけるのは得意だからです。
しかし、このブログから2年半、ユニリーバを追いかけて、同様な経営戦略を実施する日本企業は現れませんでした。この日本企業の積極性のなさが、2010年代から2020年にかけて、日本が世界から大きく遅れてきた理由です。(参考資料7、注10)
でも、今、コロナウイルスと闘っている国難の時にあって、私は、日本国民に対して、大きな希望を持っています。日本国民は、これまで国難に直面したときは強かったのです。列強に国を奪われる危険のあった明治維新も、第二次大戦の敗戦時も、立派にこの危機を突破しました。
私は、ここで、いつも心に念じている、内村鑑三の言葉(参考資料8、注11)を思いだしました。鑑三は言っています。
「国には、暗き時に臨み(のぞみ)し時があります。この時に精神の光が必要になるのであります。」「国の興ると亡ぶとは、この時に、定まるのであります。どんな国にも、暗黒が臨み(のぞみ)ます。そのとき、これに打ち勝つことのできる民が、永久に栄えるのであります。(ここまで内村の言葉を引用)」日本の民は、コロナウイルスの危機を見事に乗り越え、その後の世界の先陣(せんじん)を走ると信じます。
山村振興も、その鍵は結局、住む人の情熱とエネルギーです。内村鑑三の言葉に、山村に住む人達も強く鼓舞されるはずです。コロナ以降の経済再建で、最も重要なのは、日本全土の隅々までを強いエネルギーに満ちた国にすることです。ですから、これがポストコロナで最重要です。
オリンピックも同様です。私は、大病の手術のあと、体調が最も苦しいときに、古関裕而の東京オリンピックマーチのCDを、毎朝かけて、自分を鼓舞し、この難関を超えました。今は、日本国が大病にかかり、回復に向うときです。日本全土に、東京オリンピックマーチが流れたら、日本国も元気を取り戻すはずです。
(注1)参考資料1、日本経済新聞、2020年4月2日の社説。
(注2)テレワーク:勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT、Information and Communication Technology)を活用し時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。tel (離れたところで)とwork(働く)の合成語。
(注3)ワーケーション:work(ワーク)とvacation(バケーション)の合成語。休暇中、特に旅行先でテレワークを行うこと。
(注4)労働生産性: (労働利益+人件費+減価償却費)÷従業員数。
(注5)参考資料4、pp.5〜6。
(注6)参考資料4、pp.25。
(注7)ユニリーバ(Unilever N.V./Unilever plc 蘭/英):世界有数の一般消費財メーカー。食品・洗剤・ヘアケア・トイレタリーなどの家庭用品を製造・販売する多国籍企業。現在世界180ヵ国以上に支社網を擁する。本社:オランダ ロッテルダム、イギリス ロンドン、設立:1930年。
(注8)参考資料5、日本経済新聞、2013年5月21日から引用。
(注9)参考資料6、日本経済新聞、 2018年8月2日から引用。
(注10) 参考資料7、日本経済新聞、 2018年9月22日夕刊から引用。
(注11) 参考資料8、pp.34。
参考資料
(1)日本経済新聞、2020年4月2日。
(2)日本経済新聞、2020年3月24日。
(3)日本経済新聞、2020年3月13日。
(4)テレワークの最新動向と総務省の政策展開、総務省、大臣官房総括審議官(情報通信担当)安藤栄作、令和元年5月31日。
(5)椎野潤ブログ:女性の働く環境の整備、2013年5月22日。
(6)椎野潤ブログ: 日立製作所、テレワーク、社外勤務10万人、働き方改革拡大、2018年8月16日。
(7)椎野潤ブログ: ユニリーバ、全都道府県で役所の空き部屋を仕事の拠点に、2018年10月14日。
(8)椎野潤著:内村鑑三の言葉 現代社会を突き抜ける金言〜われわれはこの世に何を遺して逝くのか〜、メディアポート、2012年9月9日。
[付記] 2021年5月10日、これを再記す。