□ 椎野潤ブログ(加藤研究会第九回)「国内初」ドローンToハウジング 第1回現地検討会を開催
5月29日(月曜日)、スマート林業のドローンtoハウジング-デジタル在庫情報から乱尺丸太の造材- 第1回現地検討会を木島平村カラマツ林にて開催しました。
これは、林野庁「新しい林業」経営モデル事業「川上と川下のデータ連携を柱とするコスト削減と山元還元の実証事業」の事務局の林野庁経営課と林業機械化協会の支援を受けて、長野県コンソーシアムとして実施しました。代表支援機関として、信州大学広報室からプレスリリースも併せて行いました。
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/lab/finfo/Osirase/shindaipress_May29.pdf
事前参加登録は約50名、報道機関のテレビ局2社、新聞3社からも事前申込みがありました。
☆内容と見どころ
精密林業計測株式会社による森林資源のレーザ計測
最新のドローンやモバイルレーザ計測のデモンストレーション
(当日、雨天のため中止)
点群データから精密立木(幹)情報の解析
計測された3次元点群データから信州大学オリジナルの単木区分、樹幹抽出、10cmごとの直径の自動計測、細り、曲がり(矢だか)の自動計測
伏図からの丸太本数と木取り
工務店作成の建築伏図からウッドステーションの木製大型パネルの部材情報、建築で必要な丸太本数と木取り(末口径級と丸太長)の算定
乱尺丸太の採材シミュレーション
木造在来工法のため、径と長さの異なる建築材が必要であり、調査地の立木に最適丸太のあてはめ(選抜)とA材確保のための任意の採材シミュレーションのソフトウエアを開発
乱尺造材対象立木と丸太の採材位置の決定
調査地の立木に乱尺造材対象立木のあてはめ(選抜)とICTハーベスタ用のA材の採材位置を一覧表として作成
造材指示と北信州ICTハーベスタによるA材乱尺丸太の造材
ICTハーベスタのオペレータに造材指示として、乱尺造材対象立木と丸太の採材位置の決定情報を共有し、A材乱尺丸太の造材をデモンストレーション
☆雨天決行
5月29日(月)は全国的に雨天で、木島平ジャンプ場に隣接する標高560mのカラマツ人工林の現地はときおり激しい降雨もありました。林業現場の現地検討会は、天候には逆らえませんので、参加者のみなさんは、雨具と傘を用意していただきました。お礼申し上げます。前日(5/28)、後日(5/30)は晴れでしたので、どうやら雨男と雨女が事務局には大勢いたようです。報道機関から、電話で開催有無の確認と機材が濡れるため現地に行けません。との連絡がありました。
☆参加者からの感想 リップサービスを含みます。
「先日は、大変有意義な現地検討会に参加させていただきありがとうございました。お電話でもお話しましたが、実証事業の詳細についてはもちろんですが、ICTハーベスタのオペレータに現地で直に質問できたことなども、とても勉強になりました。是非機会がありましたら、ドローン計測実演についても見せていただきたいなと思います」 A様(行政機関)
「一昨日に現地検討会、昨日の担当者会議と大変お世話になり、ありがとうございました。研究発表を拝聴し、現状の取り組みや課題を勉強させていただきました。新しい取り組みに挑戦されている皆様から大変刺激を受けました。弊社も、サポートができるよう精進してまいります。引き続き何卒よろしくお願いします」 B様(企業)
☆ドローンtoハウジング第2回現地検討会
今回の第1回現地検討会は、川上の林業側のデモンストレーションでした。第2回現地検討会は、川下の建築が主役です。10月下旬に、松本市で現地上棟と完成見学会、セミナーを予定しています。今回の現地検討会の北信州森林組合産のカラマツ材を一部使用します。
ドローンtoハウジング第2回現地検討会 -森林産直による大型パネルによる上棟-
主催:ウッドステーション、国興ホーム(松本市)、信州大学他
☆加藤研究会のブログ閉鎖とお礼
森林資源の加藤研究会ですが、約1年間担当してきました。私事ですが、令和5年4月より大学ベンチャーの代表取締役に就任して、気楽にブログを記載できない立場になりました。事務局の塩地さん、文月さんと相談した結果、ご配慮いただき、今号を持って閉鎖することになりました。情報発信等でお世話になりました皆様に謹んでお礼申し上げます。今後は、一人の読者として、ブログ情報を楽しみにしています。
☆まとめ 「塾頭の一言」 酒井秀夫
立木を買うとき、森林組合や製材屋さんは事前に資源調査を行います。その手間賃やリスクを見込んだ費用は、結局、立木購入価格に反映されて森林所有者の取り分は安くなります。今回、建築側の情報と森林資源情報のデータ連係を目指して、工務店作成の建築伏図から必要な部材を、ICTハーベスタの造材機能を介して、供給することの実験でした。多くの知見が得られ、いろいろな活用方法が生まれていくと思います。森林資源を調査するとき、レーザ計測のメリットはたくさんあると思いますが、正確な樹高が得られるのが最も大きいと思います。目測や経験では誤差も大きく、材積見積もりに大きく響きます。
このシステムを誰が使うかを考えたとき、山主さんでも立木購入者でもなく、公平な立場の第三者になると思います。第三者が精密計測を行って立ち会い、目的に応じた材積見積もりを行えば、その資源を活かす人が高く木を買いますし、輸送コストを考えれば地元有利になります。双方の資源調査のコストを折半でき、A材の付加価値化、曲り部分に対する歩留まり向上、資源の有効活用で山元還元につながります。今までベテランの方が「山を見て」きましたが、これからはICT機器が担っていくことになります。
第三者によってデータが蓄積され、分析されていけば、地域の森林経営管理計画にも反映されていきます。成長量とリンクさせることができれば、苗木生産とも関連させながら、適時適切な伐採計画を立てることも可能になります。そういったベンチャー企業に対する支援によって、イノベーションも増え、ビジネスの可能性が広がります。
私も当日見学させていただきました。あいにくの雨でドローンを飛ばすことができませんでしたが、全国的な雨でしたので、雨は事務局のせいでもないと思います。宿舎に指定していただいた角間温泉郷の熱い湯に癒やされました。
加藤先生には今まで大学研究者の立場から寄稿していただきました。これからも益々ご活躍されますようエールを送りたいと思います。