「槍平小屋付近では合羽も脱いでしまったが、その後も時折雨が降り傘で対応し、滝谷を過ぎ白出沢に近づく頃に登ってくる数人のパーティーが白出沢は増水で、少し上流に小屋の人が仮橋をかけたと聞いて、白出沢についてみると、なんと登る折に全く水の無かった大きな沢が幾筋かの流れを作りゴウゴウと流れている。聞いたとおり上流を見ると登山者がいてすぐに解ったので大石を乗り越え踏みしめその場所に着くと細い丸太が2本渡してあり、その下を水がゴウゴウと流れ下っていた。こんなに山の変化は早いのだとあらためて思う」
平成20年に穂高白出沢を歩いた登山者の山行記です。白出沢は平常は流水がないのですが、ひとたび雨が降ると恐ろしい沢で、過去には増水した沢に流され帰らぬ人となった事故も発生しています。
林野庁中部森林管理局飛騨森林管理署(高山市:田尻明彦 署長)では国土保全を目的に白出沢でも治山事業に取り組まれており、名古屋林業土木協会神岡支部(加藤 勝 支部長)は会員が工事を施工する際に白出沢の怖さも十分承知しており、登山者や山小屋関係者、地元関係者はもとより、山での遭難者を救助する方々がからも改善の要望が出されていたことから、平成22年に関係する機関とも相談し了解を得て仮設の歩道橋をフォレスト・サポーターズ活動として設置しました。
この仮橋は冬期の雪崩から保護するために秋には撤去して夏山前にまた設置するという作業が毎年必要で、今年も支部会員の日頃の技術を生かし重機も使いながら設置しました。(写真)こういった活動が評価され、昨年は中部森林管理局(長野市:奥田辰幸 局長)が実施する「森林・林業社会貢献活動に進んで携わる者に対する感謝状贈呈」において、局長感謝状を受賞するといった栄誉に輝きました。
当支部会員は白出沢における治山工事など木製看板を使用し木材の利用推進のPRにも取り組んでおり、受賞を励みとして、今後も国有林が山岳景観や登山を通じ地域振興に大きく寄与していることを踏まえ、フォレスト・サポーターズ活動を通じ地域貢献や木材利用の推進に取り組んで行く考えです。